解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第11章 §4.11.2 ★★★ 速度について1次の L=∑iai(x)x˙i−H(x) では、a の回転 ωij の逆行列が Poisson 括弧になる。正準でない座標の括弧もこれで読める
1階の Lagrangian
式 (4.11.3) は、変数 x=(r,k) の速度 x˙ について1次である。一般に、N 個の変数 x1,…,xN について
L(x,x˙)=i=1∑Nai(x)x˙i−H(x)(4.11.7)
の形の Lagrangian を1階の Lagrangian と呼ぶ。第1部第12章の相空間の作用 ∑ipiq˙i−H は、x=(q,p)、aq=p、ap=0 とした特別な場合である。外場が時間によるときは ai と H が t を含んでもよいが、以下の議論は t を止めて読めばそのまま通るので、時間によらない場合で書く。
命題 4.11.1(1階の Lagrangian の運動方程式と括弧)
反対称な行列
ωij(x):=∂xi∂aj−∂xj∂ai(4.11.8)
を定めると、式 (4.11.7) の Euler–Lagrange 方程式は
j∑ωijx˙j=∂xi∂H(i=1,…,N)(4.11.9)
である。ω が正則なら x˙i=∑j(ω−1)ij∂H/∂xj となり、
{F,G}:=i,j∑∂xi∂F(ω−1)ij∂xj∂G(4.11.10)
と定めると、任意の関数 F(x) について F˙={F,H} が成り立つ。とくに {xi,xj}=(ω−1)ij である。
証明
∂L/∂x˙i=ai(x) なので dtd∂x˙i∂L=∑j∂xj∂aix˙j、一方 ∂xi∂L=∑j∂xi∂ajx˙j−∂xi∂H。Euler–Lagrange 方程式は両者の差が 0 ということなので、∑j(∂iaj−∂jai)x˙j=∂iH、すなわち式 (4.11.9) である。ω の逆行列を掛ければ x˙ が求まり、F˙=∑i∂iFx˙i=∑i,j∂iF(ω−1)ij∂jH={F,H} となる。
正準の場合に確かめておく。x=(q,p)、a=(p,0) では ωqp=∂qap−∂paq=−1、ωpq=+1 なのでω=(01−10)、ω−1=(0−110) で、{q,p}=1 となる。式 (4.11.10) は第1部第11章(第1部第11章)の Poisson 括弧の流儀と一致する。
括弧の性質とゲージ
式 (4.11.10) の括弧は、双線形・反対称で Leibniz 則を満たすことが定義から直ちに分かる。Jacobi 恒等式は、ω が a の回転の形 (4.11.8) をしていること(∂iωjk+∂jωki+∂kωij=0 が恒等的に成り立つこと)から従う。この節では証明を省くが、第1部第11章の議論(時間発展が括弧を保つこと)がそのまま使えるのはこの条件のおかげである。
ai→ai+∂χ/∂xi と取り替えると L は全微分 dχ/dt だけ変わり、ω は変わらない(回転の中で ∂i∂jχ が消える)。したがって括弧と運動方程式は a のゲージによらず、ω だけで決まる。式 (4.11.4) の Berry 接続の取り替えは、この取り替えの一例である。
Darboux の定理と「正準でない座標」
ω が正則なら、x の近くで座標を取り替えて L を ∑iPiQ˙i−H の形(正準の形)にすることができる。これを Darboux の定理と呼ぶ。つまり1階の Lagrangian は、どれも正準変数を持つ普通の Hamilton 系であり、新しい力学ではない。違うのは、物理で自然に選ぶ座標(ここでは位置 r と波数 k)が正準変数になっているとは限らない、という点である。正準変数でない座標の組では括弧は {xi,xj}=(ω−1)ij で、0 や ±1 とは限らない。このことは第2部第2章で既に現れていた。磁場の中の荷電粒子では、運動学的運動量の成分どうしの括弧が {mvi,mvj}=q∑kϵijkBk だった。
例題 4.11.2 位置と速度を変数にした荷電粒子の括弧 ★★
オリジナル電荷 q、質量 m の粒子が z 方向の一様な磁場 B の中にある。A=2B(−y,x,0) にとり、位置 r と速度 v を変数とする1階の Lagrangian
L=(mv+qA(r))⋅r˙−(21m∣v∣2+qϕ(r))
を考える。
- 6行6列の ω を求めよ。
- ω−1 を求め、{xi,vj}、{xi,xj}、{vx,vy} を読み取れ。
- 運動方程式が Lorentz 力の式になることを確かめよ。
解答
- 変数の順を (x,y,z,vx,vy,vz) とする。ar=mv+qA、av=0 である。ωxixj=q(∂iAj−∂jAi)=q∑kϵijkBk より ωxy=qB、ωyx=−qB、他の位置どうしは 0。ωxivj=∂xiavj−∂vjaxi=−mδij、ωvixj=+mδij、ωvivj=0。ブロックで書けばω=(qBϵmI−mI0)(ϵ は xy 成分だけ ±1 の3行3列の反対称行列、I は単位行列)。
- ω−1=(XmathbbZYW) とおいて ωω−1=1 を解く。第2ブロック行から mX=0、mY=I なので X=0、Y=I/m。第1ブロック行から qBϵX−mZ=I で Z=−I/m、qBϵY−mW=0 で W=qBϵ/m2。したがって
{xi,vj}=mδij,{xi,xj}=0,{vx,vy}=m2qB.
最後の式は {mvx,mvy}=qB で、第2部第2章の結果と一致する。速度は正準変数ではないので、成分どうしの括弧が磁場の分だけ 0 からずれる。3. H=21m∣v∣2+qϕ なので x˙i={xi,H}=∑j{xi,vj}mvj=vi。v˙x={vx,H}=∑j{vx,xj}q∂jϕ+{vx,vy}mvy=−mq∂xϕ+mqBvy。y 成分も同様で、まとめると mv˙=q(−∇ϕ+v×B) という Lorentz 力の式になる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com