tecktom.com

Feynman の要請:各経路の振幅は eiS/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar}

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第1章 二重スリットから「全経路の和」へ
目次
  1. 時間を区切った形
  2. 作用から de Broglie の位相差が出る
  3. 古典の経路が選ばれる理由
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第3部 第1章 §3.1.3 ★★★ 経路積分の構成の公理そのもの。すべての経路が同じ大きさで寄与し、位相だけが作用で決まる

前節で、量子力学の振幅は「すべての経路の振幅の和」の形に書けることを見た。残るのは、1本の経路 x(t)x(t) にどんな複素数を割り当てるかである。Feynman はこれを次の2つの要請で決めた(R. P. Feynman (1948), Rev. Mod. Phys. 20, 367)。

定義 3.1.1(Feynman の要請)

  1. (I) 粒子の経路が時空のある領域に入っているかを理想的な測定で調べるとき、肯定の答えが出る確率は、その領域に入る各経路からの複素数の寄与の和の、絶対値の2乗である。
  2. (II) どの経路も寄与の大きさは同じで、位相はその経路に沿った古典の作用 S[x]=∫L dtS[x]=\int L\,\mathrm{d} t を ℏ\hbar で割ったものである。

要請 (I) は前節の規則を経路の言葉で言い直したもので、新しいのは要請 (II) である。古典力学では作用は停留値をとる1本の経路を選ぶための道具だったが、ここでは作用が経路ごとの位相を与える量に変わる。古典の経路は特別扱いされず、ほかのどの経路とも同じ大きさの重みで和に入る。

時間を区切った形

要請 (II) を式 (3.1.8) に入れる。L=m2x˙2−V(x)L=\frac m2\dot x^2-V(x) の粒子について、隣り合う時刻の間を直線で結んだ折れ線の経路の作用を

SN(x0,x1,…,xN)=∑k=0N−1ϵ[m2(xk+1−xkϵ)2−V(xk)],x0=xi, xN=xf(3.1.11)S_N(x_0,x_1,\dots,x_N)=\sum_{k=0}^{N-1}\epsilon\left[\frac m2\Bigl(\frac{x_{k+1}-x_k}{\epsilon}\Bigr)^2-V(x_k)\right],\qquad x_0=x_i,\ x_N=x_f\tag{3.1.11}

とおくと、伝播関数は

K(xf,tf;xi,ti)=lim⁡N→∞(m2πiℏϵ)N/2∫dx1⋯∫dxN−1  eiSN/ℏ≕∫x(ti)=xix(tf)=xfDx  eiS[x]/ℏ(3.1.12)K(x_f,t_f;x_i,t_i)=\lim_{N\to\infty}\Bigl(\frac{m}{2\pi\mathrm{i}\hbar\epsilon}\Bigr)^{N/2}\int\mathrm{d} x_1\cdots\int\mathrm{d} x_{N-1}\;\mathrm{e}^{\mathrm{i} S_N/\hbar} \eqqcolon\int_{x(t_i)=x_i}^{x(t_f)=x_f}\mathcal Dx\;\mathrm{e}^{\mathrm{i} S[x]/\hbar}\tag{3.1.12}

になる。右端は左の極限の略記で、Dx\mathcal Dx を経路積分の測度と呼ぶ。前因子 (m/(2πiℏϵ))N/2(m/(2\pi\mathrm{i}\hbar\epsilon))^{N/2} は、極限が存在して意味のある値になるように選んだ定数で、どの経路にも共通である(次節で自由粒子から決める)。

V(xk)V(x_k) を区間の左端で評価するか中点で評価するかの違いは、VV が滑らかなら N→∞N\to\infty で結果に残らない。これは第3部第2章で基準から式 (3.1.12) を導くときに確かめる。

Feynman 自身が述べているように、作用を位相に置く考えは Dirac が先に示していた。Dirac は、短い時間 ϵ\epsilon の遷移振幅 ⟨xk+1,tk+1∣xk,tk⟩\langle x_{k+1},t_{k+1} | x_k,t_k \rangle が eiϵL/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i}\epsilon L/\hbar} に「対応する」ことを指摘した(P. A. M. Dirac (1933), Phys. Z. Sowjetunion 3, 64)。Feynman は、この対応を等式として要請に置き、それだけで量子力学を組み立て直した。

ほかの巻では

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第8章(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第8章)は、同じ式 (3.1.12) を正準量子化から出発して導き、運動量の Gauss 積分が Legendre 変換の逆になることを示している。そちらは「解析力学の量子版」として、この巻は「同じ量子力学の別の出発点」として読む。

作用から de Broglie の位相差が出る

要請 (II) が前節の de Broglie の関係を含むことを、二重スリットで確かめる。力の働かない粒子が、時刻 00 にスリット(位置 xjx_j)を出て検出面の xx に着くとする。飛行時間を tt とすると直線の経路の作用は S=m(x−xj)2/(2t)S=m(x-x_j)^2/(2t) である(進行方向の運動の作用は2本の経路で共通なので省く)。スリット 1 を x1=d/2x_1=d/2、スリット 2 を x2=−d/2x_2=-d/2 とすると、作用の差は

S1−S2ℏ=m2ℏt[(x−d2)2−(x+d2)2]=−m d xℏ t(3.1.13)\frac{S_1-S_2}{\hbar}=\frac{m}{2\hbar t}\Bigl[\bigl(x-\tfrac d2\bigr)^2-\bigl(x+\tfrac d2\bigr)^2\Bigr]=-\frac{m\,d\,x}{\hbar\,t}\tag{3.1.13}

になる。進行方向の速さを vv、検出面までの距離を ℓ\ell とすると t=ℓ/vt=\ell/v である。これを入れると大きさは p d x/(ℏℓ)p\,d\,x/(\hbar\ell)(p=mvp=mv)になり、式 (3.1.3) の位相差と一致する。

de Broglie の波長は、要請 (II) のもとで作用の差から出てくる量である。各スリットの経路を直線の1本で代表させてよい理由は、次の小節の停留の議論と 3.1.5節の厳密な計算で示す。

古典の経路が選ばれる理由

要請 (II) では古典の経路も特別扱いされないので、日常の物体が古典の経路をたどることは説明が要る。作用が ℏ\hbar に比べて大きい系では、経路を少しずらすだけで位相 S/ℏS/\hbar が大きく変わり、隣り合う経路の寄与は符号の違う複素数として打ち消し合う。打ち消しが起こらないのは、経路をずらしても作用が1次では変わらない経路、すなわち δS=0\delta S=0 を満たす古典の経路の近くだけである。この議論を停留位相の方法として式で示すのは第3部第4章で、そこで Hamilton–Jacobi 方程式と WKB 近似へつなげる。

例題 3.1.3 回り道の経路の位相 ★★

オリジナル力の働かない質量 mm の粒子が、時刻 00 に x=0x=0 を出て時刻 tt に x=0x=0 に戻る。古典の経路は x(t′)=0x(t')=0(その場に留まる)で、作用は 00 である。これと比べるため、時刻 t/2t/2 に x=ax=a まで行って戻る折れ線の経路を考える。

  1. (1) 折れ線の経路の作用を求めよ。
  2. (2) 古典の経路との位相差が π\pi になる aa を、電子(m=9.109×10−31 kgm=9.109\times10^{-31}\,\mathrm{kg})と質量 1 μg1\,\mu\mathrm g の微粒子について、t=1 nst=1\,\mathrm{ns} で求めよ。
解答

(1) 前半と後半はそれぞれ時間 t/2t/2 で距離 aa を等速で進むので、速さは 2a/t2a/t である。作用は運動エネルギーの時間積分で、

S=2×m2(2at)2×t2=2ma2tS=2\times\frac m2\Bigl(\frac{2a}{t}\Bigr)^2\times\frac t2=\frac{2ma^2}{t}

となる。

(2) 位相差 S/ℏ=πS/\hbar=\pi から a=πℏt/(2m)a=\sqrt{\pi\hbar t/(2m)} である。電子では

a=π×1.055×10−34×10−92×9.109×10−31 m=4.3×10−7 ma=\sqrt{\frac{\pi\times1.055\times10^{-34}\times10^{-9}}{2\times9.109\times10^{-31}}}\ \mathrm m=4.3\times10^{-7}\,\mathrm m

で、0.43 μm0.43\,\mu\mathrm m も横にずれた経路が古典の経路と同程度の位相で和に入る。1 μg=10−9 kg1\,\mu\mathrm g=10^{-9}\,\mathrm{kg} の微粒子では a=1.3×10−17 ma=1.3\times10^{-17}\,\mathrm m になり、原子核の大きさよりはるかに小さいずれで位相が π\pi 回る。微粒子では古典の経路から測れるほど離れた経路はすべて打ち消し合い、古典の経路だけが残る。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ/Scl→0\hbar/S_{\mathrm{cl}}\to0(古典の作用が ℏ\hbar に比べて大きい) | 証明 条件付き(有限次元の積分では孤立した非退化の停留点について証明済み。経路積分そのものでは、VV が十分滑らかで2階以上の導関数が有界なら、短い時間で時間分割の極限と半古典の展開〔第2項まで・剰余の評価つき〕が証明済み:D. Fujiwara (2017), Rigorous Time Slicing Approach to Feynman Path Integrals, Springer。無限次元の Fresnel 積分としての停留位相は S. Albeverio, R. Høegh-Krohn (1977), Invent. Math. 40, 59–106。長い時間・一般の VV は未確認) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ