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この章で選ぶ HH:周期ポテンシャルと Bravais 格子

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第2章 結晶構造と逆格子
目次
  1. 格子と基本並進ベクトル
  2. 単位胞と、その体積
  3. 格子と基底
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第2章 §1.2.1 ★★★ 結晶を「格子+基底」に分け、格子を基本並進ベクトル3本で書く。単位胞の体積と、格子点の数え方を決める

この巻で扱う固体の HH は、ほとんどが「原子が周期的に並び、電子がその作るポテンシャルの中を動く」という形をしている。1電子に話を限れば、選ぶ HH は

H^=p^22m+V(r^),V(r+R)=V(r)(R は格子ベクトル)\hat H=\frac{\hat{\bm{p}}^2}{2m}+V(\hat{\bm{r}}),\qquad V(\bm{r}+\bm{R})=V(\bm{r})\quad(\bm{R}\text{ は格子ベクトル})

の1行で書ける。この章では、この式の右側に書いた条件、つまり「どの R\bm{R} だけずらしても VV が変わらない」という条件を扱う。R\bm{R} の集まり(格子)をどう書き表すか、実在の結晶はどんな格子と原子の組でできているか、そして周期的な関数を Fourier 級数に展開したときに現れる波数の集まり(逆格子)がどんな形をしているかを、順に確かめる。

結論を先に書いておく。周期 R\bm{R} を持つ関数を平面波 eiq⋅r\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{r}} に分けると、現れる波数 q\bm{q} は飛び飛びの点 G\bm{G} だけに限られ、その点の集まりがもう1つの格子(逆格子)になる。逆格子の点は2つの意味を持つ。1つめに、逆格子の点は実空間で原子の並ぶ平面(格子面)の向きと間隔を表し、次の第1部第3章の回折はこの意味を使う。2つめに、結晶の中の波の波数 k\bm{k} は、逆格子の点 G\bm{G} だけずらしても、格子点の上では同じ波とみなせる。そのため、波数は1つの有限の領域(第1 Brillouin 域)の中だけで考えれば足りる。この2つめの性質は、第2部のバンド理論の出発点になる。

この章は幾何と Fourier 解析の章で、解析力学の道具は使わない。ただし最後の節で、この HH を選んだときに何を削ったか(原子核の運動と結晶の表面)を書き出し、近似の裏付けの札を2枚置く。

格子と基本並進ベクトル

結晶を、どの点から眺めても周りの様子がまったく同じに見える点の集まりとして抽象化したものを Bravais 格子と呼ぶ(名前は A. Bravais に由来する)。3次元の Bravais 格子は、1次独立な3本のベクトル a1,a2,a3\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3 を使って

定義 1.2.1(Bravais 格子と基本並進ベクトル)

R=n1a1+n2a2+n3a3,n1,n2,n3∈Z(1.2.1)\bm{R}=n_1\bm{a}_1+n_2\bm{a}_2+n_3\bm{a}_3,\qquad n_1,n_2,n_3\in\mathbb{Z}\tag{1.2.1}

と書ける点の全体である。a1,a2,a3\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3 を基本並進ベクトル、R\bm{R} を格子ベクトルと呼ぶ。

「どの格子点から眺めても同じ」という性質は、式 (1.2.1) から読み取れる。格子点 R0\bm{R}_0 から別の格子点 R\bm{R} を見た差 R−R0\bm{R}-\bm{R}_0 は、係数が整数の差になるだけなので、やはり式 (1.2.1) の形をしている。したがって、どの格子点に立っても、見える点の集まりは同じである。

基本並進ベクトルの選び方は1通りではない。a1′=a1+a2\bm{a}_1'=\bm{a}_1+\bm{a}_2、a2′=a2\bm{a}_2'=\bm{a}_2、a3′=a3\bm{a}_3'=\bm{a}_3 と取り替えても、整数係数の組み合わせで作れる点の全体は変わらない。一般に、整数を成分とし行列式が ±1\pm1 の 3×33\times3 行列 MM で ai′=∑jMijaj\bm{a}_i'=\sum_jM_{ij}\bm{a}_j と取り替えたものは、同じ格子の基本並進ベクトルになる。行列式が ±1\pm1 であることは、逆行列もまた整数の行列になり、元の aj\bm{a}_j を新しい ai′\bm{a}_i' の整数係数で書き戻せることを保証する。

単位胞と、その体積

a1,a2,a3\bm{a}_1,\bm{a}_2,\bm{a}_3 の張る平行六面体 {x1a1+x2a2+x3a3∣0≤xi<1}\{x_1\bm{a}_1+x_2\bm{a}_2+x_3\bm{a}_3\mid 0\le x_i<1\} を基本単位胞と呼ぶ。基本単位胞を格子ベクトルだけずらして並べると、空間が隙間も重なりもなく埋まる。基本単位胞の体積を

vc=∣a1⋅(a2×a3)∣(1.2.2)v_{\mathrm c}=\lvert \bm{a}_1\cdot(\bm{a}_2\times\bm{a}_3)\rvert\tag{1.2.2}

と書く(記号 vcv_{\mathrm c} は記法の正本に無い。体積 VV がポテンシャル V(r)V(\bm{r}) と重なるのを避けた)。基本並進ベクトルを取り替えても vcv_{\mathrm c} は変わらない。取り替えの行列 MM の行列式が ±1\pm1 だからである。基本単位胞の中には格子点がちょうど1個ある(角の8個の点はそれぞれ8個の胞に共有されるので、8×18=18\times\frac18=1)。空間を埋める形で、格子点を1個だけ含む胞を一般に基本単位胞と呼び、その形は1通りではないが体積はいつも vcv_{\mathrm c} である。対称性が見やすいように、格子点を2個以上含む大きな胞を使うこともあり、それを慣用単位胞と呼ぶ(第3節の立方格子で使う)。

格子と基底

実在の結晶では、各格子点に原子が1個ずつあるとは限らない。格子点ごとに同じ原子の組(基底)が置かれていると考える。基底の原子 s=1,…,nbs=1,\dots,n_{\mathrm b} の格子点からの位置を τs\bm{\tau}_s と書くと、結晶の原子の位置は R+τs\bm{R}+\bm{\tau}_s の全体になる(記号 τs\bm{\tau}_s・nbn_{\mathrm b} は記法の正本に無い。τ\tau は緩和時間と重なるので必ず太字と添字 ss を付ける)。原子 ss が単独で作るポテンシャルを vs(r)v_s(\bm{r}) とし、ポテンシャルが原子ごとの和で書けると近似すると、結晶のポテンシャルは

V(r)=∑R∑s=1nbvs(r−R−τs)(1.2.3)V(\bm{r})=\sum_{\bm{R}}\sum_{s=1}^{n_{\mathrm b}}v_s(\bm{r}-\bm{R}-\bm{\tau}_s)\tag{1.2.3}

になる。r\bm{r} を格子ベクトル R′\bm{R}' だけずらすと、和の番号 R\bm{R} が R−R′\bm{R}-\bm{R}' に付け替わるだけなので V(r+R′)=V(r)V(\bm{r}+\bm{R}')=V(\bm{r}) が成り立つ。原子ごとの和で書けるというのは近似である(化学結合で電子の分布が変形した分は入っていない)。ただし、周期性 V(r+R)=V(r)V(\bm{r}+\bm{R})=V(\bm{r}) はこの近似に関係なく成り立ち、この章の結論はすべて周期性だけから出る。式 (1.2.3) は第2節の例題と総合問題で、Fourier 係数を具体的に計算するためだけに使う。

図

図 1.2.1 2次元の六方格子(三角格子)。黒丸が格子点、赤の矢印が基本並進ベクトル a1=a(1,0)\bm{a}_1=a(1,0)、a2=a(12,32)\bm{a}_2=a(\frac12,\frac{\sqrt3}{2})。赤く塗った平行四辺形が基本単位胞で、左上の緑の六角形は同じ格子の別の基本単位胞(第4節の Wigner–Seitz 胞)。どちらも面積は 32a2\frac{\sqrt3}{2}a^2 である

例題 1.2.1 蜂の巣の並びは Bravais 格子ではない ★★

オリジナル炭素原子1層のグラフェンでは、原子が正六角形の頂点を共有して並ぶ(蜂の巣の並び)。隣り合う原子の間隔を dd とする。

  1. (1) 蜂の巣の並びそのものは Bravais 格子でないことを、1つの原子から見た最近接原子の向きで示せ。
  2. (2) 蜂の巣の並びは、図 1.2.1 の六方格子に2個の原子からなる基底を置いたものとして書ける。基底の位置 τA=0\bm{\tau}_{\mathrm A}=\bm{0}、τB=13(a1+a2)\bm{\tau}_{\mathrm B}=\frac13(\bm{a}_1+\bm{a}_2) とおき、格子定数 a=∣a1∣a=\lvert \bm{a}_1\rvert と dd の関係を求めよ。
  3. (3) 原子1個あたりの面積を dd で表せ。
解答

(1) 蜂の巣の並びでは、どの原子も最近接原子を3個持ち、その向きは互いに 120∘120^\circ ずつ離れている。ある原子 A で最近接の向きが0∘,120∘,240∘0^\circ,120^\circ,240^\circ だとすると、その最近接の原子 B から見た最近接の向きは 180∘,300∘,60∘180^\circ,300^\circ,60^\circ になる(A へ戻る向きが 180∘180^\circ)。A と B で周りの見え方が 180∘180^\circ 回した形に違うので、「どの点から眺めても同じ」という Bravais 格子の条件を満たさない。

(2) τB=a3(32,32)=a(12,36)\bm{\tau}_{\mathrm B}=\frac a3\bigl(\frac32,\frac{\sqrt3}{2}\bigr)=a\bigl(\frac12,\frac{\sqrt3}{6}\bigr) なので

∣τB∣=a14+112=a3.\lvert \bm{\tau}_{\mathrm B}\rvert =a\sqrt{\frac14+\frac1{12}}=\frac{a}{\sqrt3}.

原子 A から最も近い B 原子までの距離がこれなので、d=a/3d=a/\sqrt3、すなわち a=3 da=\sqrt3\,d である。

(3) 基本単位胞の面積は ∣a1×a2∣=32a2=332d2\lvert \bm{a}_1\times\bm{a}_2\rvert =\frac{\sqrt3}{2}a^2=\frac{3\sqrt3}{2}d^2 で、その中に原子が2個あるから、原子1個あたり 334d2≈1.30 d2\frac{3\sqrt3}{4}d^2\approx1.30\,d^2 である。

木下の勉強ステータス

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