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この章で選ぶ HH:Fermi 面のまわりの対の引力

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第4章 超伝導:対を作る H
目次
  1. 電子どうしの引力
  2. BCS の
  3. Cooper の問題
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第4章 §5.4.1 ★★★ フォノンを介した引力を、Fermi 面から ℏωD\hbar\omega_{\mathrm D} 以内の電子どうしの一定の引力 −g/V-g/V で置き換え、運動量 00 の対の散乱だけを残す。Fermi 面があると、この引力はどれほど弱くても対を束縛する

第4部第1章の自由電子気体と第5部第1章の Fermi 液体では、電子どうしの相互作用を入れても、Fermi 面のまわりの電子は互いにほぼ独立な粒子として振る舞った。ところが、多くの金属は数 K 以下で電気抵抗が完全に 00 になり、外から加えた磁場を内部から押し出す(Meissner 効果)。この相は、独立な粒子の描像を少し直すだけでは説明することができない。この章では、Fermi 面のまわりの電子に、格子振動(フォノン)を介した弱い引力が残っていることに注目する。その引力のうち、運動量 ℏk\hbar\bm{k} と −ℏk-\hbar\bm{k} の電子の対を (k′,−k′)(\bm{k}',-\bm{k}') の対へ散乱させる部分だけを残した HH が、Bardeen・Cooper・Schrieffer の BCS 模型である(J. Bardeen, L. N. Cooper, J. R. Schrieffer (1957), Phys. Rev. 108, 1175)。

この章で示すことは4つある。1つ目は、Fermi 面があると引力がどれほど弱くても2個の電子が束縛状態を作ることである(Cooper の問題)。その束縛エネルギーは結合の強さ λ\lambda について e−2/λ\mathrm{e}^{-2/\lambda} の形で、λ\lambda のべき級数には現れない。2つ目は、対の平均場をとると HH が k\bm{k} ごとの 2×22\times2 行列になり、それを対角化した準粒子の励起エネルギーが ξk2+Δ2\sqrt{\xi_{\bm{k}}^2+\Delta^2} の形でFermi 面の上に幅 Δ\Delta のギャップを持つことである。3つ目は、Δ\Delta を決める自己無撞着の式(ギャップ方程式)から、2Δ0/(kBTc)=3.532\Delta_0/( k_{\mathrm B} T_{\mathrm c})=3.53 や比熱の跳び ΔC/(γTc)=1.43\Delta C/(\gamma T_{\mathrm c})=1.43 といった、物質によらない数が出ることである。4つ目は、転移温度の近くで平均場の自由エネルギーを Δ\Delta のべきに展開すると、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第6章のGinzburg–Landau 理論の係数がすべて微視的な量で決まり、秩序変数の電荷が −2e-2e であることも含めて、Meissner 効果が BCS の HH から説明されることである。

5.4.1節で HH を選び、Cooper の問題でその意味を確かめる。5.4.2節で対の平均場と Bogoliubov 変換を道具として作り、5.4.3節でギャップ方程式を解く。5.4.4節は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第6章への「つなぎ」で、BCS から Ginzburg–Landau の係数を出し、Meissner 効果を微視的に見直す。5.4.5節で何を削ったかを述べて裏付けの札を置き、5.4.6節で何の実験の量で確かめるかと授業の形との対応を述べ、5.4.7節でまとめる。

この章では第二量子化を使い、演算子の帽子を省く。生成消滅演算子は ckσ†c^\dagger_{\bm{k}\sigma}, ckσc_{\bm{k}\sigma}(σ=↑,↓\sigma=\uparrow,\downarrow)と書き、{ckσ,ck′σ′†}+=δkk′δσσ′\{c_{\bm{k}\sigma},c^\dagger_{\bm{k}'\sigma'}\}_{+}=\delta_{\bm{k}\bm{k}'}\delta_{\sigma\sigma'} を満たす。1電子のエネルギーは化学ポテンシャル μ\mu から測ってξk≡εk−μ\xi_{\bm{k}}\equiv\varepsilon _{\bm{k}}-\mu と書く。試料の体積を VV とし、Fermi 準位の状態密度は BCS の慣例に合わせて1スピンあたりでN0≡D(εF)/2N_0\equiv D(\varepsilon _{\mathrm F})/2 と書く(D(ε)D(\varepsilon ) は記法の正本どおり単位体積・両スピンの状態密度)。

電子どうしの引力

金属の中の2個の電子は Coulomb 力で反発するが、その反発は他の電子に遮蔽されて短距離の力になる(第5部第1章)。遮蔽にはイオンも加わる。電子が通り過ぎるとイオンが引き寄せられて正の電荷が少し集まり、それがイオンの振動の周期 2π/ωD2\pi/\omega_{\mathrm D} 程度の時間だけ残る。電子の速さ vF∼106 m s−1v_{\mathrm F}\sim10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}} に比べてイオンの応答は遅いので、最初の電子が去った後に来た2個目の電子は、残った正の電荷に引かれる。

ジェリウム(第4部第1章)でイオンの動きまで含めて遮蔽を計算し直すと、運動量 ℏq\hbar\bm{q}・エネルギー ℏω\hbar\omega を受け渡す2個の電子の間の有効な相互作用は

Veff(q,ω)=e2ε0(q2+qTF2) ω2ω2−ωq2(5.4.1)V_{\mathrm{eff}}(\bm{q},\omega)=\frac{e^2}{\varepsilon _0(q^2+q_{\mathrm{TF}}^2)}\,\frac{\omega^2}{\omega^2-\omega_{\bm{q}}^2}\tag{5.4.1}

の形になる(qTFq_{\mathrm{TF}} は Thomas–Fermi の遮蔽の波数(第5部第1章)、ωq\omega_{\bm{q}} は遮蔽されたイオンの振動の角周波数)。受け渡すエネルギーが小さく ∣ω∣<ωq\lvert \omega\rvert <\omega_{\bm{q}} なら Veff<0V_{\mathrm{eff}}<0 で、正味の力は引力になる。電子が受け渡すエネルギーは、Fermi 面から測った2個の電子のエネルギーの差 ξk−ξk′\xi_{\bm{k}}-\xi_{\bm{k}'} である。したがって、Fermi 面から ℏωD\hbar\omega_{\mathrm D}(Debye のエネルギー。第3部第1章)以内の電子どうしには引力が働き、それより外では Coulomb の反発が残る。

BCS の HH

BCS は、この引力を次のように大胆に削った。

1つ目に、引力の大きさを q\bm{q} と ω\omega によらない定数にし、Fermi 面から ℏωD\hbar\omega_{\mathrm D} 以内の状態の間だけで働くとした。2つ目に、散乱のうち、全運動量が 00 でスピンが逆向きの対 (k↑,−k↓)(\bm{k}\uparrow,-\bm{k}\downarrow) を別の対 (k′↑,−k′↓)(\bm{k}'\uparrow,-\bm{k}'\downarrow) へ移す部分だけを残した。その他の散乱は、正常な金属の Fermi 液体の性質(有効質量など)にすでに入っているとみなして ξk\xi_{\bm{k}} に繰り込む。こうして得られるのが

H=∑kσξk ckσ†ckσ−gV∑k,k′′ ck′↑†c−k′↓†c−k↓ck↑(5.4.2)H=\sum_{\bm{k}\sigma}\xi_{\bm{k}}\,c^\dagger_{\bm{k}\sigma}c_{\bm{k}\sigma} -\frac{g}{V}{\sum_{\bm{k},\bm{k}'}}'\,c^\dagger_{\bm{k}'\uparrow}c^\dagger_{-\bm{k}'\downarrow}c_{-\bm{k}\downarrow}c_{\bm{k}\uparrow}\tag{5.4.2}

である。和の右肩のプライムは ∣ξk∣,∣ξk′∣<ℏωD\lvert \xi_{\bm{k}}\rvert ,\lvert \xi_{\bm{k}'}\rvert <\hbar\omega_{\mathrm D} に限ることを表し、g>0g>0 は引力の強さ(単位は J m3\mathrm{J\,m^3})である。無次元の結合の強さを

λ≡gN0(5.4.3)\lambda\equiv gN_0\tag{5.4.3}

と定める。λ\lambda は Fermi 準位の1スピンあたりの状態密度と引力の積で、通常の金属で 0.10.1〜0.50.5 程度である。

HH の第2項は、対 bk†≡ck↑†c−k↓†b_{\bm{k}}^\dagger\equiv c^\dagger_{\bm{k}\uparrow}c^\dagger_{-\bm{k}\downarrow} を作り、別の対を壊す形をしている。運動量が逆向きの対だけを残した理由は、全運動量が 00 の対では、対の相手を k\bm{k} と −k-\bm{k} に置けば k\bm{k} を Fermi 面のまわりの殻全体に自由に動かせるからである。全運動量が 00 でない対では、2個とも殻の中にある組み合わせが限られ、引力から得るエネルギーがずっと小さくなる。

Cooper の問題

この HH の意味は、Cooper が考えた2個の電子の問題でよく分かる(L. N. Cooper (1956), Phys. Rev. 104, 1189)。絶対零度の Fermi 球を固定し、その外側に2個の電子を足す。2個は全運動量 00 のスピン一重項の対を作るとし、Fermi 球の中の電子は Pauli の排他律で席をふさぐだけで、ほかには何もしないとする。2個の状態を

∣ψ⟩=∑∣k∣>kFak ck↑†c−k↓†∣FS⟩| \psi \rangle =\sum_{\lvert \bm{k}\rvert >k_{\mathrm F}}a_{\bm{k}}\,c^\dagger_{\bm{k}\uparrow}c^\dagger_{-\bm{k}\downarrow}| \mathrm{FS} \rangle

と置く(∣FS⟩| \mathrm{FS} \rangle は Fermi 球)。HH の固有値を Fermi 球のエネルギーから測って EE とすると、Schrödinger 方程式は係数について

(2ξk−E) ak=gV∑k′′ak′(5.4.4)(2\xi_{\bm{k}}-E)\,a_{\bm{k}}=\frac gV{\sum_{\bm{k}'}}'a_{\bm{k}'}\tag{5.4.4}

になる。右辺は k\bm{k} によらない定数なので、ak=C/(2ξk−E)a_{\bm{k}}=C/(2\xi_{\bm{k}}-E) と書くことができ、これを右辺に戻すと

1=gV∑k′12ξk−E=gN0∫0ℏωDdξ2ξ−E=λ2ln⁡2ℏωD−E−E1=\frac gV{\sum_{\bm{k}}}'\frac{1}{2\xi_{\bm{k}}-E}=gN_0\int_0^{\hbar\omega_{\mathrm D}}\frac{\mathrm{d}\xi}{2\xi-E}=\frac\lambda2\ln\frac{2\hbar\omega_{\mathrm D}-E}{-E}

を得る。和を積分に直すときは、殻の中で状態密度を N0N_0 で一定とした。これを E<0E<0 について解くと

E=−2ℏωDe2/λ−1≈−2ℏωD e−2/λ(λ≪1)(5.4.5)E=-\frac{2\hbar\omega_{\mathrm D}}{\mathrm{e}^{2/\lambda}-1}\approx-2\hbar\omega_{\mathrm D}\,\mathrm{e}^{-2/\lambda}\qquad(\lambda\ll1)\tag{5.4.5}

である。λ>0\lambda>0 でありさえすれば、つまり引力がどれほど弱くても、2個の電子は Fermi 球のエネルギーより低い束縛状態を作る。

真空の中の2個の粒子では、3次元で束縛状態を作るには引力の強さが一定の値を超えなければならない(例題 5.4.1)。Fermi 球があると事情が変わるのは、2個の電子が Fermi 面の直上の、状態密度 N0N_0 が有限な所から始まるからである。E→0E\to0 で積分 ∫0dξ/(2ξ−E)\int_0\mathrm{d}\xi/(2\xi-E) が対数で発散するので、どれほど小さな λ\lambda でも、∣E∣\lvert E\rvert を十分小さく選べば右辺が 11 になる。これは2次元の束縛状態と同じ構造で、Fermi 面の上で状態密度が一定の値に保たれることが要点である。

束縛エネルギーの e−2/λ\mathrm{e}^{-2/\lambda} は、λ=0\lambda=0 のまわりで何回微分しても 00 になる関数で、λ\lambda のべき級数のどの項にも現れない。引力を摂動として何次まで足しても、束縛状態は出てこない。正常な金属から摂動で超伝導へ進むことができないのはこのためで、第2部第8章の Peierls 転移のギャップ e−1/(2λ)\mathrm{e}^{-1/(2\lambda)} も同じ型だった。

Cooper の問題は、Fermi 球が不安定であることを示すが、対を作るのは足した2個だけで、Fermi 球の中の電子は動かないとした。Fermi 面のまわりの電子がみな対を作り始めると、互いの席をふさぎ合うので、多数の対を同時に扱う必要がある。それが次節の道具である。

例題 5.4.1 Cooper 対の束縛エネルギーと大きさ ★★

オリジナル

  1. (1) λ=0.3\lambda=0.3、ℏωD=30 meV\hbar\omega_{\mathrm D}=30\,\mathrm{meV} として、(5.4.5) の厳密な形と近似の形で ∣E∣\lvert E\rvert を求めよ。
  2. (2) 対の大きさの目安 ℏvF/∣E∣\hbar v_{\mathrm F}/\lvert E\rvert を、vF=1.5×106 m s−1v_{\mathrm F}=1.5\times10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}} として求めよ(ℏ=1.0546×10−34 J s\hbar=1.0546\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、e=1.602×10−19 Ce=1.602\times10^{-19}\,\mathrm C)。
  3. (3) Fermi 球の無い真空で、3次元の自由な2粒子が、相対運動のエネルギー ε\varepsilon が εc\varepsilon _{\mathrm c} 以下の状態の間だけで一定の引力 −g/V-g/V を受けるとする。相対運動の状態密度を AεA\sqrt\varepsilon と書くと、束縛の条件は 1=g∫0εcAε dε2ε+∣E∣1=g\int_0^{\varepsilon _{\mathrm c}}\dfrac{A\sqrt\varepsilon \,\mathrm{d}\varepsilon }{2\varepsilon +\lvert E\rvert } になる。束縛状態が現れるための gg の条件を求めよ。
解答

(1) 2/λ=6.6672/\lambda=6.667、e6.667=785.1\mathrm{e}^{6.667}=785.1 なので、厳密な形では ∣E∣=60 meV/784.1=0.0765 meV\lvert E\rvert =60\,\mathrm{meV}/784.1=0.0765\,\mathrm{meV}、近似の形では 60 meV×e−6.667=0.0764 meV60\,\mathrm{meV}\times\mathrm{e}^{-6.667}=0.0764\,\mathrm{meV} である。両者の差は 0.13%0.13\% で、e−2/λ\mathrm{e}^{-2/\lambda} が小さいので近似で十分である。ℏωD\hbar\omega_{\mathrm D} の 400400 分の 11 ほどで、温度に直すと 0.89 K0.89\,\mathrm K になる。

(2) ∣E∣=0.0765×10−3×1.602×10−19 J=1.22×10−23 J\lvert E\rvert =0.0765\times10^{-3}\times1.602\times10^{-19}\,\mathrm J=1.22\times10^{-23}\,\mathrm J で、ℏvF/∣E∣=1.29×10−5 m≈13 μm\hbar v_{\mathrm F}/\lvert E\rvert =1.29\times10^{-5}\,\mathrm m\approx13\,\mu\mathrm m である。電子どうしの平均の間隔(0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} の桁)の 10510^5 倍もあり、1個の対の広がりの中に非常に多くのほかの対が重なっている。対を小さな分子のように別々の粒子とみなすことはできず、Fermi 面のまわりの電子全体を一度に扱う必要があることが、この数から分かる。

(3) 左辺の積分は ∣E∣\lvert E\rvert を小さくするほど大きくなり、∣E∣→0\lvert E\rvert \to0 で最大値 gA∫0εcdε/(2ε)=gAεcgA\int_0^{\varepsilon _{\mathrm c}}\mathrm{d}\varepsilon /(2\sqrt\varepsilon )=gA\sqrt{\varepsilon _{\mathrm c}} に近づく。これが 11 より小さければ解は無いので、束縛状態の条件は gAεc>1gA\sqrt{\varepsilon _{\mathrm c}}>1 である。AεcA\sqrt{\varepsilon _{\mathrm c}} は引力の働く範囲の上端の状態密度なので、「引力の強さ×状態密度」が 11 を超えることが必要になる。Cooper の問題では状態密度が下端で 00 にならず N0N_0 のままなので、積分が ln⁡(1/∣E∣)\ln(1/\lvert E\rvert ) で発散し、この閾値が消える。

木下の勉強ステータス

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