この巻の問い:書き下せるが解けないハミルトニアン
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第1章 §1.1.1 ★★★ 固体の は1行で書けるが、状態の空間が粒子数について指数関数的に大きくなるので、そのままでは解けない
固体を作っている粒子は、原子核と電子だけである。粒子どうしの力は Coulomb 力で、運動は Schrödinger 方程式に従う。したがって固体のハミルトニアンは1行で書き下すことができ、原理の上ではそれで話が終わっている。ところが、 の金属に含まれる電子はおよそ 個あり、この の固有状態を直接求める方法は無い。固体物理の理論は、この から見たい現象に要らない自由度を削り、残りを tight-binding 模型・Hubbard 模型・Heisenberg 模型・BCS 模型といった小さなモデルハミルトニアンに置き換えてから解く。この巻は、固体物理を「どのモデルハミルトニアンを選んだか」「そのとき何を削ったか」「削ってよかったことを何の実験の量で確かめるか」の3点で読み直す。
この章は巻全体の構成を示す。1.1.1節で出発点となる全体のハミルトニアンを書き、その大きさを数える。1.1.2〜1.1.4節では、巻を通して使う3つの削り方を順に述べる。1つ目はエネルギーの階層を使って速い自由度や高い励起を凍らせること、2つ目は残す軌道と相互作用を選んで小さな部分空間へ移ること、3つ目は対称性を使って残った問題を小さな行列に分けることである。1つ目と2つ目は近似で、3つ目は厳密な操作である。1.1.5節では、この巻の章の型と5つの部の地図を示し、近似ごとに置く「裏付けの札」の読み方を述べる。1.1.6節で授業で習った形との対応を並べ、1.1.7節でまとめる。導出の本体は後の部で行うので、この章では結果を先に借りる所がある。借りた所には、どの章で示すかを書き添える。
全体のハミルトニアン
電子 個(質量 、電荷 、位置 )と原子核 個(質量 、電荷 、位置 )からなる固体のハミルトニアンは
である。右辺は順に、電子の運動エネルギー、原子核の運動エネルギー、電子どうし・原子核どうしの Coulomb 斥力、電子と原子核の Coulomb 引力である。スピンと軌道の相互作用や原子核のスピンなど、相対論から来る小さな項はここに入っていない。それらは必要になった章(磁性の章など)で足す。Laughlin と Pines は、式 (1.1.1) が普段の物質の性質を決めるのに必要な情報をすべて含んでいるという意味で、これを「万物の理論」と呼んだ(R. B. Laughlin and D. Pines (2000), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 28)。
式 (1.1.1) に現れる定数は ・・・ と原子核の質量と電荷だけで、物質ごとの違いは と の並びだけにある。銅とシリコンの違い、金属と絶縁体の違い、磁石と超伝導体の違いは、すべてこの の固有状態の違いとして決まっている。困難は を書くことにはなく、その固有状態を求めることにある。
状態の空間は粒子数について指数関数的に大きい
困難の大きさを数えておく。最も簡単な例として、向きの自由度だけを持つスピン を 個並べた系を考えると、1個のスピンの状態は と の2つなので、 個の状態の空間の次元は
である。電子では、軌道を 個用意すると、スピンを含めた 個の席に 個の電子を Pauli の原理に従って入れる入れ方の数 が次元になる。どちらも粒子数について指数関数的に増える。状態を数値で持つには、この次元と同じ数の複素数を記憶する必要がある。 を1つ増やすと必要な記憶が2倍になるので、計算機の性能を上げても扱える はわずかしか延びない(例題 1.1.1)。
一方、固体に含まれる原子の数は、格子定数 の立方格子なら あたり で、 とすれば 個になる。式 (1.1.1) を数値でそのまま解くことは、原理の問題でなく大きさの問題として不可能である。
固体物理の理論がしていること
そこで固体物理の理論は、式 (1.1.1) を解くかわりに、見たい現象に要る自由度だけを残した小さな を選ぶ。たとえば金属の電気伝導を見たいときは、原子核を止め、内殻の電子を原子核にまとめ、外側の電子1個ずつが平均のポテンシャルの中を動くと考える(第2部・第4部)。磁性を見たいときは、電子の位置の自由度まで捨てて、原子ごとのスピンだけを残す(第5部)。どちらの場合も、選んだ は式 (1.1.1) から論理的に導いたものではなく、「この現象にはこの自由度が要り、ほかは要らない」という判断を含んでいる。その判断が正しかったかどうかは、選んだ から出てくる量を実験の量と比べて確かめるしかない。
この巻では、選んだ ごとに、削った自由度を毎回書き出す。削り方には決まった型があり、次の3節でそれを順に述べる。削ったものを書き出しておくと、モデルが実験と合わなくなったとき、どの削り方を見直せばよいかが分かる。
例題 1.1.1 スピンの数と必要な記憶の量 ★★
オリジナルスピン を 個並べた系の状態を、 個の複素振幅で表して計算機に記憶する。複素数1個に バイト(倍精度の実部と虚部)を使う。
- (1) のとき、状態1つを記憶するのに要るバイト数を求めよ。
- (2) 記憶の量が バイトの計算機で状態1つを持てる最大の を求めよ。
- (3) 記憶の量を 倍にすると、扱える はいくつ延びるか。
解答
(1) なので、 バイト、すなわち約 である。
(2) から 、。よって である。
(3) 記憶が バイトになると、 で になり、 延びる( なので、記憶を1000倍にすることはスピンを約10個足すことにあたる)。記憶を1000倍にしても扱えるスピンは10個ほどしか増えない。スピンの数が の桁の固体では、状態をそのまま持つ方法は使えない。
ほかの巻では
- 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第1章:同じ問いを力学の側から立て、理論を「どの ・ を選んだか」で読む姉妹の巻の入口が読める
木下の勉強ステータス
木下はまだこの記事を勉強していません。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com
← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ