この章で選ぶ :ホッピングが結合の長さで変わる鎖
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第8章 §2.8.1 ★★★ SSH 模型は「tight-binding の鎖+ホッピングの長さ依存+格子のばね」の3項からなる
第2部のここまでの章では、原子の位置を固定し、その上の電子の だけを対角化してきた。原子が等間隔に並んだ鎖に、原子1個あたり電子1個を入れると、バンドは半分まで詰まり、Fermi 準位はバンドの中にあるので金属になる(第2部第7章)。ところが、炭素原子が1次元に並んだポリアセチレン は、この数え方なら金属のはずなのに、実際には 程度のギャップをもつ半導体である。原因は、鎖が等間隔のままでいないことにある。炭素と炭素の結合は短いもの(二重結合)と長いもの(単結合)が交互に並び、単位胞が原子2個分に伸びている。
この章では、原子の位置 を数として に戻し、電子のエネルギーと格子のばねのエネルギーの和を について最小にする。選ぶ は Su・Schrieffer・Heeger の模型(SSH 模型)である。電子は第2部第3章の tight-binding の鎖と同じく隣へ飛び移るが、飛び移りの大きさ(ホッピング)が結合の長さで変わる。2.8.1節でこの を書き、2.8.2節で、単位胞を原子2個に広げた Bloch の定理を当てて の行列にする。2.8.3節では、2量体化(隣どうしの対ができる歪み)が必ず全エネルギーを下げることを示す。これが Peierls 転移(Peierls 不安定性)である。2.8.4節では、2量体化した鎖の端と、2つの2量体化の型の境目(ソリトン)に、ギャップの中央の準位が1つずつ現れることを示す。この準位の数は、第5部で扱うトポロジーの最初の例になっている。2.8.5節で削ったものと近似の裏付けの札を並べ、2.8.6節で実験の量と授業で習った形との対応を述べ、2.8.7節でまとめる。
SSH 模型
炭素原子が 個並んだ鎖を考える。各炭素には水素が1個付き、 結合の骨格を作る電子は結合と反結合の大きなギャップ( の桁)の中に閉じている。残る 電子は炭素1個あたり1個で、隣の炭素の 軌道へ飛び移る。第2部第2章の Hückel 法と同じく、 電子だけを残し、隣どうしの飛び移りだけを残す。ここまでは等間隔の tight-binding の鎖そのものである。新しいのは、 番目の CH の組が鎖の向きに だけずれることを許し、結合が縮むとホッピングが大きくなるとすることである。ずれが小さいとして、ホッピングを結合の長さの変化 の1次まで展開する。 骨格は結合の長さを元に戻そうとするので、それをばね定数 のばねで表す。選ぶ は
である。 は等間隔のときのホッピング、 は結合の長さの変化に対するホッピングの変化の割合(電子と格子の結合定数、単位 )である。サイトのエネルギー は全部のサイトで同じなので に取った。この章では格子の運動エネルギー を書かず、 を時間によらない数とする(Born–Oppenheimer 近似で原子核を止めたもの。第1部第1章)。 を決めると電子の部分は2次形式の になり、第2部の道具で対角化できる。全エネルギーは、電子の基底エネルギーとばねのエネルギーの和である。そのうえで、全エネルギーが最小になる の並びを探す。
SSH 模型の原論文は W. P. Su, J. R. Schrieffer and A. J. Heeger (1979), Phys. Rev. Lett. 42, 1698、詳しい版は同じ著者 (1980), Phys. Rev. B 22, 2099 である。後者はトランス型ポリアセチレンについて
を使った。 は バンドの幅 から、 は 骨格のばね定数から取り、 はギャップが吸収の実験の値 に合うように選んだ値である。この章の数値は全部この3つから計算する。鎖の向きに測った炭素の間隔は、SSH にならって とする(長さ約 の結合がジグザグに並んだ鎖を、鎖の軸へ射影した間隔の目安)。
2量体化した配置
半分詰まった鎖で調べるのは、1つおきに逆向きにずれる配置
である。このとき なので、 番目の結合のホッピングは
と交互に大小が入れ替わる。 なら偶数番目の結合が縮んで強く(二重結合)、奇数番目の結合が伸びて弱く(単結合)なる。 はその逆で、2つの配置は鎖を1サイトずらすと重なる。したがって、2量体化した配置のエネルギーは の偶関数で、 と の2つの基底状態は同じエネルギーをもつ。ばねのエネルギーは結合1本あたり 、サイト1個あたりも である。
お気持ち
2量体化は、tight-binding の鎖の上で「どの隣どうしが組になるか」を決めることにあたる。化学の言葉では、炭素の鎖の二重結合と単結合の並び(Kekulé 構造)を1つ選ぶことである。2つの Kekulé 構造( と )は同じエネルギーなので、どちらを選ぶかは鎖が自分で決める。2.8.4節のソリトンは、鎖の途中で選び方が入れ替わる所である。
例題 2.8.1 ポリアセチレンの2量体化の大きさを見積もる ★★
オリジナル式 (2.8.2) の値を使い、ずれの大きさを (2.8.3節で求める値)とする。
- (1) 2つのホッピング , を求めよ。
- (2) 鎖の向きに測った結合の長さの変化は である。結合が軸と をなし、軸に垂直な向きには原子が動かないとして、短い結合と長い結合の長さの差を求めよ。
- (3) サイト1個あたりのばねのエネルギーを meV で求めよ。
解答
(1) なので、、 である。ホッピングの違いは の約 で、小さな歪みでもホッピングは目に見えて変わる。
(2) 結合の向きの単位ベクトルの軸方向の成分は なので、軸方向のずれ による結合の長さの変化は1次で である。短い結合と長い結合の差は になる。
(3) である。2.8.3節で見るとおり、電子のエネルギーはこれより少しだけ大きく()下がり、差し引き約 だけ全エネルギーが下がる。2量体化は、大きな得と大きな損のわずかな差で決まっている。
木下の勉強ステータス
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