解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第5章 §5.5.6 ★★ SI の最小結合の Hamiltonian・原子と光の Coulomb ゲージの Hamiltonian・3つの単位系の微細構造定数を、この章の LQED と並べる
SI に戻した共変微分と最小結合
SI に戻すと、ゲージ変換と共変微分は(記法の正本の流儀で)
ψ→eiqΛ/ℏψ,Aμ→Aμ−∂μΛ,Dμ=∂μ+ℏiqAμ,Aμ=(ϕ/c,−A)(5.5.28)
である。空間成分は −iℏDj=−iℏ∂j−qAj、すなわち p→p−qA で、時間成分は iℏ∂t→iℏ∂t−qϕ である。電磁気や量子力学の授業では、電磁場中の粒子の Hamiltonian
H=2m(p−qA)2+qϕ(5.5.29)
を、古典の Lorentz 力を再現するものとして、あるいは 第2部第2章の Lagrangian の Legendre 変換として与える。この章の立場では、式 (5.5.29) は局所的な位相の対称性を要請した LQED の非相対論極限(第5部第4章で小さい成分を消した結果)である。A が p と組になって現れるのは偶然でなく、p=−iℏ∇ が位相の勾配を測る演算子だからである。
原子と光の Hamiltonian
量子光学や原子物理の授業で使う「原子と量子化した光」の Hamiltonian は、式 (5.5.17) の非相対論極限を SI で書いたものである:
H=i∑2mi(pi−qiA(ri))2+i<j∑4πε0∣ri−rj∣qiqj+k,s∑ℏωk(aks†aks+21),(5.5.30)
A(r)=k,s∑2ε0ωkVℏeks(akseik⋅r+aks†e−ik⋅r),k⋅eks=0.
2つ目の項が HC、3つ目が横の光子、1つ目を展開した −mqA⋅p と 2mq2A2 が光の吸収・放出と散乱を表す(∇⋅A=0 なので p⋅A=A⋅p)。原子の中の電子どうしの Coulomb 反発がポテンシャルとして書かれ、光子として量子化されるのが横の2偏光だけであることは、5.5.4節で A0 が拘束の変数だったことの言い換えである。A2 の項は、荷電スカラー場の最小結合で現れた図 5.5.1 右の頂点の非相対論版にあたる。
| 授業での書き方 | この章での位置づけ |
| p→p−qA を「置き換える」 | 局所的な位相の対称性を保つための共変微分 (5.5.5) |
| 連続の式 ∂tρ+∇⋅j=0 | 大域的な対称性の Noether の流れの保存(5.5.2節) |
| Coulomb の法則 | Gauss の法則の拘束を解いた HC (5.5.17) |
| 光子=量子化した横波 | 拘束を除いた後に残る A⊥ の振動子 |
| 陽電子(Dirac の海の空孔) | 反交換関係で正のエネルギーを持つ d の粒子 (5.5.15) |
| 光子の質量は 0 | 質量項 AμAμ がゲージ不変でない(5.5.1節) |
3つの単位系の微細構造定数
同じ結合の強さが、単位系によって違う式で書かれる。SI では α=e2/(4πε0ℏc)、Gauss 単位系では電荷の単位を ε0 に吸収して α=e2/(ℏc)、この章の Heaviside–Lorentz の自然単位では α=e2/(4π) である。Gauss 単位系では Coulomb の力が e2/r2 で 4π が Maxwell 方程式の側に現れ、Heaviside–Lorentz では力が e2/(4πr2) で 4π が力の側に現れる。場の量子論の教科書が Heaviside–Lorentz を使うのは、L=−41F2 の形が係数なしで書けるからである。
例題 5.5.6 微細構造定数と横の光子の大きさ ★★
オリジナルe=1.602176634×10−19C、ε0=8.8541878128×10−12F/m、ℏ=1.054571817×10−34Js、c=2.99792458×108m/s とする。
- (1) α と 1/α を求めよ。
- (2) この章の自然単位での電子の電荷の大きさ e=4πα を求めよ。Gauss 単位系の eG2=e2/(4πε0) で eG2/(ℏc) が同じ α になることを確かめよ。
- (3) 水素の基底状態の電子の速さは Bohr のモデルで v=αc である。v を求め、式 (5.5.21) の横の光子の項が Coulomb の項に比べてどの程度の大きさかを見積もれ。
解答
(1) α=4π×8.8541878128×10−12×1.054571817×10−34×2.99792458×108(1.602176634×10−19)2=7.297×10−3、1/α=137.036。
(2) e=4π×7.297×10−3=0.3028。eG2/(ℏc)=e2/(4πε0ℏc) で、(1) の式と同じなので同じ α になる。自然単位の電荷は無次元の数で、0.3 という値は小さいとも大きいとも言いにくいが、摂動展開の各次に現れるのは α=e2/(4π) の形で、こちらは 1/137 と小さい。
(3) v=7.297×10−3×2.998×108=2.19×106m/s。横の光子の項は Coulomb の項の (v/c)2=α2=5.33×10−5 倍の大きさで、水素のエネルギー準位では Rydberg のエネルギーに対する微細構造の補正(第5部第4章)と同じ α2 の程度になる。
ほかの巻では
- 光学と量子エレクトロニクス 第18章:原子と光の Hamiltonian の A⋅p と A2 の項を、双極子近似で2準位の結合に縮める
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com