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流れは ω\omega を保つ:Lie 微分と Liouville の定理

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第10部 第2章 準備:微分形式・シンプレクティック形式・ハミルトンベクトル場
目次
  1. Lie 微分と Cartan の公式
  2. Hamilton の流れは を保つ
  3. の変化と作用
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第10部 第2章 §10.2.4 ★★ Hamilton の流れがシンプレクティック形式を保つことを Cartan の公式で示す。θ\theta の変化から作用と前量子化の f+θ(Xf)f+\theta(X_f) が出てくる

Lie 微分と Cartan の公式

ベクトル場 XX の流れを ϕs\phi_s(XX に沿って時間 ss だけ進める写像)とする。形式 α\alpha を流れで引き戻した ϕs∗α\phi_s^*\alpha は、「進んだ先の点で α\alpha を評価し、接ベクトルも流れで運んでから入れる」形式で、関数なら ϕs∗F=F∘ϕs\phi_s^*F=F\circ\phi_s である。その変化率

LXα=ddsϕs∗α∣s=0(10.2.16)L_X\alpha=\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} s}\phi_s^*\alpha\Big|_{s=0}\tag{10.2.16}

を α\alpha の Lie 微分と呼ぶ。関数では LXF=X(F)L_XF=X(F)、1形式 α=∑bαbdxb\alpha=\sum_b\alpha_b\mathrm{d} x^b では(LXα)b=∑c(Xc∂cαb+αc∂bXc)(L_X\alpha)_b=\sum_c\bigl(X^c\partial_c\alpha_b+\alpha_c\partial_bX^c\bigr)、2形式では (LXσ)ab=∑c(Xc∂cσab+σcb∂aXc+σac∂bXc)(L_X\sigma)_{ab}=\sum_c\bigl(X^c\partial_c\sigma_{ab}+\sigma_{cb}\partial_aX^c+\sigma_{ac}\partial_bX^c\bigr) となる(第1項は点が動いた分、残りは接ベクトルが流れで変形された分)。

定理 10.2.8(Cartan の公式 ★★)

任意の形式 α\alpha について

LXα=ιXdα+d(ιXα).(10.2.17)L_X\alpha=\iota_X\mathrm{d}\alpha+\mathrm{d}(\iota_X\alpha).\tag{10.2.17}

証明

関数 FF では ιXF=0\iota_XF=0 と約束して、右辺 =ιXdF=X(F)=LXF=\iota_X\mathrm{d} F=X(F)=L_XF。関数の微分 dF\mathrm{d} F では、流れの引き戻しと外微分が交換する(ϕs∗dF=d(F∘ϕs)\phi_s^*\mathrm{d} F=\mathrm{d}(F\circ\phi_s))のでLXdF=d(X(F))L_X\mathrm{d} F=\mathrm{d}(X(F))、右辺も ιXddF+d(ιXdF)=0+d(X(F))\iota_X\mathrm{d}\mathrm{d} F+\mathrm{d}(\iota_X\mathrm{d} F)=0+\mathrm{d}(X(F)) で一致する。両辺はどちらも外積について Leibniz 則 LX(α∧β)=LXα∧β+α∧LXβL_X(\alpha\wedge\beta)=L_X\alpha\wedge\beta+\alpha\wedge L_X\beta を満たし(左辺は引き戻しが外積を保つことから、右辺は ιX\iota_X と d\mathrm{d} の符号つきの Leibniz 則から)、どの形式も局所的には F dG1∧⋯∧dGkF\,\mathrm{d} G_1\wedge\cdots\wedge\mathrm{d} G_k の和なので、関数と dF\mathrm{d} F で一致すれば全部の形式で一致する。

Hamilton の流れは ω\omega を保つ

定理 10.2.9(シンプレクティック形式の保存 ★★★)

任意の関数 ff について LXfω=0L_{X_f}\omega=0。したがって XfX_f の流れ ϕs\phi_s は ϕs∗ω=ω\phi_s^*\omega=\omega を満たす(シンプレクティック同相写像、正準変換)。

証明

Cartan の公式 (10.2.17) と ιXfω=df\iota_{X_f}\omega=\mathrm{d} f、dω=0\mathrm{d}\omega=0 から LXfω=ιXfdω+d(ιXfω)=0+ddf=0L_{X_f}\omega=\iota_{X_f}\mathrm{d}\omega+\mathrm{d}(\iota_{X_f}\omega)=0+\mathrm{d}\mathrm{d} f=0。ddsϕs∗ω=ϕs∗LXfω=0\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} s}\phi_s^*\omega=\phi_s^*L_{X_f}\omega=0 なので ϕs∗ω=ϕ0∗ω=ω\phi_s^*\omega=\phi_0^*\omega=\omega。

証明には (S1) の dω=0\mathrm{d}\omega=0 と、ハミルトンベクトル場の定義 ιXfω=df\iota_{X_f}\omega=\mathrm{d} f(完全形式)の2つを使った。ιXω\iota_X\omega が閉じているだけ(局所的に完全)のベクトル場も ω\omega を保つが、そのようなベクトル場は大域的なハミルトニアンを持たないことがある。q,pq,p の両方を周期 11 で同一視したトーラスで X=∂pX=\partial_p とすると ιXω=−dq\iota_X\omega=-\mathrm{d} q は閉じているが、qq はトーラス上の1価な関数でないので dq\mathrm{d} q は完全でなく、XX は ω\omega を保つがハミルトンベクトル場ではない。

ω\omega が保たれれば、その fdf_{\mathrm d} 乗の Liouville 体積形式も保たれる。これが Liouville の定理で、1自由度では ω\omega 自身が面積なので、ハミルトンベクトル場の発散 ∂qXq+∂pXp=∂q∂pf−∂p∂qf=0\partial_qX^q+\partial_pX^p=\partial_q\partial_pf-\partial_p\partial_qf=0 と同じ内容である。解析力学の巻では「正準変換は MTJM=JM^{\mathsf T}\mathsf JM=\mathsf J を満たす」こととして同じ事実を示した(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第12章)。ϕs∗ω=ω\phi_s^*\omega=\omega を Jacobi 行列で書いたものがこの式である。

数値例で確かめる。無次元化した振り子 H=12p2+(1−cos⁡q)H=\frac12p^2+(1-\cos q) で、中心 (q,p)=(0,1.55)(q,p)=(0,1.55)・半径 0.350.35 の円板(面積 π⋅0.352=0.3848\pi\cdot0.35^2=0.3848)を時間 t=3t=3 だけ流す。円板の境界の4000点を数値積分で運び、像の多角形の面積を測ると 0.384840.38484 で、元の面積と相対誤差 10−610^{-6} で一致した。像は qq 方向に 0.500.50 から 2.462.46 まで引き伸ばされ、形は大きく変わるが面積は変わらない。比較のため摩擦 p˙=−sin⁡q−γp\dot p=-\sin q-\gamma p(γ=0.3\gamma=0.3)を足すと、流れの発散が −γ-\gamma になるので面積は e−γt=e−0.9=0.4066\mathrm{e}^{-\gamma t}=\mathrm{e}^{-0.9}=0.4066 倍に縮み、数値でも 0.40660.4066 倍になった(図 10.2.3)。

図

図 10.2.3 振り子の流れで運んだ円板(t=0t=0 の黒い円 → t=3t=3)。保存系の像(青、実線)は引き伸ばされるが面積は 0.38480.3848 のまま。摩擦 γ=0.3\gamma=0.3 を入れた像(赤、破線)は面積が e−0.9\mathrm{e}^{-0.9} 倍に縮む。灰色の線はセパラトリクス p=±2cos⁡(q/2)p=\pm2\cos(q/2)。

θ\theta の変化と作用

ω\omega は流れで変わらないが、θ\theta は変わる。Cartan の公式と dθ=ω\mathrm{d}\theta=\omega から

LXfθ=ιXfω+d(θ(Xf))=d(f+θ(Xf))(10.2.18)L_{X_f}\theta=\iota_{X_f}\omega+\mathrm{d}(\theta(X_f))=\mathrm{d}\bigl(f+\theta(X_f)\bigr)\tag{10.2.18}

となる。θ\theta の変化は完全形式で、その「ポテンシャル」f+θ(Xf)f+\theta(X_f) は、前量子化の演算子 Qpre(f)=−iℏXf+θ(Xf)+f\mathcal Q_{\mathrm{pre}}(f)=-\mathrm{i}\hbar X_f+\theta(X_f)+f の掛け算の部分と同じ組み合わせである。第10部第3章では、波動関数(線束の切断)を流れで運ぶときの位相の変化がこの量で決まることを見る。f=H=p22m+V(q)f=H=\frac{p^2}{2m}+V(q) と θ=−p dq\theta=-p\,\mathrm{d} q では θ(XH)=−p ∂H/∂p=−p2/m\theta(X_H)=-p\,\partial H/\partial p=-p^2/m なので、

H+θ(XH)=V−p22m=−L(10.2.19)H+\theta(X_H)=V-\frac{p^2}{2m}=-L\tag{10.2.19}

で、Lagrangian LL の符号を替えたものになる。式 (10.2.18) を時間について積分すると、流れで運んだ θ\theta の差が作用の微分になる。これを例題で確かめる。

例題 10.2.4 θ\theta の変化は作用の微分 ★★

オリジナルH=p22m+V(q)H=\frac{p^2}{2m}+V(q)、θ=−p dq\theta=-p\,\mathrm{d} q とする。

  1. (1) LXHθ=−dLL_{X_H}\theta=-\mathrm{d} L(L=p22m−V(q)L=\frac{p^2}{2m}-V(q))を、Lie 微分の成分の式から直接確かめよ。
  2. (2) 流れ ϕt\phi_t で ddtϕt∗θ=ϕt∗LXHθ\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\phi_t^*\theta=\phi_t^*L_{X_H}\theta を使い、ϕt∗θ−θ=−dSt\phi_t^*\theta-\theta=-\mathrm{d} S_t を示せ。ここで St(q,p)S_t(q,p) は初期値 (q,p)(q,p) から出発した軌道に沿う作用 ∫0tL dt′\int_0^tL\,\mathrm{d} t' である。
  3. (3) 自由粒子 V=0V=0 で、終点 (Q,P)=ϕt(q,p)(Q,P)=\phi_t(q,p) を求め、P dQ−p dq=dStP\,\mathrm{d} Q-p\,\mathrm{d} q=\mathrm{d} S_t を直接確かめよ。StS_t を qq と QQ で書け。
解答

(1) XHX_H の成分は (Xq,Xp)=(p/m,−V′(q))(X^q,X^p)=(p/m,-V'(q))、θ\theta の成分は (θq,θp)=(−p,0)(\theta_q,\theta_p)=(-p,0)。成分の式 (LXθ)b=∑c(Xc∂cθb+θc∂bXc)(L_X\theta)_b=\sum_c(X^c\partial_c\theta_b+\theta_c\partial_bX^c) から

(LXHθ)q=Xp∂pθq+θq∂qXq=(−V′)(−1)+(−p)⋅0=V′,(LXHθ)p=Xp∂pθp+θq∂pXq=0+(−p)1m=−pm\begin{gathered}(L_{X_H}\theta)_q=X^p\partial_p\theta_q+\theta_q\partial_qX^q=(-V')(-1)+(-p)\cdot0=V',\\ (L_{X_H}\theta)_p=X^p\partial_p\theta_p+\theta_q\partial_pX^q=0+(-p)\frac1m=-\frac pm\end{gathered}

(Xq∂qθbX^q\partial_q\theta_b と θp\theta_p を含む項は0なので省いた)。一方 −dL=V′ dq−pmdp-\mathrm{d} L=V'\,\mathrm{d} q-\frac pm\mathrm{d} p で一致する。これは式 (10.2.18)・(10.2.19) を成分で確かめたことになる。

(2) ddtϕt∗θ=ϕt∗(−dL)=−d(L∘ϕt)\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\phi_t^*\theta=\phi_t^*(-\mathrm{d} L)=-\mathrm{d}(L\circ\phi_t) で、t=0t=0 から tt まで積分するとϕt∗θ−θ=−d∫0tL∘ϕt′ dt′=−dSt\phi_t^*\theta-\theta=-\mathrm{d}\int_0^tL\circ\phi_{t'}\,\mathrm{d} t'=-\mathrm{d} S_t。L∘ϕt′L\circ\phi_{t'} は初期値 (q,p)(q,p) の軌道の時刻 t′t' での LL の値なので、積分は軌道に沿う作用である。

(3) Q=q+pt/mQ=q+pt/m、P=pP=p。P dQ−p dq=p(dq+tmdp)−p dq=ptmdp=d(p2t2m)P\,\mathrm{d} Q-p\,\mathrm{d} q=p(\mathrm{d} q+\tfrac tm\mathrm{d} p)-p\,\mathrm{d} q=\tfrac{pt}{m}\mathrm{d} p=\mathrm{d}\bigl(\tfrac{p^2t}{2m}\bigr)。軌道に沿う作用は ∫0tp22mdt′=p2t2m\int_0^t\frac{p^2}{2m}\mathrm{d} t'=\frac{p^2t}{2m} で一致する。p=m(Q−q)/tp=m(Q-q)/t を代入すると St=m(Q−q)22tS_t=\frac{m(Q-q)^2}{2t} で、共通例題③の伝播関数の指数 exp⁡(im(xf−xi)2/(2ℏt))\exp(\mathrm{i} m(x_f-x_i)^2/(2\hbar t)) に現れる作用と同じである。(2) の式 P dQ−p dq=dStP\,\mathrm{d} Q-p\,\mathrm{d} q=\mathrm{d} S_t は、解析力学の巻の「流れの母関数は作用」と同じ内容である(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第12章)。

木下の勉強ステータス

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