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当てる D の性質:対数比の指数平均は 1

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第2章 ゆらぎの定理
目次
  1. 積分ゆらぎの定理
  2. 詳細ゆらぎの定理
  3. 初めの分布の2つの選び方
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第2章 §4.2.2 ★★★ Σ=ln⁡(P/P~)\Sigma=\ln(P/\tilde P) の指数平均は P~\tilde P の規格化だけから 1 になる。Jensen の不等式を当てた ⟨Σ⟩=D(P ∥ P~)≥0\langle \Sigma \rangle =D(P\,\|\,\tilde P)\ge0 より強い等式

積分ゆらぎの定理

前向きの経路の確率と逆回しの経路の確率の対数比を

Σ[Γ]≔ln⁡P[Γ]P~[Γ~]=ln⁡p0(x0)p~0(xN)−βQ[Γ](4.2.10)\Sigma[\Gamma]\coloneqq\ln\frac{P[\Gamma]}{\tilde P[\tilde\Gamma]}=\ln\frac{p_0(x_0)}{\tilde p_0(x_N)}-\beta Q[\Gamma]\tag{4.2.10}

と定める。2つ目の等号は定理 4.2.2 である。Σ\Sigma は経路ごとに値が決まる確率変数で、その PP による平均は

⟨Σ⟩P=∑ΓP[Γ]ln⁡P[Γ]P~[Γ~]=D(P ∥ P~)\langle \Sigma \rangle _P=\sum_\Gamma P[\Gamma]\ln\frac{P[\Gamma]}{\tilde P[\tilde\Gamma]}=D(P\,\|\,\tilde P)

となり、経路の空間の上の2つの分布の相対エントロピーそのものである(経路を逆にたどる写像 Γ↦Γ~\Gamma\mapsto\tilde\Gamma は経路の集合の上の全単射なので、P~\tilde P を Γ\Gamma の分布とみなしてよい)。相対エントロピーの非負性(第1部第3章)は、ln⁡\ln が上に凸であることを PP による平均に当てはめて示した。そこで使った等式を、ここでは不等式にする前の形で取り出す。

定理 4.2.3(積分ゆらぎの定理 ★★★)

P~[Γ~]>0\tilde P[\tilde\Gamma]>0 ならば P[Γ]>0P[\Gamma]>0 であるとする(逆回しで起こる経路は、前向きでも起こる)。このとき

⟨e−Σ⟩P=1.(4.2.11)\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle _P=1.\tag{4.2.11}

証明

P[Γ]>0P[\Gamma]>0 の経路だけで和をとると ⟨e−Σ⟩P=∑P[Γ]>0P[Γ] P~[Γ~]/P[Γ]=∑P[Γ]>0P~[Γ~]\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle _P=\sum_{P[\Gamma]>0}P[\Gamma]\,\tilde P[\tilde\Gamma]/P[\Gamma]=\sum_{P[\Gamma]>0}\tilde P[\tilde\Gamma] である。仮定から P~[Γ~]>0\tilde P[\tilde\Gamma]>0 の経路はすべてこの和に入るので、和は P~\tilde P の全確率 11 に等しい。

この等式から3つのことが直ちに出る。第一に、e−s\mathrm{e}^{-s} が下に凸なので Jensen の不等式から e−⟨Σ⟩≤⟨e−Σ⟩=1\mathrm{e}^{-\langle \Sigma \rangle }\le\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =1、すなわち

⟨Σ⟩P=D(P ∥ P~)≥0(4.2.12)\langle \Sigma \rangle _P=D(P\,\|\,\tilde P)\ge0\tag{4.2.12}

で、これは相対エントロピーの非負性である。第二に、Σ\Sigma は負の値もとりうる。平均が 11 の正の量 e−Σ\mathrm{e}^{-\Sigma} が 11 より大きい値(Σ<0\Sigma<0)を一度もとらないなら、平均が 11 になるには e−Σ=1\mathrm{e}^{-\Sigma}=1 でなければならない。つまり Σ≡0\Sigma\equiv0 でない限り、Σ<0\Sigma<0 となる経路は必ず正の確率で起こる。第三に、負の側の大きなずれは指数的に稀である。Markov の不等式 Pr⁡(Y≥c)≤⟨Y⟩/c\Pr(Y\ge c)\le\langle Y \rangle /c を Y=e−ΣY=\mathrm{e}^{-\Sigma}、c=eac=\mathrm{e}^a に当てると

Pr⁡(Σ≤−a)≤e−a(a>0)(4.2.13)\Pr(\Sigma\le-a)\le\mathrm{e}^{-a}\qquad(a>0)\tag{4.2.13}

を得る。

前提の「逆回しで起こる経路は前向きでも起こる」

定理 4.2.3 の仮定が破れると、和から P~\tilde P の一部が漏れて ⟨e−Σ⟩P<1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle _P<1 になる。前向きを確実に1つの状態から始めたときが典型で、逆回しでその状態以外に戻る経路には前向きの相手がない。このとき ⟨e−Σ⟩P=1−λai\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle _P=1-\lambda_{\mathrm{ai}} で、λai\lambda_{\mathrm{ai}} は相手のない逆回しの経路の確率の合計である(Murashita・Funo・Ueda(2014)、Phys. Rev. E 90、042110 は、これを絶対不可逆性と呼んだ)。非負性 (4.2.12) の方は、この場合も成り立つ(例題 4.2.2 (2))。

詳細ゆらぎの定理

逆回しの操作の側でも、前向きを参照にとって Σ~[Γ~]≔ln⁡(P~[Γ~]/P[Γ])\tilde\Sigma[\tilde\Gamma]\coloneqq\ln(\tilde P[\tilde\Gamma]/P[\Gamma]) を定める。逆回しのさらに逆回しは前向きなので、Σ~[Γ~]=−Σ[Γ]\tilde\Sigma[\tilde\Gamma]=-\Sigma[\Gamma] である。Σ\Sigma の値の分布を P(Σ=s)P(\Sigma=s)、Σ~\tilde\Sigma の値の分布を P~(Σ~=s)\tilde P(\tilde\Sigma=s) と書く。

定理 4.2.4(詳細ゆらぎの定理 ★★★)

定理 4.2.3 と同じ仮定のもとで、P(Σ=s)>0P(\Sigma=s)>0 となる値 ss について

P(Σ=s)P~(Σ~=−s)=es.(4.2.14)\frac{P(\Sigma=s)}{\tilde P(\tilde\Sigma=-s)}=\mathrm{e}^{s}.\tag{4.2.14}

証明

Σ[Γ]=s\Sigma[\Gamma]=s となる経路の集合を AsA_s とすると、Σ~[Γ~]=−s\tilde\Sigma[\tilde\Gamma]=-s となる逆回しの経路の集合は {Γ~:Γ∈As}\{\tilde\Gamma:\Gamma\in A_s\} である。AsA_s の各経路で P[Γ]=esP~[Γ~]P[\Gamma]=\mathrm{e}^{s}\tilde P[\tilde\Gamma] なので、和をとると P(Σ=s)=∑AsP[Γ]=es∑AsP~[Γ~]=es P~(Σ~=−s)P(\Sigma=s)=\sum_{A_s}P[\Gamma]=\mathrm{e}^{s}\sum_{A_s}\tilde P[\tilde\Gamma]=\mathrm{e}^s\,\tilde P(\tilde\Sigma=-s) である。

式 (4.2.14) の分母を払って ss について和をとると、式 (4.2.11) に戻る。詳細ゆらぎの定理は、積分ゆらぎの定理を Σ\Sigma の値ごとに分けたものである。

初めの分布の2つの選び方

Σ\Sigma の意味は、逆回しの初めの分布 p~0\tilde p_0 の選び方で決まる。この章で使う選び方は2つある。

(a) 逆回しを前向きの終わりの分布から始める。 p~0=pN\tilde p_0=p_N(前向きの NN 歩後の分布)とすると、式 (4.2.10) は

Σ[Γ]=[−ln⁡pN(xN)]−[−ln⁡p0(x0)]+(−βQ[Γ])(4.2.15)\Sigma[\Gamma]=\bigl[-\ln p_N(x_N)\bigr]-\bigl[-\ln p_0(x_0)\bigr]+\bigl(-\beta Q[\Gamma]\bigr)\tag{4.2.15}

となる。−ln⁡pn(xn)-\ln p_n(x_n) は、その時刻に系が実際にいる状態の驚き(第1部第2章)で、pnp_n で平均すると系の Shannon エントロピー H(pn)H(p_n) になる。したがって Σ\Sigma は、1本の経路について「系のエントロピーの変化」と「熱浴のエントロピーの変化」を足したもの、すなわち全エントロピー生成である(Seifert(2005)、Phys. Rev. Lett. 95、040602)。式 (4.2.11) はどんな初めの分布・どんなプロトコルでも成り立つ。

(b) 両方を平衡分布から始める。 p0=pλ0eqp_0=p^{\mathrm{eq}}_{\lambda_0}、p~0=pλNeq\tilde p_0=p^{\mathrm{eq}}_{\lambda_N} とすると、ln⁡pλeq(x)=−β[Ex(λ)−F(λ)]\ln p^{\mathrm{eq}}_\lambda(x)=-\beta[E_x(\lambda)-F(\lambda)] と第一法則 (4.2.3) から

Σ[Γ]=−β[Ex0(λ0)−F(λ0)]+β[ExN(λN)−F(λN)]−βQ[Γ]=β(W[Γ]−ΔF)(4.2.16)\Sigma[\Gamma]=-\beta\bigl[E_{x_0}(\lambda_0)-F(\lambda_0)\bigr]+\beta\bigl[E_{x_N}(\lambda_N)-F(\lambda_N)\bigr]-\beta Q[\Gamma]=\beta\bigl(W[\Gamma]-\Delta F\bigr)\tag{4.2.16}

になる。ΔF≔F(λN)−F(λ0)\Delta F\coloneqq F(\lambda_N)-F(\lambda_0) である。W−ΔFW-\Delta F は、可逆な操作で済む仕事 ΔF\Delta F を超えて余分にした仕事で、散逸仕事と呼ぶ。前向きの終わりの分布は一般に pλNeqp^{\mathrm{eq}}_{\lambda_N} ではないが、(b) の p~0\tilde p_0 は終わりの分布と無関係に決めた参照の分布なので、それで構わない。(b) の選び方が次の2節の Crooks の定理と Jarzynski 等式を与える。

平均 ⟨Σ⟩=D(P ∥ P~)\langle \Sigma \rangle =D(P\,\|\,\tilde P) を「エントロピー生成」の定義として採り、それが系と熱浴の何の情報を測っているか、粗視化でどう減るかを調べることは、次の章 第4部第3章 の主題である。この章は、平均だけでなく分布全体について成り立つ等式 (4.2.11)・(4.2.14) から何が出るかに集中する。

例題 4.2.2 1歩の緩和で Σ\Sigma の分布を数える ★★

オリジナル状態 x∈{0,1}x\in\{0,1\} のエネルギーを E0=0E_0=0、E1=εE_1=\varepsilon(固定、βε=ln⁡3\beta\varepsilon =\ln3)とし、熱浴との1回の遷移で系は完全に緩和する:K(y ∣ x)=π(y)K(y\,|\,x)=\pi(y)、π≔peq=(3/4, 1/4)\pi\coloneqq p^{\mathrm{eq}}=(3/4,\,1/4)。1歩だけ進め、逆回しは前向きの終わりの分布から始める(選び方 (a))。

  1. 初めの分布を p0=(1/2, 1/2)p_0=(1/2,\,1/2) とする。4本の経路 (x0,x1)(x_0,x_1) の Σ\Sigma を求め、⟨e−Σ⟩=1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =1、⟨Σ⟩=D(p0 ∥ π)\langle \Sigma \rangle =D(p_0\,\|\,\pi)、式 (4.2.14) を確かめよ。Σ<0\Sigma<0 となる確率はいくらか。
  2. 初めの分布を p0=(1, 0)p_0=(1,\,0) とすると、⟨e−Σ⟩\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle と ⟨Σ⟩\langle \Sigma \rangle はいくらか。
解答

(1) K(y ∣ x)=π(y)K(y\,|\,x)=\pi(y) は詳細つり合い π(y)π(x)=π(x)π(y)\pi(y)\pi(x)=\pi(x)\pi(y) を満たす。1歩後の分布は p1=πp_1=\pi である。経路 (x0,x1)(x_0,x_1) の確率は P=p0(x0)π(x1)P=p_0(x_0)\pi(x_1)、逆回しは P~=p1(x1)π(x0)=π(x1)π(x0)\tilde P=p_1(x_1)\pi(x_0)=\pi(x_1)\pi(x_0) なので

Σ(x0,x1)=ln⁡p0(x0)π(x0)=ln⁡12π(x0),Σ=ln⁡23=−0.405 (x0=0),Σ=ln⁡2=0.693 (x0=1)\Sigma(x_0,x_1)=\ln\frac{p_0(x_0)}{\pi(x_0)}=\ln\frac{1}{2\pi(x_0)},\qquad \Sigma=\ln\tfrac23=-0.405\ (x_0=0),\quad \Sigma=\ln2=0.693\ (x_0=1)

で、x1x_1 によらない。式 (4.2.15) の形で見ると、経路 (0,1)(0,1) では系の驚きが ln⁡2\ln2 から ln⁡4\ln4 に増え、熱 ε\varepsilon を吸うので熱浴のエントロピーが ln⁡3\ln3 減り、合計は ln⁡2−ln⁡3=ln⁡23\ln2-\ln3=\ln\frac23 である。経路 (0,0)(0,0) では驚きが ln⁡2\ln2 から ln⁡43\ln\frac43 に減り、熱は 00 なので、やはり ln⁡23\ln\frac23 である。

⟨e−Σ⟩=12⋅32+12⋅12=1,⟨Σ⟩=12ln⁡23+12ln⁡2=12ln⁡43=0.144=D(p0 ∥ π).\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =\tfrac12\cdot\tfrac32+\tfrac12\cdot\tfrac12=1,\qquad \langle \Sigma \rangle =\tfrac12\ln\tfrac23+\tfrac12\ln2=\tfrac12\ln\tfrac43=0.144=D(p_0\,\|\,\pi).

逆回しの初めの分布は π\pi で、逆回しの経路 (x1,x0)(x_1,x_0) の終わりの状態 x0x_0 は π\pi に従うので、P~(Σ~=−Σ(x0))=π(x0)\tilde P(\tilde\Sigma=-\Sigma(x_0))=\pi(x_0) である。P(Σ=Σ(x0))=12P(\Sigma=\Sigma(x_0))=\frac12 との比は 1/(2π(x0))=eΣ(x0)1/(2\pi(x_0))=\mathrm{e}^{\Sigma(x_0)} で、式 (4.2.14) が成り立つ。Σ<0\Sigma<0 となるのは x0=0x_0=0 のときで、確率は 12\frac12 である。平均のエントロピー生成は正でも、半分の試行でエントロピーが減っている。上界 (4.2.13) は a=ln⁡32a=\ln\frac32 で e−a=23≥12\mathrm{e}^{-a}=\frac23\ge\frac12 を与え、成り立っている。

(2) p0=(1,0)p_0=(1,0) では x0=0x_0=0 だけが起こり、Σ=ln⁡1π(0)=ln⁡43=0.288\Sigma=\ln\frac{1}{\pi(0)}=\ln\frac43=0.288 である。⟨e−Σ⟩=π(0)=34<1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =\pi(0)=\frac34<1 で、等式 (4.2.11) は成り立たない。逆回しで終わりの状態が x0=1x_0=1 になる経路(確率 π(1)=14\pi(1)=\frac14)には前向きの相手がなく、それが漏れた分 λai=14\lambda_{\mathrm{ai}}=\frac14 である。⟨Σ⟩=ln⁡43=D((1,0) ∥ π)≥0\langle \Sigma \rangle =\ln\frac43=D\bigl((1,0)\,\|\,\pi\bigr)\ge0 は成り立つ。

木下の勉強ステータス

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