量子力学の様々な構成方法 第3部 第3章 §3.3.4 ★★ 共通例題①の前半。古典の作用は境界項だけで書け、Mehler 核の指数がそのまま出る
ここからは f=0 の調和振動子 L=2mx˙2−2mω2x2 を扱う。式 (3.3.5) によれば、伝播関数を求めるには古典の作用 Scl と揺らぎの因子 F(t) を別々に求めればよい。この節は前者を受け持つ。
古典の経路
運動方程式 x¨=−ω2x の解で x(0)=xi、x(t)=xf を満たすものは、sinω(t−s) と sinωs がそれぞれ s=t と s=0 で 0 になることを使うと
xcl(s)=sinωtxisinω(t−s)+xfsinωs(sinωt=0)(3.3.19)
と書ける。sinωt=0、すなわち t が半周期 π/ω の整数倍のときは、xi を出た経路はどの初速でも ±xi に戻るので、xf=±xi を結ぶ経路は存在せず、xf=±xi なら無数にある。以下では 0<ωt<π とする。
古典の作用は境界項
運動方程式を満たす経路では、作用を境界の値だけで書くことができる。∫x˙2ds を部分積分すると
∫0tx˙2ds=[xx˙]0t−∫0txx¨ds=[xx˙]0t+ω2∫0tx2ds
なので、ポテンシャルの項が打ち消し合って
Scl=2m[xclx˙cl]0t=2m[xfx˙cl(t)−xix˙cl(0)](3.3.20)
となる。式 (3.3.19) を微分すると
x˙cl(t)=sinωtω(xfcosωt−xi),x˙cl(0)=sinωtω(xf−xicosωt)
で、これを式 (3.3.20) に入れると
Scl(xf,xi;t)=2sinωtmω[(xf2+xi2)cosωt−2xfxi](3.3.21)
を得る。これが共通例題①の Mehler 核の指数(ℏ で割る前)である。同じ式は、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第5章(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第5章)で調和振動子の古典作用として、同 第4部第8章(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第8章)で経路積分の指数として出ている。
古典の作用は端の位置の2次式で、交差項の係数が
−∂xf∂xi∂2Scl=sinωtmω(3.3.22)
である。この量は始点の運動量を変えたとき終点がどれだけ動くかの逆数 (∂xf/∂pi)−1 に当たり、3.3.5節と3.3.6節でもう一度現れる。
例題 3.3.4 調和振動子の古典の作用を調べる ★★
オリジナル式 (3.3.21) について次を確かめよ。
- (1) ω→0 で自由粒子の作用 m(xf−xi)2/(2t) に戻る。
- (2) ∂Scl/∂xf=mx˙cl(t)、−∂Scl/∂xi=mx˙cl(0)、∂Scl/∂t=−E(E は古典の経路のエネルギー)。
- (3) 4分の1周期 ωt=π/2 では Scl=−mωxfxi である。このとき xf=0 に着く経路の初速を求めよ。
解答
(1) sinωt=ωt−(ωt)3/6+⋯、cosωt=1−(ωt)2/2+⋯ を入れると、主要項は
2ωtmω[xf2+xi2−2xfxi]+O(ω2)=2tm(xf−xi)2+O(ω2)
で、自由粒子の作用に戻る。
(2) ∂Scl/∂xf=mω(xfcosωt−xi)/sinωt は上の mx˙cl(t) と同じ式である。−∂Scl/∂xi=mω(xf−xicosωt)/sinωt=mx˙cl(0) も同様である。時間で微分すると
∂t∂Scl=−2sin2ωtmω2[(xf2+xi2)−2xfxicosωt]
となる。一方、始点でのエネルギーは E=2mx˙cl(0)2+2mω2xi2=2sin2ωtmω2[(xf−xicosωt)2+xi2sin2ωt] で、展開すると括弧の中は xf2+xi2−2xfxicosωt になる。したがって ∂Scl/∂t=−E である。
(3) cosωt=0、sinωt=1 を入れると Scl=−mωxfxi である。初速は x˙cl(0)=−m1∂Scl/∂xi=ωxf で、xf=0 なら 0 になる。4分の1周期で原点に着くのは、始点で静止していた粒子である。xi によらず初速 0 なので、どこから放しても4分の1周期で原点に集まる。
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