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Koopmans の定理

2026年10月9日5分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5章 Hartree–Fock の変分構造

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第5章 §5.8 ★★ Lagrange 乗数にすぎない軌道エネルギーに物理的な意味を与える近似の、正確な位置づけ

軌道エネルギー εi\varepsilon _i は Lagrange 乗数として導入された数学的な量である。これにイオン化エネルギーという物理的な意味を与えるのが Koopmans の定理である。

定理 (Koopmans の定理 ★★)

Φ\Phi を NN 電子の Hartree–Fock 解(軌道 φ1,…,φN\varphi_1,\dots,\varphi_N、軌道エネルギー ε1,…,εN\varepsilon _1,\dots,\varepsilon _N)とし、軌道 φk\varphi_k を取り除いて他の軌道を変えずに作った N−1N-1 電子の Slater 行列式を Φkfr\Phi_k^{\mathrm{fr}} とする。このとき

⟨Φkfr, HN−1Φkfr⟩−⟨Φ, HNΦ⟩=−εk.\langle \Phi_k^{\mathrm{fr}},\,H_{N-1}\Phi_k^{\mathrm{fr}}\rangle -\langle \Phi,\,H_N\Phi\rangle =-\varepsilon _k .

証明

(5.7) で、kk を含む項だけが差に寄与する。1体部分から hkkh_{kk}、2体部分から 12∑j(Jkj−Kkj)+12∑i(Jik−Kik)=∑j(Jkj−Kkj)\frac12\sum_{j}(J_{kj}-K_{kj})+\frac12\sum_i(J_{ik}-K_{ik})=\sum_j(J_{kj}-K_{kj})(j=kj=k の項は 0)が落ちるので、差は −(hkk+∑j(Jkj−Kkj))=−⟨φk, Fγφk⟩=−εk-\bigl(h_{kk}+\sum_j(J_{kj}-K_{kj})\bigr)=-\langle \varphi_k,\,F_\gamma\varphi_k\rangle =-\varepsilon _k。

この定理は等式であり、近似が入るのは「イオンの状態を、中性原子の軌道を凍結した Slater 行列式で表す」ところである。イオン化エネルギー I=EN−1−ENI=E_{N-1}-E_N の近似としての −εk-\varepsilon _k の誤差には、符号の逆な2つの源がある。

  • 軌道緩和。イオンでは電子が1つ減って遮蔽が弱まるので、残りの軌道は縮む。イオンの軌道を最適化し直す(Δ\DeltaSCF と呼ぶ)とイオンのエネルギーは下がる。これは変分原理から必ず成り立つので、IΔSCF≤−εkI^{\Delta\mathrm{SCF}}\le-\varepsilon _k が定理として言える。
  • 相関。IΔSCFI^{\Delta\mathrm{SCF}} は両方の状態の相関エネルギーを無視している。電子が多い中性原子の方が電子対が多く、相関エネルギー(負)の絶対値が大きいのがふつうなので、厳密な II は IΔSCFI^{\Delta\mathrm{SCF}} より大きくなる傾向がある。こちらは定理ではなく経験則である。

2つの誤差が逆向きに働くので、Koopmans の値は凍結という粗い近似のわりに実測に近いことが多い。ヘリウムの数値は次のとおりである(自作 SCF と厳密値 E=−2.903724E=-2.903724 から計算)。

II [hartree]II [eV]
Koopmans −ε1s-\varepsilon _{1s}0.9179424.98
厳密値 E(He+)−E(He)E(\mathrm{He}^+)-E(\mathrm{He})0.9037224.59
Δ\DeltaSCF E(He+)−EHF(He)E(\mathrm{He}^+)-E^{\mathrm{HF}}(\mathrm{He})0.8616823.45

He+^+ は1電子系なので HF は厳密で E(He+)=−2E(\mathrm{He}^+)=-2 である。緩和の寄与は −0.0563-0.0563、相関の寄与は +0.0420+0.0420 で、たしかに逆符号になっている(検算スクリプト)。

例題 5.9 1s 軌道1個の模型での Koopmans 値 ★★

オリジナル例題 5.4 の模型(ζ∗=27/16\zeta^*=27/16)で考える。

  1. 軌道エネルギー ε=huu+Juu\varepsilon =h_{uu}+J_{uu} を求めよ。
  2. 軌道を凍結した He+^+ のエネルギーを求め、Koopmans の定理を確かめよ。
  3. He+^+ の軌道を緩和させると(指数 ζ\zeta を最適化し直すと)イオン化エネルギーはどうなるか。
解答

(1) huu=ζ22−2ζh_{uu}=\frac{\zeta^2}2-2\zeta、Juu=58ζJ_{uu}=\frac58\zeta なので ε=ζ(ζ2−118)\varepsilon =\zeta\bigl(\frac\zeta2-\frac{11}8\bigr)。ζ=2716\zeta=\frac{27}{16} を代入して ε=2716⋅(2732−4432)=−459512=−0.89648\varepsilon =\frac{27}{16}\cdot\bigl(\frac{27}{32}-\frac{44}{32}\bigr)=-\frac{459}{512}=-0.89648。

(2) 凍結した He+^+ は電子1個が uζ∗u_{\zeta^*} に入った状態で、エネルギーは huu=2716(2732−2)=−999512=−1.95117h_{uu}=\frac{27}{16}\bigl(\frac{27}{32}-2\bigr)=-\frac{999}{512}=-1.95117。中性原子は −729256=−1458512-\frac{729}{256}=-\frac{1458}{512} なので差は −999+1458512=459512=−ε\frac{-999+1458}{512}=\frac{459}{512}=-\varepsilon。

(3) He+^+ で ζ\zeta を最適化すると ζ22−2ζ\frac{\zeta^2}2-2\zeta の最小で ζ=2\zeta=2、エネルギー −2-2(厳密)。イオン化エネルギーは −2+2.84766=0.84766-2+2.84766=0.84766 に下がる。凍結値 0.896480.89648 との差 −0.0488-0.0488 が緩和の寄与で、符号は変分原理から決まる。遮蔽してくれていた相方の電子がいなくなったので、残った電子の軌道は有効電荷 27/1627/16 から 22 へ縮む。

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