解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第4章 §5.4.1 ★★★ p μ p μ = m 2 p_\mu p^\mu=m^2 p μ p μ = m 2 に p μ → i ∂ μ p_\mu\to\mathrm{i}\partial_\mu p μ → i ∂ μ を入れると ( □ + m 2 ) ϕ = 0 (\Box+m^2)\phi=0 ( □ + m 2 ) ϕ = 0 。複素場の L = ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ∗ ϕ \mathcal L=\partial_\mu\phi^*\partial^\mu\phi-m^2\phi^*\phi L = ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ∗ ϕ を選んだことになる
第2部第3章 では、自由粒子の作用を固有時に比例する S = − m c ∫ d s S=-mc\int\mathrm{d} s S = − m c ∫ d s と選び、4元運動量が質量殻の条件p μ p μ = m 2 c 2 p_\mu p^\mu=m^2c^2 p μ p μ = m 2 c 2 を満たすことを導いた。第4部第1章 では、正準変数の Poisson 括弧を交換子に置き換える規則を作った。この章では、この2つを組み合わせる。質量殻の条件に p μ → i ℏ ∂ μ p_\mu\to\mathrm{i}\hbar\partial_\mu p μ → i ℏ ∂ μ を代入すると Klein–Gordon 方程式が得られ、同じ条件を時間について1階の方程式で満たそうとすると Dirac 方程式が得られる。どちらも、第2部第5章 の場のLagrangian 密度を1つ選んだものとして書くことができる。
出てくるものは3つある。1つ目は Dirac 方程式そのもので、Hamiltonian を運動量の1次式にするという要請だけから 4 × 4 4\times4 4 × 4 の行列が必要になり、回転の Noether の保存量にスピン 1 2 \frac12 2 1 の項が自動的に入る。2つ目は電磁場との結合で、第4部第6章 でPauli 行列を使って「選んだ」g = 2 g=2 g = 2 が、Dirac 方程式の非相対論極限として導かれ、次の次数で水素原子の微細構造が出る。3つ目は、この理論が1粒子の量子力学としては閉じないことである。Klein–Gordon 方程式の保存密度は負になりうるし、Dirac 方程式は負のエネルギーの解を持ち、速度の演算子の固有値は ± c \pm c ± c で、高いポテンシャルの段は粒子を通してしまう。これらはすべて、解を場として扱い、粒子と反粒子を数える立場に移れば整合的に読み直すことができる。最後に、授業で習う微細構造の3つの補正項(相対論的な運動エネルギー・スピン軌道・Darwin 項)を、Dirac 方程式の展開と並べる。
この章では ℏ = c = 1 \hbar=c=1 ℏ = c = 1 とする(数値を出すときは SI に戻す)。Coulomb の力は Heaviside–Lorentz の単位で書き、微細構造定数をα = e 2 / ( 4 π ε 0 ℏ c ) ≈ 1 / 137.036 \alpha=e^2/(4\pi\varepsilon_0\hbar c)\approx1/137.036 α = e 2 / ( 4 π ε 0 ℏ c ) ≈ 1/137.036 とする。この章では演算子の帽子を省く。電荷は q q q と書き、電子は q = − e q=-e q = − e (e > 0 e>0 e > 0 )とする。
この節では ℏ = c = 1 \hbar=c=1 ℏ = c = 1 とする。計量は η μ ν = d i a g ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) \eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) η μν = diag ( + 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) 、x μ = ( t , x ) x^\mu=(t,\bm{x}) x μ = ( t , x ) 、∂ μ = ( ∂ t , ∇ ) \partial_\mu=(\partial_t,\nabla) ∂ μ = ( ∂ t , ∇ ) で、□ = ∂ μ ∂ μ = ∂ t 2 − ∇ 2 \Box=\partial_\mu\partial^\mu=\partial_t^2-\nabla^2 □ = ∂ μ ∂ μ = ∂ t 2 − ∇ 2 である。
質量殻の条件を演算子にする
第2部第3章 で、自由粒子の4元運動量 p μ = ( E , p ) p^\mu=(E,\bm{p}) p μ = ( E , p ) は
p μ p μ = E 2 − p 2 = m 2 (5.4.1) p_\mu p^\mu=E^2-\bm{p}^2=m^2\tag{5.4.1} p μ p μ = E 2 − p 2 = m 2 ( 5.4.1 )
を満たすことを見た。同じ章で、径数 λ \lambda λ で書いた作用では x μ x^\mu x μ に共役な量が − p μ -p_\mu − p μ になることも確かめた。第4部第1章 の規則で、共役な量 − p μ -p_\mu − p μ を − i ∂ μ -\mathrm{i}\partial_\mu − i ∂ μ に置き換えると p μ = i ∂ μ p_\mu=\mathrm{i}\partial_\mu p μ = i ∂ μ 、成分では
E = p 0 = i ∂ t , p = − i ∇ (5.4.2) E=p^0=\mathrm{i}\partial_t,\qquad \bm{p}=-\mathrm{i}\nabla\tag{5.4.2} E = p 0 = i ∂ t , p = − i ∇ ( 5.4.2 )
になる。上付きの p i p^i p i と下付きの p i = − p i p_i=-p^i p i = − p i の符号の違いが、p = − i ∇ \bm{p}=-\mathrm{i}\nabla p = − i ∇ の負号に対応している。非相対論の量子力学の E → i ∂ t E\to\mathrm{i}\partial_t E → i ∂ t 、p → − i ∇ \bm{p}\to-\mathrm{i}\nabla p → − i ∇ と同じ規則である。
式 (5.4.1) の両辺を波動関数 ϕ ( x ) \phi(x) ϕ ( x ) に作用させると − ∂ μ ∂ μ ϕ = m 2 ϕ -\partial_\mu\partial^\mu\phi=m^2\phi − ∂ μ ∂ μ ϕ = m 2 ϕ 、すなわち
( □ + m 2 ) ϕ = 0 (5.4.3) (\Box+m^2)\,\phi=0\tag{5.4.3} ( □ + m 2 ) ϕ = 0 ( 5.4.3 )
を得る。これを Klein–Gordon 方程式 と呼ぶ。□ \Box □ は Lorentz 変換で変わらない演算子なので、ϕ \phi ϕ がスカラーであれば式 (5.4.3) はどの慣性系でも同じ形をとる。非相対論の Schrödinger 方程式は E = p 2 / ( 2 m ) E=\bm{p}^2/(2m) E = p 2 / ( 2 m ) を演算子にしたもので、時間について1階・空間について2階なので Lorentz 変換で形が変わる。Klein–Gordon 方程式はこの点を直した最も素直な式である。
Lagrangian 密度として選ぶ
第2部第5章 では、実数の場の Lagrangian 密度 1 2 ( ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ 2 ) \frac12(\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi-m^2\phi^2) 2 1 ( ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ 2 ) から場の Euler–Lagrange 方程式で式 (5.4.3) を出した。量子力学の波動関数は複素数なので、ここでは複素場を選ぶ。
L K G = ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ∗ ϕ . (5.4.4) \mathcal L_{\mathrm{KG}}=\partial_\mu\phi^*\,\partial^\mu\phi-m^2\phi^*\phi .\tag{5.4.4} L KG = ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ∗ ϕ . ( 5.4.4 )
ϕ \phi ϕ と ϕ ∗ \phi^* ϕ ∗ を独立な場とみなして(実部と虚部を独立に変分するのと同じ)、ϕ ∗ \phi^* ϕ ∗ について場の Euler–Lagrange 方程式∂ μ ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ ∗ ) − ∂ L / ∂ ϕ ∗ = 0 \partial_\mu\,\partial\mathcal L/\partial(\partial_\mu\phi^*)-\partial\mathcal L/\partial\phi^*=0 ∂ μ ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ ∗ ) − ∂ L / ∂ ϕ ∗ = 0 を書くと∂ μ ∂ μ ϕ + m 2 ϕ = 0 \partial_\mu\partial^\mu\phi+m^2\phi=0 ∂ μ ∂ μ ϕ + m 2 ϕ = 0 になり、式 (5.4.3) が出る。ϕ \phi ϕ について変分すれば複素共役の式が出る。したがって、この章で最初に選ぶ L \mathcal L L は式 (5.4.4) である。
この L \mathcal L L は2つの対称性を持つ。1つは Lorentz 変換で、∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi^*\partial^\mu\phi ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ が添字を縮約したスカラーなので変わらない。もう1つは位相の取り替え ϕ → e − i θ ϕ \phi\to\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta}\phi ϕ → e − i θ ϕ 、ϕ ∗ → e i θ ϕ ∗ \phi^*\to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}\phi^* ϕ ∗ → e i θ ϕ ∗ (θ \theta θ は定数)で、ϕ ∗ ϕ \phi^*\phi ϕ ∗ ϕ の組でしか現れないので変わらない。次の節で、この2つに第2部第7章 の場の Noether の定理を当てる。
平面波と負の振動数
ϕ = e − i p ⋅ x = e − i ( E t − p ⋅ x ) \phi=\mathrm{e}^{-\mathrm{i} p\cdot x}=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(Et-\bm{p}\cdot\bm{x})} ϕ = e − i p ⋅ x = e − i ( E t − p ⋅ x ) を式 (5.4.3) に代入すると E 2 = p 2 + m 2 E^2=\bm{p}^2+m^2 E 2 = p 2 + m 2 となり、
E = ± ω p , ω p ≔ p 2 + m 2 (5.4.5) E=\pm\omega_{\bm{p}},\qquad \omega_{\bm{p}}\coloneqq\sqrt{\bm{p}^2+m^2}\tag{5.4.5} E = ± ω p , ω p : = p 2 + m 2 ( 5.4.5 )
の2通りが許される。Schrödinger 方程式では E = p 2 / ( 2 m ) E=\bm{p}^2/(2m) E = p 2 / ( 2 m ) の1通りしかなかった。2通りになるのは、式 (5.4.3) が時間について2階で、初期条件として ϕ \phi ϕ と ∂ t ϕ \partial_t\phi ∂ t ϕ を独立に与えることができるからである。ϕ ( 0 , x ) \phi(0,\bm{x}) ϕ ( 0 , x ) と ∂ t ϕ ( 0 , x ) \partial_t\phi(0,\bm{x}) ∂ t ϕ ( 0 , x ) を任意に与えた解を平面波で展開すると、一般には e − i ω p t \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_{\bm{p}}t} e − i ω p t と e + i ω p t \mathrm{e}^{+\mathrm{i}\omega_{\bm{p}}t} e + i ω p t の両方が必要になる。正の振動数の解だけを残す約束は、時間発展の途中で(たとえば時間に依存する外場があると)保たれない。負の振動数の解をどう読むかが、この章の後半の主題になる。
静的な解と力の到達距離
時間によらない解では ∂ t ϕ = 0 \partial_t\phi=0 ∂ t ϕ = 0 なので、式 (5.4.3) は ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 (-\nabla^2+m^2)\phi=0 ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 になる。原点に点状の源があるときは( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = g δ ( 3 ) ( r ) (-\nabla^2+m^2)\phi=g\,\delta^{(3)}(\bm{r}) ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = g δ ( 3 ) ( r ) を解けばよく、その解は次の例題で確かめるように
ϕ ( r ) = g 4 π e − m r r (5.4.6) \phi(\bm{r})=\frac{g}{4\pi}\frac{\mathrm{e}^{-mr}}{r}\tag{5.4.6} ϕ ( r ) = 4 π g r e − m r ( 5.4.6 )
である。m = 0 m=0 m = 0 なら Coulomb ポテンシャルの形 1 / r 1/r 1/ r に戻る。質量 m m m の場が仲立ちする力は、距離 1 / m 1/m 1/ m (SI で ℏ / ( m c ) \hbar/(mc) ℏ/ ( m c ) )より遠くでは指数関数的に小さくなる。Yukawa はこの関係を逆に使い、核力の到達距離から仲立ちする粒子の質量を見積もった1 1 H. Yukawa (1935), Proceedings of the Physico-Mathematical Society of Japan 17, 48–57. 。
例題 5.4.1 Yukawa ポテンシャルと π \pi π 中間子の到達距離 ★★
オリジナル
(1) r > 0 r>0 r > 0 で式 (5.4.6) が ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 (-\nabla^2+m^2)\phi=0 ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 を満たすことを確かめよ。
(2) 原点を囲む半径 r r r の球面を通る流束 − ∮ ∇ ϕ ⋅ d S -\oint\nabla\phi\cdot\mathrm{d}\bm{S} − ∮ ∇ ϕ ⋅ d S を求め、r → 0 r\to0 r → 0 で g g g になることから、原点の源が g δ ( 3 ) ( r ) g\,\delta^{(3)}(\bm{r}) g δ ( 3 ) ( r ) であることを確かめよ。
(3) 荷電 π \pi π 中間子の静止エネルギー m π c 2 = 139.57 M e V m_\pi c^2=139.57\,\mathrm{MeV} m π c 2 = 139.57 MeV と ℏ c = 197.327 M e V f m \hbar c=197.327\,\mathrm{MeV\,fm} ℏ c = 197.327 MeV fm から、到達距離 ℏ / ( m π c ) \hbar/(m_\pi c) ℏ/ ( m π c ) を f m \mathrm{fm} fm で求めよ。
解答 (1) 球対称な関数では ∇ 2 ϕ = 1 r d 2 d r 2 ( r ϕ ) \nabla^2\phi=\frac1r\frac{\mathrm{d}^2}{\mathrm{d} r^2}(r\phi) ∇ 2 ϕ = r 1 d r 2 d 2 ( r ϕ ) である。r ϕ = g 4 π e − m r r\phi=\frac{g}{4\pi}\mathrm{e}^{-mr} r ϕ = 4 π g e − m r を2回微分すると g 4 π m 2 e − m r \frac{g}{4\pi}m^2\mathrm{e}^{-mr} 4 π g m 2 e − m r なので、∇ 2 ϕ = m 2 ϕ \nabla^2\phi=m^2\phi ∇ 2 ϕ = m 2 ϕ 、すなわち ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 (-\nabla^2+m^2)\phi=0 ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = 0 である。
(2) d ϕ / d r = − g 4 π e − m r ( 1 r 2 + m r ) \mathrm{d}\phi/\mathrm{d} r=-\frac{g}{4\pi}\mathrm{e}^{-mr}\bigl(\frac{1}{r^2}+\frac mr\bigr) d ϕ / d r = − 4 π g e − m r ( r 2 1 + r m ) なので、
− ∮ ∇ ϕ ⋅ d S = − 4 π r 2 d ϕ d r = g e − m r ( 1 + m r ) ⟶ g ( r → 0 ) . -\oint\nabla\phi\cdot\mathrm{d}\bm{S}=-4\pi r^2\frac{\mathrm{d} \phi}{\mathrm{d} r}=g\,\mathrm{e}^{-mr}(1+mr)\ \longrightarrow\ g\qquad(r\to0). − ∮ ∇ ϕ ⋅ d S = − 4 π r 2 d r d ϕ = g e − m r ( 1 + m r ) ⟶ g ( r → 0 ) .
一方、( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = g δ ( 3 ) (-\nabla^2+m^2)\phi=g\,\delta^{(3)} ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ = g δ ( 3 ) を半径 r r r の球で積分すると、左辺は − ∮ ∇ ϕ ⋅ d S + m 2 ∫ ϕ d 3 x -\oint\nabla\phi\cdot\mathrm{d}\bm{S}+m^2\int\phi\,\mathrm{d}^3x − ∮ ∇ ϕ ⋅ d S + m 2 ∫ ϕ d 3 x で、第2項は ∫ 0 r 4 π s 2 ⋅ g 4 π e − m s s d s → 0 \int_0^r 4\pi s^2\cdot\frac{g}{4\pi}\frac{\mathrm{e}^{-ms}}{s}\mathrm{d} s\to0 ∫ 0 r 4 π s 2 ⋅ 4 π g s e − m s d s → 0 (r → 0 r\to0 r → 0 )である。右辺は g g g なので、両辺は r → 0 r\to0 r → 0 で一致する。
(3) ℏ / ( m π c ) = ℏ c / ( m π c 2 ) = 197.327 / 139.57 = 1.414 f m \hbar/(m_\pi c)=\hbar c/(m_\pi c^2)=197.327/139.57=1.414\,\mathrm{fm} ℏ/ ( m π c ) = ℏ c / ( m π c 2 ) = 197.327/139.57 = 1.414 fm 。原子核の大きさ(数 fm)と同じ程度で、核力が原子核の外ではほとんど 0 0 0 になることと合っている。
1 H. Yukawa (1935), Proceedings of the Physico-Mathematical Society of Japan 17, 48–57.
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com