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出てくるもの (1):Dirac 場の量子化と反粒子

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第5章 ゲージ原理と QED
目次
  1. 正準運動量と Hamiltonian
  2. 交換関係では下に有界でない
  3. 反交換関係で正になる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第5章 §5.5.3 ★★★ Dirac 場の Hamiltonian は ∑E(b†b−dd†)\sum E(b^\dagger b-dd^\dagger) の形になり、交換関係では下に有界でなく、反交換関係で初めて陽電子が正のエネルギーを持つ

第5部第4章の最後で、Klein–Gordon 場の負の振動数の係数を反粒子の生成演算子と読むと、エネルギーが正、電荷が粒子数の差になることを見た。Dirac 場でも同じ読み方をするが、ここでは交換関係が使えず、反交換関係が必要になる。この節では Aμ=0A_\mu=0 として自由な Dirac 場を量子化する。相互作用は5.5.4節で戻す。

正準運動量と Hamiltonian

式 (5.5.1) を時間微分と空間微分に分けると、γ0γ0=1\gamma^0\gamma^0=1, γ0γj=αj\gamma^0\gamma^j=\alpha^j から

LD=iψ†∂tψ−ψ†hψ,h≔−iα⋅∇+βm(5.5.10)\mathcal L_{\mathrm D}=\mathrm{i}\psi^\dagger\partial_t\psi-\psi^\dagger h\psi,\qquad h\coloneqq-\mathrm{i}\bm{\alpha}\cdot\nabla+\beta m\tag{5.5.10}

である。ψ\psi に共役な運動量は πψ=∂L/∂(∂tψ)=iψ†\pi_\psi=\partial\mathcal L/\partial(\partial_t\psi)=\mathrm{i}\psi^\dagger で、Hamiltonian 密度はH=πψ∂tψ−LD=ψ†hψ\mathcal H=\pi_\psi\partial_t\psi-\mathcal L_{\mathrm D}=\psi^\dagger h\psi になる。LD\mathcal L_{\mathrm D} が ∂tψ\partial_t\psi の1次式なので、第1部第7章の Legendre 変換で速度を消す段は無く、ψ\psi と ψ†\psi^\dagger がそのまま正準変数の組になる。

体積 VV の箱の中で、平面波で展開する。第5部第4章の正の振動数のスピノル us(p)u_s(\bm{p})(h(p)us=Epush(\bm{p})u_s=E_{\bm{p}}u_s)に加えて、e+ip⋅x=ei(Ept−p⋅x)\mathrm{e}^{+\mathrm{i} p\cdot x}=\mathrm{e}^{\mathrm{i}(E_{\bm{p}}t-\bm{p}\cdot\bm{x})} を掛ける負の振動数のスピノル

vs(p)=(σ⋅p χs/Ep+mEp+m χs),h(−p) vs(p)=−Epvs(p)(5.5.11)v_s(\bm{p})=\begin{pmatrix}\bm{\sigma}\cdot\bm{p}\,\chi_s/\sqrt{E_{\bm{p}}+m}\\ \sqrt{E_{\bm{p}}+m}\,\chi_s\end{pmatrix},\qquad h(-\bm{p})\,v_s(\bm{p})=-E_{\bm{p}}v_s(\bm{p})\tag{5.5.11}

を使う(h(k)≔α⋅k+βmh(\bm{k})\coloneqq\bm{\alpha}\cdot\bm{k}+\beta m、χs\chi_s は2成分の正規直交なスピノル、Ep=p2+m2E_{\bm{p}}=\sqrt{\bm{p}^2+m^2})。us†us′=vs†vs′=2Epδss′u_s^\dagger u_{s'}=v_s^\dagger v_{s'}=2E_{\bm{p}}\delta_{ss'} と us(p)†vs′(−p)=0u_s(\bm{p})^\dagger v_{s'}(-\bm{p})=0 が成り立つ。場を

ψ(x)=∑p,s12EpV(bps us(p) e−ip⋅x+dps† vs(p) eip⋅x)(5.5.12)\psi(x)=\sum_{\bm{p},s}\frac{1}{\sqrt{2E_{\bm{p}}V}}\Bigl(b_{\bm{p}s}\,u_s(\bm{p})\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} p\cdot x}+d_{\bm{p}s}^\dagger\,v_s(\bm{p})\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} p\cdot x}\Bigr)\tag{5.5.12}

と書き、H=∫ψ†hψ d3xH=\int\psi^\dagger h\psi\,\mathrm{d}^3x と電荷 Q=q∫ψ†ψ d3xQ=q\int\psi^\dagger\psi\,\mathrm{d}^3x に入れる。箱の上で積分すると運動量の等しい項だけが残り、hh は bb の項に +Ep+E_{\bm{p}}、d†d^\dagger の項に −Ep-E_{\bm{p}} を掛け、uu と vv の交差項は直交性で消える。その結果

H=∑p,sEp(bps†bps−dpsdps†),Q=q∑p,s(bps†bps+dpsdps†)(5.5.13)H=\sum_{\bm{p},s}E_{\bm{p}}\bigl(b_{\bm{p}s}^\dagger b_{\bm{p}s}-d_{\bm{p}s}d_{\bm{p}s}^\dagger\bigr),\qquad Q=q\sum_{\bm{p},s}\bigl(b_{\bm{p}s}^\dagger b_{\bm{p}s}+d_{\bm{p}s}d_{\bm{p}s}^\dagger\bigr)\tag{5.5.13}

になる。ここまでは演算子の順序を入れ替えていないので、交換関係でも反交換関係でも同じ式である。

交換関係では下に有界でない

dd に Bose の交換関係 [d, d†]=1\left[d,\,d^\dagger\right]=1 を課すと、−dd†=−d†d−1-dd^\dagger=-d^\dagger d-1 なので H=∑E(b†b−d†d−1)H=\sum E(b^\dagger b-d^\dagger d-1) になる。d†d^\dagger で作った粒子を1つ足すごとにエネルギーが EpE_{\bm{p}} ずつ下がり、エネルギーに下限が無い。第5部第4章の Dirac の海が1粒子の理論で抱えていた問題が、場の理論で交換関係を使うとそのまま残る。

反交換関係で正になる

反交換関係

{bps,bp′s′†}+={dps,dp′s′†}+=δpp′δss′,ほかの反交換子は 0(5.5.14)\{b_{\bm{p}s},b^\dagger_{\bm{p}'s'}\}_{+}=\{d_{\bm{p}s},d^\dagger_{\bm{p}'s'}\}_{+}=\delta_{\bm{p}\bm{p}'}\delta_{ss'},\qquad\text{ほかの反交換子は }0\tag{5.5.14}

を課すと、−dd†=d†d−1-dd^\dagger=d^\dagger d-1 なので

H=∑p,sEp(bps†bps+dps†dps)−∑p,sEp,Q=q∑p,s(bps†bps−dps†dps)+q∑p,s1(5.5.15)H=\sum_{\bm{p},s}E_{\bm{p}}\bigl(b^\dagger_{\bm{p}s}b_{\bm{p}s}+d^\dagger_{\bm{p}s}d_{\bm{p}s}\bigr)-\sum_{\bm{p},s}E_{\bm{p}},\qquad Q=q\sum_{\bm{p},s}\bigl(b^\dagger_{\bm{p}s}b_{\bm{p}s}-d^\dagger_{\bm{p}s}d_{\bm{p}s}\bigr)+q\sum_{\bm{p},s}1\tag{5.5.15}

となる。定数の項は真空のエネルギーと電荷で、正規順序(消滅演算子を右に寄せ、そのとき反交換子なら符号を変える)で取り除く。残った式では bb の粒子も dd の粒子もエネルギー Ep>0E_{\bm{p}}>0 を持ち、電荷は bb の粒子が qq、dd の粒子が −q-q である。電子(q=−eq=-e)なら dd の粒子は電荷 +e+e の陽電子になる。真空のエネルギーの定数 −∑Ep-\sum E_{\bm{p}} は、第5部第3章の Bose 場の零点エネルギー +∑12ω+\sum\frac12\omega と逆の符号を持つ。

反交換関係 (5.5.14) から (bps†)2=12{bps†,bps†}+=0(b^\dagger_{\bm{p}s})^2=\frac12\{b^\dagger_{\bm{p}s},b^\dagger_{\bm{p}s}\}_{+}=0 で、同じ状態に2つの粒子を入れることはできない。Pauli の排他原理が、エネルギーを下に有界にする要請から出てきた。場の演算子でいえば {ψa(x),ψb†(y)}+=δabδ(3)(x−y)\{\psi_a(\bm{x}),\psi_b^\dagger(\bm{y})\}_{+}=\delta_{ab}\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{y}) で、Poisson 括弧の i\mathrm{i} 倍を交換子に置き換える第4部第1章の規則とは別の規則を課したことになる。整数スピンの場には交換関係、半整数スピンの場には反交換関係を課さなければ、エネルギーの正値性か局所性のどちらかが成り立たない。これがスピンと統計の定理である1W. Pauli (1940), Physical Review 58, 716–722.下の脚注へ。その証明はこの章の範囲を超えるので、結果だけ引く。古典の Dirac 場が実験室で観測されない(電子の古典的な場の振幅が巨視的に積み上がらない)ことも、排他原理の帰結である。

例題 5.5.3 1つのモードの電子と陽電子 ★★★

オリジナル運動量とスピンを1つに固定し、bb と dd の2つのモードだけを残す。H=E(b†b−dd†)H=E(b^\dagger b-dd^\dagger)、Q=q(b†b+dd†)Q=q(b^\dagger b+dd^\dagger)(式 (5.5.13))とする。

  1. (1) 反交換関係のもとで、状態 ∣0⟩| 0 \rangle, b†∣0⟩b^\dagger| 0 \rangle, d†∣0⟩d^\dagger| 0 \rangle, b†d†∣0⟩b^\dagger d^\dagger| 0 \rangle の HH と QQ の値を求めよ(b∣0⟩=d∣0⟩=0b| 0 \rangle =d| 0 \rangle =0)。
  2. (2) 正規順序をとった H′=E(b†b+d†d)H'=E(b^\dagger b+d^\dagger d), Q′=q(b†b−d†d)Q'=q(b^\dagger b-d^\dagger d) で同じ表を作り、(1) との差を述べよ。
  3. (3) 交換関係を課した場合、状態 (d†)n∣0⟩(d^\dagger)^n| 0 \rangle の HH の値を求めよ。
解答

(1) 数演算子 nb=b†bn_b=b^\dagger b, nd=d†dn_d=d^\dagger d は反交換関係のもとで固有値 0,10,1 をとり、dd†=1−nddd^\dagger=1-n_d なので H=E(nb+nd−1)H=E(n_b+n_d-1), Q=q(nb−nd+1)Q=q(n_b-n_d+1)。

状態(nb,nd)(n_b,n_d)HHQQ
∣0⟩| 0 \rangle(0,0)(0,0)−E-Eqq
b†∣0⟩b^\dagger| 0 \rangle(1,0)(1,0)002q2q
d†∣0⟩d^\dagger| 0 \rangle(0,1)(0,1)0000
b†d†∣0⟩b^\dagger d^\dagger| 0 \rangle(1,1)(1,1)EEqq

(2) H′=E(nb+nd)H'=E(n_b+n_d), Q′=q(nb−nd)Q'=q(n_b-n_d) で、値は順に (0,0)(0,0), (E,q)(E,q), (E,−q)(E,-q), (2E,0)(2E,0)。(1) との差は、すべての状態で HH が EE、QQ が qq だけずれていることで、状態の間の差は変わらない。正規順序は真空の値を 00 にそろえる定数の付け替えである。b†d†∣0⟩b^\dagger d^\dagger| 0 \rangle は電荷 00・エネルギー 2E2E の「粒子と反粒子が1つずつある」状態になる。

(3) 交換関係では −dd†=−nd−1-dd^\dagger=-n_d-1 で、ndn_d は 0,1,2,…0,1,2,\dots をとる。(d†)n∣0⟩(d^\dagger)^n| 0 \rangle は nb=0n_b=0, nd=nn_d=n の状態なので H=−(n+1)EH=-(n+1)E。nn を大きくするといくらでも下がる。4つの状態で閉じた (1) と違い、状態空間も無限に大きい。

1 W. Pauli (1940), Physical Review 58, 716–722.

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