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物理の例:有効係数と Darcy 則

2026年10月9日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9章 均質化と「閉じない」近似
目次
  1. 複合材料の有効熱伝導率・有効誘電率
  2. 多孔質媒体の Darcy 則
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第9章 §9.4 ★★ 巨視的な構成則が微視的方程式の極限として出る具体例

複合材料の有効熱伝導率・有効誘電率

熱伝導 ∇⋅(κ∇T)=−q\nabla\cdot(\kappa\nabla T)=-q、静電場 ∇⋅(εr∇ϕ)=−ρ/ε0\nabla\cdot(\varepsilon _r\nabla\phi)=-\rho/\varepsilon _0、定常電流 ∇⋅(σ∇ϕ)=0\nabla\cdot(\sigma\nabla\phi)=0 はすべて (9.9) と同じ形をしている。したがって前節までの結果は、複合材料の有効熱伝導率・有効誘電率・有効電気伝導率にそのまま当てはまる。Fourier 則 q=−κ∗∇T\bm{q}=-\kappa^*\nabla T や Ohm の法則 j=σ∗E\bm{j}=\sigma^*\bm{E} の巨視的な係数は、微視的な構成則の係数の平均ではなく、セル問題の解を通して決まる量であり、一般には体積分率だけで決まらず、Voigt–Reuss の範囲に入ることだけが保証される。

体積分率に加えて「巨視的に等方的」という情報があると範囲はもっと狭まり、それを与えるのが Hashin–Shtrikman の上下界である。3次元で、誘電率 εm\varepsilon _m の母相の中に誘電率 εi\varepsilon _i の球状粒子が体積分率 ϕ\phi で分散している希薄な系には、Maxwell–Garnett の式

ε∗−εmε∗+2εm=ϕ εi−εmεi+2εm(9.20)\frac{\varepsilon ^*-\varepsilon _m}{\varepsilon ^*+2\varepsilon _m}=\phi\,\frac{\varepsilon _i-\varepsilon _m}{\varepsilon _i+2\varepsilon _m}\tag{9.20}

がよく使われる。この式は ϕ\phi の 1 次までは孤立した球の分極(Clausius–Mossotti の局所場の議論)から正しく、ϕ\phi の高次は近似である。また (9.20) は、εi>εm\varepsilon _i>\varepsilon _m のとき Hashin–Shtrikman の下界と一致することが知られている。εm=1\varepsilon _m=1、εi=4\varepsilon _i=4、ϕ=0.2\phi=0.2 なら ε∗=4/3≈1.333\varepsilon ^*=4/3\approx1.333 で、Reuss の 1.1761.176 と Voigt の 1.61.6 の間にある(検算スクリプト)。

多孔質媒体の Darcy 則

多孔質媒体(砂、岩石、フィルタ)の中の遅い流れでは、巨視的な流速 uˉ\bar{\bm{u}} が圧力勾配に比例するという Darcy 則

uˉ=−Kμ(∇p−f),∇⋅uˉ=0(9.21)\bar{\bm{u}}=-\frac{K}{\mu}\bigl(\nabla p-\bm{f}\bigr),\qquad\nabla\cdot\bar{\bm{u}}=0\tag{9.21}

が経験則として知られている(μ\mu は粘性率、KK は透過率テンソル、f\bm{f} は体積力)。これは Stokes 方程式の均質化極限として導ける。周期 ε\varepsilon で固体の障害物が並び、流体の領域を Ωε\Omega_{\varepsilon } とする。細孔の大きさが ε\varepsilon なので、圧力勾配 O(1)\mathcal{O}(1) に対する流速は O(ε2)\mathcal{O}(\varepsilon ^2) になる。この大きさを取り出すために粘性項に ε2\varepsilon ^2 をつけた Stokes 方程式

−ε2μΔuε+∇pε=f,∇⋅uε=0(Ωε 内),uε=0(固体の表面)-\varepsilon ^2\mu\Delta\bm{u}_{\varepsilon }+\nabla p_{\varepsilon }=\bm{f},\qquad\nabla\cdot\bm{u}_{\varepsilon }=0\quad(\Omega_{\varepsilon }\text{ 内}),\qquad\bm{u}_{\varepsilon }=0\quad(\text{固体の表面})

を考える。2スケール展開 uε=u0(x,y)+εu1+⋯\bm{u}_{\varepsilon }=\bm{u}_0(x,y)+\varepsilon \bm{u}_1+\cdots、pε=p0(x)+εp1(x,y)+⋯p_{\varepsilon }=p_0(x)+\varepsilon p_1(x,y)+\cdots を入れると、最低次で

−μΔyu0+∇yp1=f−∇xp0,∇y⋅u0=0(セルの流体部分 Yf),u0=0(固体の表面)-\mu\Delta_y\bm{u}_0+\nabla_yp_1=\bm{f}-\nabla_xp_0,\qquad\nabla_y\cdot\bm{u}_0=0\quad(\text{セルの流体部分 }Y_f),\qquad\bm{u}_0=0\quad(\text{固体の表面})

が出る。右辺は yy によらないので、線型性から u0=μ−1∑jwj(y)(f−∇xp0)j\bm{u}_0=\mu^{-1}\sum_j\bm{w}^j(y)(f-\nabla_xp_0)_j と書け、wj\bm{w}^j はStokes のセル問題

−Δywj+∇yπj=ej,∇y⋅wj=0(Yf 内),wj=0(固体の表面),周期(9.23)-\Delta_y\bm{w}^j+\nabla_y\pi^j=e_j,\qquad\nabla_y\cdot\bm{w}^j=0\quad(Y_f\text{ 内}),\qquad\bm{w}^j=0\quad(\text{固体の表面}),\qquad\text{周期}\tag{9.23}

の解である。セル平均をとると uˉ=⟨u0⟩=μ−1K(f−∇p0)\bar{\bm{u}}=\langle \bm{u}_0 \rangle =\mu^{-1}K(\bm{f}-\nabla p_0)、透過率は

Kij=⟨wij⟩(固体部分では w=0 として Y 全体で平均)K_{ij}=\langle w^j_i \rangle \qquad(\text{固体部分では }\bm{w}=0\text{ として }Y\text{ 全体で平均})

となる。次の次数の可解条件から ∇x⋅uˉ=0\nabla_x\cdot\bar{\bm{u}}=0 が出て、Darcy 則 (9.21) が得られる。

KK が対称正定値であることもセル問題から示せる。(9.23) に wi\bm{w}^i を掛けて YfY_f で積分し部分積分すると、圧力の項は ∇⋅wi=0\nabla\cdot\bm{w}^i=0 と周期性・すべりなし条件で消え、

∫Yf∇wi:∇wj dy=∫Yfwji dy=Kji\int_{Y_f}\nabla\bm{w}^i:\nabla\bm{w}^j\,\mathrm{d} y=\int_{Y_f}w^i_j\,\mathrm{d} y=K_{ji}

(∣Y∣=1\lvert Y\rvert =1)。左辺は i,ji,j について対称で、ξ⋅Kξ=∫∣∇wξ∣2≥0\xi\cdot K\xi=\int\lvert \nabla\bm{w}_\xi\rvert ^2\ge0 である。等号が成り立たない(KK が正定値になる)のは、流体の領域 YfY_f がどの方向にも周期的につながっていて、ξ\xi の向きに流れが通れるときである。平行平板のように一方向に閉じた孔では、その向きの成分が 0 になり KK は半正定値にとどまる(例題で確かめる)。Darcy 則の透過率は、セルの中の粘性散逸を表す正定値の量として微視的方程式から決まる。この極限の厳密な正当化は Tartar が与え、その後 Allaire らが拡張した。

巨視的な構成則は極限として導けることがある

Ohm の法則・Fourier 則・Darcy 則は、どれも「流束は勾配に比例する」という巨視的な構成則で、比例係数は実験で測る物質定数として扱われてきた。均質化は、微視的な構造が周期的(またはエルゴード的)で、構造の大きさ ε\varepsilon と系の大きさ LL が分離している(ε/L→0\varepsilon /L\to0)ときに、

  • 構成則の形(線型・局所的)が極限として正しいこと、
  • 係数がセル問題の解で計算できること、
  • 係数が満たす不等式(Voigt–Reuss、正定値性)

を定理として与える。どれも小さいパラメータ ε/L\varepsilon /L の極限という B 型の構造があって初めて言えることであり、次節以降の C 型と対照をなす。ε/L\varepsilon /L が小さくない(構造と系の大きさが同程度)なら、有効係数による記述そのものが不正確になる。

例題 9.4 平行平板の並んだ媒質の透過率 ★★

オリジナル2次元の周期セル Y=[0,1)2Y=[0,1)^2 のうち、0<y2<h0<y_2<h(0<h<10<h<1)を流体、h≤y2<1h\le y_2<1 を固体の板とする。セルを周期的に並べると、y1y_1 方向に伸びる板と流路が交互に積み重なった媒質になる。

  1. Stokes のセル問題 (9.23) を j=1j=1 と j=2j=2 について解き、透過率テンソル KK を求めよ。
  2. ξ⋅Kξ=∫Yf∣∇wξ∣2\xi\cdot K\xi=\int_{Y_f}\lvert \nabla\bm{w}_\xi\rvert ^2 を ξ=e1\xi=e_1 で確かめよ。KK は正定値か。本文の正定値性の議論はどんな前提を暗に置いているか。
  3. h=1/2h=1/2、セルの大きさ ℓ=0.1 mm\ell=0.1\,\mathrm{mm}、水(μ=1.0×10−3 Pa s\mu=1.0\times10^{-3}\,\mathrm{Pa\,s}、ν=1.0×10−6 m2/s\nu=1.0\times10^{-6}\,\mathrm{m^2/s})、板に平行な圧力勾配 ∣∇p∣=1.0×104 Pa/m\lvert \nabla p\rvert =1.0\times10^4\,\mathrm{Pa/m} のとき、平均流速と、細孔の大きさで測った Reynolds 数を求めよ。Stokes 方程式から出発したことは正当か。
解答

(1) j=1j=1:右辺 e1e_1 も流体領域も y1y_1 によらないので、w1=(w(y2),0)\bm{w}^1=(w(y_2),0)、π1=\pi^1= 定数 と置いてみる。∇y⋅w1=∂y1w=0\nabla_y\cdot\bm{w}^1=\partial_{y_1}w=0 は自動的に満たされ、運動方程式は −w′′=1-w''=1、すべりなし条件は w(0)=w(h)=0w(0)=w(h)=0 になる。解は

w(y2)=y2(h−y2)2w(y_2)=\frac{y_2(h-y_2)}{2}

で、平板の間の Poiseuille 流である。セル全体で平均すると(固体部分は 00)K11=∫0hy2(h−y2)2dy2=h312K_{11}=\int_0^h\frac{y_2(h-y_2)}{2}\mathrm{d} y_2=\frac{h^3}{12}、K21=⟨w21⟩=0K_{21}=\langle w^1_2 \rangle =0。

j=2j=2:w2=0\bm{w}^2=0、π2=y2\pi^2=y_2 が −Δw2+∇π2=e2-\Delta\bm{w}^2+\nabla\pi^2=e_2、∇⋅w2=0\nabla\cdot\bm{w}^2=0、すべりなし条件をすべて満たす。π2=y2\pi^2=y_2 は y2y_2 方向に周期的でないが、流体領域は y2y_2 方向に固体で区切られているので、各流路の中で別々に定義されていればよく、周期性の要請にかからない。したがって K12=K22=0K_{12}=K_{22}=0 で、

K=(h3/12000).K=\begin{pmatrix}h^3/12&0\\0&0\end{pmatrix}.

板に垂直な方向には、どれだけ圧力勾配をかけても平均流は生じない。圧力が板で支えられるだけである。

(2) ∇w1\nabla\bm{w}^1 の成分で 00 でないのは ∂y2w=h/2−y2\partial_{y_2}w=h/2-y_2 だけなので∫Yf∣∇w1∣2=∫0h(h/2−y2)2dy2=h312=K11\int_{Y_f}\lvert \nabla\bm{w}^1\rvert ^2=\int_0^h(h/2-y_2)^2\mathrm{d} y_2=\frac{h^3}{12}=K_{11} で、本文の式と一致する。しかし ξ=e2\xi=e_2 では wξ=0\bm{w}_\xi=0 で ξ⋅Kξ=0\xi\cdot K\xi=0 となり、KK は半正定値にとどまり正定値ではない。本文の議論の ∫∣∇wξ∣2>0\int\lvert \nabla\bm{w}_\xi\rvert ^2>0 は wξ≠0\bm{w}_\xi\ne0 を前提にしており、これは流体領域がすべての方向に周期的につながっていることに対応する。流体がある方向につながっていなければ、その方向の透過率は 00 になる。透過率の値も符号も、体積分率(ここでは hh)だけでなく流路のつながり方という幾何で決まる。

(3) 透過率は長さの 2 乗の次元をもち、セルの大きさ ℓ\ell を戻すと ℓ2K11=ℓ2h3/12=(1.0×10−4)2/96≈1.04×10−10 m2\ell^2K_{11}=\ell^2h^3/12=(1.0\times10^{-4})^2/96\approx1.04\times10^{-10}\,\mathrm{m^2}。Darcy 則 (9.21) より平均流速は

uˉ=ℓ2K11μ∣∇p∣=1.04×10−101.0×10−3×1.0×104≈1.04×10−3 m/s.\bar u=\frac{\ell^2K_{11}}{\mu}\lvert \nabla p\rvert =\frac{1.04\times10^{-10}}{1.0\times10^{-3}}\times1.0\times10^4\approx1.04\times10^{-3}\,\mathrm{m/s}.

細孔の大きさで測った Reynolds 数は uˉℓ/ν≈1.04×10−3×10−4/10−6≈0.10\bar u\ell/\nu\approx1.04\times10^{-3}\times10^{-4}/10^{-6}\approx0.10 で 11 より十分小さく、慣性項を落とした Stokes 方程式から出発したことと整合する(検算スクリプト)。流速を上げて細孔 Reynolds 数が 11 を超えると慣性項が無視できなくなり、流速と圧力勾配の比例(Darcy 則の線型性)が崩れる。

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