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何の実験の量で確かめるか・授業で習った形との対応

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第8章 ポリアセチレン:Peierls 転移と SSH 模型
目次
  1. 結合の長さ
  2. 光学ギャップ
  3. ドーピングと伝導度
  4. 授業で習った形との対応
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第8章 §2.8.6 ★★ 結合の長さの交替・光学ギャップ・ドーピングによる伝導度の変化で模型を確かめる。授業では Peierls 転移を1次元の自由電子で、結合の交替を Hückel 法の β\beta の交替で習う

結合の長さ

2量体化を直接見る量は結合の長さである。Yannoni と Clarke は核磁気共鳴(nutation NMR)でトランス型ポリアセチレンの炭素と炭素の結合の長さを測り、二重結合 1.36 A˚1.36\,\mathrm{\AA}、単結合 1.44 A˚1.44\,\mathrm{\AA} を得た(C. S. Yannoni and T. C. Clarke (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 1191)。差は 0.08 A˚0.08\,\mathrm{\AA} である。例題 2.8.1 で SSH 模型の値から求めた差は 0.138 A˚0.138\,\mathrm{\AA} で、桁は合うが模型の方が約 1.71.7 倍大きい。α\alpha と KK はギャップとばね定数から決めたので、結合の長さは模型にとって予言であり、この食い違いは 2.8.5節で削ったもの(電子どうしの相互作用・ホッピングの1次の打ち切り・軸に垂直なずれ)のどれかを見直す手がかりになる。どれが主な原因かは、この章の範囲では決めない。

光学ギャップ

ギャップ Eg=2Δ0E_{\mathrm g}=2\Delta_0 は光の吸収の端に現れる。SSH は吸収の実験から Eg=1.4 eVE_{\mathrm g}=1.4\,\mathrm{eV} を取り、それに合うように α\alpha を選んだので、ギャップは模型を合わせた量であって予言ではない。1次元のバンドの端では状態密度が (ε−Δ0)−1/2(\varepsilon -\Delta_0)^{-1/2} で発散する(van Hove 特異点。第2部第6章)ので、吸収は端で鋭く立ち上がるはずである。実際の吸収の端が丸まっていることは、鎖の長さのばらつき・格子の揺らぎ・電子と正孔の引力を、この模型が削っていることの表れと読むことができる。光の吸収の計算そのものは 第4部第6章 で扱う。

ドーピングと伝導度

ポリアセチレンにハロゲンなどを加えて電荷を出し入れすると(ドーピング)、電気伝導度は11桁にわたって連続に変わり、ドーパントの濃度が約 1%1\% の近くで金属と絶縁体の転移が起きる(C. K. Chiang, C. R. Fincher, Y. W. Park, A. J. Heeger, H. Shirakawa, E. J. Louis, S. C. Gau and A. G. MacDiarmid (1977), Phys. Rev. Lett. 39, 1098)。SSH 模型では、入れた電荷はまず電荷をもちスピンをもたないソリトンになる(2.8.4節)。ソリトンの濃度が上がって互いの幅 7a7a が重なると、ギャップの中央の準位が帯になり、2量体化そのものが弱まる。この描像で伝導度の増え方とスピンの数を説明しようとする議論がなされてきたが、試料の乱れが大きく、模型との定量的な比較はこの章では行わない。分子性固体の伝導は 第4部第8章 で扱う。

授業で習った形との対応

学部の固体物理の授業では、Peierls 転移を1次元の自由電子気体で説明することが多い。波数 2kF2k_{\mathrm F} の周期ポテンシャル Vcos⁡(2kFx)V\cos(2k_{\mathrm F}x) を入れると、±kF\pm k_{\mathrm F} の2つの平面波が混ざって Fermi 準位に幅 2∣V2kF∣2\lvert V_{2k_{\mathrm F}}\rvert のギャップが開き(ほぼ自由な電子の縮退摂動)、電子のエネルギーは ∣V∣2ln⁡(1/∣V∣)\lvert V\rvert ^2\ln(1/\lvert V\rvert ) に比例して下がる。一方、周期ポテンシャルを作る格子の歪みの損は歪みの2乗に比例するので、1次元の金属は不安定である、と結論する。この章の式 (2.8.10) は、tight-binding の鎖で同じことを示したもので、

2∣V2kF∣⏟自由電子のギャップ ⟷ 2Δ0=4∣y∣=8α∣u∣⏟SSH 模型のギャップ,−∣V∣2ln⁡1∣V∣⏟自由電子の得 ⟷ −2tπz2ln⁡4z⏟式 (2.8.10)\underbrace{2\lvert V_{2k_{\mathrm F}}\rvert }_{\text{自由電子のギャップ}}\ \longleftrightarrow\ \underbrace{2\Delta_0=4\lvert y\rvert =8\alpha\lvert u\rvert }_{\text{SSH 模型のギャップ}},\qquad \underbrace{-\lvert V\rvert ^2\ln\frac{1}{\lvert V\rvert }}_{\text{自由電子の得}}\ \longleftrightarrow\ \underbrace{-\frac{2t}{\pi}z^2\ln\frac4z}_{\text{式~(2.8.10)}}

と対応する。SSH 模型の利点は、歪み uu とギャップの関係 Δ0=4αu\Delta_0=4\alpha u が H^\hat H の中に書かれており、ばねの損と同じ変数で比べられることにある。

化学の授業では、同じことを Hückel 法の共鳴積分 β\beta の交替として習う。二重結合と単結合で β1\beta_1, β2\beta_2 を変えた Hückel 行列は、この章の hh で t1=−β1t_1=-\beta_1, t2=−β2t_2=-\beta_2 とおいたものである(β=−t\beta=-t。第2部第2章)。長いポリエンの吸収の波長が、鎖を長くしても一定の値で止まる(HOMO と LUMO の差が 00 に近づかない)ことは、結合の交替によるギャップ 2Δ02\Delta_0 の表れとして説明される(例題 2.8.6)。この説明は Longuet-Higgins と Salem が長い共役鎖の結合の交替を論じたもの(H. C. Longuet-Higgins and L. Salem (1959), Proc. R. Soc. Lond. A 251, 172)にさかのぼる。

例題 2.8.6 ポリエンの HOMO と LUMO の差は鎖を長くすると止まる ★★★

オリジナルサイト NN 個(NN は偶数)の開いた鎖に電子 NN 個を入れる。両端は二重結合(強い結合)とする。式 (2.8.2) の tt を使う。

  1. (1) 等間隔の鎖の固有値は εj=−2tcos⁡jπN+1\varepsilon _j=-2t\cos\frac{j\pi}{N+1}(j=1,…,Nj=1,\dots,N)である。HOMO と LUMO の差が 4tsin⁡π2(N+1)4t\sin\frac{\pi}{2(N+1)} になることを示し、N=6N=6, 2020, 100100 で求めよ。
  2. (2) 2量体化した鎖(t1=t+y0t_1=t+y_0 が両端、y0=0.326 eVy_0=0.326\,\mathrm{eV})を数値で対角化すると、HOMO と LUMO の差は N=6N=6, 2020, 100100 で 3.073.07, 1.731.73, 1.33 eV1.33\,\mathrm{eV} になる。N→∞N\to\infty で何に近づくか。
  3. (3) 両端が二重結合であることは、2.8.4節の端の準位とどう関係するか。
解答

(1) 電子 NN 個はスピンを入れて j=1,…,N/2j=1,\dots,N/2 を埋めるので、HOMO は j=N/2j=N/2、LUMO は j=N/2+1j=N/2+1 である。θ=πN+1\theta=\frac{\pi}{N+1} とおくとN2θ=π2−θ2\frac N2\theta=\frac\pi2-\frac\theta2、(N2+1)θ=π2+θ2(\frac N2+1)\theta=\frac\pi2+\frac\theta2 なので、差は −2tcos⁡(π2+θ2)+2tcos⁡(π2−θ2)=4tsin⁡θ2=4tsin⁡π2(N+1)-2t\cos(\frac\pi2+\frac\theta2)+2t\cos(\frac\pi2-\frac\theta2)=4t\sin\frac\theta2=4t\sin\frac{\pi}{2(N+1)} である。t=2.5 eVt=2.5\,\mathrm{eV} で、N=6N=6 は 10sin⁡(π/14)=2.23 eV10\sin(\pi/14)=2.23\,\mathrm{eV}、N=20N=20 は 10sin⁡(π/42)=0.747 eV10\sin(\pi/42)=0.747\,\mathrm{eV}、N=100N=100 は 10sin⁡(π/202)=0.156 eV10\sin(\pi/202)=0.156\,\mathrm{eV} で、N→∞N\to\infty で 00 に近づく。

(2) 2量体化した鎖の差は NN を増やすと減るが、N→∞N\to\infty で無限の鎖のギャップ Eg=4y0=1.30 eVE_{\mathrm g}=4y_0=1.30\,\mathrm{eV} に近づき、00 にはならない。等間隔の Hückel 法は長いポリエンの吸収が赤外へ移り続けると予言するが、結合の交替を入れると吸収は可視から近赤外の 1.3 eV1.3\,\mathrm{eV} 付近で止まる。

(3) 両端が強い結合なので、2.8.4節の議論から端の準位は無い。ギャップの中に準位が無いので、HOMO と LUMO の差がそのまま無限の鎖のギャップに近づく。両端が弱い結合(奇数個の炭素で端に余りがあるラジカル)なら、ギャップの中央に準位が現れて HOMO と LUMO の差は 00 に近づく。

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