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min-max 原理

2026年10月9日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3章 量子力学の作用素論:自己共役性とスペクトル
目次
  1. 有限次元:Courant–Fischer の定理
  2. 無限次元への拡張
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第3章 §3.6 ★★★ 第4章の Rayleigh–Ritz の上界の根拠。試行関数から束縛状態の存在まで証明できる

有限次元:Courant–Fischer の定理

定理 3.22(Courant–Fischer ★★★)

AA を d×dd\times d のエルミート行列とし、固有値を重複込みで λ1≤λ2≤⋯≤λd\lambda_1\le\lambda_2\le\cdots\le\lambda_d とする。n=1,…,dn=1,\dots,d について

λn=min⁡V⊂Cddim⁡V=n max⁡ψ∈V∥ψ∥=1 ⟨ψ, Aψ⟩.(3.10)\lambda_n=\min_{\substack{V\subset\mathbb{C}^d\\ \dim V=n}}\ \max_{\substack{\psi\in V\\ \lVert \psi\rVert =1}}\ \langle \psi,\,A\psi\rangle .\tag{3.10}

証明

固有値 λj\lambda_j の正規直交固有ベクトルを eje_j とする。

右辺 ≤λn\le\lambda_n:V=span⁡{e1,…,en}V=\operatorname{span}\{e_1,\dots,e_n\} とすると、ψ=∑j≤ncjej\psi=\sum_{j\le n}c_je_j(∑∣cj∣2=1\sum\lvert c_j\rvert ^2=1)について⟨ψ, Aψ⟩=∑j≤nλj∣cj∣2≤λn\langle \psi,\,A\psi\rangle =\sum_{j\le n}\lambda_j\lvert c_j\rvert ^2\le\lambda_n。等号は ψ=en\psi=e_n で達成されるので、この VV での最大値はちょうど λn\lambda_n。

右辺 ≥λn\ge\lambda_n:任意の nn 次元部分空間 VV と、(d−n+1)(d-n+1) 次元の W=span⁡{en,…,ed}W=\operatorname{span}\{e_n,\dots,e_d\} を考える。dim⁡V+dim⁡W=d+1>d\dim V+\dim W=d+1>d なので V∩W≠{0}V\cap W\ne\{0\}。その中の単位ベクトル ψ=∑j≥ncjej\psi=\sum_{j\ge n}c_je_j について⟨ψ, Aψ⟩=∑j≥nλj∣cj∣2≥λn\langle \psi,\,A\psi\rangle =\sum_{j\ge n}\lambda_j\lvert c_j\rvert ^2\ge\lambda_n。よって任意の VV で max⁡V≥λn\max_V\ge\lambda_n。

証明の核心は次元の数え上げ「nn 次元の空間は、余次元 n−1n-1 の空間と必ず交わる」だけである。λn\lambda_n は「nn 次元の部分空間を、Rayleigh 商の最大値が最も小さくなるように選んだときの、その最大値」であり、nn 番目の固有値を、それより下の固有ベクトルを知らずに特徴づけている。

無限次元への拡張

定理 3.23(min-max 原理 ★★★)

AA を下に有界な自己共役作用素とし、Σ=inf⁡σess(A)\Sigma=\inf\sigma_{\mathrm{ess}}(A)(σess(A)=∅\sigma_{\mathrm{ess}}(A)=\emptyset なら Σ=+∞\Sigma=+\infty)とおく。n=1,2,…n=1,2,\dots について

μn=inf⁡V⊂D(A)dim⁡V=n sup⁡ψ∈V∥ψ∥=1 ⟨ψ, Aψ⟩(3.11)\mu_n=\inf_{\substack{V\subset\mathcal{D}(A)\\ \dim V=n}}\ \sup_{\substack{\psi\in V\\ \lVert \psi\rVert =1}}\ \langle \psi,\,A\psi\rangle\tag{3.11}

と定める。このとき各 nn について次のどちらか一方が成り立つ。

  • (a) Σ\Sigma より下に(重複込みで)少なくとも nn 個の固有値があり、μn\mu_n は下から nn 番目の固有値である。
  • (b) μn=Σ\mu_n=\Sigma で、Σ\Sigma より下の固有値は高々 n−1n-1 個である。このとき m≥nm\ge n の全てで μm=Σ\mu_m=\Sigma。
証明

Σ\Sigma より下の固有値を重複込みで E1≤E2≤⋯E_1\le E_2\le\cdots(個数 K≤∞K\le\infty)、正規直交固有ベクトルを eje_j とする。Σ\Sigma より下には離散スペクトルしか無いので、スペクトル定理により Ran⁡P(−∞,λ)(A)\operatorname{Ran} P_{(-\infty,\lambda)}(A) は、λ≤Σ\lambda\le\Sigma なら Ej<λE_j<\lambda を満たす eje_j で張られる。

n≤Kn\le K のとき λ=En\lambda=E_n、n>Kn>K のとき λ=Σ\lambda=\Sigma とおく。

μn≥λ\mu_n\ge\lambda:Ej<λE_j<\lambda を満たす jj は高々 n−1n-1 個なので、Ran⁡P(−∞,λ)(A)\operatorname{Ran} P_{(-\infty,\lambda)}(A) は高々 n−1n-1 次元である。任意の nn 次元の VV はこれと直交する単位ベクトル ψ\psi を含み(有限次元の線形代数)、スペクトル定理からψ∈Ran⁡P[λ,∞)(A)\psi\in\operatorname{Ran} P_{[\lambda,\infty)}(A) について ⟨ψ, Aψ⟩≥λ\langle \psi,\,A\psi\rangle \ge\lambda。よって sup⁡V≥λ\sup_V\ge\lambda。

μn≤λ\mu_n\le\lambda:n≤Kn\le K なら V=span⁡{e1,…,en}V=\operatorname{span}\{e_1,\dots,e_n\} で sup⁡V=En\sup_V=E_n。n>Kn>K なら、任意の ε>0\varepsilon >0 でRan⁡P(−∞,Σ+ε)(A)\operatorname{Ran} P_{(-\infty,\Sigma+\varepsilon )}(A) は無限次元(Σ∈σess\Sigma\in\sigma_{\mathrm{ess}})なので、その中から nn 次元の VV(D(A)\mathcal{D}(A) の中にとれる)を選べば sup⁡V≤Σ+ε\sup_V\le\Sigma+\varepsilon。

以上で μn=λ\mu_n=\lambda。n>Kn>K の場合が (b)、n≤Kn\le K の場合が (a) である。

有限次元版との違いは二点である。一つは min⁡\min が inf⁡\inf になること(真性スペクトルの下端は一般に固有値でなく、達成されない)。もう一つは、次元の数え上げを「スペクトル射影の像の次元」に置き換えるためにスペクトル定理が要ることで、ここが無限次元の本質的な一手である。なお、(3.11) の VV は D(A)=H2\mathcal{D}(A)=H^2 より広い形式定義域(原子・分子では H1H^1、運動エネルギーが有限な関数)からとってもよく、同じ結論が成り立つ。量子化学の試行関数は2階微分が2乗可積分である必要はなく、運動エネルギーが有限なら十分である。

系 3.24(Rayleigh–Ritz の上界(Hylleraas–Undheim–MacDonald) ★★★)

V⊂D(A)V\subset\mathcal{D}(A)(または形式定義域)を mm 次元部分空間とし、AA を VV に制限した m×mm\times m 行列(⟨vi, Avj⟩)(\langle v_i,\,Av_j\rangle )(viv_i は VV の正規直交基底)の固有値を ν1≤⋯≤νm\nu_1\le\cdots\le\nu_m とする。このとき νn≥μn\nu_n\ge\mu_n(n≤mn\le m)。特に νn<Σ\nu_n<\Sigma なら、AA は Σ\Sigma より下に少なくとも nn 個の固有値をもち、νn\nu_n は nn 番目の固有値の上界である。

証明

有限次元の Courant–Fischer を VV 上で使うと νn=min⁡W⊂V,dim⁡W=nmax⁡W⟨ψ, Aψ⟩\nu_n=\min_{W\subset V,\dim W=n}\max_W\langle \psi,\,A\psi\rangle。VV の部分空間は D(A)\mathcal{D}(A) の部分空間でもあるので、D(A)\mathcal{D}(A) 全体での inf⁡\inf はこれ以下であり νn≥μn\nu_n\ge\mu_n。νn<Σ\nu_n<\Sigma なら μn<Σ\mu_n<\Sigma なので定理 3.23 の (b) は起きず (a) が成り立つ。

この系が第4章の主役である。基底関数を有限個選んで行列を対角化する計算(LCAO・CI・有限要素法)は、基底を選んだ時点で全ての固有値について上界を与える。上界であることは基底の選び方によらず保証され、基底を増やすと VV が大きくなって νn\nu_n は単調に下がる。下がった先が真の固有値に収束するかどうか、その速さはどうかが第4章の問題である。もう一つ大事なのは後半の主張で、試行関数の計算だけから束縛状態の存在が証明できる。エネルギーの上界が真性スペクトルの下端 Σ\Sigma を下回れば、その下に本物の固有値がある。Σ\Sigma が何であるかを教えるのが次節の HVZ 定理であり、二つを組み合わせると「原子が束縛状態をもつ」ことの証明になる。

真性スペクトルの上に出た Ritz 値

νn>Σ\nu_n>\Sigma のとき、νn\nu_n は「Σ\Sigma の上にある何かの固有値の上界」ではない。μn=Σ\mu_n=\Sigma なので、νn\nu_n は単に Σ\Sigma の上界である。有限基底の計算で連続スペクトルの領域にも離散的な Ritz 値が並ぶが、それは箱で規格化された散乱状態の擬似的な離散化であり、基底を増やすと Σ\Sigma の上で密に詰まっていく。これを束縛状態と読み違えるのが典型的な誤りである。ヘリウムの二電子励起状態のような共鳴(真性スペクトルに埋め込まれた準安定状態)を有限基底で扱うときは、複素スケーリングなど別の道具が要る。

例題 3.6 水素原子の変分計算と min-max の上界 ★★★

オリジナル[標準的な題材を自作] H=−12Δ−1/rH=-\frac12\Delta-1/r(水素原子)について、次の規格化された1パラメータの試行関数で E(⋅)=⟨ψ, Hψ⟩E(\cdot)=\langle \psi,\,H\psi\rangle を最小化せよ。

  • (1) ψα=(α3/π)1/2e−αr\psi_\alpha=(\alpha^3/\pi)^{1/2}\mathrm{e}^{-\alpha r}。
  • (2) ϕβ=(2β/π)3/4e−βr2\phi_\beta=(2\beta/\pi)^{3/4}\mathrm{e}^{-\beta r^2}(ガウス関数)。
  • (3) 二つの結果を真の基底エネルギーと比べ、min-max 原理(系 3.24)がどこまで保証しているかを述べよ。
解答

(1) 例題 3.3 より E(α)=α2/2−αE(\alpha)=\alpha^2/2-\alpha、最小は α=1\alpha=1 で E=−1/2E=-1/2。

(2) ϕβ\phi_\beta について、∇ϕβ=−2βxϕβ\nabla\phi_\beta=-2\beta\bm{x}\phi_\beta なので12∫∣∇ϕβ∣2=2β2⟨ϕβ, r2ϕβ⟩=2β2⋅34β=3β2\frac12\int\lvert \nabla\phi_\beta\rvert ^2=2\beta^2\langle \phi_\beta,\,r^2\phi_\beta\rangle =2\beta^2\cdot\frac{3}{4\beta}=\frac{3\beta}{2}(∣ϕβ∣2\lvert \phi_\beta\rvert ^2 は分散 1/(4β)1/(4\beta) の3次元正規分布)。また⟨ϕβ, r−1ϕβ⟩=(2β/π)3/24π∫0∞re−2βr2dr=(2β/π)3/2πβ=22β/π\langle \phi_\beta,\,r^{-1}\phi_\beta\rangle =(2\beta/\pi)^{3/2}4\pi\int_0^\infty r\mathrm{e}^{-2\beta r^2}\mathrm{d} r=(2\beta/\pi)^{3/2}\frac{\pi}{\beta}=2\sqrt{2\beta/\pi}。よって

E(β)=3β2−22βπ.E(\beta)=\frac{3\beta}{2}-2\sqrt{\frac{2\beta}{\pi}}.

E′(β)=32−2πβ=0E'(\beta)=\frac32-\sqrt{\frac{2}{\pi\beta}}=0 より β=89π\beta=\frac{8}{9\pi}、E=43π−83π=−43π≈−0.4244E=\frac{4}{3\pi}-\frac{8}{3\pi}=-\frac{4}{3\pi}\approx-0.4244。

(3) 真の基底エネルギーは −1/2-1/2。(1) は試行関数の族が真の基底状態を含むので正確に一致し、(2) は −0.4244>−0.5-0.4244>-0.5 で上界にとどまる。系 3.24(n=1n=1、m=1m=1)が保証するのは「どちらの値も基底エネルギー以上」ということだけで、どれだけ近いかは何も言わない。ガウス関数は原点で尖らず(カスプが無い)、遠方で速く減衰しすぎるため、真の e−r\mathrm{e}^{-r} を1つでは表せない。それでも −0.4244<0=Σ-0.4244<0=\Sigma なので、ガウス関数1つの計算だけで「水素原子に束縛状態が存在する」ことは証明できる。ガウス関数の個数を増やしたときに誤差がどう減るか(指数関数的でなく、カスプのせいで遅い)は第4章で扱う(検算スクリプト)。

木下の勉強ステータス

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