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この章で選ぶ L\mathcal L:位相の対称性を各点ごとにとる

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第5章 ゲージ原理と QED
目次
  1. 大域的な位相の対称性
  2. 局所化すると何が壊れるか
  3. 補う場と共変微分
  4. 場そのものの項
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第5章 §5.5.1 ★★★ 自由な Dirac 場の位相の対称性を局所化すると ∂μΛ\partial_\mu\Lambda の項が残り、それを打ち消す AμA_\mu と共変微分が要る。ゲージ不変で次元4以下の項を集めたものが QED の L\mathcal L

第5部第4章では、Dirac 場の Lagrangian 密度 ψˉ(iγμ∂μ−m)ψ\bar\psi(\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu-m)\psi を選び、電磁場との結合は微分を Dμ=∂μ+iqAμD_\mu=\partial_\mu+\mathrm{i} qA_\mu に置き換える最小結合として「仮定」した。第2部第8章では、電磁場の作用がゲージ変換 Aμ→Aμ−∂μΛA_\mu\to A_\mu-\partial_\mu\Lambda で変わらないことを、Noether の第2定理を通して電荷の保存と結びつけた。この章では順序を逆にする。物質の場の位相の対称性を、時空の各点で独立にとってもよいと要請する。この要請は自由な Dirac 場だけでは満たせず、満たすためには変換に合わせて動く4元ベクトルの場が必要になる。その場が電磁場で、結合の形は最小結合に決まる。これをゲージ原理と呼ぶ。こうして選ばれた Lagrangian 密度が量子電気力学(QED)の L\mathcal L である。

出てくるものは3つある。1つ目は Dirac 場の量子化で、第5部第4章で残った負のエネルギーの解は、場の演算子に交換関係でなく反交換関係を課すときに限り、正のエネルギーの反粒子(陽電子)として読み直せる。2つ目は Coulomb 力で、Gauss の法則という拘束を解くと電荷どうしの瞬間的な相互作用が Hamiltonian に現れ、同符号の電荷は反発する。質量のあるスカラー場を交換する場合と比べると、引力と斥力の違いが場の Lagrangian 密度の符号の違いとして読める。3つ目は、共変微分の交換子が場の強さ FμνF_{\mu\nu} になるという関係で、これを位相の群を非可換に広げると Yang–Mills 場が得られ、第2部第14章の曲率と同じ形の式になる。最後に、原子物理や量子光学の授業で使う Coulomb ゲージの Hamiltonian と、この章の L\mathcal L を並べる。

この章では ℏ=c=1\hbar=c=1 とする(数値を出すときと5.5.6節では SI に戻す)。電磁場は Heaviside–Lorentz の単位で書き、ε0=1\varepsilon_0=1 に当たる約束で LEM=−14FμνFμν\mathcal L_{\mathrm{EM}}=-\frac14F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}、Maxwell 方程式は ∂μFμν=jν\partial_\mu F^{\mu\nu}=j^\nu、微細構造定数は α=q2/(4π)\alpha=q^2/(4\pi)(電子では e2/(4π)e^2/(4\pi))になる。この章では演算子の帽子を省く。電荷は qq と書き、電子は q=−eq=-e(e>0e>0)とする。計量は ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1)、xμ=(t,x)x^\mu=(t,\bm{x})、Aμ=(A0,A)A^\mu=(A^0,\bm{A}) で、5.5.4節と総合問題ではスカラー場に ϕ\phi を使うので、スカラーポテンシャルは A0A^0 と書く。

この節では ℏ=c=1\hbar=c=1 とする。

大域的な位相の対称性

自由な Dirac 場の Lagrangian 密度は

LD=ψˉ(iγμ∂μ−m)ψ,ψˉ≔ψ†γ0(5.5.1)\mathcal L_{\mathrm D}=\bar\psi(\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu-m)\psi,\qquad \bar\psi\coloneqq\psi^\dagger\gamma^0\tag{5.5.1}

である(第5部第4章)。定数 Λ\Lambda を選んで ψ→eiqΛψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\psi とすると、ψˉ→e−iqΛψˉ\bar\psi\to\mathrm{e}^{-\mathrm{i} q\Lambda}\bar\psi なのでLD\mathcal L_{\mathrm D} は変わらない。qq はここではただの定数で、後で電荷と読むことになる。Λ\Lambda を時空のどこでも同じ値にとるので、この変換を大域的な位相変換と呼ぶ。第2部第7章の場の Noether の定理を当てると、この対称性から保存する流れ jμ=qψˉγμψj^\mu=q\bar\psi\gamma^\mu\psi が出る(次の節で確かめる)。

局所化すると何が壊れるか

量子力学では、波動関数の全体の位相は観測にかからない。しかし大域的な変換は、宇宙のすべての点で同時に同じだけ位相を回すことを要求する。位相の取り決めを場所ごとに勝手に決めてよいという立場をとると、Λ\Lambda を時空の関数 Λ(x)\Lambda(x) にした変換

ψ(x)→eiqΛ(x)ψ(x)(5.5.2)\psi(x)\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda(x)}\psi(x)\tag{5.5.2}

でも理論が変わらないことを要求することになる。この変換を局所的な位相変換、またはゲージ変換と呼ぶ。この名前は第2部第8章の Aμ→Aμ−∂μΛA_\mu\to A_\mu-\partial_\mu\Lambda と同じ Λ\Lambda を使うことを先取りしている。

質量項 mψˉψm\bar\psi\psi は各点の値の積なので、局所的な変換でも変わらない。変わるのは微分の項で、∂μ(eiqΛψ)=eiqΛ(∂μψ+iq ∂μΛ ψ)\partial_\mu(\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\psi)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}(\partial_\mu\psi+\mathrm{i} q\,\partial_\mu\Lambda\,\psi) から

LD→LD−q ψˉγμψ ∂μΛ(5.5.3)\mathcal L_{\mathrm D}\to\mathcal L_{\mathrm D}-q\,\bar\psi\gamma^\mu\psi\,\partial_\mu\Lambda\tag{5.5.3}

になる。余分な項は Noether の流れ jμ=qψˉγμψj^\mu=q\bar\psi\gamma^\mu\psi と ∂μΛ\partial_\mu\Lambda の積で、Λ\Lambda が定数なら消える。自由な Dirac 場だけでは、局所的な位相の対称性は成り立たない。

補う場と共変微分

式 (5.5.3) の余分な項を打ち消すには、jμj^\mu と掛け合わさり、変換で ∂μΛ\partial_\mu\Lambda だけずれる4元ベクトルの場 AμA_\mu を用意し、

Aμ→Aμ−∂μΛ(5.5.4)A_\mu\to A_\mu-\partial_\mu\Lambda\tag{5.5.4}

と変わるものとして、L\mathcal L に −jμAμ=−qψˉγμψAμ-j^\mu A_\mu=-q\bar\psi\gamma^\mu\psi A_\mu を足せばよい。変換でこの項は +qψˉγμψ ∂μΛ+q\bar\psi\gamma^\mu\psi\,\partial_\mu\Lambda だけ変わり、式 (5.5.3) の余分な項とちょうど打ち消し合う。足した項と微分の項をまとめると、微分を

Dμ≔∂μ+iqAμ(5.5.5)D_\mu\coloneqq\partial_\mu+\mathrm{i} qA_\mu\tag{5.5.5}

に置き換えたことになる。DμD_\mu を共変微分と呼ぶ。名前の理由は、DμψD_\mu\psi が ψ\psi と同じ形で変わることにある:

Dμψ→(∂μ+iqAμ−iq ∂μΛ)(eiqΛψ)=eiqΛDμψ.(5.5.6)D_\mu\psi\to\bigl(\partial_\mu+\mathrm{i} qA_\mu-\mathrm{i} q\,\partial_\mu\Lambda\bigr)\bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\psi\bigr)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}D_\mu\psi .\tag{5.5.6}

そのため ψˉ iγμDμψ\bar\psi\,\mathrm{i}\gamma^\mu D_\mu\psi は局所的な変換で変わらない。ここで決まったことは2つある。1つ目は結合の形で、AμA_\mu は流れ jμj^\mu とだけ、しかも1次で結合する。2つ目は結合の強さで、AμA_\mu の前の係数は位相の回し方 eiqΛ\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda} の qq と同じ数になる。第5部第4章で仮定した最小結合は、ここでは局所的な位相の対称性の要請として出てきた。この考え方は Weyl による1H. Weyl (1929), Zeitschrift für Physik 56, 330–352.下の脚注へ。

場そのものの項

AμA_\mu を力学変数にするには、AμA_\mu だけの項も要る。その項もゲージ変換 (5.5.4) で変わってはならない。第2部第6章で見たとおり、Fμν=∂μAν−∂νAμF_{\mu\nu}=\partial_\mu A_\nu-\partial_\nu A_\mu は ∂μ∂νΛ=∂ν∂μΛ\partial_\mu\partial_\nu\Lambda=\partial_\nu\partial_\mu\Lambda によって変わらないので、FμνFμνF_{\mu\nu}F^{\mu\nu} が使える。一方、光子の質量項 12mγ2AμAμ\frac12m_\gamma^2A_\mu A^\mu は −mγ2Aμ∂μΛ+12mγ2∂μΛ∂μΛ-m_\gamma^2A^\mu\partial_\mu\Lambda+\frac12m_\gamma^2\partial_\mu\Lambda\partial^\mu\Lambda だけ変わるので許されない。局所的な位相の対称性を要請した時点で、光子の質量は 00 に決まる。

L\mathcal L に入れてよい項を、もう1つの基準で絞る。ℏ=c=1\hbar=c=1 では作用 ∫L d4x\int\mathcal L\,\mathrm{d}^4x が無次元なので、L\mathcal L の質量次元は4である。∂μ\partial_\mu の次元は1で、運動の項 ψˉiγμ∂μψ\bar\psi\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu\psi から ψ\psi の次元は 32\frac32、FμνFμνF_{\mu\nu}F^{\mu\nu} から AμA_\mu の次元は1になる。次元が4を超える項は、係数に質量の負のべきを持つ。そうした項は、第5部第8章で数えるとおり、ループの発散を次数ごとに増やしていく。ゲージ不変で次元4以下の項だけを集めると、次の L\mathcal L が残る。

LQED=ψˉ(iγμDμ−m)ψ−14FμνFμν=ψˉ(iγμ∂μ−m)ψ−14FμνFμν−qψˉγμψ Aμ.(5.5.7)\mathcal L_{\mathrm{QED}}=\bar\psi(\mathrm{i}\gamma^\mu D_\mu-m)\psi-\frac14F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} =\bar\psi(\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu-m)\psi-\frac14F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}-q\bar\psi\gamma^\mu\psi\,A_\mu .\tag{5.5.7}

右の形の最後の項が相互作用で、Dirac 場の2つと AμA_\mu の1つが同じ点で掛け合わさる。図 5.5.1 はこれを線の図で表したもので、第5部第7章で摂動展開の規則(Feynman 則)にするときの頂点になる。

図

図 5.5.1 左:式 (5.5.7) の相互作用 −qψˉγμψAμ-q\bar\psi\gamma^\mu\psi A_\mu を表す頂点。Dirac 場の線(矢印つき)2本と光子の線(波線)1本が1点で交わる。右:荷電スカラー場(総合問題)で最小結合 (Dμϕ)∗Dμϕ(D_\mu\phi)^*D^\mu\phi を展開すると現れる q2AμAμϕ∗ϕq^2A_\mu A^\mu\phi^*\phi の頂点。光子の線が2本つく。

例題 5.5.1 ゲージ不変で次元4以下の項を数える ★★

オリジナルDirac 場 ψ\psi と AμA_\mu からなる次の項を考える。(a) FμνFμνF_{\mu\nu}F^{\mu\nu}、(b) ψˉψ\bar\psi\psi、(c) ψˉiγμDμψ\bar\psi\mathrm{i}\gamma^\mu D_\mu\psi、(d) AμAμA_\mu A^\mu、(e) ψˉσμνψFμν\bar\psi\sigma^{\mu\nu}\psi F_{\mu\nu}(σμν≔i2[γμ, γν]\sigma^{\mu\nu}\coloneqq\frac{\mathrm{i}}2\left[\gamma^\mu,\,\gamma^\nu\right])、(f) ϵμνρσFμνFρσ\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}F_{\mu\nu}F_{\rho\sigma}。

  1. (1) 各項の質量次元を求めよ。
  2. (2) 各項がゲージ変換 ψ→eiqΛψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\psi, Aμ→Aμ−∂μΛA_\mu\to A_\mu-\partial_\mu\Lambda で変わらないかどうかを判定せよ。
  3. (3) ゲージ不変で次元4以下という2つの条件を課すと、運動方程式に寄与する項はどれが残るか。(f) はどう扱うか。
解答

(1) [ψ]=32[\psi]=\frac32, [Aμ]=1[A_\mu]=1, [∂μ]=1[\partial_\mu]=1, [Fμν]=2[F_{\mu\nu}]=2 を足し合わせる。(a) 4、(b) 3、(c) 4、(d) 2、(e) 3+2=53+2=5、(f) 4。

(2) (a) FμνF_{\mu\nu} が不変なので不変。(b) ψˉψ→e−iqΛeiqΛψˉψ\bar\psi\psi\to\mathrm{e}^{-\mathrm{i} q\Lambda}\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda}\bar\psi\psi で不変。(c) 式 (5.5.6) から DμψD_\mu\psi は ψ\psi と同じく eiqΛ\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda} 倍になるので不変。(d) AμAμ→AμAμ−2Aμ∂μΛ+∂μΛ∂μΛA_\mu A^\mu\to A_\mu A^\mu-2A^\mu\partial_\mu\Lambda+\partial_\mu\Lambda\partial^\mu\Lambda で不変でない。(e) ψˉ⋯ψ\bar\psi\cdots\psi の位相が打ち消し、FμνF_{\mu\nu} も不変なので不変。(f) 不変。

(3) 両方の条件を満たすのは (a)(b)(c)(f) である。(e) はゲージ不変だが次元が5で、係数が質量の逆数の次元を持つ(電子の異常磁気モーメントを表す項の形で、QED ではループの補正として出てくるが、出発点の L\mathcal L には入れない)。(d) は次元2だがゲージ不変でない。(f) は 第2部第6章の例題で示したとおり −8E⋅B-8\bm{E}\cdot\bm{B} に比例し、全微分 ∂μKμ\partial_\mu K^\mu の形に書けるので、Euler–Lagrange 方程式に寄与しない。運動方程式を決める項として残るのは (a)(b)(c) で、それらの1次結合が式 (5.5.7) である。(a) の係数 −14-\frac14 は AμA_\mu の規格化の取り決めで決まり、(b)(c) の比は質量 mm の定義である。

1 H. Weyl (1929), Zeitschrift für Physik 56, 330–352.

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