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aufbau 原理:満たされない殻は無い

2026年10月9日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5章 Hartree–Fock の変分構造

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第5章 §5.6 ★★ 「下から順に詰める」が仮定でなく最小性から出ることを示す。交換項の符号の2つ目の帰結

化学の教科書で aufbau(構成)原理と呼ばれる「軌道を下から順に詰める」規則は、Hartree–Fock の最小解については定理として成り立つ。

定理 5.9(満たされない殻は無い ★★)

γ=∑i=1N∣φi⟩⟨φi∣\gamma=\sum_{i=1}^N| \varphi_i \rangle \langle \varphi_i | が EHF\mathcal E^{\mathrm{HF}} の(射影の中での)最小解で、Fγφi=εiφiF_\gamma\varphi_i=\varepsilon _i\varphi_i とする。ψ\psi が占有空間に直交する FγF_\gamma の正規化された固有関数で固有値が ee なら、すべての ii について

e−εi ≥ Jφiψ−Kφiψ > 0.e-\varepsilon _i\ \ge\ J_{\varphi_i\psi}-K_{\varphi_i\psi}\ >\ 0 .

とくに占有軌道は FγF_\gamma の下から NN 個の固有関数であり、最後の占有軌道と最初の非占有軌道の間に縮退は無い。

この結果は Bach, Lieb, Loss, Solovej(1994)による(スピンの向きを制限しない Hartree–Fock について)。

証明の骨格

占有軌道 φi\varphi_i を ψ\psi に入れ替えた γ′=γ−∣φi⟩⟨φi∣+∣ψ⟩⟨ψ∣\gamma'=\gamma-| \varphi_i \rangle \langle \varphi_i |+| \psi \rangle \langle \psi | は、ψ\psi が占有空間に直交するので階数 NN の射影であり、Slater 行列式に対応する。展開 (5.8) と (5.10) から

EHF(γ′)−EHF(γ)=Tr⁡[Fγ(∣ψ⟩⟨ψ∣−∣φi⟩⟨φi∣)]+Q=(e−εi)−(Jφiψ−Kφiψ).\mathcal E^{\mathrm{HF}}(\gamma')-\mathcal E^{\mathrm{HF}}(\gamma)=\operatorname{Tr}\bigl[F_\gamma(| \psi \rangle \langle \psi |-| \varphi_i \rangle \langle \varphi_i |)\bigr]+\mathcal Q=(e-\varepsilon _i)-\bigl(J_{\varphi_i\psi}-K_{\varphi_i\psi}\bigr).

γ\gamma が最小なのでこれは ≥0\ge0。Jφiψ>KφiψJ_{\varphi_i\psi}>K_{\varphi_i\psi} が真に成り立つことは、補題 5.7 の不等式で等号が成り立つ条件を調べると、φi\varphi_i と ψ\psi が直交することと両立しないことから分かる(細部は省く)。FγF_\gamma の非占有スペクトルが連続スペクトルを含む場合は、固有関数の代わりに近似固有関数の列を使って同じ議論をすると、隙間が真に正という結論は弱まり e≥εNe\ge\varepsilon _N が得られる。

物理的な意味を確認しておく。電子を1つ、占有軌道 φi\varphi_i から空き軌道 ψ\psi へ移したときのエネルギー変化は、軌道エネルギーの差 e−εie-\varepsilon _i だけではない。移った電子は、元の軌道に残っていた「自分の抜け殻」との相互作用 −(J−K)-(J-K) を失う分だけ得をする。もし e=εie=\varepsilon _i(縮退)なら、この得の分だけ入れ替えた方がエネルギーが低くなり、最小性に反する。例題 5.6 の玩具模型では交換項が無く自己反発が残るので、この議論が成り立たず、縮退した分数占有が最小になった。

対称性を課すと話が変わる

この定理は、軌道にスピンや空間対称性の制限を課さない Hartree–Fock についてのものである。開殻原子(炭素など)では、HF の最小解は球対称性を破りうる。球対称性を保ったまま殻を部分的に満たす計算(化学で日常的に使う制限つきの方法)は、この定理の対象外である。

例題 5.7 交換項があると殻は満たされる ★★

オリジナル例題 5.6 と同じ C2\mathbb{C}^2(基底 e1,e2e_1,e_2、粒子数1、h=diag⁡(0,δ)h=\operatorname{diag}(0,\delta))で、交換項を入れた汎関数

E(γ)=Tr⁡[hγ]+12∑i,j=12Wij(γiiγjj−∣γij∣2),W=(UVVU)\mathcal E(\gamma)=\operatorname{Tr}[h\gamma]+\frac12\sum_{i,j=1}^2W_{ij}\bigl(\gamma_{ii}\gamma_{jj}-|\gamma_{ij}|^2\bigr),\qquad W=\begin{pmatrix}U&V\\V&U\end{pmatrix}

を考える。WijW_{ij} はサイト ii とサイト jj の電荷の間の反発で、0<δ<U0<\delta<U、V≥0V\ge0 とする。この汎関数の Fock 行列は (Fγ)ii=hii+∑kWikγkk−Wiiγii(F_\gamma)_{ii}=h_{ii}+\sum_kW_{ik}\gamma_{kk}-W_{ii}\gamma_{ii}、(Fγ)ij=hij−Wijγij(F_\gamma)_{ij}=h_{ij}-W_{ij}\gamma_{ij}(i≠ji\ne j)である。数値は U=2, δ=12, V=1U=2,\ \delta=\frac12,\ V=1 とする。

  1. 射影 γ=∣u⟩⟨u∣\gamma=| u \rangle \langle u | の上では E(γ)=⟨u, hu⟩\mathcal E(\gamma)=\langle u,\,hu\rangle となることを示し、射影の中での最小解が γ1=∣e1⟩⟨e1∣\gamma_1=| e_1 \rangle \langle e_1 | であることを確かめよ。
  2. Fγ1F_{\gamma_1} を求め、占有軌道 e1e_1 の軌道エネルギー ε\varepsilon と非占有軌道 e2e_2 の固有値 ee を求めよ。
  3. e1e_1 と e2e_2 の間の J,KJ,K を求めて定理 5.9 の不等式を確かめ、e1e_1 を e2e_2 に入れ替えたときのエネルギー変化が (e−ε)−(J−K)(e-\varepsilon )-(J-K) に等しいことを確かめよ。
  4. 例題 5.6 の模型で縮退が起きたことと比べ、違いを FF の対角成分で説明せよ。
解答

(1) γij=uiuj‾\gamma_{ij}=u_i\overline{u_j} なので ∣γij∣2=∣ui∣2∣uj∣2=γiiγjj|\gamma_{ij}|^2=|u_i|^2|u_j|^2=\gamma_{ii}\gamma_{jj} が i≠ji\ne j も含めて成り立ち、直接項と交換項が項ごとに打ち消し合う。よって E(γ)=⟨u, hu⟩=δ∣u2∣2≥0\mathcal E(\gamma)=\langle u,\,hu\rangle =\delta|u_2|^2\ge0 で、等号は u=e1u=e_1(位相を除く)のときに限る。電子が1個なら自分自身との反発は残らないという、水素原子で見た自己相互作用の相殺と同じことである。

(2) γ1\gamma_1 では γ11=1\gamma_{11}=1、他の成分は 0。

(Fγ1)11=0+U⋅1−U⋅1=0,(Fγ1)22=δ+V⋅1−0=32,(Fγ1)12=0−V⋅0=0.(F_{\gamma_1})_{11}=0+U\cdot1-U\cdot1=0,\qquad (F_{\gamma_1})_{22}=\delta+V\cdot1-0=\tfrac32,\qquad (F_{\gamma_1})_{12}=0-V\cdot0=0 .

したがって Fγ1=diag⁡(0,32)F_{\gamma_1}=\operatorname{diag}(0,\frac32)、ε=0\varepsilon =0、e=32e=\frac32 で、占有軌道は FF の下の固有ベクトルになっている。

(3) JJ はサイト1の単位電荷とサイト2の単位電荷の反発なので J=W12=V=1J=W_{12}=V=1。KK の被積分関数にあたる重なりの密度 e1e2‾e_1\overline{e_2} はどのサイトでも 0 なので K=0K=0。不等式は e−ε=32≥J−K=1>0e-\varepsilon =\frac32\ge J-K=1>0 で成り立つ。入れ替えた γ2=∣e2⟩⟨e2∣\gamma_2=| e_2 \rangle \langle e_2 | のエネルギーは (1) より δ=12\delta=\frac12 で、変化は 12−0=12=(e−ε)−(J−K)\frac12-0=\frac12=(e-\varepsilon )-(J-K) に一致する。

(4) 例題 5.6 の模型で p=1p=1 とすると F11=U=2F_{11}=U=2 で、占有軌道のエネルギーに電子が自分自身と反発する分 UU が入り、空の軌道 δ=12\delta=\frac12 より上に来た。そのため反復は空の軌道へ跳び、最小は分数占有の縮退点になった。交換項があると F11F_{11} の UU は −W11γ11-W_{11}\gamma_{11} で消え、占有軌道は自分を感じない。一方、空の軌道 e2e_2 の F22F_{22} には占有電子からの反発 VV が入る。占有軌道と空の軌道の間の隙間のうち J−KJ-K の分はこの非対称から生じており、それが定理 5.9 の下界の中身である。(検算スクリプト)

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