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この章で選ぶもの:複素の秩序変数とゲージ場の汎関数

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第6章 Ginzburg–Landau 理論と Meissner 効果
目次
  1. 秩序変数を複素数にする
  2. 勾配の項はゲージ不変でなければならない
  3. 作用との対応と、熱力学的な臨界磁場
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第6章 §5.6.1 ★★★ 位相の対称性を持つ Landau 関数に、ゲージ不変な勾配の項と磁場のエネルギーを足した汎関数を選ぶ

超伝導体を冷やして転移温度 TcT_{\mathrm c} を切ると、電気抵抗が消えるだけでなく、内部から磁場が押し出される。W. Meissner と R. Ochsenfeld(1933)は、磁場をかけたまま冷やした試料でも、転移の瞬間に内部の磁束が外へ出ることを測った(W. Meissner and R. Ochsenfeld (1933), Naturwissenschaften 21, 787)。抵抗が 00 の導体(完全導体)なら内部の磁場は冷やす前の値のまま凍りつくはずなので、磁場を追い出すという性質は「抵抗が無い」ことからは出てこない。この章では、この現象を第3部第10章の Landau 理論の延長として、自由エネルギーの汎関数を1つ選び、その停留点を調べることで導く。

選ぶのは、複素数の秩序変数 ψ(r)\psi(\bm{r}) とベクトルポテンシャル A(r)\bm{A}(\bm{r}) の汎関数

F[ψ,A]=∫d3r [12m∗∣(−iℏ∇−qA)ψ∣2+a∣ψ∣2+b2∣ψ∣4+∣∇×A∣22μ0](5.6.1)F[\psi,\bm{A}]=\int\mathrm{d}^3r\,\Bigl[\frac{1}{2m^*}\lvert (-\mathrm{i}\hbar\nabla-q\bm{A})\psi\rvert ^2+a\lvert \psi\rvert ^2+\frac b2\lvert \psi\rvert ^4+\frac{\lvert \nabla\times\bm{A}\rvert ^2}{2\mu_0}\Bigr]\tag{5.6.1}

である(V. L. Ginzburg and L. D. Landau (1950), Zh. Eksp. Teor. Fiz. 20, 1064)。第1項は第4部第6章の荷電粒子の運動エネルギー(p^−qA)2/(2m)(\hat{\bm{p}}-q\bm{A})^2/(2m) と同じ形で、第2・3項は第3部第10章の Landau 関数、第4項は磁場のエネルギーである。この汎関数は2つの対称性を持つ。全体の位相を一斉に回す ψ→eiαψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\alpha}\psi と、場所ごとに位相を回してベクトルポテンシャルをずらすゲージ変換である。

当てる道具は、複素場の Euler–Lagrange 方程式(第2部第5章)、端を固定しない変分の自然境界条件(第1部第4章)、場の Noether の定理(第2部第7章)、ゲージ不変性の扱い(第2部第8章)である。出てくるものは3つある。第一に、秩序変数の振幅がそろった内部で London 方程式が成り立ち、磁場が深さ λ\lambda までしか入らないこと(Meissner 効果)と、穴を貫く磁束が h/(2e)h/(2e) の整数倍に限られること(5.6.3節)。第二に、位相を消すようにゲージを選ぶと、ベクトルポテンシャルに Proca 型の質量の項が現れること(Anderson–Higgs 機構。5.6.4節)。第三に、振幅の変わる長さ ξ\xi と磁場の侵入長 λ\lambda の比 κ=λ/ξ\kappa=\lambda/\xi が 1/21/\sqrt2 より大きいか小さいかで、磁場を受け入れる仕方が2種類に分かれること(5.6.5節)。最後に、授業で習う London 兄弟の方程式と並べ(5.6.6節)、まとめと総合問題で終える。

記号の約束を書いておく。この章は第5部の章だが、扱うのは非相対論的な物質の中の場なので、単位は SI のまま書く(ℏ=c=1\hbar=c=1 にしない)。ψ\psi は量子力学の演算子でなく古典的な場(秩序変数)なので帽子は付けない。qq は秩序変数が持つ電荷で、超伝導体では電子2個の対(Cooper 対)の電荷 q=−2eq=-2e になる。m∗m^* はその質量、a,ba,b は Landau の展開係数(a=a0(T−Tc)a=a_0(T-T_{\mathrm c}), b>0b>0)である。λ\lambda は磁場の侵入長、ξ\xi はコヒーレンス長、κ=λ/ξ\kappa=\lambda/\xi は Ginzburg–Landau パラメータで、第3部第10章の勾配の係数 κ\kappa とは別のものである。Λ\Lambda はゲージ関数、Ba\bm{B}_{\mathrm a} は外からかけた磁場、Φ0=h/∣q∣\Phi_0=h/\lvert q\rvert は磁束の量子である。

秩序変数を複素数にする

第3部第10章の強磁性体では、秩序変数は実数の磁化 mm で、対称性は m→−mm\to-m だった。超伝導の秩序変数は、凝縮した Cooper 対全体を1つの波動関数とみなしたもので、∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 が対の密度に比例し、ψ\psi の位相 θ\theta が対の運動を表す。Cooper 対がなぜ作られるか(電子間の引力と BCS の平均場)は固体の巻で扱い(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部第4章)、この章では ψ\psi の存在と次の性質だけを使う。

物理的に意味のある量は ∣ψ∣\lvert \psi\rvert と位相の差・位相の勾配で、位相そのものの値は観測にかからない。量子力学で波動関数全体に eiα\mathrm{e}^{\mathrm{i}\alpha} を掛けても状態が変わらないのと同じで、自由エネルギーは全体の位相の回転 ψ→eiαψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\alpha}\psi で変わらない。この対称性は m→−mm\to-m(2つの元からなる群)と違って連続的な回転(U(1)U(1))である。Landau の議論をそのまま当てはめると、ψ\psi が小さい TcT_{\mathrm c} の近くで、一様な状態の自由エネルギー密度は ∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 の冪で展開でき

f(ψ)=fn+a∣ψ∣2+b2∣ψ∣4,a=a0(T−Tc),a0>0,b>0(5.6.2)f(\psi)=f_{\mathrm n}+a\lvert \psi\rvert ^2+\frac b2\lvert \psi\rvert ^4,\qquad a=a_0(T-T_{\mathrm c}),\quad a_0>0,\quad b>0\tag{5.6.2}

となる。fnf_{\mathrm n} は常伝導状態の自由エネルギー密度である。係数の書き方が第3部第10章の a2m2+b′4m4\frac a2m^2+\frac{b'}4m^4 と違うのは複素数の慣例に合わせたためで、ψ=m/2\psi=m/\sqrt2 と置けば a∣ψ∣2=a2m2a\lvert \psi\rvert ^2=\frac a2m^2、b2∣ψ∣4=b8m4\frac b2\lvert \psi\rvert ^4=\frac{b}{8}m^4 となり、第3部第10章の b′b' はここの b/2b/2 に当たる。

T<TcT<T_{\mathrm c} で a<0a<0 になると、最小点は ∣ψ∣2=−a/b\lvert \psi\rvert ^2=-a/b の円周上に並ぶ(図 5.6.1)。

∣ψ0∣2=−ab=a0(Tc−T)b,fs−fn=−a22b.(5.6.3)\lvert \psi_0\rvert ^2=-\frac ab=\frac{a_0(T_{\mathrm c}-T)}{b},\qquad f_{\mathrm s}-f_{\mathrm n}=-\frac{a^2}{2b}.\tag{5.6.3}

円周上のどの点も同じ自由エネルギーを持ち、系はそのうち1つの位相を選ぶ。強磁性体では2つの最小点のどちらかを選んだのに対し、ここでは連続的に並んだ最小点の1つを選ぶ。この違いは5.6.4節で、位相の揺らぎがどう振る舞うかの違いとして現れる。

図

図 5.6.1 Landau 関数 (5.6.2) を ψ\psi の実軸に沿って切ったもの(b=1b=1、a=0.5a=0.5 と a=−1a=-1)。ff は ∣ψ∣\lvert \psi\rvert だけの関数なので、実際の形はこの曲線を縦軸のまわりに回した回転面で、T<TcT<T_{\mathrm c} では最小点が半径 ∣ψ0∣=1\lvert \psi_0\rvert =1 の円周になる。

勾配の項はゲージ不変でなければならない

ψ\psi が場所によって変わるとき、第3部第10章と同じく勾配の2乗の項を足す。ただし ψ\psi は電荷 qq を持つ粒子の波動関数なので、勾配の項は ∣∇ψ∣2\lvert \nabla\psi\rvert ^2 ではなく、第4部第6章の最小結合(第4部第6章)の形

12m∗∣(−iℏ∇−qA)ψ∣2(5.6.4)\frac{1}{2m^*}\lvert (-\mathrm{i}\hbar\nabla-q\bm{A})\psi\rvert ^2\tag{5.6.4}

を取る。理由はゲージ不変性にある。ゲージ変換 A→A+∇Λ\bm{A}\to\bm{A}+\nabla\Lambda をすると、ψ→eiqΛ/ℏψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\psi と同時に変えれば(−iℏ∇−qA)ψ(-\mathrm{i}\hbar\nabla-q\bm{A})\psi は全体に位相 eiqΛ/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar} が掛かるだけになり(第2部第2章・第4部第6章で確かめた関係)、絶対値の2乗は変わらない。∣∇ψ∣2\lvert \nabla\psi\rvert ^2 のままでは、場所ごとに位相を回す変換で値が変わってしまう。場所ごとに位相を回しても物理が変わらないことを要求すると、勾配は必ずベクトルポテンシャルと組になって入る。これは第5部第5章のゲージ原理(第5部第5章)を、時間を含まない静的な場に当てはめたものである。

これに磁場のエネルギー ∣B∣2/(2μ0)\lvert \bm{B}\rvert ^2/(2\mu_0), B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A} を足して、式 (5.6.1) の汎関数(fnf_{\mathrm n} の分を除いたもの)を得る。外から磁場 Ba\bm{B}_{\mathrm a} をかけるとき(外部のコイルの電流を一定に保つとき)は、そのコイルが外へする仕事の分を引いた

G[ψ,A]=F[ψ,A]−1μ0∫d3r B⋅Ba(5.6.5)G[\psi,\bm{A}]=F[\psi,\bm{A}]-\frac{1}{\mu_0}\int\mathrm{d}^3r\,\bm{B}\cdot\bm{B}_{\mathrm a}\tag{5.6.5}

が最小になる量で、これは第3部第4章の Legendre 変換(第3部第4章)で FF から Gibbs 型のポテンシャルへ移ったものである。

作用との対応と、熱力学的な臨界磁場

この汎関数は、第2部第5章の場の Lagrangian 密度(第2部第5章)の静的な場合と同じ構造を持つ。時間変化しない場では Lagrangian はエネルギーの符号を変えたものになり、−L=∫[勾配の項+ポテンシャルの項]-L=\int[\text{勾配の項}+\text{ポテンシャルの項}] の停留点を探すことになる。第3部第10章と同じく、熱平衡でどの ψ(r)\psi(\bm{r}), A(r)\bm{A}(\bm{r}) が実現するかの重みは e−βF\mathrm{e}^{-\beta F} に比例し、最も重みの大きい配置は FF の停留点である。この章では停留点だけを調べ、まわりの揺らぎは5.6.5節の終わりで大きさを見積もるにとどめる。

一様な状態で磁場をかけたときを比べる。超伝導状態が磁場を完全に追い出すなら B=0\bm{B}=0 で Gs/V=fn−a2/(2b)G_{\mathrm s}/V=f_{\mathrm n}-a^2/(2b) である。常伝導状態(ψ=0\psi=0)は磁場をそのまま通すので B=Ba\bm{B}=\bm{B}_{\mathrm a} で Gn/V=fn+Ba2/(2μ0)−Ba2/μ0=fn−Ba2/(2μ0)G_{\mathrm n}/V=f_{\mathrm n}+B_{\mathrm a}^2/(2\mu_0)-B_{\mathrm a}^2/\mu_0=f_{\mathrm n}-B_{\mathrm a}^2/(2\mu_0) になる。2つが等しくなる外場を熱力学的な臨界磁場 BcB_{\mathrm c} と呼ぶ。

Bc22μ0=a22b,Bc=∣a∣μ0b=a0(Tc−T)μ0b.(5.6.6)\frac{B_{\mathrm c}^2}{2\mu_0}=\frac{a^2}{2b},\qquad B_{\mathrm c}=\lvert a\rvert \sqrt{\frac{\mu_0}{b}}=a_0(T_{\mathrm c}-T)\sqrt{\frac{\mu_0}{b}}.\tag{5.6.6}

Ba>BcB_{\mathrm a}>B_{\mathrm c} では磁場を追い出す損が凝縮で得をする分を上回り、超伝導は壊れる。凝縮で得をする自由エネルギー密度 a2/(2b)a^2/(2b) は、磁場のエネルギー密度という測定できる量で表すことができる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの (Tc−T)/Tc→0(T_{\mathrm c}-T)/T_{\mathrm c}\to0(秩序変数が小さく、空間変化が緩やか) | 証明 条件付き(BCS 汎関数から出発し、外場が長さ h−1h^{-1} の尺度でゆっくり変わり Tc−T∝h2T_{\mathrm c}-T\propto h^2 となる極限で、BCS の自由エネルギーが GL の値に収束する。R. L. Frank, C. Hainzl, R. Seiringer and J. P. Solovej (2012), J. Amer. Math. Soc. 25, 667) | 行き先 近似の数理 第6章

例題 5.6.1 比熱の跳びを臨界磁場の傾きで書く ★★

オリジナル式 (5.6.2) と式 (5.6.6) を使う。

  1. (1) TcT_{\mathrm c} での単位体積あたりの比熱の跳び ΔC=Cs−Cn\Delta C=C_{\mathrm s}-C_{\mathrm n} を a0,b,Tca_0,b,T_{\mathrm c} で表せ。
  2. (2) それを臨界磁場の傾き dBc/dT\mathrm{d} B_{\mathrm c}/\mathrm{d} T で書き直せ(Rutgers の式)。
  3. (3) Tc=7.0 KT_{\mathrm c}=7.0\,\mathrm K、dBc/dT=−0.020 T K−1\mathrm{d} B_{\mathrm c}/\mathrm{d} T=-0.020\,\mathrm{T\,K^{-1}} のとき ΔC\Delta C と、T=6.0 KT=6.0\,\mathrm K での凝縮エネルギー密度を求めよ(数値は仮のもの)。
解答

(1) T<TcT<T_{\mathrm c} で fs−fn=−a2/(2b)=−a02(T−Tc)2/(2b)f_{\mathrm s}-f_{\mathrm n}=-a^2/(2b)=-a_0^2(T-T_{\mathrm c})^2/(2b)。比熱は C=−T ∂2f/∂T2C=-T\,\partial^2f/\partial T^2(第3部第4章)なので、超伝導側にだけ −T⋅(−a02/b)=Ta02/b-T\cdot(-a_0^2/b)=Ta_0^2/b が加わる。TcT_{\mathrm c} で ΔC=Tca02/b\Delta C=T_{\mathrm c}a_0^2/b。第3部第10章の Tca02/(2b′)T_{\mathrm c}a_0^2/(2b') に b′=b/2b'=b/2 を入れたものと一致する。

(2) 式 (5.6.6) から dBc/dT=−a0μ0/b\mathrm{d} B_{\mathrm c}/\mathrm{d} T=-a_0\sqrt{\mu_0/b}、2乗して (dBc/dT)2=μ0a02/b(\mathrm{d} B_{\mathrm c}/\mathrm{d} T)^2=\mu_0a_0^2/b。よって

ΔC=Tcμ0(dBcdT)Tc2.\Delta C=\frac{T_{\mathrm c}}{\mu_0}\Bigl(\frac{\mathrm{d} B_{\mathrm c}}{\mathrm{d} T}\Bigr)^2_{T_{\mathrm c}}.

Landau の係数は直接は測れないが、右辺は磁場の測定だけで決まり、左辺は熱量の測定で決まる。2つの別々の測定が1つの式で結ばれる。

(3) ΔC=7.0×(0.020)2/(4π×10−7)=2.23×103 J K−1 m−3\Delta C=7.0\times(0.020)^2/(4\pi\times10^{-7})=2.23\times10^{3}\,\mathrm{J\,K^{-1}\,m^{-3}}。T=6.0 KT=6.0\,\mathrm K では Bc=0.020×1.0=0.020 TB_{\mathrm c}=0.020\times1.0=0.020\,\mathrm T で、凝縮エネルギー密度は Bc2/(2μ0)=159 J m−3B_{\mathrm c}^2/(2\mu_0)=159\,\mathrm{J\,m^{-3}}。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第13章:BCS 汎関数から GL 汎関数が出ることの数学的な状況を、くりこみ群の厳密化と並べて述べる

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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