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出てくるもの (3):定常状態のゆらぎの定理

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第2章 ゆらぎの定理
目次
  1. 力で駆動された乱歩
  2. 一般の定常状態と長い時間の極限
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第2章 §4.2.5 ★★ λ\lambda を止めて非保存力で駆動し続ける系では、熱浴に捨てた熱の分布が P(Σ)/P(−Σ)=eΣP(\Sigma)/P(-\Sigma)=\mathrm{e}^\Sigma を満たす

力で駆動された乱歩

ここまでは λ\lambda を動かして仕事をした。もう1つの駆動のしかたは、λ\lambda を止めたまま、ポテンシャルで書けない力(輪に沿って回す力や、流れによる力)を加え続けることである。系は平衡に達せず、時間によらない非平衡定常状態に落ち着き、力のした仕事は熱として熱浴へ流れ続ける。

最も簡単な例は、間隔 aa の格子の上の乱歩に一定の力 ff を加えたものである。右に1歩進むと力は fafa の仕事をし、それは熱浴に捨てられるので、局所詳細つり合いは

r+r−=eβfa,r±=r e±βfa/2(4.2.25)\frac{r_+}{r_-}=\mathrm{e}^{\beta fa},\qquad r_\pm=r\,\mathrm{e}^{\pm\beta fa/2}\tag{4.2.25}

になる(r±r_\pm は右・左への跳びの単位時間あたりの率、r≔r+r−r\coloneqq\sqrt{r_+r_-})。時間 tt のあいだの正味の歩数を nn とすると、熱浴のエントロピーの増えは Σ=βfa n\Sigma=\beta fa\,n である。右に n+n_+ 回、左に n−n_- 回跳ぶ経路の確率は r+n+r−n−r_+^{n_+}r_-^{n_-} に比例し(待ち時間の因子は前向きと逆向きで等しい)、逆にたどった経路は右と左が入れ替わるので、比は (r+/r−)n+−n−=eβfa n(r_+/r_-)^{n_+-n_-}=\mathrm{e}^{\beta fa\,n} である。格子は並進について一様なので、初めの位置の分布の因子 ln⁡[p0(x0)/p~0(xt)]\ln[p_0(x_0)/\tilde p_0(x_t)] は現れない。したがって詳細ゆらぎの定理 (4.2.14) が、すべての時刻 tt で

P(n,t)P(−n,t)=eβfa n(4.2.26)\frac{P(n,t)}{P(-n,t)}=\mathrm{e}^{\beta fa\,n}\tag{4.2.26}

の形で成り立つ。逆回しの操作は前向きと同じ(λ\lambda が動かない)なので、分母も同じ分布 PP である。

実際、正味の歩数の分布は変形 Bessel 関数 InI_n を使って

P(n,t)=e−(r++r−)t(r+r−)n/2I∣n∣(2rt)(4.2.27)P(n,t)=\mathrm{e}^{-(r_++r_-)t}\Bigl(\frac{r_+}{r_-}\Bigr)^{n/2}I_{\lvert n\rvert }\bigl(2rt\bigr)\tag{4.2.27}

と書け(右と左の跳びの回数がそれぞれ独立な Poisson 分布に従うことから出る)、I∣n∣I_{\lvert n\rvert } は nn の符号によらないので、式 (4.2.26) がそのまま読める。

一般の定常状態と長い時間の極限

ポテンシャルに起伏のある輪の上を回る粒子のように、定常分布 pssp_{\mathrm{ss}} が一様でない系では、Σ\Sigma に境界の項 ln⁡[pss(x0)/pss(xt)]\ln[p_{\mathrm{ss}}(x_0)/p_{\mathrm{ss}}(x_t)] が加わる。熱浴のエントロピーの増え Σbath=−βQ\Sigma_{\mathrm{bath}}=-\beta Q だけを見ると、この項のために式 (4.2.26) は有限の時間では厳密でなくなる。境界の項は時間によらず有界なので、Σbath\Sigma_{\mathrm{bath}} が時間に比例して増える長い時間の極限では無視でき、

lim⁡t→∞1tln⁡P(Σbath=σt)P(Σbath=−σt)=σ(4.2.28)\lim_{t\to\infty}\frac1t\ln\frac{P(\Sigma_{\mathrm{bath}}=\sigma t)}{P(\Sigma_{\mathrm{bath}}=-\sigma t)}=\sigma\tag{4.2.28}

が成り立つ。母関数で書くと、スケールした母関数 Λ(s)≔lim⁡t→∞1tln⁡⟨e−sΣbath⟩\Lambda(s)\coloneqq\lim_{t\to\infty}\frac1t\ln\langle \mathrm{e}^{-s\Sigma_{\mathrm{bath}}} \rangle が対称性 Λ(s)=Λ(1−s)\Lambda(s)=\Lambda(1-s) を持つことと同じである。乱歩では Λ(s)=r+e−sβfa+r−esβfa−r+−r−\Lambda(s)=r_+\mathrm{e}^{-s\beta fa}+r_-\mathrm{e}^{s\beta fa}-r_+-r_- で、r±=re±βfa/2r_\pm=r\mathrm{e}^{\pm\beta fa/2} を入れると s→1−ss\to1-s で不変であることが確かめられる。

歴史の順に並べると、Evans・Cohen・Morriss(1993)、Phys. Rev. Lett. 71、2401 が剪断流の分子動力学の数値計算で式 (4.2.28) の形の対称性を見つけ、Gallavotti・Cohen(1995)、Phys. Rev. Lett. 74、2694 が決定論的なカオス力学系で示した。確率過程の場合は Kurchan(1998)、J. Phys. A 31、3719 とLebowitz・Spohn(1999)、J. Stat. Phys. 95、333 が示した。過渡的な(初めが平衡の)場合は Evans・Searles(1994)、Phys. Rev. E 50、1645 による。実験では、Wang ほか(2002)、Phys. Rev. Lett. 89、050601 が、光ピンセットで引いたコロイド粒子で、短い時間にエントロピー生成が負になる軌道の割合を測り、ゆらぎの定理と比べた。

例題 4.2.5 後ろに進む確率 ★★

オリジナル式 (4.2.25) の乱歩で βfa=1\beta fa=1、rt=2rt=2 とする。

  1. 正味の歩数の平均 ⟨n⟩\langle n \rangle と、平均のエントロピー生成 ⟨Σ⟩\langle \Sigma \rangle を求めよ。
  2. P(0,t)P(0,t)、Pr⁡(n>0)\Pr(n>0)、Pr⁡(n<0)\Pr(n<0)、P(1,t)/P(−1,t)P(1,t)/P(-1,t) を式 (4.2.27) から求めよ。
  3. ⟨e−Σ⟩=1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =1 を、母関数を使って一般の tt で示せ。
解答

(1) 右と左の跳びの回数の平均は r±tr_\pm t なので ⟨n⟩=(r+−r−)t=rt(e1/2−e−1/2)=2×1.042=2.084\langle n \rangle =(r_+-r_-)t=rt(\mathrm{e}^{1/2}-\mathrm{e}^{-1/2})=2\times1.042=2.084。⟨Σ⟩=βfa⟨n⟩=2.084\langle \Sigma \rangle =\beta fa\langle n \rangle =2.084 nat である。

(2) 式 (4.2.27) の和を数値で求めると、P(0,t)=0.124P(0,t)=0.124、Pr⁡(n>0)=0.774\Pr(n>0)=0.774、Pr⁡(n<0)=0.102\Pr(n<0)=0.102 である。P(1,t)=0.177P(1,t)=0.177、P(−1,t)=0.065P(-1,t)=0.065 で、比は e1=2.718\mathrm{e}^1=2.718 に等しい。各 nn で P(−n,t)=e−nP(n,t)≤e−1P(n,t)P(-n,t)=\mathrm{e}^{-n}P(n,t)\le\mathrm{e}^{-1}P(n,t) なので、和をとって Pr⁡(n<0)≤e−1Pr⁡(n>0)\Pr(n<0)\le\mathrm{e}^{-1}\Pr(n>0) でなければならず、実際 Pr⁡(n<0)/Pr⁡(n>0)=0.132≤0.368\Pr(n<0)/\Pr(n>0)=0.132\le0.368 である。平均 22 歩前に進む時間のあいだに、10 回に1回は後ろに進んでいる。

(3) 右と左の跳びの回数は平均 r±tr_\pm t の独立な Poisson 分布で、⟨e−βfa n⟩=⟨e−βfa n+⟩⟨eβfa n−⟩\langle \mathrm{e}^{-\beta fa\,n} \rangle =\langle \mathrm{e}^{-\beta fa\,n_+} \rangle \langle \mathrm{e}^{\beta fa\,n_-} \rangle である。Poisson 分布の母関数 ⟨ezN⟩=exp⁡[Nˉ(ez−1)]\langle \mathrm{e}^{zN} \rangle =\exp[\bar N(\mathrm{e}^z-1)] から

⟨e−Σ⟩=exp⁡[t(r+e−βfa+r−eβfa−r+−r−)]=exp⁡[t(r−+r+−r+−r−)]=1\langle \mathrm{e}^{-\Sigma} \rangle =\exp\Bigl[t\bigl(r_+\mathrm{e}^{-\beta fa}+r_-\mathrm{e}^{\beta fa}-r_+-r_-\bigr)\Bigr]=\exp\bigl[t(r_-+r_+-r_+-r_-)\bigr]=1

となる。r+e−βfa=r−r_+\mathrm{e}^{-\beta fa}=r_- と r−eβfa=r+r_-\mathrm{e}^{\beta fa}=r_+ は局所詳細つり合い (4.2.25) そのものである。

ほかの巻では

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