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この章のまとめ

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第1章 序章:固体のハミルトニアンから何を削るか

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第1章 §1.1.7 ★★★ 全体の H^\hat H から、エネルギーの階層・部分空間・対称性の3つで模型を作り、削ったものを札と実験で確かめる

固体のハミルトニアン (1.1.1) は1行で書けるが、状態の空間の次元が粒子数について指数関数的に大きいので、そのままでは解けない。固体物理の理論は、見たい現象に要る自由度だけを残したモデルハミルトニアンを選ぶ。削り方には3つの型がある。1つ目はエネルギーの階層を使う削り方で、原子核の運動による電子の励起(Born–Oppenheimer 近似)、内殻の電子、kBTk_{\mathrm B} T より桁で高い励起を凍らせる。2つ目は残す軌道と相互作用を選ぶ削り方で、1電子近似・tight-binding 模型・Hubbard 模型・Heisenberg 模型がこれで得られる。3つ目は対称性で行列をブロックに分ける操作で、これは近似でなく、輪の tight-binding では並進の固有値 kk ごとに固有値 ε(k)=εa−2tcos⁡(ka)\varepsilon (k)=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(ka) が得られた。

この巻の各章は、選ぶ H^\hat H、当てる道具、出てくるもの、何を削ったか、何の実験の量で確かめるか、の順に書かれる。削った近似ごとに第V巻(近似の数理)の言葉で札を置き、実験の量と比べてずれたときに、どの削り方を見直せばよいかが分かるようにする。

次の章(第1部第2章)では、原子の並びそのもの(結晶構造)を周期関数として扱い、Fourier 変換の言葉で逆格子を導入する。バンド理論は第2部で、原子2個の 2×22\times2 行列から一から組み立てる。

この章で使った削り方

  • エネルギーの階層:κ=(m/M)1/4\kappa=(m/M)^{1/4} が小さいので原子核を止めて電子の E0(R)E_0(\bm{R}) を求める(B 型)。kBTk_{\mathrm B} T より桁で高い励起は基底状態に固定する。
  • 部分空間:局在した数個の軌道に限ると tight-binding H^TB\hat H_{\mathrm{TB}}(A 型)。同じサイトの斥力 UU だけ戻すと Hubbard、t/U→0t/U\to0 で Heisenberg(J=4t2/UJ=4t^2/U、B 型)。
  • 対称性:[H^, T^]=0\left[\hat H,\,\hat T\right]=0 なら並進の固有値 kk ごとに分かれる(厳密)。輪では ε(k)=εa−2tcos⁡(ka)\varepsilon (k)=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(ka)。
  • 各章で「何を削ったか」に札を置き、「何の実験の量で確かめるか」で模型の外れ方を見る。

総合問題 2サイトの Hubbard 模型で3つの削り方を通して使う ★★★

オリジナル2つのサイト(サイト1・2)に軌道が1個ずつあり、電子が 22 個入った Hubbard 模型 (1.1.8) を考える(εa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0、ホッピング t>0t>0、同じサイトの斥力 U≥0U\ge0)。

  1. (1) (使う道具:1.1.1節の状態の数え方)電子2個の状態の空間の次元を求めよ。そのうち全スピンの zz 成分が 00 のものはいくつあるか。
  2. (2) (使う道具:1.1.3節の2サイトの tight-binding)U=0U=0 のとき、電子1個の準位から基底状態のエネルギーを求めよ。
  3. (3) (使う道具:1.1.4節の対称性)2つのサイトを入れ替える操作とスピンの回転で H^\hat H が変わらないことを使うと、スピン1重項でサイトの入れ替えについて対称な状態は∣s⟩=12(c^1↑†c^2↓†−c^1↓†c^2↑†)∣0⟩| s \rangle =\frac{1}{\sqrt2}\bigl(\hat c^\dagger_{1\uparrow}\hat c^\dagger_{2\downarrow}-\hat c^\dagger_{1\downarrow}\hat c^\dagger_{2\uparrow}\bigr)| 0 \rangle と∣d⟩=12(c^1↑†c^1↓†+c^2↑†c^2↓†)∣0⟩| d \rangle =\frac{1}{\sqrt2}\bigl(\hat c^\dagger_{1\uparrow}\hat c^\dagger_{1\downarrow}+\hat c^\dagger_{2\uparrow}\hat c^\dagger_{2\downarrow}\bigr)| 0 \rangle の2つだけになる。この2つの間で H^\hat H が (0−2t−2tU)\begin{pmatrix}0&-2t\\-2t&U\end{pmatrix} になることを認めて、基底状態のエネルギーを求めよ。また、スピン3重項のエネルギーを求めよ。
  4. (4) (使う道具:1.1.3節の Heisenberg 模型)U≫tU\gg t で (3) の基底状態のエネルギーを t/Ut/U について展開し、最初の項が式 (1.1.9) の J(S^1⋅S^2−14)J\bigl(\hat{\bm{S}}_1\cdot\hat{\bm{S}}_2-\frac14\bigr) の1重項の固有値と一致することを示せ。
  5. (5) (使う道具:1.1.2節のエネルギーの階層)t=0.5 eVt=0.5\,\mathrm{eV}、U=5 eVU=5\,\mathrm{eV} のとき、厳密な基底エネルギーと Heisenberg 模型の値を比べて相対誤差を求めよ。さらに J/kBJ/ k_{\mathrm B} を K で求め、300 K300\,\mathrm K でスピンの自由度と電荷の自由度(大きさ UU 程度の励起)のどちらを残す必要があるかを述べよ。
解答

(1) スピンを含めた席は 2×2=42\times2=4 個で、電子2個の入れ方は (42)=6\binom42=6 通り、次元は 66 である。zz 成分が 00 のものは、上向きと下向きが1個ずつで、それぞれの置き場所が 22 通りずつなので 2×2=42\times2=4 個ある(残りの 22 個は両方上向きと両方下向き)。

(2) 電子1個の準位は式 (1.1.7) で ε1=ε2=0\varepsilon _1=\varepsilon _2=0 とおいた ∓t\mp t である。U=0U=0 では電子は独立なので、2個とも −t-t の結合軌道にスピンを逆向きにして入れ、基底エネルギーは −2t-2t である。

(3) 行列の固有値は E2−UE−4t2=0E^2-UE-4t^2=0 の解

E±=U±U2+16t22E_\pm=\frac{U\pm\sqrt{U^2+16t^2}}{2}

で、基底エネルギーは Eg=U−U2+16t22E_{\mathrm g}=\dfrac{U-\sqrt{U^2+16t^2}}{2} である。U=0U=0 では Eg=−2tE_{\mathrm g}=-2t で (2) と一致する。スピン3重項(例えば c^1↑†c^2↑†∣0⟩\hat c^\dagger_{1\uparrow}\hat c^\dagger_{2\uparrow}| 0 \rangle)では、同じ向きの電子は Pauli の原理で同じサイトに入れないので、ホッピングで移れる先が無く、斥力も働かない。エネルギーは 00 である。6つの状態のエネルギーは EgE_{\mathrm g}、00(3重項で3つ)、UU(サイト入れ替えで反対称な2重占有の状態)、E+E_+ で、和は 2U2U になり、H^\hat H の対角成分の和(2重占有の2状態が UU ずつ)と一致する。図 1.1.3 に Eg/tE_{\mathrm g}/t を U/tU/t の関数として示す。

(4) U2+16t2=U1+16t2/U2=U(1+8t2/U2−32t4/U4+⋯ )\sqrt{U^2+16t^2}=U\sqrt{1+16t^2/U^2}=U\bigl(1+8t^2/U^2-32t^4/U^4+\cdots\bigr) なので

Eg=−4t2U+16t4U3+O(t6U5).E_{\mathrm g}=-\frac{4t^2}{U}+\frac{16t^4}{U^3}+\mathcal{O}\Bigl(\frac{t^6}{U^5}\Bigr).

一方、S^1⋅S^2=12[S^tot2−S^12−S^22]=12[S(S+1)−32]\hat{\bm{S}}_1\cdot\hat{\bm{S}}_2=\frac12\bigl[\hat{\bm{S}}_{\mathrm{tot}}^2-\hat{\bm{S}}_1^2-\hat{\bm{S}}_2^2\bigr]=\frac12\bigl[S(S+1)-\frac32\bigr] は1重項(S=0S=0)で −34-\frac34、3重項(S=1S=1)で 14\frac14 である。よって J(S^1⋅S^2−14)J\bigl(\hat{\bm{S}}_1\cdot\hat{\bm{S}}_2-\frac14\bigr) は1重項で −J-J、3重項で 00 になる。J=4t2/UJ=4t^2/U とおくと、1重項の −J-J は EgE_{\mathrm g} の最初の項と一致し、3重項の 00 は (3) と厳密に一致する。

(5) Eg=5−25+42=5−5.38522≈−0.1926 eVE_{\mathrm g}=\dfrac{5-\sqrt{25+4}}{2}=\dfrac{5-5.3852}{2}\approx-0.1926\,\mathrm{eV}、Heisenberg 模型の値は −J=−4×0.25/5=−0.200 eV-J=-4\times0.25/5=-0.200\,\mathrm{eV} である。相対誤差は (−0.200+0.1926)/(−0.1926)≈−3.9%(-0.200+0.1926)/(-0.1926)\approx-3.9\%(Heisenberg 模型の方が 3.9%3.9\% 低い)で、(4) の次の項 16t4/U3=0.008 eV16t^4/U^3=0.008\,\mathrm{eV} がおおよそこの差を説明する。J/kB=0.200×1.602×10−19/1.381×10−23≈2.32×103 KJ/ k_{\mathrm B}=0.200\times1.602\times10^{-19}/1.381\times10^{-23}\approx2.32\times10^3\,\mathrm K である。300 K300\,\mathrm K の kBT=0.0259 eVk_{\mathrm B} T=0.0259\,\mathrm{eV} に比べて、電荷の励起 U≈5 eVU\approx5\,\mathrm{eV} は桁で高いので凍らせてよい。スピンの1重項と3重項の差 J=0.2 eVJ=0.2\,\mathrm{eV} は kBTk_{\mathrm B} T の約8倍で、300 K300\,\mathrm K では3重項の重み 3e−J/(kBT)≈1.3×10−33\mathrm{e}^{-J/( k_{\mathrm B} T)}\approx1.3\times10^{-3} はまだ小さいが、温度を 103 K10^3\,\mathrm K の桁に上げると無視できなくなる。したがって室温付近から上で残すべき自由度はスピンだけで、Heisenberg 模型への削り方が使える。

図

図 1.1.3 2サイトの Hubbard 模型の基底エネルギー。点線は厳密な値、実線は t/U→0t/U\to0 の極限で得た Heisenberg 模型の値 −J=−4t2/U-J=-4t^2/U である。U/tU/t が大きいほど2つは近づき、U/t=10U/t=10 での差は約 4%4\% である。U/tU/t が小さい所では Heisenberg 模型の値は発散し、電荷の自由度を削ることができない。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第13章:同じ2サイト Hubbard を厳密解と非制限 Hartree–Fock で比べ、比が 1/21/2 に落ちる理由が読める

木下の勉強ステータス

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