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この章のまとめ

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第1章 確率熱力学の入口

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第1章 §4.1.7 ★★★ 比べるのは今の分布と瞬間の平衡分布。Fokker–Planck の流れは DD を減らし、減る速さがエントロピー生成。仕事の余分は DD と Σ\Sigma に分かれる

この章では、熱浴の中で揺れる粒子を過減衰の Langevin 方程式で書き、比べる2つの分布を今の位置の分布 ptp_t と今の設定の平衡分布 πλt\pi_{\lambda_t} に取った。その DD は非平衡の自由エネルギーの余り (F[pt]−Feq)/kBT(F[p_t]-F_{\mathrm{eq}})/ k_{\mathrm B} T に等しい(式 (4.1.7))。当てた DD の性質は、平衡分布を動かさない確率の核は DD を減らすというデータ処理不等式で、Fokker–Planck 方程式ではその減る速さが確率の流れの2乗の平均、すなわちエントロピー生成の速さ Σ˙\dot\Sigma に等しい(定理 4.1.1)。

出てきたものは3つある。第一に、Sekimoto の定義で1本の軌道に熱と仕事を割り当てると、第一法則が軌道ごとに成り立つ。そのためには Stratonovich の積を使う必要がある。第二に、設定を動かす過程でも F[pt,λt]F[p_t,\lambda_t] の帳尻がとれ、余分な仕事はまだ緩和していない分 kBT D(pf ∥ πf)k_{\mathrm B} T\,D(p_{\mathrm f}\,\|\,\pi_{\mathrm f}) とすでに失われた分 kBT⟨Σ⟩k_{\mathrm B} T\langle \Sigma \rangle の和に正確に分かれる(定理 4.1.3)。⟨Σ⟩\langle \Sigma \rangle は分布のエントロピーと液体のエントロピーの増えの和で、その非負性が Clausius の不等式である。第三に、有限の時間の操作の余分は、急な操作なら D(π前 ∥ π後)D(\pi_{\text{前}}\,\|\,\pi_{\text{後}})、段に分ければその和で、Fisher 情報の長さ L\mathcal L を使って L2/(2N)\mathcal L^2/(2N) まで下げられ、連続の操作でも時間に反比例して下がる。

1本の軌道のエントロピー生成 Σ[x]\Sigma[x] は平均すると非負だが、1本ごとには負にもなる。その確率を正確に述べるゆらぎの定理(Jarzynski の等式・Crooks の関係)が第4部第2章 の主題で、⟨Σ⟩\langle \Sigma \rangle を経路の確率と逆回しの経路の確率の DD として書き直すことが 第4部第3章 の主題である。総合問題の (5) は、その最初の例を急な操作で計算する。

要点

  • 過減衰の Langevin 方程式 γx˙=−∂xU+ξ\gamma\dot x=-\partial_xU+\xi、⟨ξξ⟩=2γkBTδ\langle \xi\xi \rangle =2\gamma k_{\mathrm B} T\delta。確率の流れ j=−kBTγp ∂xln⁡(p/πλ)j=-\frac{ k_{\mathrm B} T}{\gamma}p\,\partial_x\ln(p/\pi_\lambda)。
  • F[p,λ]−Feq(λ)=kBT D(p ∥ πλ)F[p,\lambda]-F_{\mathrm{eq}}(\lambda)= k_{\mathrm B} T\,D(p\,\|\,\pi_\lambda)。設定を止めると dD/dt=−Σ˙\mathrm{d} D/\mathrm{d} t=-\dot\Sigma、Σ˙=γkBT∫j2/p dx≥0\dot\Sigma=\frac{\gamma}{ k_{\mathrm B} T}\int j^2/p\,\mathrm{d} x\ge0。
  • 軌道ごとに W[x]=∫∂λU λ˙ dtW[x]=\int\partial_\lambda U\,\dot\lambda\,\mathrm{d} t、Q[x]=∫∂xU∘dxQ[x]=\int\partial_xU\circ\mathrm{d} x、ΔU=Q+W\Delta U=Q+W(Stratonovich の積)。
  • ⟨W⟩−ΔFeq=kBT[ΔD]+kBT⟨Σ⟩\langle W \rangle -\Delta F_{\mathrm{eq}}= k_{\mathrm B} T[\Delta D]+ k_{\mathrm B} T\langle \Sigma \rangle、⟨Σ⟩=ΔH(p)−⟨Q⟩/kBT≥0\langle \Sigma \rangle =\Delta H(p)-\langle Q \rangle / k_{\mathrm B} T\ge0。
  • 急な操作の余分 =kBT D(π前 ∥ π後)= k_{\mathrm B} T\,D(\pi_{\text{前}}\,\|\,\pi_{\text{後}})。NN 段で ≥kBTL2/(2N)\ge k_{\mathrm B} T\mathcal L^2/(2N)。ばねを動かす最良の余分 γλf2/(tf+2τr)\gamma\lambda_{\mathrm f}^2/(t_{\mathrm f}+2\tau_{\mathrm r})。

総合問題 ばねを強くする操作の帳尻 ★★★

オリジナル温度 TT の水の中の粒子が調和ばね U=k′2x2U=\frac{k'}{2}x^2 にとらえられていて、初めは k′=k0k'=k_0 の平衡分布にある。ばねの強さを最後に k1=4k0k_1=4k_0 にする。r≔k1/k0=4r\coloneqq k_1/k_0=4 とおく。

  1. (1) 時刻 00 に k0k_0 から k1k_1 へ一瞬で変える。仕事の平均 ⟨W⟩\langle W \rangle、ΔFeq\Delta F_{\mathrm{eq}}、D(πk0 ∥ πk1)D(\pi_{k_0}\,\|\,\pi_{k_1}) を kBTk_{\mathrm B} T と nat で求め、式 (4.1.20) を確かめよ。(使う道具:4.1.5 節、第2部第2章 の Gibbs の変分原理)
  2. (2) (1) の後、ばねを k1k_1 に止めて平衡に戻るまで待つ。この間に粒子が受け取る熱 ⟨Q⟩\langle Q \rangle と分布のエントロピーの変化 ΔH\Delta H を求め、⟨Σ⟩=ΔH−⟨Q⟩/kBT\langle \Sigma \rangle =\Delta H-\langle Q \rangle / k_{\mathrm B} T が (1) の DD に等しいことを確かめよ。(使う道具:4.1.2 節・4.1.4 節)
  3. (3) 途中の強さ kmk_{\mathrm m} に一瞬で変えて平衡まで待ち、次に k1k_1 に一瞬で変える2段の操作を考える。余分な仕事を最小にする kmk_{\mathrm m} と、そのときの余分を求めよ。(使う道具:4.1.5 節)
  4. (4) 強さを等比に NN 段で変えるときの余分を求め、N=10N=10 の値と、NN が大きいときの近似 L2/(2N)\mathcal L^2/(2N) を比べよ。ここで L\mathcal L は平衡分布 πk′\pi_{k'} の k′k' についての Fisher 情報で測った長さである。(使う道具:4.1.5 節、第1部第7章 の Fisher 情報)
  5. (5) (1) の一瞬の操作で、1本の軌道の仕事 W[x]W[x] は初めの位置 x0x_0 で決まる。W[x]<ΔFeqW[x]<\Delta F_{\mathrm{eq}} となる確率と、平均 ⟨e−βW⟩\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle を求め、e−βΔFeq\mathrm{e}^{-\beta\Delta F_{\mathrm{eq}}} と比べよ。(使う道具:4.1.3 節・4.1.4 節、次の 第4部第2章)
解答

(1) 一瞬の操作の仕事は W[x]=k1−k02x02W[x]=\frac{k_1-k_0}{2}x_0^2 で、x0x_0 は分散 kBT/k0k_{\mathrm B} T/k_0 の正規分布なので ⟨W⟩=kBT2(r−1)=1.5 kBT\langle W \rangle =\frac{ k_{\mathrm B} T}{2}(r-1)=1.5\, k_{\mathrm B} T である。例題 4.1.6 と同じく ΔFeq=kBT2ln⁡r=0.693 kBT\Delta F_{\mathrm{eq}}=\frac{ k_{\mathrm B} T}{2}\ln r=0.693\, k_{\mathrm B} T である。2つの平衡分布はどちらも平均0なので、式 (4.1.8) は幅の項だけである。比べる相手 πk1\pi_{k_1} の分散を σeq2=kBT/k1\sigma_{\mathrm{eq}}^2= k_{\mathrm B} T/k_1 とするとs=(kBT/k0)/(kBT/k1)=rs=( k_{\mathrm B} T/k_0)/( k_{\mathrm B} T/k_1)=r で、D(πk0 ∥ πk1)=12(r−1−ln⁡r)=12(3−ln⁡4)=0.807D(\pi_{k_0}\,\|\,\pi_{k_1})=\frac12(r-1-\ln r)=\frac12(3-\ln4)=0.807 nat である。β(⟨W⟩−ΔFeq)=1.5−0.693=0.807\beta(\langle W \rangle -\Delta F_{\mathrm{eq}})=1.5-0.693=0.807 で、式 (4.1.20) が成り立つ。

(2) ばねを止めている間は仕事が0なので、熱は平均のエネルギーの変化に等しい。直後の平均のエネルギーは k12⋅kBTk0=2kBT\frac{k_1}{2}\cdot\frac{ k_{\mathrm B} T}{k_0}=2 k_{\mathrm B} T、緩和した後は等分配で 12kBT\frac12 k_{\mathrm B} T なので、⟨Q⟩=−1.5 kBT\langle Q \rangle =-1.5\, k_{\mathrm B} T(粒子は液体へ熱を渡す)である。分布の分散は kBT/k0k_{\mathrm B} T/k_0 から kBT/k1k_{\mathrm B} T/k_1 へ 1/r1/r 倍になるので ΔH=12ln⁡(1/r)=−0.693\Delta H=\frac12\ln(1/r)=-0.693 である。したがって ⟨Σ⟩=−0.693+1.5=0.807\langle \Sigma \rangle =-0.693+1.5=0.807 nat で、(1) の DD に等しい。定理 4.1.1 で D(pt ∥ πk1)D(p_t\,\|\,\pi_{k_1}) が 0.8070.807 から0まで減り、その全部が Σ\Sigma になったことにあたる。操作全体では式 (4.1.17) が ⟨W⟩−ΔFeq=kBT⋅0+kBT⋅0.807\langle W \rangle -\Delta F_{\mathrm{eq}}= k_{\mathrm B} T\cdot0+ k_{\mathrm B} T\cdot0.807 の形で成り立っている。

(3) 式 (4.1.21) から余分は kBT [f(km/k0)+f(k1/km)]k_{\mathrm B} T\,[f(k_{\mathrm m}/k_0)+f(k_1/k_{\mathrm m})]、f(q)≔12(q−1−ln⁡q)f(q)\coloneqq\frac12(q-1-\ln q) である。kmk_{\mathrm m} で微分して0とおくと12(1k0−1km)+12(−k1km2+1km)=0\frac12\bigl(\frac1{k_0}-\frac1{k_{\mathrm m}}\bigr)+\frac12\bigl(-\frac{k_1}{k_{\mathrm m}^2}+\frac1{k_{\mathrm m}}\bigr)=0、すなわち km2=k0k1k_{\mathrm m}^2=k_0k_1 で、等比の中間 km=k0k1=2k0k_{\mathrm m}=\sqrt{k_0k_1}=2k_0 が最良である。そのとき余分は 2f(2)=1−ln⁡2=0.307 kBT2f(2)=1-\ln2=0.307\, k_{\mathrm B} T で、1段の 0.807 kBT0.807\, k_{\mathrm B} T の4割以下になる。

(4) 1段の比は q=r1/Nq=r^{1/N} で、余分は Nf(r1/N) kBTNf(r^{1/N})\, k_{\mathrm B} T である。N=10N=10 では q=40.1=1.1487q=4^{0.1}=1.1487 で 10×12(0.1487−0.1386)=0.050310\times\frac12(0.1487-0.1386)=0.0503 nat である。Fisher 情報は D(πk′ ∥ πk′+δ)=f(1+δ/k′)≈14(δ/k′)2=12Jδ2D(\pi_{k'}\,\|\,\pi_{k'+\delta})=f(1+\delta/k')\approx\frac14(\delta/k')^2=\frac12J\delta^2 から J(k′)=1/(2k′2)J(k')=1/(2k'^2) で、長さは L=∫k0k1dk′2 k′=ln⁡r2\mathcal L=\int_{k_0}^{k_1}\frac{\mathrm{d} k'}{\sqrt2\,k'}=\frac{\ln r}{\sqrt2} である。近似は L2/(2N)=(ln⁡r)2/(4N)=0.0480\mathcal L^2/(2N)=(\ln r)^2/(4N)=0.0480 nat で、厳密な 0.05030.0503 と5%ほどの差である。等比の段は Fisher 情報の長さで等間隔になるので、(3) で出た「等比が最良」は式 (4.1.22) の等号の条件と同じことを言っている。

(5) W[x]<ΔFeqW[x]<\Delta F_{\mathrm{eq}} は k1−k02x02<kBT2ln⁡r\frac{k_1-k_0}{2}x_0^2<\frac{ k_{\mathrm B} T}{2}\ln r、標準正規分布の変数 z=x0k0/kBTz=x_0\sqrt{k_0/ k_{\mathrm B} T} で書くと z2<ln⁡r/(r−1)=0.462z^2<\ln r/(r-1)=0.462 である。その確率は erf⁡(0.462/2)=0.503\operatorname{erf}\bigl(\sqrt{0.462/2}\bigr)=0.503 で、半分ほどの軌道で仕事が自由エネルギーの差より小さい。平均では ⟨W⟩≥ΔFeq\langle W \rangle \ge\Delta F_{\mathrm{eq}} が成り立つが、1本ごとには成り立たない。一方

⟨e−βW⟩=∫k02πkBT e−βk0x02/2 e−β(k1−k0)x02/2 dx0=k0k1=12\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =\int\sqrt{\frac{k_0}{2\pi k_{\mathrm B} T}}\,\mathrm{e}^{-\beta k_0x_0^2/2}\,\mathrm{e}^{-\beta(k_1-k_0)x_0^2/2}\,\mathrm{d} x_0=\sqrt{\frac{k_0}{k_1}}=\frac12

で、e−βΔFeq=r−1/2=12\mathrm{e}^{-\beta\Delta F_{\mathrm{eq}}}=r^{-1/2}=\frac12 に一致する。仕事の分布の形によらずこの等式が成り立つことが、次の章の Jarzynski の等式である。Jensen の不等式 ⟨e−βW⟩≥e−β⟨W⟩\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle \ge\mathrm{e}^{-\beta\langle W \rangle } と組み合わせると ⟨W⟩≥ΔFeq\langle W \rangle \ge\Delta F_{\mathrm{eq}} が出るので、この等式は第二法則より強い主張になっている。

木下の勉強ステータス

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