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1次元の不安定性と Hubbard 模型:Kennedy–Lieb と Lieb の定理

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第13章 固体編:多体と秩序(熱力学極限から BCS まで)
目次
  1. Peierls 不安定性
  2. Hubbard 模型と Lieb の定理
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第13章 §13.4 ★★ 平均場の答え(2量体化・反強磁性)のうち、何が厳密な定理として残り、何が近似の産物かを小さな系で切り分ける

Peierls 不安定性

半分詰まった1次元の鎖(ポリアセチレンの π\pi 電子。ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部第8章)では、格子が2量体化して隣り合う結合が交互に長短をくり返す。原子核を古典的に止め(第7章の Born–Oppenheimer)、結合の長さの変化に比例してホッピングが変わるとする模型

H^=−∑i,σ(t−α(ui+1−ui))(c^iσ†c^i+1,σ+h.c.)+K2∑i(ui+1−ui)2(13.8)\hat H=-\sum_{i,\sigma}\bigl(t-\alpha(u_{i+1}-u_i)\bigr)\bigl(\hat c^\dagger_{i\sigma}\hat c_{i+1,\sigma}+\mathrm{h.c.}\bigr)+\frac K2\sum_i(u_{i+1}-u_i)^2\tag{13.8}

で、電子の基底エネルギーとばねのエネルギーの和を格子の変位 uiu_i について最小にする。T. Kennedy と E. H. Lieb は、半分詰まった輪の上で、この最小を与える配置が周期2(2量体化した形。一様な配置もこの形に含まれる)であることを証明した(Kennedy, Lieb (1987), Phys. Rev. Lett. 59, 1309)。平均場的に「周期2を仮定してその振幅を最適化する」計算の仮定の部分が、定理で正当化されたことになる。

2量体化の振幅が無限に長い鎖で 00 にならないことは、次の計算でわかる。ホッピングが交互に t±δt\pm\delta になると、1サイトあたりの電子のエネルギーは

e(δ)−e(0)=−2δ2πt[ln⁡4tδ−12]+o(δ2)(13.9)e(\delta)-e(0)=-\frac{2\delta^2}{\pi t}\Bigl[\ln\frac{4t}{\delta}-\frac12\Bigr]+o(\delta^2)\tag{13.9}

だけ下がる(数値積分で確かめた)。ばねのエネルギーは κ2δ2\frac\kappa2\delta^2 の形(κ\kappa は KK と α\alpha で決まる定数)なので、δ→0\delta\to0 で対数のぶんだけ電子の利得が勝ち、どれほどばねが硬くても2量体化が起きる。(13.9) にばねを足して δ\delta で微分すると、最小は

δ∗=4t exp⁡(−1−πtκ4)(13.10)\delta^*=4t\,\exp\Bigl(-1-\frac{\pi t\kappa}{4}\Bigr)\tag{13.10}

にある。これは λ=4/(πtκ)\lambda=4/(\pi t\kappa) を結合の強さとみなすと e−1/λ\mathrm{e}^{-1/\lambda} の形で、13.5 節の BCS のギャップと同じ非解析性を持つ。κ=3/t\kappa=3/t では (13.10) が δ∗=0.139t\delta^*=0.139t、数値の最小が 0.144t0.144t である(図 13.3)。

図

図 13.3 無限に長い半分詰まりの鎖で、ばねの硬さ κ=3/t\kappa=3/t のときの全エネルギーの変化 κ2δ2+e(δ)−e(0)\frac\kappa2\delta^2+e(\delta)-e(0)。δ=0\delta=0 は極大で、2量体化した δ∗≈0.14t\delta^*\approx0.14t が最小になる。

Hubbard 模型と Lieb の定理

電子どうしの相互作用を最も簡単な形で入れたのが Hubbard 模型

H^=−t∑⟨ij⟩,σ(c^iσ†c^jσ+h.c.)+U∑in^i↑n^i↓(13.11)\hat H=-t\sum_{\langle ij\rangle,\sigma}\bigl(\hat c^\dagger_{i\sigma}\hat c_{j\sigma}+\mathrm{h.c.}\bigr)+U\sum_i\hat n_{i\uparrow}\hat n_{i\downarrow}\tag{13.11}

である。格子が2部格子(サイトを A と B に分けて、ホッピングが A と B の間にだけある)で、電子数がサイト数に等しい(半分詰まり)とき、次が成り立つ。

定理 13.6(Lieb(1989) ★★)

連結な2部格子の半分詰まりの Hubbard 模型は、U>0U>0 のとき基底状態が(スピンの zz 成分ごとの縮退を除いて)ただ1つで、その全スピンは S=12∣∣A∣−∣B∣∣S=\frac12\bigl\lvert\lvert A\rvert -\lvert B\rvert \bigr\rvert である(Lieb (1989), Phys. Rev. Lett. 62, 1201)。

A と B のサイト数が等しい格子(正方格子・鎖)では基底状態は一重項 S=0S=0 で、サイト数が違う格子では強磁性的な全スピンが残る。1次元の鎖については、E. H. Lieb と F. Y. Wu が Bethe 仮説で厳密に解き、半分詰まりでは U>0U>0 のどんなに小さい値でも電荷の励起にギャップがある(絶縁体である)ことを示した(Lieb, Wu (1968), Phys. Rev. Lett. 20, 1445)。

定理 13.6 は、平均場(Hartree–Fock)の答えと並べると意味がわかる。Hartree–Fock で UU が大きいときに出る反強磁性の解は、A の上は上向き、B の上は下向きと決まった向きを持ち、スピンの回転の対称性を破っている。有限の系の真の基底状態は一重項なので、この破れは近似の産物である。ただし熱力学極限では、一重項の基底状態と対称性を破った状態の区別があいまいになり、反強磁性の長距離秩序(スピンの相関が遠くまで残ること)は、それ自体として意味を持つ。有限の系で何が厳密で、どの性質が極限でだけ現れるかを、次の2つの例題で確かめる。

例題 13.4 4サイトと6サイトの輪の2量体化 ★★

オリジナルホッピングを交互に t+δt+\delta、t−δt-\delta とした NN サイトの輪(周期境界)に、電子を NN 個(スピン2重。半分詰まり)入れる。

  • (1) 2サイトを単位胞とみて、1電子の準位が ±∣(t+δ)+(t−δ)eik∣\pm\lvert (t+\delta)+(t-\delta)\mathrm{e}^{\mathrm{i} k}\rvert、k=2πj/(N/2)k=2\pi j/(N/2) であることを示せ。
  • (2) N=4N=4 と N=6N=6 で、基底エネルギー E(δ)E(\delta) を求めよ。
  • (3) δ\delta が小さいとき、2つの輪で E(δ)−E(0)E(\delta)-E(0) の振る舞いがどう違うかを述べ、その理由を準位の縮退から説明せよ。
解答

(1) 単位胞 nn の2つのサイトを A、B とし、Bloch の定理で c^nA∝eikn\hat c_{n\mathrm A}\propto\mathrm{e}^{\mathrm{i} kn} とおくと、kk ごとの 2×22\times2 行列は(0−(t1+t2e−ik)−(t1+t2eik)0)\begin{pmatrix}0&-(t_1+t_2\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k})\\-(t_1+t_2\mathrm{e}^{\mathrm{i} k})&0\end{pmatrix}(t1,2=t±δt_{1,2}=t\pm\delta)で、固有値は ±∣t1+t2eik∣\pm\lvert t_1+t_2\mathrm{e}^{\mathrm{i} k}\rvert。周期境界から eik(N/2)=1\mathrm{e}^{\mathrm{i} k(N/2)}=1。

(2) N=4N=4:k=0,πk=0,\pi で準位は ±2t\pm2t、±2δ\pm2\delta。下の2準位にスピン2重で4電子入れて E=−4t−4δE=-4t-4\delta。N=6N=6:k=0,±2π/3k=0,\pm2\pi/3 で ∣t1+t2eik∣2=t12+t22+2t1t2cos⁡k\lvert t_1+t_2\mathrm{e}^{\mathrm{i} k}\rvert ^2=t_1^2+t_2^2+2t_1t_2\cos k は k=0k=0 で 4t24t^2、k=±2π/3k=\pm2\pi/3 で t2+3δ2t^2+3\delta^2。下の3準位に6電子入れて E=−4t−4t2+3δ2E=-4t-4\sqrt{t^2+3\delta^2}。

(3) N=4N=4 では E(δ)−E(0)=−4δE(\delta)-E(0)=-4\delta と δ\delta の1次で下がる。δ=0\delta=0 で準位 ±2δ\pm2\delta が 00 に縮退していて、半分詰まりではそこにちょうど2電子が入るので、縮退が解ける1次の利得がそのまま現れる(分子の Jahn–Teller 効果と同じ)。N=6N=6 では E(δ)−E(0)≈−6δ2/tE(\delta)-E(0)\approx-6\delta^2/t と2次でしか下がらない。δ=0\delta=0 で最高の占有準位と最低の空準位の間にギャップ 2t2t があり、利得は2次の摂動 ∝δ2/(ギャップ)\propto\delta^2/(\text{ギャップ}) になる。ばねの κ2δ2\frac\kappa2\delta^2 と比べると、N=6N=6 では κ\kappa が十分大きければ一様な配置が残る。無限の鎖はギャップが 00 に閉じる極限で、利得は (13.9) の δ2ln⁡(1/δ)\delta^2\ln(1/\delta) になり、どの κ\kappa でも2量体化する。Kennedy–Lieb の定理の主張が輪の長さを4で割った余りによって細部を変えるのは、この縮退の有無のためである(検算スクリプト)。

例題 13.5 Hubbard の2量体:厳密解と非制限 Hartree–Fock ★★★

オリジナル2サイトの Hubbard 模型(ホッピング tt、斥力 U>0U>0)に電子を2個入れる。

  • (1) Sz=0S_z=0 の4つの状態 ∣↑↓,0⟩| \uparrow\downarrow,0 \rangle、∣0,↑↓⟩| 0,\uparrow\downarrow \rangle、∣↑,↓⟩| \uparrow,\downarrow \rangle、∣↓,↑⟩| \downarrow,\uparrow \rangle で H^\hat H を対角化し、基底エネルギーが E0=12(U−U2+16t2)E_0=\frac12\bigl(U-\sqrt{U^2+16t^2}\bigr) であることを示せ。基底状態の全スピンはいくつか。
  • (2) 上向きの電子を軌道 cos⁡θ∣1⟩+sin⁡θ∣2⟩\cos\theta| 1 \rangle +\sin\theta| 2 \rangle、下向きの電子を sin⁡θ∣1⟩+cos⁡θ∣2⟩\sin\theta| 1 \rangle +\cos\theta| 2 \rangle に入れた Slater 行列式(非制限 Hartree–Fock、UHF)のエネルギーがE(s)=−2ts+U2s2E(s)=-2ts+\frac U2s^2(s=sin⁡2θs=\sin2\theta)であることを示し、θ\theta について最小化せよ。
  • (3) U=8tU=8t で厳密解と UHF を比べ、U≫tU\gg t での両者の比を求めよ。UHF の解が持つ対称性の破れと、定理 13.6 との関係を述べよ。
解答

(1) フェルミオンの符号に注意して行列要素を求めると、ホッピングは二重占有の2状態と 12(∣↑,↓⟩−∣↓,↑⟩)\frac1{\sqrt2}(| \uparrow,\downarrow \rangle -| \downarrow,\uparrow \rangle ) だけをつなぐ。二重占有の対称な組み合わせ 12(∣↑↓,0⟩+∣0,↑↓⟩)\frac1{\sqrt2}(| \uparrow\downarrow,0 \rangle +| 0,\uparrow\downarrow \rangle )(エネルギー UU)と、この一重項(エネルギー 00)の間の行列要素は −2t-2t なので、2×22\times2 行列 (U−2t−2t0)\begin{pmatrix}U&-2t\\-2t&0\end{pmatrix} の小さい固有値が E0=12(U−U2+16t2)E_0=\frac12(U-\sqrt{U^2+16t^2}) である。基底状態は一重項と二重占有の混合で、全スピン S=0S=0。これは定理 13.6(∣A∣=∣B∣=1\lvert A\rvert =\lvert B\rvert =1)の主張どおりである。

(2) ホッピングの期待値は上向きの電子で −2tcos⁡θsin⁡θ=−tsin⁡2θ-2t\cos\theta\sin\theta=-t\sin2\theta、下向きも同じで、合計 −2ts-2ts。斥力は U(⟨n^1↑⟩⟨n^1↓⟩+⟨n^2↑⟩⟨n^2↓⟩)=U(cos⁡2θsin⁡2θ+sin⁡2θcos⁡2θ)=U2s2U(\langle \hat n_{1\uparrow} \rangle \langle \hat n_{1\downarrow} \rangle +\langle \hat n_{2\uparrow} \rangle \langle \hat n_{2\downarrow} \rangle )=U(\cos^2\theta\sin^2\theta+\sin^2\theta\cos^2\theta)=\frac U2s^2(上向きと下向きは別の軌道なので交換項はない)。0≤s≤10\le s\le1 で最小化すると、U≤2tU\le2t では s=1s=1(θ=π/4\theta=\pi/4、制限 Hartree–Fock と同じ)で E=−2t+U/2E=-2t+U/2、U>2tU>2t では s=2t/Us=2t/U で E=−2t2/UE=-2t^2/U。

(3) U=8tU=8t で厳密 E0=−0.472tE_0=-0.472t、UHF −0.25t-0.25t(比 0.530.53)。U≫tU\gg t では E0≈−4t2/UE_0\approx-4t^2/U(超交換 J=4t2/UJ=4t^2/U による一重項の安定化)、UHF は −2t2/U-2t^2/U で、比は 1/21/2 に近づく。UHF は A 型の近似なので真の値の上界になっている(図 13.4)。U>2tU>2t の UHF の解では、サイト1に上向き、サイト2に下向きが偏っていて、スピンの回転の対称性を破った「反強磁性」の状態になっている。しかし2サイトの真の基底状態は定理 13.6 のとおり一重項で、対称性を破っていない。UHF のエネルギーが低い側から厳密解に届かないのは、一重項の 12(∣↑,↓⟩−∣↓,↑⟩)\frac1{\sqrt2}(| \uparrow,\downarrow \rangle -| \downarrow,\uparrow \rangle ) が1つの Slater 行列式で書けないためである(検算スクリプト)。

図

図 13.4 Hubbard の2量体の基底エネルギー。UHF は U=2tU=2t で対称性を破った解に移り、U≫tU\gg t で厳密解の半分の安定化しか得られない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの (me/M)1/4→0(m_{\mathrm e}/M)^{1/4}\to0(格子を古典的に止める) | 証明 条件付き(静止した格子・相互作用しない電子・ホッピングが結合の長さの1次・調和なばねの範囲で、半分詰まりの輪の最小が周期2であることは Kennedy–Lieb 1987。格子の量子揺らぎと電子の相互作用を入れた場合は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 1つの Slater 行列式の集合(非制限 Hartree–Fock) | 証明 証明済み(上界であること。対称性を破った解は有限の系では近似の産物で、真の基底状態の全スピンは Lieb 1989) | 行き先 近似の数理 第5章

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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