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調和振動子:揺らぎの因子と Mehler 核

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 自由粒子と調和振動子を Gauss 積分で解く
目次
  1. 揺らぎの行列
  2. 行列式の漸化式
  3. Gel'fand–Yaglom の読み方
  4. Mehler 核
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第3部 第3章 §3.3.5 ★★★ 揺らぎの行列式は古典の運動方程式の初期値問題の解で決まり(Gel'fand–Yaglom)、共通例題①の Mehler 核が完成する

揺らぎの行列

調和振動子の揺らぎの作用を、式 (3.3.1) と同じく VV を区間の左端で評価して離散化する。y0=yN=0y_0=y_N=0 なので

SN[y]=∑k=0N−1[m2ϵ(yk+1−yk)2−ϵmω22yk2]=m2ϵ yTBN−1y,Bn=An−ϵ2ω2 1nS_N[y]=\sum_{k=0}^{N-1}\Bigl[\frac m{2\epsilon}(y_{k+1}-y_k)^2-\epsilon\frac{m\omega^2}2y_k^2\Bigr] =\frac m{2\epsilon}\,\bm{y}^{\mathsf T}B_{N-1}\bm{y},\qquad B_n=A_n-\epsilon^2\omega^2\,\mathbb 1_n

である。自由粒子の行列 AnA_n の対角が 22 から 2−ϵ2ω22-\epsilon^2\omega^2 に変わるだけである。

BnB_n の固有値は AnA_n の固有値 4sin⁡2(jπ/(2N))4\sin^2(j\pi/(2N))(j=1,…,N−1j=1,\dots,N-1)から ϵ2ω2\epsilon^2\omega^2 を引いたもので、最小のものは NN が大きいとき (π2−ω2t2)/N2(\pi^2-\omega^2t^2)/N^2 に近い。したがって ωt<π\omega t<\pi ならすべて正で、式 (3.3.8) がそのまま使える。これは例題 3.3.1(1) で見た「最も緩やかな揺らぎのモードの作用の符号」と同じ条件である。

行列式の漸化式

Dn=det⁡BnD_n=\det B_n も最後の行で展開すると

Dn=(2−ϵ2ω2)Dn−1−Dn−2,D0=1, D−1=0(3.3.23)D_n=(2-\epsilon^2\omega^2)D_{n-1}-D_{n-2},\qquad D_0=1,\ D_{-1}=0\tag{3.3.23}

を満たす。2cos⁡θ=2−ϵ2ω22\cos\theta=2-\epsilon^2\omega^2 で角 θ\theta を定める(ϵω<2\epsilon\omega<2 なら実数で、θ=2arcsin⁡(ϵω/2)\theta=2\arcsin(\epsilon\omega/2))。漸化式 Dn=2cos⁡θ Dn−1−Dn−2D_n=2\cos\theta\,D_{n-1}-D_{n-2} の解は三角関数の加法定理 sin⁡(n+1)θ=2cos⁡θsin⁡nθ−sin⁡(n−1)θ\sin(n+1)\theta=2\cos\theta\sin n\theta-\sin(n-1)\theta と同じ形なので、初期値に合わせて

Dn=sin⁡(n+1)θsin⁡θ(3.3.24)D_n=\frac{\sin(n+1)\theta}{\sin\theta}\tag{3.3.24}

である(θ→0\theta\to0 で Dn→n+1D_n\to n+1 となり、自由粒子に戻る)。前因子と合わせると、刻み NN の揺らぎの因子は

FN=(m2πiℏϵ)N/2(2πiℏϵm)(N−1)/2DN−1−1/2=m2πiℏ ϵDN−1,ϵDN−1=ϵsin⁡Nθsin⁡θ(3.3.25)F_N=\Bigl(\frac{m}{2\pi\mathrm{i}\hbar\epsilon}\Bigr)^{N/2}\Bigl(\frac{2\pi\mathrm{i}\hbar\epsilon}{m}\Bigr)^{(N-1)/2}D_{N-1}^{-1/2} =\sqrt{\frac{m}{2\pi\mathrm{i}\hbar\,\epsilon D_{N-1}}},\qquad \epsilon D_{N-1}=\frac{\epsilon\sin N\theta}{\sin\theta}\tag{3.3.25}

となる。自由粒子と違い、今度は NN が残る。N→∞N\to\infty では θ=ϵω+O(ϵ3)\theta=\epsilon\omega+O(\epsilon^3) なので ϵ/sin⁡θ→1/ω\epsilon/\sin\theta\to1/\omega、Nθ→ωtN\theta\to\omega t で、

ϵDN−1→sin⁡ωtω,F(t)=mω2πiℏsin⁡ωt(3.3.26)\epsilon D_{N-1}\to\frac{\sin\omega t}{\omega},\qquad F(t)=\sqrt{\frac{m\omega}{2\pi\mathrm{i}\hbar\sin\omega t}}\tag{3.3.26}

を得る。

Gel'fand–Yaglom の読み方

式 (3.3.26) の sin⁡ωt/ω\sin\omega t/\omega は、行列式を計算しなくても求めることができる。ϕk=ϵDk−1\phi_k=\epsilon D_{k-1}(ϕ0=0\phi_0=0、ϕ1=ϵ\phi_1=\epsilon)とおくと、漸化式 (3.3.23) は

ϕk+1−2ϕk+ϕk−1ϵ2=−ω2ϕk\frac{\phi_{k+1}-2\phi_k+\phi_{k-1}}{\epsilon^2}=-\omega^2\phi_k

と書き直せる。これは揺らぎの運動方程式 ϕ¨=−ω2ϕ\ddot\phi=-\omega^2\phi の差分で、初期値は ϕ(0)=0\phi(0)=0、ϕ˙(0)=(ϕ1−ϕ0)/ϵ=1\dot\phi(0)=(\phi_1-\phi_0)/\epsilon=1 に当たる。したがって N→∞N\to\infty の極限は、初期値問題

ϕ¨(s)=−ω2ϕ(s),ϕ(0)=0,ϕ˙(0)=1⟹F(t)=m2πiℏ ϕ(t)(3.3.27)\ddot\phi(s)=-\omega^2\phi(s),\quad \phi(0)=0,\quad\dot\phi(0)=1\qquad\Longrightarrow\qquad F(t)=\sqrt{\frac{m}{2\pi\mathrm{i}\hbar\,\phi(t)}}\tag{3.3.27}

の解の終点での値 ϕ(t)=sin⁡ωt/ω\phi(t)=\sin\omega t/\omega で決まる。自由粒子では ϕ(t)=t\phi(t)=t で、式 (3.3.10) に戻る。無限次元の行列式を、1本の常微分方程式の初期値問題に置き換えるこの方法は Gel'fand と Yaglom による(I. M. Gel'fand, A. M. Yaglom (1956), Uspekhi Mat. Nauk 11, no. 1, 77)。

ϕ(t)\phi(t) には古典力学の意味もある。ϕ\phi は始点を固定して初速だけを単位量変えたときの終点のずれ、すなわち m ∂xf/∂pim\,\partial x_f/\partial p_i で、式 (3.3.22) から ϕ(t)=m(−∂2Scl/∂xf∂xi)−1\phi(t)=m\bigl(-\partial^2S_{\mathrm{cl}}/\partial x_f\partial x_i\bigr)^{-1} である。ϕ(t)=0\phi(t)=0 となる時刻は、始点を出た経路が初速によらず1点に集まる共役点である。調和振動子では ωt=π\omega t=\pi がそれで、揺らぎの因子はそこで発散する。共役点を越えた先で位相がどう変わるかは、停留位相の章(第3部第4章)で扱う。

Mehler 核

式 (3.3.5)・(3.3.21)・(3.3.26) を合わせると、調和振動子の伝播関数は

K(xf,t;xi,0)=mω2πiℏsin⁡ωt  exp⁡{imω2ℏsin⁡ωt[(xf2+xi2)cos⁡ωt−2xfxi]}(0<ωt<π)(3.3.28)K(x_f,t;x_i,0)=\sqrt{\frac{m\omega}{2\pi\mathrm{i}\hbar\sin\omega t}}\; \exp\Bigl\{\frac{\mathrm{i} m\omega}{2\hbar\sin\omega t}\Bigl[(x_f^2+x_i^2)\cos\omega t-2x_fx_i\Bigr]\Bigr\}\qquad(0<\omega t<\pi)\tag{3.3.28}

となる。これが共通例題①の Mehler 核で、巻の補足の正答表と同じ形である。ω→0\omega\to0 では式 (3.3.11) に戻る。検算では、式 (3.3.28) が Schrödinger 方程式 iℏ∂tK=(−ℏ22m∂xf2+mω22xf2)K\mathrm{i}\hbar\partial_tK=\bigl(-\frac{\hbar^2}{2m}\partial_{x_f}^2+\frac{m\omega^2}2x_f^2\bigr)K を満たすことも記号計算で確かめた。

図

図 3.3.3 揺らぎの行列式 ϵDN−1\epsilon D_{N-1}(ω\omega を掛けて無次元にしたもの)。赤と青の実線は刻み N=3N=3・66 の式 (3.3.25)、黒の点線は極限 sin⁡ωt\sin\omega t である。00 を横切る点(N=3N=3 で ωt=3.00\omega t=3.00、N=6N=6 で 3.113.11)が離散化した共役点で、N→∞N\to\infty で π\pi に近づく

例題 3.3.5 刻みの粗い揺らぎの因子 ★★

オリジナル4分の1周期 ωt=π/2\omega t=\pi/2 の揺らぎの因子を、刻み N=4N=4 と N=16N=16 で計算する。

  1. (1) N=4N=4 の ωϵD3\omega\epsilon D_3 を、漸化式 (3.3.23) から数値で求めよ。
  2. (2) 極限値 11 とのずれが N=4N=4 と N=16N=16 でどう変わるかを調べ、ずれが 1/N21/N^2 に比例することを確かめよ。
解答

(1) ϵω=π/8=0.3927\epsilon\omega=\pi/8=0.3927 で、c=2−ϵ2ω2=1.8458c=2-\epsilon^2\omega^2=1.8458 である。漸化式で D1=c=1.8458D_1=c=1.8458、D2=c2−1=2.4070D_2=c^2-1=2.4070、D3=cD2−D1=2.5970D_3=cD_2-D_1=2.5970 となり、

ωϵD3=0.3927×2.5970=1.0198\omega\epsilon D_3=0.3927\times2.5970=1.0198

を得る。極限値 sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2)=1 より 2 %2\,\% 大きい。3×33\times3 行列 B3B_3 の行列式を直接計算しても同じ値になる。

(2) 同じ計算を N=16N=16 で行うと ωϵD15=1.00121\omega\epsilon D_{15}=1.00121 である。ずれの比は 0.0198/0.00121=16.40.0198/0.00121=16.4 で、刻みを4倍にしてずれが約 16=4216=4^2 分の1になった。式 (3.3.24) で θ=2arcsin⁡(ϵω/2)=ϵω+(ϵω)3/24+⋯\theta=2\arcsin(\epsilon\omega/2)=\epsilon\omega+(\epsilon\omega)^3/24+\cdots と展開すると、ずれの主要項は ϵ2\epsilon^2 に比例し、tt を固定すれば 1/N21/N^2 になる。自由粒子では NN によらず厳密だったが、調和振動子では VV を区間の左端で評価したことによる O(ϵ2)O(\epsilon^2) のずれが残り、極限で消える。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 刻み ϵ=t/N→0\epsilon=t/N\to0(時間の離散化) | 証明 証明済み(2次の作用では有限の NN の値が式 (3.3.25) の閉じた形で求まり、極限を直接とった。一般のポテンシャルでの収束は Trotter の積公式の前提を第3部第2章で確かめる) | 行き先 近似の数理 第4章

木下の勉強ステータス

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