量子力学の様々な構成方法 第3部 第1章 §3.1.4 ★★ 前因子は「時間0で何も動かない」から決まり、自由粒子では折れ線の和が厳密に閉じる
式 (3.1.12) の前因子 (m/(2πiℏϵ))N/2 は天下りに置いた。この節では、時間を区切った1区間の振幅が満たすべき条件から、それを決める。あわせて、要請 (II) で作った振幅が前節の合成則 (3.1.9) と矛盾しないことを、自由粒子で確かめる。
1区間の振幅と前因子
V=0 の粒子の1区間(時間 ϵ)の振幅を、前因子 c(ϵ) を未知のまま
Kϵ(x′,x)=c(ϵ)exp[2ℏϵim(x′−x)2](3.1.14)
と書く。ϵ→0 では時間が経たないので、式 (3.1.10) の右辺は ψ(x′,t) そのものに戻らなければならない。これは Kϵ(x′,x)→δ(x′−x) を意味し、とくに ∫Kϵ(x′,x)dx′=1 を要求する。
この積分には次の Gauss 積分(Fresnel 積分)を使う。
∫−∞∞e−αy2+βydy=απeβ2/(4α)(Reα≥0, α=0)(3.1.15)
平方根は主値をとる。Reα=0 のときは被積分関数が減衰しないので、α に小さい正の実部を足して積分し、最後に 0 に戻す(収束因子)。物理の言葉では、時間 ϵ をわずかに ϵ(1−iη)(η>0)とずらすことに当たる。
式 (3.1.14) では α=−im/(2ℏϵ)、β=0 なので、
∫−∞∞exp[2ℏϵimy2]dy=m2πiℏϵ
である。したがって規格化の条件から c(ϵ)=m/(2πiℏϵ) が決まる。これを N 区間ぶん掛けたものが前因子 (m/(2πiℏϵ))N/2 である。
指数の幅は ℏϵ/m の程度で、ϵ→0 で 0 に縮む。そのため Kϵ を滑らかな関数に掛けて積分すると、その関数の x での値に近づく。
自由粒子の伝播関数
前因子が決まったので、2つの区間をつなぐ。時間 t1 の振幅と時間 t2 の振幅を中間の位置 y で積分すると(例題 3.1.4)、
∫dyKt2(xf,y)Kt1(y,xi)=Kt1+t2(xf,xi)
が厳密に成り立つ。式 (3.1.12) の N−1 回の積分をこの関係で1回ずつ行うと、どの N でも同じ形が残り、極限をとる前に答えが決まる。
K0(xf,t;xi,0)=2πiℏtmexp[2ℏtim(xf−xi)2](3.1.16)
これは巻の共通例題③の伝播関数そのものである(巻の補足の正答表と同じ形)。第3部第3章では、これを古典の経路と揺らぎに分ける方法で解き直し、同じ方法を調和振動子へ広げる。
式 (3.1.16) の指数は、古典の経路の作用 Scl=m(xf−xi)2/(2t) を ℏ で割ったものになっている。自由粒子では、すべての経路の和をとった結果が、古典の経路1本の位相に前因子を掛けたものと厳密に一致する。これは作用が経路の2次式であることによる(第3部第3章)。
また ∣K0∣2=m/(2πℏt) は xf によらない。1点から出た粒子は、時間が経つとどこにでも同じ重みで見つかる。位置を1点に決めた状態は運動量がまったく決まっていないので、この結果は不確定性関係と整合している。
例題 3.1.4 2つの区間の合成 ★★
オリジナル式 (3.1.16) の形の K0 について、合成則 ∫dyK0(xf,t1+t2;y,t1)K0(y,t1;xi,0)=K0(xf,t1+t2;xi,0) を確かめよ。
解答
被積分関数の指数を y について整理する。
2ℏim[t2(xf−y)2+t1(y−xi)2]=−αy2+βy+γ0
と書くと、係数は
α=−2ℏim(t11+t21),β=ℏim(t2xf+t1xi),γ0=2ℏim(t2xf2+t1xi2)
である。式 (3.1.15) を当てると、指数は β2/(4α)+γ0 になる。これを計算すると
4αβ2+γ0=2ℏim[t2xf2+t1xi2−t1t2(t1+t2)(xft1+xit2)2]=2ℏ(t1+t2)im(xf−xi)2
となる。2つ目の等号は、括弧の中を通分すると分子が t1t2(xf−xi)2 になることから従う。
前因子は
2πiℏt2m2πiℏt1mαπ=2πiℏt1t2mm(t1+t2)2πiℏt1t2=2πiℏ(t1+t2)m
である。平方根の枝は、時間を t(1−iη) とずらした収束因子のもとで主値をとれば矛盾なく選べる(検算では η>0 の複素の時間で数値積分して確かめた)。以上で合成則が成り立つ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com