解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第6章 §5.6.5 ★★★ 振幅の変わる長さ ξ と磁場の侵入長 λ の比 κ で界面エネルギーの符号が変わり、κ>1/2 では磁束量子の渦として磁場を受け入れる
振幅の変わる長さ
磁場が無い1次元の問題で、x=0 で ψ=0 に押さえられた秩序が x>0 で回復する様子を求める。A=0 で ψ を実数に取ると、GL 方程式 (5.6.8) は−2m∗ℏ2ψ′′−∣a∣ψ+bψ3=0 で、∣a∣ で割ると
−ξ2ψ′′−ψ+∣ψ0∣2ψ3=0.(5.6.28)
第3部第10章の磁壁と同じく、これは x を時間とみなした力学の運動方程式で、x を含まないので「エネルギー」ξ2ψ′2−ψ2+ψ4/(2∣ψ0∣2) が保存する。x→∞ で ψ→∣ψ0∣, ψ′→0 から保存量は −∣ψ0∣2/2 で、積分すると
ψ(x)=∣ψ0∣tanh2ξx(5.6.29)
を得る。ξ は秩序の振幅が変わる長さで、コヒーレンス長と呼ぶ。式 (5.6.27) から ξ∝(Tc−T)−1/2 で、λ と同じ温度依存性を持つ。そのため2つの比
κ=ξλ,κ2=μ0q2ℏ22m∗2b(5.6.30)
は Tc の近くで温度によらず、物質ごとに決まる定数になる。
界面エネルギーの符号
外場 Ba=Bc で、常伝導の領域(x→−∞)と超伝導の領域(x→+∞)が平らな界面で接しているとする。式 (5.6.6) から、両側の Gibbs のポテンシャル (5.6.5) の密度は等しい。界面の単位面積あたりの余分のエネルギー σ は、ψ を実数に取るゲージで
σ=∫−∞∞dx[2m∗ℏ2ψ′2+2m∗q2ψ2Ay2+aψ2+2bψ4+2μ0(Bz−Bc)2](5.6.31)
である(被積分関数は両側の遠方で 0 になるように、一様な状態の値を引いてある)。界面の超伝導側では、秩序が回復するまでの厚さ ξ ほどの層で凝縮の得が失われ、σ を正にする。一方、磁場は厚さ λ ほどの層まで入り、そこでは磁場を追い出す損を払わずに済むので、σ を負にする。どちらが勝つかは κ=λ/ξ で決まる。
GL 方程式 (5.6.8)・(5.6.11) をこの境界条件で数値的に解き、式 (5.6.31) を計算すると図 5.6.3 になる。σ はちょうど κ=1/2 で 0 になり、それより小さい κ では正、大きい κ では負である。κ→0 では磁場は界面で階段状に消え、σ は秩序の回復の損だけになって (42/3)ξBc2/(2μ0) に近づく(例題 5.6.7。数値解の近づき方は遅い)。κ→∞ では σ→−38(2−1)λBc2/(2μ0)≈−1.10λBc2/(2μ0) になる。σ=0 となる値が 1/2 であることは、Ginzburg と Landau の1950年の論文で既に得られていた。

図 5.6.3 常伝導と超伝導の界面のエネルギー σ(式 (5.6.31))。点線は GL 方程式の数値解(verify_ch5-06.py で計算)、青の実線は κ→∞ の極限の値。κ=1/2 で符号が変わる。
σ>0 の物質(第一種超伝導体)では、界面を作ると損なので、外場が Bc を超えるまで磁場を全部追い出し、Bc で一斉に常伝導へ移る。σ<0 の物質(第二種超伝導体)では、界面を作るほど得なので、外場がある値 Bc1 を超えると、磁場は細い常伝導の芯を持つ渦として入り込み、界面の面積を増やそうとする。渦1本が運ぶ磁束は、芯のまわりで位相が 2π 回ることから式 (5.6.18) で Φ0 である(それより細かく分けられないので、渦は磁束の量子1本ずつになる)。A. A. Abrikosov(1957)は GL 方程式から、渦が三角格子などの格子を組む混合状態を導いた(A. A. Abrikosov (1957), Zh. Eksp. Teor. Fiz. 32, 1442)。
上部臨界磁場は Landau 準位で決まる
第二種超伝導体で外場を上げていくと、渦が詰まって ∣ψ∣ は全体に小さくなり、ある磁場 Bc2 で 0 になる。Bc2 のすぐ下では ψ が小さいので、GL 方程式 (5.6.8) の非線形の項を落とした
2m∗1(−iℏ∇−qA)2ψ=∣a∣ψ(5.6.32)
を考えればよい。これは一様な磁場 B の中の電荷 q・質量 m∗ の粒子の Schrödinger 方程式で、∣a∣ がエネルギー固有値の位置にある。第4部第6章で求めたとおり、固有値は Landau 準位 m∗ℏ∣q∣B(n+21) に磁場方向の運動エネルギーを足したもので、最小は ℏ∣q∣B/(2m∗) である。0 でない解が存在するのは ∣a∣ がこの最小値以上のときで、等号から
Bc2=ℏ∣q∣2m∗∣a∣=∣q∣ξ2ℏ=2πξ2Φ0(5.6.33)
を得る。1本の磁束量子が面積 2πξ2 に1本ずつ入った磁場で、渦の芯どうしが重なり始める密度に当たる。式 (5.6.6) と比べると
BcBc2=2κ(5.6.34)
で、κ>1/2 なら Bc2>Bc となり、熱力学的な臨界磁場を超えても超伝導が(渦の格子として)残る。界面エネルギーの符号が変わる値と同じ 1/2 がここにも現れる。
GL 理論は秩序変数の停留点だけを残し、揺らぎを捨てる平均場の理論である。第3部第10章の Ginzburg の判定条件をこの章の量で書くと、揺らぎの大きさの目安は、熱のエネルギー kBTc と体積 ξ3 の中の凝縮エネルギー Bc2ξ3/(2μ0) の比で決まる。仮に Tc=7K, Bc=0.1T, ξ=100nm とすると、比は 2.4×10−5 で、ξ の長い超伝導体では Tc のごく近くまで揺らぎを捨ててよいことが分かる。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 揺らぎの相対的な大きさ kBTc/(Bc2ξ3/2μ0)→0(停留点だけを残す) | 証明 要確認(相互作用が短距離の3次元の系で平均場が Tc から離れた所で正しいことの証明の前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第13章
例題 5.6.6 第二種超伝導体の2つの臨界磁場 ★★
オリジナルある温度で ξ=10nm, λ=100nm の超伝導体がある(数値は仮のもの)。
- (1) κ を求め、第一種か第二種かを判定せよ。
- (2) Bc2 と Bc を求めよ。
- (3) Bc2 で渦1本あたりの面積を求め、ξ と比べよ。
解答
(1) κ=100/10=10>1/2 で第二種。
(2) Bc2=Φ0/(2πξ2)=2.0678×10−15/(2π×10−16)=3.29T。Bc=Bc2/(2κ)=3.29/14.14=0.233T。凝縮エネルギーで決まる Bc の14倍の磁場まで超伝導が残る。
(3) 渦1本の面積は Φ0/Bc2=2πξ2=6.28×10−16m2 で、半径 2ξ=14nm の円の面積に等しい。渦の芯の大きさが ξ ほどなので、芯どうしが重なる密度である。
例題 5.6.7 磁場が入らない極限の界面エネルギー ★★
オリジナルκ→0(λ→0)の極限では、磁場は界面 x=0 で階段状に Bc から 0 へ落ち、超伝導側の秩序は式 (5.6.29) で回復するとみなせる。
- (1) 式 (5.6.28) の保存量を使って、2m∗ℏ2ψ′2=2b(∣ψ0∣2−ψ2)2 を示せ。
- (2) 式 (5.6.31) が σ=∫0∞b(∣ψ0∣2−ψ2)2dx になることを示し、これを計算せよ。
解答
(1) 保存量の式 ξ2ψ′2−ψ2+ψ4/(2∣ψ0∣2)=−∣ψ0∣2/2 を移項すると ξ2ψ′2=(∣ψ0∣2−ψ2)2/(2∣ψ0∣2)。両辺に ∣a∣=b∣ψ0∣2 を掛け、ξ2∣a∣=ℏ2/(2m∗) を使うと示す式になる。
(2) x<0 では ψ=0, Bz=Bc で被積分関数は 0。x>0 では Bz=0, Ay=0 で、磁場の項は Bc2/(2μ0)=a2/(2b) になる。ポテンシャルの項と合わせると aψ2+2bψ4+2ba2=2b(∣ψ0∣2−ψ2)2 で、(1) の勾配の項と等しいので、合計は b(∣ψ0∣2−ψ2)2=b∣ψ0∣4sech42ξx。∫0∞sech4udu=2/3 から
σ=322ξb∣ψ0∣4=342ξ2μ0Bc2≈1.89ξ2μ0Bc2.
界面のエネルギーは、厚さ 1.89ξ の層で凝縮の得を丸ごと失ったのと同じだけある。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com