解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第9章 §5.9.4 ★★★ 時空の次元 d を連続な数とみて公式 (5.9.10) で積分を定義する。発散は d=4 の極 2/ϵ になり、2乗の発散は見えず、ゲージ不変性が保たれる
次元を連続にする
5.9.2節の公式 (5.9.10) の右辺は、d について Γ(n−d/2) の極を除いて解析的だった。次元正則化では、ループ積分を d 次元で行うと宣言し、その値を (5.9.10) の右辺で定める。d<2n の範囲では本物の積分と一致し、それ以外の d では解析接続で値が決まる。正則化のパラメータは
ϵ:=4−d(5.9.17)
で、ϵ→0 が元の4次元の理論である(第5部第11章の ϵ 展開と同じ記号を使う)。
d 次元では作用 S=∫ddxL を無次元に保つために、ϕ が質量の (d−2)/2 乗、λ が質量の 4−d=ϵ 乗の次元を持つ。λ を無次元のまま使うため、質量の次元を持つ量 μ を1つ導入して結合を λμϵ と書く。μ は切断 Λ と違って積分の範囲を制限しないが、次元を合わせるために必ず入り、対数の中に lnμ2 として現れる。
Γ 関数を 0 の近くで展開した
Γ(2ϵ)=ϵ2−γE+O(ϵ),Γ(−1+2ϵ)=−ϵ2−1+γE+O(ϵ)(5.9.18)
(γE=0.5772… は Euler の定数)と (4π)−d/2=(4π)−2(1+2ϵln4π+⋯)、Δ−ϵ/2=1−2ϵlnΔ+⋯ を使うと、泡の図 (5.9.8) は
μϵBd(p)=16π21[ϵ2−γE+ln4π+lnm2μ2−F(m2p2)]+O(ϵ)(5.9.19)
になる。p への依存 −F はここでも同じで、lnΛ2−1 や lnM2 があった位置に 2/ϵ−γE+ln4π+lnμ2 が入った。対数の発散 lnΛ2 が、d=4 の1位の極 2/ϵ に置き換わっている。

図 5.9.2 公式 (5.9.10) の d 依存の因子 Γ(n−d/2)。おたまじゃくし(n=1)は d=2 と d=4 に極を持ち、泡(n=2)は d=4 に極を持つ。4次元での発散は d=4 の極として現れ、2乗の発散は d=2 の極として別の場所に移る
2乗の発散は見えない
おたまじゃくし A を同じように計算すると(例題 5.9.4)
μϵAd=−16π2m2[ϵ2+1−γE+lnm24πμ2]+O(ϵ)(5.9.20)
で、切断の (5.9.12) にあった Λ2 に当たる項が無い。全体が m2 に比例するので、m→0 で質量の補正は 0 になる。2乗の発散が消えたのは、次元正則化が質量の次元を持つ量を m と μ しか持たず、μ は μϵ の形で対数の中にしか入らないためである。図 5.9.2 の言葉では、2乗の発散は d=2 の極(Γ(1−d/2) の d=2 での極)に移り、d=4 の近くでは見えない。
同じ理由で、質量の次元を持つ量を1つも含まない積分は次元正則化で 0 になる。たとえば ∫ddℓℓ−4 を ∣ℓ∣=κ で2つに分けると、大きな ℓ の側 ∫κ∞ℓd−5dℓ=κd−4/(4−d) は d<4 で収束し、小さな ℓ の側 ∫0κℓd−5dℓ=κd−4/(d−4) は d>4 で収束する。それぞれを解析接続して足すと 0 である。紫外の極と赤外の極が打ち消し合っているので、この「0」は発散が無いことを意味しない。5.9.5節の性質と組み合わせて、どちらの極がどの物理量に入るかを追う必要がある。
例題 5.9.4 おたまじゃくしを次元正則化する ★★★
オリジナル
- (1) 公式 (5.9.10) で n=1, Δ=m2, d=4−ϵ とし、μϵ を掛けたものを ϵ について展開して (5.9.20) を示せ。
- (2) (5.9.12) と比べ、lnΛ2 の係数が (5.9.20) の 2/ϵ の係数と一致することを確かめよ。Λ2 の項はどうなったか。
解答
(1) μϵI1(4−ϵ,m2)=μϵ(4π)2−ϵ/2Γ(−1+ϵ/2)(m2)1−ϵ/2=16π2m2Γ(−1+2ϵ)(m24πμ2)ϵ/2。(5.9.18) と (4πμ2/m2)ϵ/2=1+2ϵln(4πμ2/m2)+O(ϵ2) を掛けると、ϵ0 までで
16π2m2[−ϵ2−1+γE−lnm24πμ2]
で (5.9.20) になる(−ϵ2×2ϵln(⋯) の積が ϵ0 の対数の項を出す)。
(2) (5.9.12) は Λ≫m で 16π21[Λ2−m2ln(Λ2/m2)+O(m4/Λ2)] なので、lnΛ2 の係数は −m2/(16π2)。(5.9.20) の 2/ϵ の係数も −m2/(16π2) で一致する。対数の発散の係数は正則化の方法によらず、lnΛ2↔2/ϵ と読み替えられる。Λ2 の項には対応する項が無い。Λ2 は m2 に比例しない定数で、5.9.5節の言葉では「質量の多項式の0次の項」なので、正則化を変えると消えてよい部分である。
ゲージ不変性を保つ
次元正則化が対称性を保つ例を、荷電スカラー場と電磁場の理論(スカラー QED)で見る。第5部第5章で局所的な位相の変換から共変微分 Dα=∂α+iqAα を導いた(この節では4元の添字を α,β と書く)。∣Dαϕ∣2 を展開すると、光子1本と荷電粒子2本の頂点 −iq(k+k′)α(k,k′ は荷電粒子の運動量)と、光子2本と荷電粒子2本の頂点 2iq2ηαβ が出る。光子の2点関数への1ループの補正 iΠαβ(k) は、荷電粒子が回る泡の図と、2本の光子が1つの頂点につく図の和である。外の光子の運動量 k=0 で、この2つの図は
iΠαβ(0)=q2∫(2π)4d4ℓ[(ℓ2−m2+i0)24ℓαℓβ−ℓ2−m2+i02ηαβ](5.9.21)
を与える。ゲージ不変性から出る Ward の恒等式は Παβ(k)=(k2ηαβ−kαkβ)Π(k2) の形を要求するので、Παβ(0)=0 でなければならない。Παβ(0)=0 は光子が質量を持つことを意味する。
例題 5.9.5 光子に質量を与える正則化と与えない正則化 ★★★
オリジナル(5.9.21) の空間成分 Π11(0) を考える。
- (1) Wick 回転して Π11(0)=q2∫(2π)4d4ℓ[(ℓ2+m2)24ℓ12−ℓ2+m22](Euclid)を示せ。
- (2) 4次元の切断 ∣ℓ∣<Λ で計算し、Π11(0)=−16π2q2Λ2+m2Λ4 を示せ。
- (3) 次元正則化で計算し、任意の d で Π11(0)=0 を示せ。
解答
(1) ℓ0=iℓ4 で ℓ2−m2=−(ℓE2+m2)、ℓ1 はそのまま、η11=−1、d4ℓ=id4ℓE。第1項は 4ℓ12/(ℓE2+m2)2、第2項は −2(−1)/(−(ℓE2+m2))=−2/(ℓE2+m2) になり、全体の i が左辺の i と打ち消して示した式を得る。
(2) 球対称な切断では ℓ12 を4成分の平均 ℓ2/4 に置き換えてよいので、被積分関数は (ℓ2+m2)2ℓ2−ℓ2+m22=−(ℓ2+m2)2ℓ2+2m2。u=ℓ2 として 16π21∫0Λ2(u+m2)2u(u+2m2)du を計算する。u(u+2m2)=(u+m2)2−m4 なので
∫0Λ2[1−(u+m2)2m4]du=Λ2−m4(m21−Λ2+m21)=Λ2+m2Λ4.
したがって Π11(0)=−q2Λ4/(16π2(Λ2+m2))≈−q2Λ2/(16π2) で、0 でない。切断は光子に Λ の大きさの質量を与え、ゲージ不変性を壊す。泡の図とつけ根の図は、ゲージ不変性によって打ち消し合うはずの2つの量だが、切断はそれぞれの2乗の発散を別々に切り、打ち消しの相手をそろえない。
(3) d 次元の球対称性から ℓ12→ℓ2/d。(5.9.11) で n=2、(5.9.10) で n=1 とおくと
∫(2π)dddℓ(ℓ2+m2)2ℓ2=2d(4π)d/2Γ(1−d/2)md−2=2dI1(d,m2)
なので、Π11(0)=q2[d4⋅2dI1−2I1]=0。打ち消しは d のすべての値で起き、極を取り出す前に成り立っている。次元正則化は積分変数のずらしでも値を変えず(ずらしで公式の Δ が変わらない)、d 次元の Lorentz 対称性を保つので、ゲージ不変性から出る恒等式をそのまま満たす。
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