tecktom.com

比べる2つの分布:パラメータを少しずらした pθp_\theta と pθ+δp_{\theta+\delta}

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第7章 Fisher 情報と Cramér–Rao
目次
  1. パラメータの付いた分布の族
  2. スコア
  3. を2次まで展開する
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第7章 §1.7.1 ★★★ D(pθ ∥ pθ+δ)≈12J(θ)δ2D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})\approx\frac12J(\theta)\delta^2 が Fisher 情報の定義であり、章の出発点

この章で比べる2つの分布は、同じ形の分布の族の中で、パラメータの値だけをわずかに変えた pθp_\theta と pθ+δp_{\theta+\delta} である。第1部第3章(第1部第3章)で定めた相対エントロピー D(p ∥ q)D(p\,\|\,q) は、2つの分布がどれだけ見分けやすいかを測る量であった。δ\delta が小さいとき D(pθ ∥ pθ+δ)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta}) は δ2\delta^2 に比例し、その係数の2倍が Fisher 情報 J(θ)J(\theta) になる。つまり Fisher 情報は、パラメータを少し動かしたときに分布がどれだけ見分けやすくなるかを表す数である。

DD の性質を当てると、Fisher 情報の性質が順に出てくる。非負性からは J(θ)≥0J(\theta)\ge0 が、独立な観測で DD が足し算になることからはnn 回の観測で Fisher 情報が nn 倍になることが、データ処理不等式(第1部第4章)からは、データを加工するとFisher 情報が減り、十分統計量なら減らないことが従う。そのうえで、パラメータを推定する人がどれだけ精度よく推定できるかに下限があること(Cramér–Rao の不等式)、観測の回数が多いとき最尤推定がその下限に達すること、統計力学のカノニカル分布では Fisher 情報がエネルギーの揺らぎ、したがって熱容量そのものになることを示す。最後に、統計学の教科書や実験データの解析で習う形と、この章の形を並べる。

パラメータの付いた分布の族

コインの表が出る確率 θ\theta、正規分布の平均 θ\theta、指数分布の速さ θ\theta のように、1つの実数 θ\theta を決めると分布が1つ決まる族 {pθ}\{p_\theta\} を考える。確率変数 XX の値 xx における確率(連続なら確率密度)を

pθ(x)≡p(x;θ)(1.7.1)p_\theta(x)\equiv p(x;\theta)\tag{1.7.1}

と書き、pθp_\theta のもとでの平均を ⟨f⟩θ=∑xp(x;θ)f(x)\langle f \rangle _\theta=\sum_xp(x;\theta)f(x)、分散を Varθ(f)\mathrm{Var}_\theta(f) と書く。和は XX が連続なら積分 ∫dx\int\mathrm{d} x に読み替える。θ\theta を知らない人が XX の値を見て θ\theta を当てる問題を推定と呼ぶ。

この章を通して次の正則条件を仮定する。第一に、p(x;θ)>0p(x;\theta)>0 となる xx の範囲(台)が θ\theta によらない。第二に、p(x;θ)p(x;\theta) は θ\theta について3回微分でき、θ\theta での微分と xx についての和(積分)の順序を入れ替えてよい。第三に、後で定める J(θ)J(\theta) が正で有限である。第一の条件が成り立たない例(一様分布 [0,θ][0,\theta])は 1.7.3 節で扱う。

スコア

対数をとった確率の θ\theta 微分

sθ(x)≔∂∂θln⁡p(x;θ)=∂θp(x;θ)p(x;θ)(1.7.2)s_\theta(x)\coloneqq\frac{\partial }{\partial \theta}\ln p(x;\theta)=\frac{\partial_\theta p(x;\theta)}{p(x;\theta)}\tag{1.7.2}

をスコアと呼ぶ。xx を観測した人から見て、θ\theta を増やすと xx の確率が相対的にどれだけ増えるかを表す。スコアの平均は 0 になる。実際、規格化 ∑xp(x;θ)=1\sum_xp(x;\theta)=1 を θ\theta で微分すると

0=∑x∂θp(x;θ)=∑xp(x;θ) sθ(x)=⟨sθ⟩θ(1.7.3)0=\sum_x\partial_\theta p(x;\theta)=\sum_xp(x;\theta)\,s_\theta(x)=\langle s_\theta \rangle _\theta\tag{1.7.3}

となる。ここで正則条件の第二(微分と和の交換)と第一(和の範囲が θ\theta によらない)を使った。

DD を2次まで展開する

D(pθ ∥ pθ+δ)=∑xp(x;θ)[ln⁡p(x;θ)−ln⁡p(x;θ+δ)]D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=\sum_xp(x;\theta)\bigl[\ln p(x;\theta)-\ln p(x;\theta+\delta)\bigr] の ln⁡p(x;θ+δ)\ln p(x;\theta+\delta) をδ\delta について Taylor 展開すると

ln⁡p(x;θ+δ)=ln⁡p(x;θ)+δ sθ(x)+δ22 ∂θsθ(x)+O(δ3)\ln p(x;\theta+\delta)=\ln p(x;\theta)+\delta\,s_\theta(x)+\frac{\delta^2}{2}\,\partial_\theta s_\theta(x)+\mathcal{O}(\delta^3)

である。これを代入し、式 (1.7.3) で1次の項を消すと

D(pθ ∥ pθ+δ)=−δ22⟨∂θsθ⟩θ+O(δ3)(1.7.4)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=-\frac{\delta^2}{2}\langle \partial_\theta s_\theta \rangle _\theta+\mathcal{O}(\delta^3)\tag{1.7.4}

を得る。0次の項は D(pθ ∥ pθ)=0D(p_\theta\,\|\,p_\theta)=0 で、1次の項は DD が δ=0\delta=0 で最小値 0 をとることと合っている。2次の係数に現れた −⟨∂θsθ⟩θ-\langle \partial_\theta s_\theta \rangle _\theta はスコアの2乗の平均に等しい。式 (1.7.3) をもう一度 θ\theta で微分すると

0=∂θ∑xp sθ=∑x(∂θp)sθ+∑xp ∂θsθ=⟨sθ2⟩θ+⟨∂θsθ⟩θ0=\partial_\theta\sum_xp\,s_\theta=\sum_x\bigl(\partial_\theta p\bigr)s_\theta+\sum_xp\,\partial_\theta s_\theta=\langle s_\theta^2 \rangle _\theta+\langle \partial_\theta s_\theta \rangle _\theta

となるからである(∂θp=p sθ\partial_\theta p=p\,s_\theta を使った)。

定義 1.7.1(Fisher 情報)

正則な族 {pθ}\{p_\theta\} のFisher 情報を

J(θ)≔⟨sθ2⟩θ=⟨(∂∂θln⁡p(X;θ))2⟩θ=−⟨∂2∂θ2ln⁡p(X;θ)⟩θ(1.7.5)J(\theta)\coloneqq\langle s_\theta^2 \rangle _\theta=\langle \Bigl(\frac{\partial }{\partial \theta}\ln p(X;\theta)\Bigr)^2 \rangle _\theta=-\langle \frac{\partial^2}{\partial\theta^2}\ln p(X;\theta) \rangle _\theta\tag{1.7.5}

で定める。スコアの平均が 0 なので、J(θ)=Varθ(sθ)J(\theta)=\mathrm{Var}_\theta(s_\theta) でもある。

Fisher 情報は DD の2次の係数

式 (1.7.4) と定義 1.7.1 を合わせると

D(pθ ∥ pθ+δ)=12J(θ) δ2+O(δ3)(1.7.6)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=\frac12J(\theta)\,\delta^2+\mathcal{O}(\delta^3)\tag{1.7.6}

である。逆向きの D(pθ+δ ∥ pθ)D(p_{\theta+\delta}\,\|\,p_\theta) も同じ 12J(θ)δ2\frac12J(\theta)\delta^2 で始まり、2つの向きは δ3\delta^3 の項で初めて違う(例題 1.7.1)。DD は対称でないが、近くの2点の間では対称な2次形式になる。

名前は R. A. Fisher に由来する。Fisher はスコアの2乗の平均を推定の精度を測る量として導入した(R. A. Fisher (1925), Proc. Cambridge Philos. Soc. 22, 700–725)。DD を2つの分布の見分けやすさとして定式化したのは S. Kullback と R. A. Leibler である(S. Kullback and R. A. Leibler (1951), Ann. Math. Statist. 22, 79–86)。統計学の教科書では Fisher 情報を I(θ)I(\theta) と書くが、この巻では II を相互情報量に使うので J(θ)J(\theta) と書く。

図

図 1.7.1 Bernoulli 分布(表の確率 θ=0.3\theta=0.3)で、表の確率を θ+δ\theta+\delta にずらした分布との相対エントロピー。点線と点は厳密な値、実線は2次の近似 12Jδ2\frac12J\delta^2(J=1/(0.3×0.7)J=1/(0.3\times0.7))。∣δ∣≲0.1\lvert \delta\rvert \lesssim0.1 では2つはほぼ重なり、離れると3次の項のために左右が非対称になる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの δJ(θ)→0\delta\sqrt{J(\theta)}\to0(パラメータのずれが小さい) | 証明 条件付き(pp が θ\theta について3回微分でき、微分と和を交換できる。剰余は O(δ3)\mathcal{O}(\delta^3)) | 行き先 近似の数理 第1章

例題 1.7.1 Bernoulli 分布の Fisher 情報と DD の向き ★★

オリジナル序章の例題 1.1.3 で J=1/(θ(1−θ))J=1/(\theta(1-\theta)) と 12Jδ2\frac12J\delta^2 の一致を見た。ここでは3次の係数まで調べる。表が確率 θ\theta で出るコイン(x=1x=1 が表、x=0x=0 が裏)を考える。

  1. スコア sθ(x)s_\theta(x) と Fisher 情報 J(θ)J(\theta) を求めよ。
  2. D(pθ ∥ pθ+δ)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta}) と D(pθ+δ ∥ pθ)D(p_{\theta+\delta}\,\|\,p_\theta) を δ\delta の3次まで展開し、2次の係数が等しく3次の係数が違うことを示せ。
  3. θ=0.3\theta=0.3、δ=0.05\delta=0.05 で2つの DD と 12Jδ2\frac12J\delta^2 の値を比べよ。
解答

(1) ln⁡p(x;θ)=xln⁡θ+(1−x)ln⁡(1−θ)\ln p(x;\theta)=x\ln\theta+(1-x)\ln(1-\theta) なので sθ(x)=xθ−1−x1−θ=x−θθ(1−θ)s_\theta(x)=\dfrac{x}{\theta}-\dfrac{1-x}{1-\theta}=\dfrac{x-\theta}{\theta(1-\theta)} である。⟨(X−θ)2⟩θ=θ(1−θ)\langle (X-\theta)^2 \rangle _\theta=\theta(1-\theta) を使うと

J(θ)=θ(1−θ)θ2(1−θ)2=1θ(1−θ)J(\theta)=\frac{\theta(1-\theta)}{\theta^2(1-\theta)^2}=\frac{1}{\theta(1-\theta)}

となる。θ\theta が 0 か 1 に近いほど JJ は大きい。表がほとんど出ないコインでは、表の確率がわずかに変わっただけでも表の出る頻度の比が大きく変わり、見分けやすいからである。

(2) D(pθ ∥ pθ+δ)=θln⁡θθ+δ+(1−θ)ln⁡1−θ1−θ−δD(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=\theta\ln\frac{\theta}{\theta+\delta}+(1-\theta)\ln\frac{1-\theta}{1-\theta-\delta} を展開すると

D(pθ ∥ pθ+δ)=δ22θ(1−θ)−(1−2θ) δ33θ2(1−θ)2+O(δ4)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=\frac{\delta^2}{2\theta(1-\theta)}-\frac{(1-2\theta)\,\delta^3}{3\theta^2(1-\theta)^2}+\mathcal{O}(\delta^4)

となり、逆向きは

D(pθ+δ ∥ pθ)=δ22θ(1−θ)−(1−2θ) δ36θ2(1−θ)2+O(δ4)D(p_{\theta+\delta}\,\|\,p_\theta)=\frac{\delta^2}{2\theta(1-\theta)}-\frac{(1-2\theta)\,\delta^3}{6\theta^2(1-\theta)^2}+\mathcal{O}(\delta^4)

となる。2次の係数はどちらも 12J(θ)\frac12J(\theta) で、3次の係数は2倍違う(θ=12\theta=\frac12 のときだけ3次の項が両方消える)。

(3) J=1/0.21=4.762J=1/0.21=4.762 なので 12Jδ2=5.95×10−3\frac12J\delta^2=5.95\times10^{-3} である。厳密な値は D(p0.3 ∥ p0.35)=5.63×10−3D(p_{0.3}\,\|\,p_{0.35})=5.63\times10^{-3}、D(p0.35 ∥ p0.3)=5.78×10−3D(p_{0.35}\,\|\,p_{0.3})=5.78\times10^{-3} で、どちらも2次の近似と5%程度の差に収まる。差は (2) の3次の項でほぼ説明でき、たとえば前者は 5.95×10−3−3.02×0.053=5.57×10−35.95\times10^{-3}-3.02\times0.05^3=5.57\times10^{-3} となる。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ