解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第6章 §5.6.6 ★★ London 兄弟の2つの方程式・完全導体との違い・Bc(T) の経験式を、GL の汎関数の停留条件から読み直す
London 方程式
学部の固体物理や電磁気の授業では、超伝導を次のように導入することが多い。密度 ns の「超伝導電子」(質量 m、電荷 −e)が抵抗なく加速されるとして、Newton の運動方程式 mv˙=−eE と j=−nsev から
∂t∂j=mnse2E(London の第1式)(5.6.35)
を得る。これに Faraday の法則の回転を組み合わせると ∂t∂(∇×j+mnse2B)=0 になる。括弧の中は時間変化しないというだけで、その値が 0 かどうかは決まらない。F. London と H. London(1935)は、括弧の中そのものが 0 である
∇×j=−mnse2B(London の第2式)(5.6.36)
を仮定として置いた(F. London and H. London (1935), Proc. R. Soc. Lond. A 149, 71)。侵入長は λL=m/(μ0nse2) と書かれる。
この章の形との対応は次のとおりである。式 (5.6.14) の係数は q2∣ψ0∣2/m∗ で、q=−2e, m∗=2m, ∣ψ0∣2=ns/2(対の密度は電子の密度の半分)と置くとq2∣ψ0∣2/m∗=4e2(ns/2)/(2m)=nse2/m で、London の第2式と一致する。第1式は、位相が一定になるゲージ(∇⋅A=0 で θ が定数)でjs=−(q2∣ψ0∣2/m∗)A と書き、E=−∂A/∂t(スカラーポテンシャル 0)で時間微分すれば出る。∣ψ∣2 と m∗ の規格化は勝手に選べ、物理に現れるのは比 ∣ψ∣2/m∗ だけである。
授業では第2式を「Meissner 効果を説明するために置く仮定」として導入する。この章では、第2式は ψ の1価性と、電流が ℏ∇θ−qA に比例すること(式 (5.6.13))から出た。電流が正準運動量でなくゲージ不変な運動学的運動量に比例し、しかも ∇θ が回転を持たないことが、括弧の中を 0 にする理由である。
完全導体と Meissner 効果
抵抗が 0 の導体(完全導体)は第1式だけを満たす。磁場の中で冷やして抵抗を消し、そのあと外場を切ると、第1式と Faraday の法則から内部の B は冷やしたときの値に保たれる(磁束が凍結する)。超伝導体は第2式も満たすので、内部の B は冷やし方によらず 0 になる。Meissner と Ochsenfeld の測定は、磁場の中で冷やしたときにも磁束が押し出されることを示し、超伝導体が単なる完全導体ではないことを確かめた。この章の言葉では、内部で B=0 は G の最小点という平衡の条件であり、どの経路で来たかによらない。
授業ではまた、超伝導体を「磁化率 χm=−1 の完全反磁性体」と呼ぶ。厚い試料では内部で B=μ0(H+M)=0 なので M=−H で、χm=−1 になる。表面の厚さ λ の層を流れる電流 (5.6.16) を、磁化 M の表面電流と読み替えたものである。
臨界磁場の温度依存性
実験の教科書では、熱力学的な臨界磁場の温度依存性を経験式 Bc(T)≈Bc(0)[1−(T/Tc)2] で書くことが多い。GL 理論は Tc の近くでしか使えず、式 (5.6.6) からは Bc∝(Tc−T) が出る。t=T/Tc とすると 1−t2=(1−t)(1+t)≈2(1−t) で、経験式は Tc の近くで直線になり、GL の形と同じ1次の振る舞いをする。上部臨界磁場 (5.6.33) も ξ−2∝(Tc−T) なので Tc の近くで直線になる。
例題 5.6.8 London の侵入長と GL の侵入長 ★★
オリジナル超伝導電子の密度を ns=1.0×1028m−3 とする(仮の値)。
- (1) London の侵入長 λL=m/(μ0nse2) を求めよ。
- (2) GL の式 (5.6.14) で q=−2e, m∗=2m, ∣ψ0∣2=ns/2 と置いた値が (1) と同じになることを確かめよ。
- (3) 規格化を m∗=m、∣ψ0∣2=ns/4 に変えると λ は変わるか。
解答
(1) μ0nse2=1.2566×10−6×1028×(1.602×10−19)2=3.23×10−16 で、m/(μ0nse2)=2.82×10−15m2、λL=53.1nm。
(2) λ−2=μ0q2∣ψ0∣2/m∗=μ0(4e2)(ns/2)/(2m)=μ0nse2/m で (1) と同じ。
(3) ∣ψ0∣2/m∗=ns/(4m) で (2) の ns/(4m) と同じなので、λ は変わらない。∣ψ∣2 と m∗ を同じ倍率で変えても観測量は変わらず、m∗=2m はこの比を固定するための慣例である。電荷 q=−2e の方は、磁束の量子 h/∣q∣ が測れるので慣例でなく決まった値である。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com