解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第9章 §5.9.2 ★★★ 虚時間への回転で積分を正の量にし、分母を1つにまとめ、∫ddℓ(ℓ2+Δ)−n を Γ 関数で書く。この公式が d について解析的であることが次元正則化の出発点
Wick 回転は虚時間への回転
5.9.1節で使った ℓ0=iℓ4 の置き換えの根拠を述べる。伝播関数 i/(ℓ2−m2+i0) の分母を ℓ0 の関数とみると、ωℓ=∣ℓ∣2+m2 として極は ℓ0=ωℓ−i0 と ℓ0=−ωℓ+i0 にある。1つ目は第4象限、2つ目は第2象限にあるので、実軸の上の ℓ0 の積分路を原点のまわりに反時計回りに 90∘ 回すと、積分路が通過する第1象限と第3象限には極が無い(図 5.9.1)。被積分関数が大きな ∣ℓ0∣ で十分速く減るなら、無限遠の円弧の寄与は 0 で、実軸の積分は虚軸の積分に等しい。虚軸の上で ℓ0=iℓ4 とおけば ℓ4 は実数を動く。
この置き換えは、時間 t を t=−iτ と虚時間にした操作の運動量版である。第5部第1章(第5部第1章)では、e−iHt をt=−iτ で e−Hτ に変え、量子統計の e−βH を虚時間の時間発展として読んだ。e−iℓ0t で t=−iτ、ℓ0=iℓ4 とおくとℓ0t=ℓ4τ で位相は実のまま保たれ、Minkowski の ℓ2 が負定値の −ℓE2 に、eiS が e−SE になる。Euclid の積分は、統計力学の分配関数と同じ形の、被積分関数が正の積分である。

図 5.9.1 ℓ0 の複素平面での Wick 回転。極は第2・第4象限にあるので、実軸の積分路(実線)を反時計回りに 90∘ 回して虚軸(点線)に重ねても、極をまたがない
Feynman パラメータ
泡の図 B(p) は分母が2つの積なので、大きな ℓ での振る舞いと p への依存が混ざっている。分母を1つにまとめる恒等式
ab1=∫01[xa+(1−x)b]2dx(a,b>0)(5.9.7)
を使う(xa+(1−x)b を x で微分すると a−b なので、右辺は [−(a−b)(xa+(1−x)b)1]01=a−b1(b1−a1)=ab1)。x をFeynman パラメータと呼ぶ。a=(ℓ+p)2+m2, b=ℓ2+m2 とおくと xa+(1−x)b=(ℓ+xp)2+x(1−x)p2+m2 なので、積分変数を ℓ→ℓ−xp とずらして
B(p)=∫01dx∫(2π)4d4ℓ(ℓ2+Δ)21,Δ:=m2+x(1−x)p2(5.9.8)
を得る。外の運動量 p は Δ の中だけに入り、ループ運動量の積分は球対称になった。ただし、ずらし ℓ→ℓ−xp が許されるかどうかは、積分が発散している以上、正則化の方法によって答えが違う(5.9.3節)。
d 次元の積分の公式
球対称な積分を d 次元で一度に計算しておく。出発点は Gauss 積分 ∫ddℓe−tℓ2=(π/t)d/2(1次元の積の d 乗)と、Γ 関数の定義から出る Schwinger の表示
(ℓ2+Δ)n1=Γ(n)1∫0∞dttn−1e−t(ℓ2+Δ)(5.9.9)
である。この2つから次の公式が出る(導出は例題 5.9.2)。
命題 5.9.2(d 次元の1ループ積分 ★★★)
Δ>0、n>d/2 のとき
In(d,Δ):=∫(2π)dddℓ(ℓ2+Δ)n1=(4π)d/21Γ(n)Γ(n−d/2)Δd/2−n,(5.9.10)
∫(2π)dddℓ(ℓ2+Δ)nℓ2=(4π)d/212dΓ(n)Γ(n−d/2−1)Δd/2−n+1(n>d/2+1).(5.9.11)
被積分関数が ℓ−2n で減り、測度が ℓd−1dℓ なので、収束の条件は d<2n である。左辺は d が整数のときにしか意味を持たないが、右辺は d の関数として Γ(n−d/2) の極(d=2n,2n+2,…)を除く複素平面全体で解析的である。この右辺で左辺を d について延長するのが 5.9.4節の次元正則化である。d 次元の単位球面の面積 Sd−1=2πd/2/Γ(d/2) も同じ Gauss 積分から出て、d=2,3,4 で 2π, 4π, 2π2 になる。
例題 5.9.2 Schwinger の表示から公式を出す ★★★
オリジナル
- (1) (5.9.9) と Gauss 積分を使って (5.9.10) を示せ。
- (2) d=4, n=3 と d=3, n=2 の値を書き、例題 5.9.1 (2) の Euclid の積分と一致することを確かめよ。
- (3) (5.9.11) を、ℓ2=(ℓ2+Δ)−Δ と分けて (5.9.10) から示せ。
解答
(1) (5.9.9) を代入し、収束する範囲 n>d/2 で積分の順序を入れ替えると
In=Γ(n)1∫0∞dttn−1e−tΔ∫(2π)dddℓe−tℓ2=Γ(n)(4π)d/21∫0∞dttn−1−d/2e−tΔ.
ここで ∫ddℓe−tℓ2/(2π)d=(π/t)d/2/(2π)d=(4πt)−d/2 を使った。残りの t の積分は Γ(n−d/2)Δd/2−n なので (5.9.10) を得る。t の積分の収束は t→0(大きな ℓ に当たる)で n−d/2>0 を要求し、これが紫外の収束の条件である。
(2) d=4, n=3:16π21Γ(3)Γ(1)Δ−1=32π2Δ1。Δ=m2 とおくと例題 5.9.1 (2) の Euclid の積分 1/(32π2m2) と一致する。d=3, n=2:(4π)3/21Γ(2)Γ(1/2)Δ−1/2=8π3/2Δπ=8πΔ1。これは (2π)34π∫0∞(ℓ2+Δ)2ℓ2dℓ=2π21⋅4Δπ と一致する。
(3) (ℓ2+Δ)nℓ2=(ℓ2+Δ)n−11−(ℓ2+Δ)nΔ なので
∫(2π)dddℓ(ℓ2+Δ)nℓ2=(4π)d/2Δd/2−n+1[Γ(n−1)Γ(n−1−d/2)−Γ(n)Γ(n−d/2)].
Γ(n−d/2)=(n−1−d/2)Γ(n−1−d/2)、Γ(n)=(n−1)Γ(n−1) を使うと括弧は Γ(n)Γ(n−1−d/2)[(n−1)−(n−1−d/2)]=2dΓ(n)Γ(n−1−d/2) で、(5.9.11) になる。検算では (d,n) を6通り((5.9.10))と4通り((5.9.11))選び、動径の数値積分と照合した。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com