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波束の広がりを古典の経路で読む

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 自由粒子と調和振動子を Gauss 積分で解く
目次
  1. 古典の作用の勾配は運動量
  2. 遠方では位置の分布が運動量の分布になる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第3部 第3章 §3.3.3 ★★★ 共通例題③の後半。古典の作用の勾配が運動量なので、位置は x^+p^t/m\hat x+\hat pt/m のように動き、広がりは経路の束の広がりと量子の揺らぎの和になる

共通例題③の後半は、初めの位置の標準偏差 σ0\sigma_0 の波束が σ(t)2=σ02+(ℏt/(2mσ0))2\sigma(t)^2=\sigma_0^2+(\hbar t/(2m\sigma_0))^2 と広がることである。第3部第1章はこれをガウス型の波束の積分で直接出した(第3部第1章)。この節では結果を引き、式 (3.3.5) の分け方を使って一般の波束の広がりを古典の経路の言葉で読み直す。

古典の作用の勾配は運動量

例題 3.3.1(2) のとおり ∂Scl/∂xf=m(xf−xi)/t\partial S_{\mathrm{cl}}/\partial x_f=m(x_f-x_i)/t は、xix_i を出て時間 tt で xfx_f に着く古典の経路の運動量である。式 (3.3.11) は位置に eiScl/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} S_{\mathrm{cl}}/\hbar} を通してしか依存しないので、

−iℏ∂K0∂xf=∂Scl∂xfK0=m(xf−xi)tK0(3.3.12)-\mathrm{i}\hbar\frac{\partial K_0}{\partial x_f}=\frac{\partial S_{\mathrm{cl}}}{\partial x_f}K_0=\frac{m(x_f-x_i)}{t}K_0\tag{3.3.12}

が成り立つ。左辺は運動量演算子の位置表示の形をしている。これを並べ替えると

xf K0=xi K0+tm(−iℏ∂K0∂xf)=xi K0+tm(iℏ∂K0∂xi)(3.3.13)x_f\,K_0=x_i\,K_0+\frac tm\Bigl(-\mathrm{i}\hbar\frac{\partial K_0}{\partial x_f}\Bigr)=x_i\,K_0+\frac tm\Bigl(\mathrm{i}\hbar\frac{\partial K_0}{\partial x_i}\Bigr)\tag{3.3.13}

となる。2つ目の等号は、K0K_0 が xf−xix_f-x_i だけの関数なので ∂xfK0=−∂xiK0\partial_{x_f}K_0=-\partial_{x_i}K_0 であることによる。

初めの波動関数 ψ0(x′)\psi_0(x') から ψ(x,t)=∫K0(x,t;x′,0)ψ0(x′) dx′\psi(x,t)=\int K_0(x,t;x',0)\psi_0(x')\,\mathrm{d} x' を作り、式 (3.3.13) の両辺に ψ0\psi_0 を掛けて x′x' で積分する。右辺第2項は部分積分で微分を ψ0\psi_0 へ移すと

x ψ(x,t)=∫dx′ K0(x,t;x′,0)[x′ψ0(x′)+tm(−iℏ∂ψ0∂x′)](3.3.14)x\,\psi(x,t)=\int\mathrm{d} x'\,K_0(x,t;x',0)\Bigl[x'\psi_0(x')+\frac tm\Bigl(-\mathrm{i}\hbar\frac{\partial \psi_0}{\partial x'}\Bigr)\Bigr]\tag{3.3.14}

になる(境界項は ψ0\psi_0 が遠方で 00 になるので消える)。言葉で言えば、時刻 tt に位置 xx を掛けることは、初めの波動関数に「位置+(運動量)×t/m\times t/m」を作用させてから伝播させることと同じである。同じ計算で −iℏ∂xψ(x,t)=∫K0 (−iℏ∂x′ψ0) dx′-\mathrm{i}\hbar\partial_x\psi(x,t)=\int K_0\,(-\mathrm{i}\hbar\partial_{x'}\psi_0)\,\mathrm{d} x' も得られるので、運動量の分布は時間によらない。

これを2回使うと、時刻 tt の位置の2次のモーメントは初めの状態の位置と運動量のモーメントで書くことができる。期待値を初めの状態でとった ⟨⋅⟩0\langle \cdot \rangle _0 で書き、⟨x^⟩0=⟨p^⟩0=0\langle \hat x \rangle _0=\langle \hat p \rangle _0=0 とすると、

σ(t)2=⟨x^2⟩0+2tm ⟨x^p^+p^x^2⟩0+t2m2⟨p^2⟩0(3.3.15)\sigma(t)^2=\langle \hat x^2 \rangle _0+\frac{2t}{m}\,\Bigl\langle\frac{\hat x\hat p+\hat p\hat x}{2}\Bigr\rangle_0+\frac{t^2}{m^2}\langle \hat p^2 \rangle _0\tag{3.3.15}

を得る。右辺は、初めの位置 x′x' と運動量 pp を持つ古典の粒子が直線 x′+pt/mx'+pt/m を進むときの位置の分散と同じ形をしている。位置と運動量の相関がない(真ん中の項が 00 の)ガウス型の波束では ⟨p^2⟩0=ℏ2/(4σ02)\langle \hat p^2 \rangle _0=\hbar^2/(4\sigma_0^2) なので、

σ(t)2=σ02+(ℏt2mσ0)2(3.3.16)\sigma(t)^2=\sigma_0^2+\Bigl(\frac{\hbar t}{2m\sigma_0}\Bigr)^2\tag{3.3.16}

となり、共通例題③の正答(第3部第1章の結果)に一致する。

この形から、広がりの読み方が決まる。第1項は始点の広がりで、第3項は「運動量の広がり ℏ/(2σ0)\hbar/(2\sigma_0) を持つ古典の経路の束」が時間とともに扇形に開くことによる。量子力学に特有なのは、運動量の広がりの最小値が位置の広がりで ℏ/(2σ0)\hbar/(2\sigma_0) と決まっている点だけである。

遠方では位置の分布が運動量の分布になる

式 (3.3.11) の指数を im2ℏt(x2−2xx′+x′2)\frac{\mathrm{i} m}{2\hbar t}(x^2-2xx'+x'^2) と展開すると、

ψ(x,t)=m2πiℏt eimx2/(2ℏt)∫dx′ e−i(mx/t)x′/ℏ [eimx′2/(2ℏt)ψ0(x′)]\psi(x,t)=\sqrt{\frac{m}{2\pi\mathrm{i}\hbar t}}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} mx^2/(2\hbar t)}\int\mathrm{d} x'\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} (mx/t)x'/\hbar}\,\Bigl[\mathrm{e}^{\mathrm{i} mx'^2/(2\hbar t)}\psi_0(x')\Bigr]

となる。初めの波動関数の広がりを aa とすると、t≫ma2/ℏt\gg ma^2/\hbar では角括弧の中の位相 mx′2/(2ℏt)mx'^2/(2\hbar t) が ψ0\psi_0 のある範囲で 00 に近づく。運動量表示 ψ~0(p)=(2πℏ)−1/2∫e−ipx′/ℏψ0(x′) dx′\tilde\psi_0(p)=(2\pi\hbar)^{-1/2}\int\mathrm{e}^{-\mathrm{i} px'/\hbar}\psi_0(x')\,\mathrm{d} x' を使うと

ψ(x,t)≈mit  eimx2/(2ℏt)  ψ~0(mxt),∣ψ(x,t)∣2≈mt ∣ψ~0(mxt)∣2(3.3.17)\psi(x,t)\approx\sqrt{\frac{m}{\mathrm{i} t}}\;\mathrm{e}^{\mathrm{i} mx^2/(2\hbar t)}\;\tilde\psi_0\Bigl(\frac{mx}{t}\Bigr),\qquad \lvert \psi(x,t)\rvert ^2\approx\frac mt\,\Bigl\lvert\tilde\psi_0\Bigl(\frac{mx}{t}\Bigr)\Bigr\rvert^2\tag{3.3.17}

を得る。時刻 tt に位置 xx で見つかる粒子は、原点付近から古典の経路で来たとすれば運動量 p=mx/tp=mx/t を持っていた。遠方の位置の分布は、その運動量の分布を x=pt/mx=pt/m で写したものになる。

この近似は、差の大きさを評価して確かめることができる。式 (3.3.17) の右辺との差は、(eimx′2/(2ℏt)−1)ψ0(x′)(\mathrm{e}^{\mathrm{i} mx'^2/(2\hbar t)}-1)\psi_0(x') を Fourier 変換して伝播させたものなので、Plancherel の等式からその2乗ノルムは ∫∣eimx′2/(2ℏt)−1∣2∣ψ0∣2 dx′\int\lvert \mathrm{e}^{\mathrm{i} mx'^2/(2\hbar t)}-1\rvert ^2\lvert \psi_0\rvert ^2\,\mathrm{d} x' に等しい。被積分関数は 4∣ψ0∣24\lvert \psi_0\rvert ^2 で抑えられ、各点で 00 に近づくので、優収束定理から t→∞t\to\infty で 00 になる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ma2/(ℏt)→0ma^2/(\hbar t)\to0(初めの広がり aa に比べて十分長い時間) | 証明 証明済み(ψ0\psi_0 が2乗可積分なら、本文の Plancherel と優収束定理の評価で、差の2乗ノルムが 00 に近づく) | 行き先 近似の数理 第1章

図

図 3.3.2 波束の幅の時間変化(T=0.2 t∗T=0.2\,t_*)。青の実線は位相 e−imx2/(2ℏT)\mathrm{e}^{-\mathrm{i} mx^2/(2\hbar T)} で絞った波束の式 (3.3.18)、灰色の破線はその第1項だけ(古典の経路の束が時刻 TT に1点に集まる)、赤の実線は同じ σ0\sigma_0 で相関のない波束の式 (3.3.16) である。絞った波束の最小幅 0.196 σ00.196\,\sigma_0 は、量子の揺らぎの項 ℏt/(2mσ0)\hbar t/(2m\sigma_0) で決まる

例題 3.3.3 波束を1点へ絞る ★★

オリジナル初めの波動関数を、相関のないガウス型の波束 g(x)=(2πσ02)−1/4e−x2/(4σ02)g(x)=(2\pi\sigma_0^2)^{-1/4}\mathrm{e}^{-x^2/(4\sigma_0^2)} に位相を掛けたψ0(x)=g(x) e−imx2/(2ℏT)\psi_0(x)=g(x)\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} mx^2/(2\hbar T)}(T>0T>0)とする。

  1. (1) 位相の勾配から各点の局所的な運動量を求め、古典の経路で考えると何が起こるかを述べよ。
  2. (2) 式 (3.3.15) を使い、幅が

σ(t)2=σ02(1−tT)2+(ℏt2mσ0)2(3.3.18)\sigma(t)^2=\sigma_0^2\Bigl(1-\frac tT\Bigr)^2+\Bigl(\frac{\hbar t}{2m\sigma_0}\Bigr)^2\tag{3.3.18}

となることを示し、最小の幅とそれをとる時刻を t∗=2mσ02/ℏt_*=2m\sigma_0^2/\hbar で書け。3. (3) ルビジウム 87 の原子(m=1.443×10−25 kgm=1.443\times10^{-25}\,\mathrm{kg})で σ0=100 μm\sigma_0=100\,\mu\mathrm m、T=10 msT=10\,\mathrm{ms} のとき、最小の幅を求めよ。

解答

(1) 位相 −mx2/(2ℏT)-mx^2/(2\hbar T) の勾配に ℏ\hbar を掛けた局所的な運動量は p(x)=−mx/Tp(x)=-mx/T である。位置 xx にある部分は速さ −x/T-x/T で原点へ向かうので、古典の経路 x+p(x)t/m=x(1−t/T)x+p(x)t/m=x(1-t/T) はすべて時刻 TT に原点を通る。光のレンズで平行光を焦点へ集めるのと同じ配置である。

(2) ∣ψ0∣2=∣g∣2\lvert \psi_0\rvert ^2=\lvert g\rvert ^2 なので ⟨x^2⟩0=σ02\langle \hat x^2 \rangle _0=\sigma_0^2 である。運動量については −iℏψ0′=(iℏx/(2σ02)−mx/T)ψ0-\mathrm{i}\hbar\psi_0'=\bigl(\mathrm{i}\hbar x/(2\sigma_0^2)-mx/T\bigr)\psi_0 から

⟨p^2⟩0=∫∣−iℏψ0′∣2dx=(ℏ24σ04+m2T2)σ02=ℏ24σ02+m2σ02T2\langle \hat p^2 \rangle _0=\int\lvert -\mathrm{i}\hbar\psi_0'\rvert ^2\mathrm{d} x=\Bigl(\frac{\hbar^2}{4\sigma_0^4}+\frac{m^2}{T^2}\Bigr)\sigma_0^2=\frac{\hbar^2}{4\sigma_0^2}+\frac{m^2\sigma_0^2}{T^2}

である。対称化した積の期待値は Re⁡∫ψ0∗ x(−iℏψ0′) dx\operatorname{Re}\int\psi_0^*\,x(-\mathrm{i}\hbar\psi_0')\,\mathrm{d} x で、括弧の中の実部 −mx2/T-mx^2/T だけが残るので −mσ02/T-m\sigma_0^2/T となる。式 (3.3.15) に入れると

σ(t)2=σ02−2tσ02T+t2m2(ℏ24σ02+m2σ02T2)=σ02(1−tT)2+(ℏt2mσ0)2\sigma(t)^2=\sigma_0^2-\frac{2t\sigma_0^2}{T}+\frac{t^2}{m^2}\Bigl(\frac{\hbar^2}{4\sigma_0^2}+\frac{m^2\sigma_0^2}{T^2}\Bigr) =\sigma_0^2\Bigl(1-\frac tT\Bigr)^2+\Bigl(\frac{\hbar t}{2m\sigma_0}\Bigr)^2

となる。第1項が古典の経路の束(時刻 TT に 00 になる)、第2項が量子の揺らぎである。tt で微分して 00 とおくと、最小をとる時刻と最小の幅は

tmin⁡=T1+(T/t∗)2,σmin⁡=σ0 T/t∗1+(T/t∗)2t_{\min}=\frac{T}{1+(T/t_*)^2},\qquad \sigma_{\min}=\sigma_0\,\frac{T/t_*}{\sqrt{1+(T/t_*)^2}}

である。T≪t∗T\ll t_* なら σmin⁡≈σ0T/t∗=ℏT/(2mσ0)\sigma_{\min}\approx\sigma_0T/t_*=\hbar T/(2m\sigma_0) で、古典の束が1点に集まっても、運動量の量子の広がり ℏ/(2σ0)\hbar/(2\sigma_0) が時間 TT で開く分だけ幅が残る。図 3.3.2 は T=0.2 t∗T=0.2\,t_* の場合で、最小の幅は 0.196 σ00.196\,\sigma_0、時刻は tmin⁡=0.962 Tt_{\min}=0.962\,T である。

(3) t∗=2×1.443×10−25×(10−4)2/(1.055×10−34) s=27.4 st_*=2\times1.443\times10^{-25}\times(10^{-4})^2/(1.055\times10^{-34})\,\mathrm s=27.4\,\mathrm s で、T/t∗=3.65×10−4T/t_*=3.65\times10^{-4} である。最小の幅は σmin⁡=100 μm×3.65×10−4=36.5 nm\sigma_{\min}=100\,\mu\mathrm m\times3.65\times10^{-4}=36.5\,\mathrm{nm} になる。古典の速さの広がり σ0/T=10 mm s−1\sigma_0/T=10\,\mathrm{mm\,s^{-1}} に比べ、量子の速さの広がり ℏ/(2mσ0)=3.65 μm s−1\hbar/(2m\sigma_0)=3.65\,\mu\mathrm{m\,s^{-1}} は 3.65×10−43.65\times10^{-4} 倍しかないので、1点に絞る操作で 100 μm100\,\mu\mathrm m の雲がおよそ 27002700 分の1まで縮む。最小をとる時刻は TT より 1.3 ns1.3\,\mathrm{ns} だけ早い。

木下の勉強ステータス

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