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HVZ 定理:真性スペクトルの下端はイオン化閾値

2026年10月9日15分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3章 量子力学の作用素論:自己共役性とスペクトル
目次
  1. 主張
  2. 証明の発想:易しい半分
  3. 証明の発想:難しい半分
  4. Zhislin の定理:中性原子は無限個の束縛状態をもつ
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第3章 §3.7 ★★★ 多電子系で「どこから下が束縛状態か」を決める定理。変分計算の上界と組んで束縛の証明になる

主張

固定した原子核(電荷 ZZ、原点)と NN 個の電子からなる原子のハミルトニアンを

HN=∑i=1N(−12Δi−Z∣xi∣)+∑1≤i<j≤N1∣xi−xj∣(3.12)H_N=\sum_{i=1}^N\Bigl(-\frac12\Delta_i-\frac{Z}{\lvert \bm{x}_i\rvert }\Bigr)+\sum_{1\le i<j\le N}\frac{1}{\lvert \bm{x}_i-\bm{x}_j\rvert }\tag{3.12}

とし、その基底エネルギー(スペクトルの下限)を EN=inf⁡σ(HN)E_N=\inf\sigma (H_N)、E0=0E_0=0 とおく。HNH_N は反対称な関数の空間(フェルミ粒子)で考える。

定理 3.25(HVZ 定理(Hunziker–van Winter–Zhislin) ★★★)

N≥1N\ge1 について

σess(HN)=[EN−1,∞).(3.13)\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N)=[E_{N-1},\infty).\tag{3.13}

特に EN≤EN−1E_N\le E_{N-1} であり、EN−1E_{N-1} より下の HNH_N のスペクトルは有限重複の孤立固有値だけからなる。

物理的な意味ははっきりしている。EN−1+λE_{N-1}+\lambda(λ≥0\lambda\ge0)は「N−1N-1 電子のイオンが基底状態にあり、1個の電子が運動エネルギー λ\lambda で無限遠へ飛び去っている」状態のエネルギーで、これが真性スペクトル(電離の連続体)の始まりである。EN−1E_{N-1} をイオン化閾値という。kk 個の電子を同時に飛ばす閾値 EN−kE_{N-k} は EN−1E_{N-1} 以上なので(定理を N−1,N−2,…N-1,N-2,\dots に順に使えば EN−1≤EN−2≤⋯E_{N-1}\le E_{N-2}\le\cdots)、一番低い閾値は1電子の電離である。分子(原子核を固定した (3.1))でも同じで、EN−1E_{N-1} を同じ原子核配置での N−1N-1 電子系の基底エネルギーとすれば(3.13) が成り立つ。原子核も動かす完全な多体系では、重心運動を分離した上で「系を二つの塊(クラスター)に分ける全ての分け方についての、塊ごとの基底エネルギーの和の最小値」が下端になる。これが HVZ 定理の一般形である。

証明の発想:易しい半分

[EN−1,∞)⊂σess(HN)[E_{N-1},\infty)\subset\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N) の証明。Weyl 列を作る。ε>0\varepsilon >0 について、N−1N-1 電子系の状態 Φ\Phi で∥(HN−1−EN−1)Φ∥<ε\lVert (H_{N-1}-E_{N-1})\Phi\rVert <\varepsilon を満たし、台が有界な領域(全電子が原点から距離 LL 以内)に収まるものをとる。NN 番目の電子には、例題 3.4 の自由粒子の Weyl 列を3次元にしたもの χn\chi_n(エネルギー λ≥0\lambda\ge0)を、原点から距離 Rn→∞R_n\to\infty の位置へ平行移動して与える。ψn\psi_n を Φ⊗χn\Phi\otimes\chi_n の反対称化とすると、

(HN−EN−1−λ) (Φ⊗χn)=[(HN−1−EN−1)Φ]⊗χn+Φ⊗(−12Δ−λ)χn+IN (Φ⊗χn),(H_N-E_{N-1}-\lambda)\,(\Phi\otimes\chi_n) =\bigl[(H_{N-1}-E_{N-1})\Phi\bigr]\otimes\chi_n+\Phi\otimes\Bigl(-\frac12\Delta-\lambda\Bigr)\chi_n+I_N\,(\Phi\otimes\chi_n),

IN=−Z∣xN∣+∑i<N1∣xi−xN∣.I_N=-\frac{Z}{\lvert \bm{x}_N\rvert }+\sum_{i<N}\frac{1}{\lvert \bm{x}_i-\bm{x}_N\rvert }.

第1項は ε\varepsilon 以下、第2項は n→∞n\to\infty で0、第3項は電子 NN が他の電子と原子核から Rn−LR_n-L 以上離れているので O(N/Rn)→0\mathcal{O}(N/R_n)\to0。反対称化による交換項は台が重ならないので消える。ψn\psi_n は遠方へ逃げるので弱収束して0になり、EN−1+λ∈σess(HN)E_{N-1}+\lambda\in\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N)(ε→0\varepsilon \to0 と合わせて)。これは「イオンの基底状態+遠方の自由電子」という物理の描像を、そのまま Weyl 列に翻訳したものである。

証明の発想:難しい半分

inf⁡σess(HN)≥EN−1\inf\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N)\ge E_{N-1} の証明は、真性スペクトルの Weyl 列は「何かが遠方へ逃げる状態」しかありえず、逃げた状態のエネルギーは閾値以上である、という主張である。三つの道具を組み合わせる。どれも学部の範囲を超える一手を含むので、主張と役割を正確に述べ、細部の証明は省く。

(i) IMS 局所化公式(難所ではない)。配位空間 R3N\mathbb{R}^{3N} 上の滑らかな関数 J0,J1,…,JmJ_0,J_1,\dots,J_m で ∑aJa2=1\sum_aJ_a^2=1 を満たすもの(2乗の和の分割)について

H=∑aJaHJa−12∑a∣∇Ja∣2.(3.14)H=\sum_aJ_aHJ_a-\frac12\sum_a\lvert \nabla J_a\rvert ^2.\tag{3.14}

これは二重交換子 [J,[J,−Δ]]=−2∣∇J∣2[J,[J,-\Delta]]=-2\lvert \nabla J\rvert ^2 と、J2A+AJ2−2JAJ=[J,[J,A]]J^2A+AJ^2-2JAJ=[J,[J,A]] を aa について足すことから出る(ポテンシャルは JaJ_a と交換する)。Ja(X)=ja(X/R)J_a(X)=j_a(X/R) とスケールすれば誤差項は O(R−2)\mathcal{O}(R^{-2}) で、大きな RR では無視できる。「エネルギーを領域ごとに分けて評価し、分割の継ぎ目のコストは運動エネルギーの O(R−2)\mathcal{O}(R^{-2}) で済む」というのがこの公式の内容である。

(ii) 配位空間の幾何学的分割(難所の一つ)。配位 X=(x1,…,xN)X=(\bm{x}_1,\dots,\bm{x}_N) が原点から遠い(∣X∣≥R\lvert X\rvert \ge R)とき、電子と原子核を原点からの距離の順に並べると、N+1N+1 個の点(原子核の距離 00 を含む)が長さ max⁡i∣xi∣≥∣X∣/N\max_i\lvert \bm{x}_i\rvert \ge\lvert X\rvert /\sqrt N の範囲に並ぶので、隣り合う距離の間のどこかに ∣X∣/(NN)\lvert X\rvert /(N\sqrt N) 以上の隙間がある(鳩の巣原理)。隙間の外側にある k≥1k\ge1 個の電子を「外の塊」、残りを「内の塊」とすると、外の電子は原子核と内の電子から c∣X∣c\lvert X\rvert 以上離れている。この分け方に応じて JaJ_a を選べる、というのが Ruelle–Simon 型の分割である。本当の難所は、この幾何的な観察を「滑らかで、継ぎ目の勾配が O(1/R)\mathcal{O}(1/R) で、どの台の上でも隙間が保たれる」分割関数として実装することにある。

H=HN−k(内)+T(外)+W(外)+Ia,∣Ia∣≤kZ+k(N−k)c∣X∣=O(1/R)(supp⁡Ja 上)H=H_{N-k}^{(\text{内})}+T^{(\text{外})}+W^{(\text{外})}+I_a,\qquad \lvert I_a\rvert \le\frac{kZ+k(N-k)}{c\lvert X\rvert }=\mathcal{O}(1/R)\quad(\operatorname{supp} J_a\ \text{上})

と分けると(TT, WW は外の電子の運動エネルギーと相互反発で非負)、JaHJa≥(EN−k−C/R)Ja2≥(EN−1−C/R)Ja2J_aHJ_a\ge(E_{N-k}-C/R)J_a^2\ge(E_{N-1}-C/R)J_a^2 を得る。

(iii) 有界な領域のコンパクト性(難所の二つ目)。J0J_0 は有界な領域 ∣X∣≤2R\lvert X\rvert \le2R に台をもつので、J0(H+i)−1J_0(H+\mathrm{i})^{-1} はコンパクトである(有界な領域に閉じ込められ、運動エネルギーも有限な関数の集合は L2L^2 で相対コンパクト=Rellich の定理)。したがって弱収束して0になる Weyl 列 ψn\psi_n について ∥J0ψn∥→0\lVert J_0\psi_n\rVert \to0、さらに ⟨J0ψn, HJ0ψn⟩→0\langle J_0\psi_n,\,HJ_0\psi_n\rangle \to0。

組み合わせ。λ∈σess(HN)\lambda\in\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N) の Weyl 列 ψn⇀0\psi_n\rightharpoonup 0 について (3.14) を使うと

λ=lim⁡n⟨ψn, Hψn⟩ ≥ (EN−1−CR)lim⁡n∑a≠0∥Jaψn∥2−C′R2=EN−1−CR−C′R2.\lambda=\lim_n\langle \psi_n,\,H\psi_n\rangle \ \ge\ \Bigl(E_{N-1}-\frac CR\Bigr)\lim_n\sum_{a\ne0}\lVert J_a\psi_n\rVert ^2-\frac{C'}{R^2} =E_{N-1}-\frac CR-\frac{C'}{R^2}.

R→∞R\to\infty として λ≥EN−1\lambda\ge E_{N-1}。

HVZ の証明の構造

真性スペクトルの Weyl 列は弱収束して0になるので、有界な領域には確率を残せない((iii))。遠方の配位では系がいくつかの塊に分かれ、塊の間の相互作用は距離に反比例して小さい((ii))。分かれた系のエネルギーは「イオンの基底エネルギー+飛び去る電子の非負のエネルギー」以上である。領域ごとの評価をつなぐ費用は O(R−2)\mathcal{O}(R^{-2}) で済む((i))。この論理は、物理屋が「イオン化閾値より上は連続状態」と言うときに暗に使っている「遠くへ行けば相互作用は切れる」という直観を、作用素の不等式として正確にしたものである。

Zhislin の定理:中性原子は無限個の束縛状態をもつ

定理 3.26(Zhislin ★★★)

N≤ZN\le Z(中性原子と正イオン)なら、HNH_N は EN−1E_{N-1} より下に無限個の固有値をもつ。特に EN<EN−1E_N<E_{N-1} で、基底状態が固有関数として存在する。

証明の発想(min-max と HVZ の組み合わせ)。NN についての帰納法による。N−1<ZN-1<Z なので、帰納法の仮定から HN−1H_{N-1} には基底状態 Φ\Phi(固有値 EN−1E_{N-1}、指数関数的に減衰する)がある。NN 番目の電子の試行関数として、半径 RR と 2R2R の間の球殻に台をもつ fR(x)=R−3/2g(∣x∣/R)f_R(\bm{x})=R^{-3/2}g(\lvert \bm{x}\rvert /R)をとり、ψR\psi_R を Φ⊗fR\Phi\otimes f_R の反対称化とする。交換項は Φ\Phi の指数関数的減衰によって無視できる程度に小さく、

⟨ψR, (HN−EN−1)ψR⟩≈12∥∇fR∥2+⟨fR, WfR⟩,W(x)=−Z∣x∣+∫ρΦ(y)∣x−y∣dy.\langle \psi_R,\,(H_N-E_{N-1})\psi_R\rangle \approx\frac12\lVert \nabla f_R\rVert ^2+\langle f_R,\,W f_R\rangle ,\qquad W(\bm{x})=-\frac{Z}{\lvert \bm{x}\rvert }+\int\frac{\rho_\Phi(\bm{y})}{\lvert \bm{x}-\bm{y}\rvert }\mathrm{d}\bm{y}.

ρΦ\rho_\Phi は N−1N-1 電子の密度で、全電荷は N−1N-1、遠方で指数関数的に減衰する。したがって遠方では

W(x)=−Z−N+1∣x∣+O(1∣x∣2)(3.15)W(\bm{x})=-\frac{Z-N+1}{\lvert \bm{x}\rvert }+\mathcal{O}\Bigl(\frac{1}{\lvert \bm{x}\rvert ^2}\Bigr)\tag{3.15}

で、遠方の電子は原子核の電荷 ZZ が N−1N-1 個の電子に遮蔽された正味の電荷 Z−N+1Z-N+1 を感じる。スケーリングにより12∥∇fR∥2∝R−2\frac12\lVert \nabla f_R\rVert ^2\propto R^{-2}、⟨fR, WfR⟩≈−(Z−N+1)⟨g, r−1g⟩/R\langle f_R,\,Wf_R\rangle \approx-(Z-N+1)\langle g,\,r^{-1}g\rangle /R であり、Z−N+1≥1>0Z-N+1\ge1>0 なら大きな RR で 1/R1/R の引力が 1/R21/R^2 の運動エネルギーに勝って期待値が負になる。Rk=4kRR_k=4^kR として台の重ならない球殻を無限個とれば、それらが張る任意の有限次元部分空間で HN−EN−1H_N-E_{N-1} の2次形式が負になる(台が重ならないので交差項はほぼ0)。min-max 原理(定理 3.23)より、全ての mm で μm<EN−1=inf⁡σess(HN)\mu_m<E_{N-1}=\inf\sigma_{\mathrm{ess}}(H_N) となり、固有値は無限個ある。難所は、交換項と多重極補正 O(∣x∣−2)\mathcal{O}(\lvert \bm{x}\rvert ^{-2}) が本当に 1/R1/R の主要項に負けることを、反対称化まで込めて示すところにある。

負イオンで論法が止まる理由

N=Z+1N=Z+1(1価の負イオン)では (3.15) の 1/∣x∣1/\lvert \bm{x}\rvert の項の係数 Z−N+1Z-N+1 が0になる。遠方の電子が感じるのはO(∣x∣−2)\mathcal{O}(\lvert \bm{x}\rvert ^{-2}) 以下の短距離の力(中性原子の分極による引力など)だけで、球殻の試行関数では運動エネルギー ∝R−2\propto R^{-2} に勝てない。このため負イオンは、束縛状態があるとしても有限個しかないことが証明されており、束縛状態があるかどうか自体が原子ごとの個別の問題になる。水素の負イオン H−\mathrm{H}^- は束縛状態をちょうど1つもつ(存在は変分計算で、1つだけであることは Hill による証明で知られている)。

図

図 3.2 ヘリウム原子(Z=2Z=2, N=2N=2、原子核固定)のスペクトルの模式図。真性スペクトルの下端は He+\mathrm{He}^+ の基底エネルギー −2-2(HVZ 定理)。その下に基底状態と、−2-2 に集積する Rydberg 系列(遮蔽された電荷 Z−N+1=1Z-N+1=1 を感じる外側の電子の準位)が並ぶ(Zhislin の定理)。破線は He+\mathrm{He}^+ の励起状態 −2/n2-2/n^2 を残して1電子が飛ぶ閾値で、00 に集積する。

例題 3.7 ヘリウムと水素負イオンの束縛の証明 ★★★

オリジナル[標準的な題材を自作] H2=∑i=12(−12Δi−Z/∣xi∣)+1/∣x1−x2∣H_2=\sum_{i=1}^2(-\frac12\Delta_i-Z/\lvert \bm{x}_i\rvert )+1/\lvert \bm{x}_1-\bm{x}_2\rvert を考える。

  • (1) HVZ 定理を使って、ヘリウム(Z=2Z=2)と水素負イオン(Z=1Z=1)の真性スペクトルの下端を求めよ。
  • (2) 試行関数 ψζ=(ζ3/π)e−ζ(r1+r2)\psi_\zeta=(\zeta^3/\pi)\mathrm{e}^{-\zeta(r_1+r_2)} について E(ζ)=⟨ψζ, H2ψζ⟩=ζ2−2Zζ+58ζE(\zeta)=\langle \psi_\zeta,\,H_2\psi_\zeta\rangle =\zeta^2-2Z\zeta+\frac58\zeta を用いて最小値を求めよ(⟨ψζ, ∣x1−x2∣−1ψζ⟩=58ζ\langle \psi_\zeta,\,\lvert \bm{x}_1-\bm{x}_2\rvert ^{-1}\psi_\zeta\rangle =\frac58\zeta は既知としてよい)。ヘリウムが束縛状態をもつこと、そのイオン化エネルギーの下界を述べよ。
  • (3) 同じ計算が水素負イオンでは束縛を証明できないことを示せ。
  • (4) 独立電子近似で 2s22s^2 配置のエネルギーを見積もり、それが真性スペクトルのどこにあるかを述べよ。
解答

(1) N=2N=2 なので閾値は1電子系 H1=−12Δ−Z/rH_1=-\frac12\Delta-Z/r の基底エネルギー −Z2/2-Z^2/2。ヘリウムは σess=[−2,∞)\sigma_{\mathrm{ess}}=[-2,\infty)、水素負イオンは σess=[−12,∞)\sigma_{\mathrm{ess}}=[-\frac12,\infty)。

(2) E′(ζ)=2ζ−2Z+58=0E'(\zeta)=2\zeta-2Z+\frac58=0 より ζ=Z−516\zeta=Z-\frac{5}{16}、Emin⁡=−(Z−516)2E_{\min}=-(Z-\frac5{16})^2。Z=2Z=2 で ζ=2716\zeta=\frac{27}{16}、Emin⁡=−729256≈−2.8477E_{\min}=-\frac{729}{256}\approx-2.8477。これは閾値 −2-2 より下なので、系 3.24(m=1m=1)により H2H_2 は −2-2 より下に固有値をもつ。すなわちヘリウム原子が束縛状態をもつことが、この1行の計算と HVZ 定理だけで証明される。真の基底エネルギー E2E_2 は −2.8477-2.8477 以下なので、イオン化エネルギー I=E1−E2≥−2+2.8477=0.8477I=E_1-E_2\ge-2+2.8477=0.8477 hartree。精密な値は E2≈−2.9037E_2\approx-2.9037、I≈0.9037I\approx0.9037 hartree(約 24.624.6 eV)である。有効電荷 ζ=27/16<2\zeta=27/16<2 は、片方の電子がもう片方の電子に原子核を一部遮蔽される効果を、変分が自動的に取り込んだものである。

(3) Z=1Z=1 で ζ=1116\zeta=\frac{11}{16}、Emin⁡=−121256≈−0.4727E_{\min}=-\frac{121}{256}\approx-0.4727。閾値 −12-\frac12 より上なので、min-max は「固有値の上界」を何も与えない(μ1=inf⁡σess\mu_1=\inf\sigma_{\mathrm{ess}} の可能性を排除できない)。二つの電子に異なる広がりを許す試行関数 e−ar1−br2+e−br1−ar2\mathrm{e}^{-ar_1-br_2}+\mathrm{e}^{-br_1-ar_2}(Chandrasekhar の試行関数)で最適化するとa≈1.039a\approx1.039, b≈0.283b\approx0.283 で E≈−0.5133<−0.5E\approx-0.5133<-0.5 となり、水素負イオンの束縛が証明される。内側の電子が水素原子に近い状態をとり、外側の電子が大きく広がって分極した中性水素原子に弱く束縛される、という描像を試行関数に入れて初めて閾値を下回る。Zhislin の定理の遮蔽電荷 Z−N+1=0Z-N+1=0 の場合に、束縛が個別の問題になることの具体例である。

(4) 独立電子では各電子のエネルギーは −Z2/(2n2)-Z^2/(2n^2) なので、2s22s^2 は 2×(−48)=−12\times(-\frac{4}{8})=-1。これは −2-2 より上で真性スペクトルの内部にある。電子間反発を入れると、この状態は「He+(1s)\mathrm{He}^+(1s) +自由電子」の連続体と結合し、一方の電子が 1s1s に落ちてもう一方が飛び出す(自動電離)。真性スペクトルの中にある準安定状態(共鳴)であって、離散スペクトルの固有値ではない(検算スクリプト)。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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