tecktom.com

Grönwall の不等式とデータへの連続依存

2026年10月9日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2章 解けない方程式を調べる方法(定性的理論の基礎)
目次
  1. Grönwall の不等式
  2. データへの連続依存と誤差評価
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第2章 §2.3 ★★★ 近似解と真の解の距離を測るすべての評価の原型。第6章・第7章の誤差評価はこの不等式の変奏である

Grönwall の不等式

補題 2.5(Grönwall の不等式 ★★★)

u(t)u(t) を [0,T][0,T] 上の非負連続関数、a,b≥0a,b\ge0、L>0L>0 とする。

u(t)≤a+∫0t(b+L u(s))ds(0≤t≤T)u(t)\le a+\int_0^t\bigl(b+L\,u(s)\bigr)\mathrm{d} s\qquad(0\le t\le T)

ならば

u(t)≤a eLt+bL(eLt−1)(0≤t≤T).(2.3)u(t)\le a\,\mathrm{e}^{Lt}+\frac{b}{L}\left(\mathrm{e}^{Lt}-1\right)\qquad(0\le t\le T).\tag{2.3}

証明

まず b=0b=0 の場合を示す。W(t)=a+L∫0tu(s) dsW(t)=a+L\int_0^tu(s)\,\mathrm{d} s とおくと WW は微分可能で、仮定 u≤Wu\le W から W′(t)=Lu(t)≤LW(t)W'(t)=Lu(t)\le LW(t) である。したがって (e−LtW(t))′=e−Lt(W′−LW)≤0\bigl(\mathrm{e}^{-Lt}W(t)\bigr)'=\mathrm{e}^{-Lt}(W'-LW)\le0 となり、e−LtW(t)≤W(0)=a\mathrm{e}^{-Lt}W(t)\le W(0)=a、つまり u(t)≤W(t)≤aeLtu(t)\le W(t)\le a\mathrm{e}^{Lt} を得る。一般の bb に対しては v=u+b/Lv=u+b/L とおくと、仮定は v(t)≤(a+b/L)+L∫0tv(s) dsv(t)\le(a+b/L)+L\int_0^tv(s)\,\mathrm{d} s となる。b=0b=0 の場合を vv に当てはめると v≤(a+b/L)eLtv\le(a+b/L)\mathrm{e}^{Lt}、移項して (2.3) を得る。

この不等式の中身は、「自分自身に比例する速さでしか増えない量は、指数関数より速くは増えない」ということである。微分の形 u′≤b+Luu'\le b+Lu なら比較で当たり前に見えるが、積分の形で述べておくと、uu が微分できない場合(ノルムの差など)にも使える点が重要である。

データへの連続依存と誤差評価

定理 2.6(連続依存と誤差評価 ★★★)

FF は Rd\mathbb{R}^d 上で Lipschitz 定数 LL をもつとする。yy を y′=F(y)y'=F(y) の解、zz を摂動を受けた方程式 z′=F(z)+r(t)z'=F(z)+r(t)(∣r(t)∣≤δ\lvert r(t)\rvert \le\delta)の解とすると、

∣y(t)−z(t)∣≤∣y(0)−z(0)∣ eLt+δL(eLt−1).(2.4)\lvert y(t)-z(t)\rvert \le\lvert y(0)-z(0)\rvert \,\mathrm{e}^{Lt}+\frac{\delta}{L}\left(\mathrm{e}^{Lt}-1\right).\tag{2.4}

証明

w=y−zw=y-z は w(t)=w(0)+∫0t(F(y)−F(z)−r)dsw(t)=w(0)+\int_0^t\bigl(F(y)-F(z)-r\bigr)\mathrm{d} s を満たすので、∣w(t)∣≤∣w(0)∣+∫0t(δ+L∣w(s)∣)ds\lvert w(t)\rvert \le\lvert w(0)\rvert +\int_0^t\bigl(\delta+L\lvert w(s)\rvert \bigr)\mathrm{d} s である。補題 2.5 を u=∣w∣u=\lvert w\rvert、a=∣w(0)∣a=\lvert w(0)\rvert、b=δb=\delta で使えばよい。

δ=0\delta=0 とすれば、初期値の差が eLt\mathrm{e}^{Lt} 倍以上には広がらないこと、すなわち Hadamard の第3条件(データへの連続依存)が出る。y(0)=z(0)y(0)=z(0) とすれば一意性も同時に出る。

誤差評価の原型:残差と安定性

定理 2.6 は近似の理論で何度も現れる型をしている。zz を「近似解」、rr を近似解を真の方程式に代入したときの残差(方程式をどれだけ満たしていないか)とみると、(2.4) は

(真の解と近似解の距離)≤(初期データの差)×(増幅率)+(残差の大きさ)×(増幅率)\text{(真の解と近似解の距離)}\le\text{(初期データの差)}\times\text{(増幅率)}+\text{(残差の大きさ)}\times\text{(増幅率)}

と読める。近似を正当化する仕事は、多くの場合この二つの因子に分かれる。一つは残差が小さいこと(近似方程式が真の方程式をほぼ満たすこと。数値解析では整合性と呼ぶ)、もう一つは増幅率が制御できること(真の方程式が小さな誤差を爆発的に増やさないこと。安定性と呼ぶ)である。どちらか片方だけでは近似は正当化されない。線形の差分スキームについてこの「整合性+安定性=収束」を定式化したものが Lax の同値定理である。第6章の平均場極限の古典的な証明(Lipschitz な相互作用の場合)は、この型の評価を粒子の経験分布と平均場の解の距離に対して行う。第7章の断熱近似の誤差評価も、残差を見積もって Grönwall 型の議論で解の差へ移す。

落とし穴

増幅率 eLt\mathrm{e}^{Lt} は悲観的すぎると思うかもしれないが、一般には改善できない。カオス的な系では近い初期値から出た軌道の差が実際に指数関数的に広がり(Lyapunov 指数が正)、天気予報に原理的な期限があるのはこのためである。逆に、系に構造(保存量、反対称性)があると増幅率を大幅に下げられる。次の例題がその例である。物理の近似が「長時間でも使える」と言えるのは、多くの場合この構造のおかげであり、Grönwall の一般論からは出てこない。

例題 2.3 摂動を受けた振動子:粗い評価と構造を使う評価 ★★★

オリジナル[標準的な題材を自作] U=(x,v)U=(x,v) に対する二つの系

(P)  x′=v, v′=−x+εsin⁡x,(H)  x′=v, v′=−x\text{(P)}\ \ x'=v,\ v'=-x+\varepsilon \sin x,\qquad \text{(H)}\ \ x'=v,\ v'=-x

を同じ初期値 (1,0)(1,0) から解き、差 w=UP−UHw=U_{\mathrm P}-U_{\mathrm H} を評価する(∣⋅∣\lvert \cdot\rvert は R2\mathbb{R}^2 のユークリッドノルム)。

  1. 定理 2.6 の型の議論で ∣w(t)∣≤ε(et−1)\lvert w(t)\rvert \le\varepsilon (\mathrm{e}^t-1) を示せ。
  2. 調和振動子の右辺 A=(01−10)A=\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix} が反対称であることを使い、∣w(t)∣≤εt\lvert w(t)\rvert \le\varepsilon t を示せ。
  3. ε=0.1\varepsilon =0.1 で二つの上界を実際の差と比べ、どちらの評価が物理的に意味をもつか述べよ。
解答

(1) w′=Aw+εgw'=Aw+\varepsilon g、g=(0,sin⁡xP)g=(0,\sin x_{\mathrm P}) で、∣Aw∣=∣w∣\lvert Aw\rvert =\lvert w\rvert、∣g∣≤1\lvert g\rvert \le1 である。積分して ∣w(t)∣≤∫0t(ε+∣w∣) ds\lvert w(t)\rvert \le\int_0^t(\varepsilon +\lvert w\rvert )\,\mathrm{d} s となり、補題 2.5(a=0a=0、b=εb=\varepsilon、L=1L=1)から ∣w(t)∣≤ε(et−1)\lvert w(t)\rvert \le\varepsilon (\mathrm{e}^t-1)。

(2) AA が反対称なので w⋅Aw=0w\cdot Aw=0 である。したがってddt∣w∣2=2w⋅(Aw+εg)=2ε w⋅g≤2ε∣w∣\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}\lvert w\rvert ^2=2w\cdot(Aw+\varepsilon g)=2\varepsilon \,w\cdot g\le2\varepsilon \lvert w\rvert。∣w∣2\lvert w\rvert ^2 の増え方が ∣w∣\lvert w\rvert に比例する上限で抑えられるので、∣w∣≠0\lvert w\rvert \ne0 の区間で ddt∣w∣≤ε\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}\lvert w\rvert \le\varepsilon、w(0)=0w(0)=0 から積分して ∣w(t)∣≤εt\lvert w(t)\rvert \le\varepsilon t を得る(∣w∣=0\lvert w\rvert =0 となる時刻をまたいでも、∣w∣2+η2\sqrt{\lvert w\rvert ^2+\eta^2} を使って η→0\eta\to0 とすれば同じ結論になる)。反対称性は調和振動子の流れが回転であり、誤差の長さを変えないことの表現である。

(3) 数値解との比較は次のとおり(検算スクリプト)。

tt実際の差 ∣w∣\lvert w\rvert構造を使う上界 εt\varepsilon t粗い上界 ε(et−1)\varepsilon (\mathrm{e}^t-1)
0.50.04060.050.065
10.07190.10.172
20.08470.20.639
50.22150.514.7
100.45121.02203

粗い上界は t=5t=5 で既に相空間の大きさ(∣U∣≈1\lvert U\rvert \approx1)を超え、何も言っていない。構造を使う上界は実際の差の2倍程度にとどまり、「摂動の影響は時間に比例してしか蓄積しない」という物理的に正しい描像を与える。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ