何を削ったか
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第8章 §2.8.5 ★★★ 格子を古典的に止め、 電子どうしの相互作用と鎖どうしの結合を捨てた。2量体化そのものはこの模型の中で厳密に証明されている
格子の量子的な揺らぎ
式 (2.8.1) では を数として扱い、原子核の運動エネルギーを捨てた。原子核が電子より十分重いという Born–Oppenheimer の極限である。実際の CH の組は零点振動をもち、その振幅は と同じ桁になりうる。零点振動を入れると、2量体化の大きさは小さくなるが消えはしないと考えられている。この章の模型の中で、静止した格子・相互作用しない電子・半分詰まった輪について、全エネルギーを最小にする配置がちょうど2量体化(周期 )になることはT. Kennedy and E. H. Lieb (1987), Phys. Rev. Lett. 59, 1309 が証明した。これは「周期 より複雑な歪みが、さらにエネルギーを下げることはない」という主張まで含む。サイト数が の輪では、ホッピングと歪みのエネルギーの関数形によらず、最小は等間隔か2量体化のどちらかになることも示されている(E. H. Lieb and B. Nachtergaele (1995), Phys. Rev. B 51, 4777)。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (格子を古典的に止める。格子の零点振動を捨てる) | 証明 条件付き(静止した格子・相互作用しない電子・ホッピングが結合の長さの1次・調和なばねの範囲で、半分詰まった輪の最小が2量体化であることは Kennedy–Lieb 1987 が証明。格子の量子揺らぎを入れたときの2量体化の存続は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章・近似の数理 第13章
電子だけ・隣だけ・1次だけ
Hückel 法と同じく 電子だけを残し、 電子の役割はばね定数 にまとめた。ホッピングは隣どうしだけで、結合の長さの1次で打ち切った。 骨格のギャップ( の桁)が 電子と格子のエネルギー( 以下)より大きいことが、 電子を凍らせる根拠である。
近似の裏付け
型 A(射影) | 小さいもの 各炭素の 軌道1つが張る部分空間(隣どうしのホッピングだけを残し、結合の長さの1次で打ち切る) | 証明 条件付き(深い井戸の極限でトンネル積分の形まで証明済み。実在の炭素の間隔での誤差は要確認) | 行き先 近似の数理 第4章・近似の数理 第12章
電子どうしの相互作用
式 (2.8.1) には 電子どうしの Coulomb 相互作用が無い。同じ炭素の上の斥力 (Hubbard 模型。第1部第1章)を足すと、半分詰まった鎖は格子が歪まなくても Mott 絶縁体になりうるので、ギャップの起源が格子の歪みか電子の相関かを分けて考える必要が出る。ポリアセチレンの は と同じ桁と見積もられており、この章の数値は相互作用を平均に押し込めた有効なパラメータとして読むべきものである。 を入れた Peierls–Hubbard 模型でも、 個の輪の最小が等間隔か2量体化のどちらかであることは Lieb–Nachtergaele 1995 が示しているが、どちらになるかは と の大きさによる。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの ( 電子どうしの相互作用を捨てる) | 証明 要確認( は 1 の桁で小さくない。相互作用を入れた模型で2量体化が残るかは数値計算に頼る部分が多く、この章では前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第13章
鎖どうしの結合と温度
ポリアセチレンの試料は多数の鎖の束で、隣の鎖との間にも弱い飛び移りがある。この章ではそれを捨て、1本の鎖だけを扱った。有限の温度では、1本の鎖の2量体化の型( か )は熱で生じたソリトンによって区切られ、長い距離では乱れる。2つの基底状態のどちらかを選ぶ型の秩序は、短い距離の相互作用だけをもつ1次元の系では有限の温度で長い距離まで続かない。平均場の扱い(すべての鎖を1つの で表す)では2量体化が消える温度 が求まるが、これは本当の相転移の温度ではなく、ソリトンを作る費用と比べて意味を読む必要がある(例題 2.8.5)。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 鎖どうしの飛び移り (1本の鎖を扱い、平均場で温度を入れる) | 証明 要確認(1次元の系で有限の温度の長距離秩序が無いことと、鎖どうしの結合で3次元の秩序が回復する条件は、この章では原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第6章
例題 2.8.5 平均場の転移温度と熱で生じるソリトンの間隔 ★★
オリジナル有限の温度では、ギャップの中央を化学ポテンシャルとし、サイト1個あたりの自由エネルギーを
とする( は式 (2.8.6)。準位 の対の大きな正準ポテンシャル にスピンの2を掛けた)。
- (1) で が式 (2.8.8) に戻ることを確かめよ。
- (2) 式 (2.8.2) の値でこの を数値で最小にすると、 が になる温度は である。 を求め、弱い結合の極限の値 ( は Euler の定数。BCS と同じ値)と比べよ。
- (3) ソリトン1個のエネルギーを とする。 で熱で生じるソリトンの間隔は、おおよそ である。これを長さで求めよ()。
解答
(1) で なので、第1項は になる。第2項は で、式 (2.8.8) と一致する。
(2) なので、 である。弱い結合の値 より約 大きく、 がまだ弱い結合の側にあることを示している。 は高分子が分解する温度より桁で高い。平均場で見る限り、ポリアセチレンは存在しうるどの温度でも2量体化している。
(3) で 、 なので、間隔は である。1本の鎖が途切れずに続く長さはこれよりはるかに短いので、室温の鎖の上に熱で生じたソリトンはほとんど無く、2量体化の型は鎖ごとにそろっている。1次元では無限に長い鎖の秩序は有限の温度で必ず壊れるが、壊れる長さが試料の鎖の長さを桁で超えるので、実際の鎖ではその効果は現れない。
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