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二重スリットを伝播関数で計算する

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第1章 二重スリットから「全経路の和」へ
目次
  1. 模型:ガウス型のスリット
  2. 1本のスリットからの波束
  3. 2本のスリットの縞
  4. 遠方の縞
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第3部 第1章 §3.1.5 ★★ 要請と合成則だけで二重スリットの縞を最後まで出し、波束の広がり(共通例題③)と遠方の縞の間隔が一緒に出る

3.1.1節の縞を、ここまでに置いた道具だけで計算し直す。de Broglie の関係も、遠方の近似も、最初には使わない。

模型:ガウス型のスリット

粒子は進行方向(zz 方向)に速さ vv で進み、衝立から検出面までを時間 t=ℓ/vt=\ell/v で飛ぶとする。自由粒子の作用は zz の部分と xx の部分の和なので、伝播関数も2つの積に分かれ、zz の部分はどの経路にも共通の因子になる。そこで横方向の座標 xx だけを1次元の自由粒子として扱う。

縁の鋭いスリットの代わりに、ガウス関数の形で粒子を通すスリットを考える。衝立を通った直後(時刻 00)の横方向の振幅を

ψ(x,0)=N[g(x−d2)+g(x+d2)],g(x)=(2πσ02)−1/4 e−x2/(4σ02)(3.1.17)\psi(x,0)=\mathcal N\bigl[g(x-\tfrac d2)+g(x+\tfrac d2)\bigr],\qquad g(x)=(2\pi\sigma_0^2)^{-1/4}\,\mathrm{e}^{-x^2/(4\sigma_0^2)}\tag{3.1.17}

とおく。∣g∣2\lvert g\rvert ^2 は標準偏差 σ0\sigma_0 の正規分布で、σ0\sigma_0 がスリットの幅に当たる。2つのガウス関数の重なりは ∫g(x−d2)g(x+d2) dx=e−d2/(8σ02)\int g(x-\frac d2)g(x+\frac d2)\,\mathrm{d} x=\mathrm{e}^{-d^2/(8\sigma_0^2)} なので、規格化の定数は N2=1/[2(1+e−d2/(8σ02))]\mathcal N^2=1/[2(1+\mathrm{e}^{-d^2/(8\sigma_0^2)})] である。

1本のスリットからの波束

式 (3.1.10) に式 (3.1.16) と gg を入れると、積分は式 (3.1.15) の形になる。長さの次元を持つ量 σ0\sigma_0 と時間の次元を持つ量

t∗=2mσ02ℏ(3.1.18)t_*=\frac{2m\sigma_0^2}{\hbar}\tag{3.1.18}

を使うと、結果は次のように書ける。

ψg(x,t)≔∫dx′ K0(x,t;x′,0) g(x′)=(2πσ02)−1/41+it/t∗exp⁡[−x24σ02(1+it/t∗)](3.1.19)\psi_g(x,t)\coloneqq\int\mathrm{d} x'\,K_0(x,t;x',0)\,g(x')=\frac{(2\pi\sigma_0^2)^{-1/4}}{\sqrt{1+\mathrm{i} t/t_*}}\exp\Bigl[-\frac{x^2}{4\sigma_0^2(1+\mathrm{i} t/t_*)}\Bigr]\tag{3.1.19}

導出は例題 3.1.4 と同じ平方完成で、α=1/(4σ02)−im/(2ℏt)\alpha=1/(4\sigma_0^2)-\mathrm{i} m/(2\hbar t) とおけばよい。指数を実部と虚部に分けるため、1/(1+it/t∗)=(1−it/t∗)/(1+t2/t∗2)1/(1+\mathrm{i} t/t_*)=(1-\mathrm{i} t/t_*)/(1+t^2/t_*^2) を使い、

σ(t)2=σ02(1+t2t∗2)=σ02+(ℏt2mσ0)2(3.1.20)\sigma(t)^2=\sigma_0^2\Bigl(1+\frac{t^2}{t_*^2}\Bigr)=\sigma_0^2+\Bigl(\frac{\hbar t}{2m\sigma_0}\Bigr)^2\tag{3.1.20}

とおく。すると

∣ψg(x,t)∣2=12πσ(t)2 e−x2/(2σ(t)2),arg⁡ψg(x,t)=x2 t4σ(t)2 t∗+(x によらない項)(3.1.21)\lvert \psi_g(x,t)\rvert ^2=\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma(t)^2}}\,\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma(t)^2)},\qquad \arg\psi_g(x,t)=\frac{x^2\,t}{4\sigma(t)^2\,t_*}+({x}\text{ によらない項})\tag{3.1.21}

となる。1本のスリットを出た波束は、幅が式 (3.1.20) のとおり広がる。これは巻の共通例題③の波束の広がりと同じ式である。時間 t∗t_* は、幅が 2\sqrt2 倍になるまでの時間である。

2本のスリットの縞

2本のスリットからの波束は、式 (3.1.19) の xx を x∓d/2x\mp d/2 に置き換えたもので、ψ±(x,t)=ψg(x∓d2,t)\psi_\pm(x,t)=\psi_g(x\mp\frac d2,t) と書く。式 (3.1.10) は ψ(x,0)\psi(x,0) について線形なので、時刻 tt の振幅は N(ψ++ψ−)\mathcal N(\psi_++\psi_-) である。干渉項 2Re⁡(ψ+ψ−∗)2\operatorname{Re}(\psi_+\psi_-^*) では前因子の位相 1/1+it/t∗1/\sqrt{1+\mathrm{i} t/t_*} が打ち消し、位相の差は式 (3.1.21) から[(x−d2)2−(x+d2)2] t/(4σ2t∗)=−kfx[(x-\frac d2)^2-(x+\frac d2)^2]\,t/(4\sigma^2t_*)=-k_{\mathrm f}x になる。結果は

P(x,t)=N22πσ2[e−(x−d/2)2/(2σ2)+e−(x+d/2)2/(2σ2)+2 e−(x2+d2/4)/(2σ2)cos⁡(kfx)](3.1.22)P(x,t)=\frac{\mathcal N^2}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}\Bigl[\mathrm{e}^{-(x-d/2)^2/(2\sigma^2)}+\mathrm{e}^{-(x+d/2)^2/(2\sigma^2)} +2\,\mathrm{e}^{-(x^2+d^2/4)/(2\sigma^2)}\cos(k_{\mathrm f}x)\Bigr]\tag{3.1.22}

kf=d t2σ(t)2 t∗(3.1.23)k_{\mathrm f}=\frac{d\,t}{2\sigma(t)^2\,t_*}\tag{3.1.23}

である(σ=σ(t)\sigma=\sigma(t))。角括弧の第1項と第2項が式 (3.1.2) の P1P_1 と P2P_2、第3項が干渉項で、縞の間隔は 2π/kf2\pi/k_{\mathrm f} である。式 (3.1.22) は近似を使っていない。

遠方の縞

検出面が遠く t≫t∗t\gg t_* のとき、σ(t)≈σ0t/t∗=ℏt/(2mσ0)\sigma(t)\approx\sigma_0t/t_*=\hbar t/(2m\sigma_0) となり、式 (3.1.23) は

kf→m dℏ t,2πkf→2πℏ tm d=λ ℓd(t=ℓ/v, λ=2πℏ/(mv))(3.1.24)k_{\mathrm f}\to\frac{m\,d}{\hbar\,t},\qquad \frac{2\pi}{k_{\mathrm f}}\to\frac{2\pi\hbar\,t}{m\,d}=\frac{\lambda\,\ell}{d}\quad(t=\ell/v,\ \lambda=2\pi\hbar/(mv))\tag{3.1.24}

に近づく。これは 3.1.1節で de Broglie の関係を仮定して書いた縞の間隔 (3.1.3) であり、式 (3.1.13) の作用の差とも一致する。厳密な間隔と遠方の値の比は 1+(t∗/t)21+(t_*/t)^2 である。

図 3.1.3 に、d=8σ0d=8\sigma_0、t=20 t∗t=20\,t_* の強度を示す。点線が式 (3.1.22)(厳密)、赤の実線が遠方の近似(包絡線を中心 00・幅 σ0t/t∗\sigma_0t/t_* のガウス関数とし、縞の波数を md/(ℏt)md/(\hbar t) としたもの)、灰色の破線が経路を見分けたときの P1+P2P_1+P_2 である。縞の間隔は厳密に 31.49 σ031.49\,\sigma_0、遠方の近似で 10π σ0=31.42 σ010\pi\,\sigma_0=31.42\,\sigma_0 である。

図

図 3.1.3 ガウス型の二重スリットの強度分布(d=8σ0d=8\sigma_0、t=20 t∗t=20\,t_*)。縦軸は σ0P\sigma_0P の100倍。厳密な式 (3.1.22)(黒の点線)と遠方の近似(赤の実線)は縞の位置でほとんど重なり、経路を見分けたとき(灰色の破線)は縞が消えて包絡線だけが残る

例題 3.1.5 中性子の二重スリット ★★

オリジナル中性子(m=1.675×10−27 kgm=1.675\times10^{-27}\,\mathrm{kg})が速さ v=200 m s−1v=200\,\mathrm{m\,s^{-1}} で、幅 σ0=2 μm\sigma_0=2\,\mu\mathrm m・間隔 d=50 μmd=50\,\mu\mathrm m のガウス型の二重スリットを通り、ℓ=5 m\ell=5\,\mathrm m 先の検出面に着く。

  1. (1) 飛行時間 tt、時間 t∗t_*、検出面での幅 σ(t)\sigma(t) を求めよ。
  2. (2) 縞の間隔を、式 (3.1.23)(厳密)と式 (3.1.24)(遠方)で求めて比べよ。
  3. (3) 包絡線の幅 ±σ(t)\pm\sigma(t) の中に縞は何本あるか。
解答

(1) t=ℓ/v=5/200 s=25 mst=\ell/v=5/200\,\mathrm s=25\,\mathrm{ms} である。式 (3.1.18) から

t∗=2×1.675×10−27×(2×10−6)21.055×10−34 s=1.27×10−4 st_*=\frac{2\times1.675\times10^{-27}\times(2\times10^{-6})^2}{1.055\times10^{-34}}\,\mathrm s=1.27\times10^{-4}\,\mathrm s

で、t/t∗=197t/t_*=197 である。式 (3.1.20) から σ(t)=σ01+1972=0.394 mm\sigma(t)=\sigma_0\sqrt{1+197^2}=0.394\,\mathrm{mm} になり、スリットの幅の約200倍に広がる。

(2) 遠方の値は 2πℏt/(md)=ht/(md)2\pi\hbar t/(md)=h t/(md) で、

6.626×10−34×0.0251.675×10−27×5×10−5 m=1.978×10−4 m=0.198 mm\frac{6.626\times10^{-34}\times0.025}{1.675\times10^{-27}\times5\times10^{-5}}\,\mathrm m=1.978\times10^{-4}\,\mathrm m=0.198\,\mathrm{mm}

である。de Broglie 波長 λ=h/(mv)=1.98 nm\lambda=h/(mv)=1.98\,\mathrm{nm} から λℓ/d\lambda\ell/d としても同じ値になる。厳密な値は遠方の値の 1+(t∗/t)2=1+2.6×10−51+(t_*/t)^2=1+2.6\times10^{-5} 倍で、5 nm5\,\mathrm{nm} ほど長いだけである。この配置では遠方の近似で十分である。

(3) 2σ(t)/Δx=0.788/0.198=3.982\sigma(t)/\Delta x=0.788/0.198=3.98 なので、±σ(t)\pm\sigma(t) の中に縞は約4本ある。遠方では 2σ/Δx≈d/(2πσ0)2\sigma/\Delta x\approx d/(2\pi\sigma_0) となり、縞の本数はスリットの間隔と幅の比だけで決まる。縞を多く見るにはスリットを細く、間隔を広くする。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの t∗/t→0t_*/t\to0(飛行時間が波束の広がりの時間 2mσ02/ℏ2m\sigma_0^2/\hbar より長い) | 証明 証明済み(ガウス型のスリットでは厳密な式 (3.1.22) の極限として本文で示した。縁の鋭いスリットでは Fraunhofer 近似として別に扱う) | 行き先 近似の数理 第1章

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