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この章で選ぶ H^\hat H:ホッピングが結合の長さで変わる鎖

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第8章 ポリアセチレン:Peierls 転移と SSH 模型
目次
  1. SSH 模型
  2. 2量体化した配置
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第8章 §2.8.1 ★★★ SSH 模型は「tight-binding の鎖+ホッピングの長さ依存+格子のばね」の3項からなる

第2部のここまでの章では、原子の位置を固定し、その上の電子の H^\hat H だけを対角化してきた。原子が等間隔に並んだ鎖に、原子1個あたり電子1個を入れると、バンドは半分まで詰まり、Fermi 準位はバンドの中にあるので金属になる(第2部第7章)。ところが、炭素原子が1次元に並んだポリアセチレン (CH)x(\mathrm{CH})_x は、この数え方なら金属のはずなのに、実際には 1.4 eV1.4\,\mathrm{eV} 程度のギャップをもつ半導体である。原因は、鎖が等間隔のままでいないことにある。炭素と炭素の結合は短いもの(二重結合)と長いもの(単結合)が交互に並び、単位胞が原子2個分に伸びている。

この章では、原子の位置 unu_n を数として H^\hat H に戻し、電子のエネルギーと格子のばねのエネルギーの和を unu_n について最小にする。選ぶ H^\hat H は Su・Schrieffer・Heeger の模型(SSH 模型)である。電子は第2部第3章の tight-binding の鎖と同じく隣へ飛び移るが、飛び移りの大きさ(ホッピング)が結合の長さで変わる。2.8.1節でこの H^\hat H を書き、2.8.2節で、単位胞を原子2個に広げた Bloch の定理を当てて 2×22\times2 の行列にする。2.8.3節では、2量体化(隣どうしの対ができる歪み)が必ず全エネルギーを下げることを示す。これが Peierls 転移(Peierls 不安定性)である。2.8.4節では、2量体化した鎖の端と、2つの2量体化の型の境目(ソリトン)に、ギャップの中央の準位が1つずつ現れることを示す。この準位の数は、第5部で扱うトポロジーの最初の例になっている。2.8.5節で削ったものと近似の裏付けの札を並べ、2.8.6節で実験の量と授業で習った形との対応を述べ、2.8.7節でまとめる。

SSH 模型

炭素原子が NN 個並んだ鎖を考える。各炭素には水素が1個付き、σ\sigma 結合の骨格を作る電子は結合と反結合の大きなギャップ(10 eV10\,\mathrm{eV} の桁)の中に閉じている。残る π\pi 電子は炭素1個あたり1個で、隣の炭素の pzp_z 軌道へ飛び移る。第2部第2章の Hückel 法と同じく、π\pi 電子だけを残し、隣どうしの飛び移りだけを残す。ここまでは等間隔の tight-binding の鎖そのものである。新しいのは、nn 番目の CH の組が鎖の向きに unu_n だけずれることを許し、結合が縮むとホッピングが大きくなるとすることである。ずれが小さいとして、ホッピングを結合の長さの変化 un+1−unu_{n+1}-u_n の1次まで展開する。σ\sigma 骨格は結合の長さを元に戻そうとするので、それをばね定数 KK のばねで表す。選ぶ H^\hat H は

H^SSH=−∑n∑σ=↑,↓[t−α(un+1−un)](c^n+1,σ†c^nσ+c^nσ†c^n+1,σ)+K2∑n(un+1−un)2(2.8.1)\hat H_{\mathrm{SSH}}=-\sum_{n}\sum_{\sigma=\uparrow,\downarrow}\bigl[t-\alpha(u_{n+1}-u_n)\bigr]\bigl(\hat c^\dagger_{n+1,\sigma}\hat c_{n\sigma}+\hat c^\dagger_{n\sigma}\hat c_{n+1,\sigma}\bigr) +\frac K2\sum_n(u_{n+1}-u_n)^2\tag{2.8.1}

である。t>0t>0 は等間隔のときのホッピング、α>0\alpha>0 は結合の長さの変化に対するホッピングの変化の割合(電子と格子の結合定数、単位 eV/A˚\mathrm{eV/\AA})である。サイトのエネルギー εa\varepsilon _{\mathrm a} は全部のサイトで同じなので 00 に取った。この章では格子の運動エネルギー ∑nPn2/(2M)\sum_n P_n^2/(2M) を書かず、unu_n を時間によらない数とする(Born–Oppenheimer 近似で原子核を止めたもの。第1部第1章)。unu_n を決めると電子の部分は2次形式の H^\hat H になり、第2部の道具で対角化できる。全エネルギーは、電子の基底エネルギーとばねのエネルギーの和である。そのうえで、全エネルギーが最小になる unu_n の並びを探す。

SSH 模型の原論文は W. P. Su, J. R. Schrieffer and A. J. Heeger (1979), Phys. Rev. Lett. 42, 1698、詳しい版は同じ著者 (1980), Phys. Rev. B 22, 2099 である。後者はトランス型ポリアセチレンについて

t=2.5 eV,α=4.1 eV/A˚,K=21 eV/A˚2(2.8.2)t=2.5\,\mathrm{eV},\qquad \alpha=4.1\,\mathrm{eV/\AA},\qquad K=21\,\mathrm{eV/\AA^2}\tag{2.8.2}

を使った。tt は π\pi バンドの幅 4t=10 eV4t=10\,\mathrm{eV} から、KK は σ\sigma 骨格のばね定数から取り、α\alpha はギャップが吸収の実験の値 1.4 eV1.4\,\mathrm{eV} に合うように選んだ値である。この章の数値は全部この3つから計算する。鎖の向きに測った炭素の間隔は、SSH にならって a=1.22 A˚a=1.22\,\mathrm{\AA} とする(長さ約 1.40 A˚1.40\,\mathrm{\AA} の結合がジグザグに並んだ鎖を、鎖の軸へ射影した間隔の目安)。

2量体化した配置

半分詰まった鎖で調べるのは、1つおきに逆向きにずれる配置

un=(−1)nu(2.8.3)u_n=(-1)^n u\tag{2.8.3}

である。このとき un+1−un=−2(−1)nuu_{n+1}-u_n=-2(-1)^nu なので、nn 番目の結合のホッピングは

tn=t+2αu(−1)n,t1≔t+y (n が偶数),t2≔t−y (n が奇数),y≔2αu(2.8.4)t_n=t+2\alpha u(-1)^n,\qquad t_1\coloneqq t+y\ (n\text{ が偶数}),\quad t_2\coloneqq t-y\ (n\text{ が奇数}),\quad y\coloneqq 2\alpha u\tag{2.8.4}

と交互に大小が入れ替わる。u>0u>0 なら偶数番目の結合が縮んで強く(二重結合)、奇数番目の結合が伸びて弱く(単結合)なる。u<0u<0 はその逆で、2つの配置は鎖を1サイトずらすと重なる。したがって、2量体化した配置のエネルギーは uu の偶関数で、u>0u>0 と u<0u<0 の2つの基底状態は同じエネルギーをもつ。ばねのエネルギーは結合1本あたり K2(2u)2=2Ku2\frac K2(2u)^2=2Ku^2、サイト1個あたりも 2Ku22Ku^2 である。

お気持ち

2量体化は、tight-binding の鎖の上で「どの隣どうしが組になるか」を決めることにあたる。化学の言葉では、炭素の鎖の二重結合と単結合の並び(Kekulé 構造)を1つ選ぶことである。2つの Kekulé 構造(u>0u>0 と u<0u<0)は同じエネルギーなので、どちらを選ぶかは鎖が自分で決める。2.8.4節のソリトンは、鎖の途中で選び方が入れ替わる所である。

例題 2.8.1 ポリアセチレンの2量体化の大きさを見積もる ★★

オリジナル式 (2.8.2) の値を使い、ずれの大きさを u=0.0397 A˚u=0.0397\,\mathrm{\AA}(2.8.3節で求める値)とする。

  1. (1) 2つのホッピング t1t_1, t2t_2 を求めよ。
  2. (2) 鎖の向きに測った結合の長さの変化は ±2u\pm2u である。結合が軸と 30∘30^\circ をなし、軸に垂直な向きには原子が動かないとして、短い結合と長い結合の長さの差を求めよ。
  3. (3) サイト1個あたりのばねのエネルギーを meV で求めよ。
解答

(1) y=2αu=2×4.1×0.0397=0.326 eVy=2\alpha u=2\times4.1\times0.0397=0.326\,\mathrm{eV} なので、t1=2.5+0.326=2.83 eVt_1=2.5+0.326=2.83\,\mathrm{eV}、t2=2.5−0.326=2.17 eVt_2=2.5-0.326=2.17\,\mathrm{eV} である。ホッピングの違いは tt の約 13%13\% で、小さな歪みでもホッピングは目に見えて変わる。

(2) 結合の向きの単位ベクトルの軸方向の成分は cos⁡30∘=3/2\cos30^\circ=\sqrt3/2 なので、軸方向のずれ ±2u\pm2u による結合の長さの変化は1次で ±2u⋅32=±3u\pm2u\cdot\frac{\sqrt3}{2}=\pm\sqrt3u である。短い結合と長い結合の差は 23u=2×1.732×0.0397≈0.138 A˚2\sqrt3u=2\times1.732\times0.0397\approx0.138\,\mathrm{\AA} になる。

(3) 2Ku2=2×21×0.03972≈0.0662 eV=66.2 meV2Ku^2=2\times21\times0.0397^2\approx0.0662\,\mathrm{eV}=66.2\,\mathrm{meV} である。2.8.3節で見るとおり、電子のエネルギーはこれより少しだけ大きく(79.2 meV79.2\,\mathrm{meV})下がり、差し引き約 13 meV13\,\mathrm{meV} だけ全エネルギーが下がる。2量体化は、大きな得と大きな損のわずかな差で決まっている。

木下の勉強ステータス

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