量子力学の様々な構成方法 第3部 第3章 §3.3.2 ★★★ 共通例題③の伝播関数を、古典の作用と3重対角行列の行列式から出す。結果はどの刻み N でも厳密
離散の古典の経路
自由粒子(V=0)で式 (3.3.1) の SN を停留させる。xk(1≤k≤N−1)で微分すると
∂xk∂SN=ϵm[(xk−xk−1)−(xk+1−xk)]=−ϵm(xk+1−2xk+xk−1)=0
で、これは x¨=0 の差分である。解は等間隔の点列 xkcl=xi+(xf−xi)k/N、すなわち直線の経路で、そこでの作用は
SNcl=N⋅2ϵm(Nxf−xi)2=2Nϵm(xf−xi)2=2tm(xf−xi)2(3.3.6)
となる。離散の古典の作用は、刻み N によらず連続の Scl に一致する。
交差項が消えることも離散版で確かめておく。xk=xkcl+yk を入れると、1次の項はϵm∑k=0N−1(xk+1cl−xkcl)(yk+1−yk) である。差分の和の部分和分(y0=yN=0 を使う)で−ϵm∑k=1N−1yk(xk+1cl−2xkcl+xk−1cl) と書き直せ、停留の条件から 0 になる。
揺らぎの積分
残る揺らぎの作用は
SN[y]=2ϵmk=0∑N−1(yk+1−yk)2=2ϵmyTAN−1y,An=2−1−12⋱⋱⋱−1−12 (n×n)(3.3.7)
と書ける。y=(y1,…,yN−1)T で、yk2 は隣り合う2つの差に1回ずつ現れるので対角が 2、隣どうしの積 ykyk+1 は1回だけ現れるので非対角が −1 になる。
An は実対称で正定値(yTAy=∑(yk+1−yk)2>0)なので、直交行列で対角化でき、固有値 λj>0 ごとに1次元の Fresnel 積分に分かれる。第3部第1章の Gauss 積分の公式(収束因子つき)を各方向に当てると
∫dnyexp[2ℏϵimyTAy]=j=1∏nmλj2πiℏϵ=(m2πiℏϵ)n/2(detA)−1/2(3.3.8)
である。直交変換の Jacobian は 1 である。
行列式は、最後の行で余因子展開すると Dn=detAn について漸化式
Dn=2Dn−1−Dn−2,D0=1, D1=2(3.3.9)
を得る。Dn−Dn−1=Dn−1−Dn−2=⋯=D1−D0=1 なので Dn=n+1 である。
以上を式 (3.3.1) の前因子とまとめると、n=N−1 として
FN=(2πiℏϵm)N/2(m2πiℏϵ)(N−1)/2N1=2πiℏNϵm=2πiℏtm(3.3.10)
となる。N が残らないので極限 N→∞ をとるまでもなく値が決まる。式 (3.3.5)・(3.3.6)・(3.3.10) を合わせて
K0(xf,t;xi,0)=2πiℏtmexp[2ℏtim(xf−xi)2](3.3.11)
を得る。これは巻の共通例題③の伝播関数の正答と同じ形で、第3部第1章が区間を1つずつ合成して出した結果(第3部第1章)とも一致する。
2つの導き方の違いは、計算の順序にある。第3部第1章は中間の位置を1つずつ積分し、そのつど平方完成した。この節では、経路全体を「古典の経路」と「両端が 0 の揺らぎ」に分け、揺らぎの N−1 重積分を行列の対角化で1度に行った。後者では、端の位置への依存(古典の作用)と、端によらない数(揺らぎの因子)の役割が最初から分かれている。調和振動子へ広げるときに変わるのは行列 A の対角だけである。
揺らぎの因子の大きさ ∣F∣=m/(2πℏt) は、ℏt/m の逆数の程度である。例題 3.3.1(3) で見たように、位相がそろう揺らぎの幅がこの長さで、伝播関数の規格化はその幅で決まっている。
例題 3.3.2 N=3 の揺らぎの積分を手で行う ★★
オリジナル刻みを N=3 とし、揺らぎの変数を y1,y2(y0=y3=0)とする。
- (1) S3[y] を yTA2y の形に書き、A2 の固有値と固有ベクトルを求めよ。
- (2) 固有ベクトルの方向の座標に変えて2重積分を行い、F3=m/(2πiℏ⋅3ϵ) を確かめよ。
解答
(1) S3[y]=2ϵm[y12+(y2−y1)2+y22]=2ϵm(2y12−2y1y2+2y22) なので
A2=(2−1−12)
である。固有値は det(A2−λ)=(2−λ)2−1=0 から λ=1,3 で、固有ベクトルはそれぞれ (1,1)/2(2点が同じ向きにずれる)と (1,−1)/2(逆向きにずれる)である。逆向きのずれのほうが差 y2−y1 を大きくするので、作用の増え方が3倍大きい。
(2) u=(y1+y2)/2、v=(y1−y2)/2 とおくと、Jacobian は 1 で、S3=2ϵm(u2+3v2) となる。各方向の Fresnel 積分は
∫dueimu2/(2ℏϵ)=m2πiℏϵ,∫dve3imv2/(2ℏϵ)=3m2πiℏϵ
なので、2重積分は (2πiℏϵ/m)/3 である。前因子 (m/(2πiℏϵ))3/2 を掛けると
F3=(2πiℏϵm)3/2m32πiℏϵ=2πiℏ⋅3ϵm
となり、t=3ϵ の自由粒子の揺らぎの因子に一致する。検算では、ϵ をわずかに複素数 ϵ(1−0.3i) にずらして被積分関数を減衰させ、2重積分を数値で行って同じ値を得た。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com