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Wigner の答え

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第1章 量子力学を「確率分布」で書けるか
目次
  1. 定義
  2. 要請 (W1)〜(W4) を満たすこと
  3. Gauss 波束の Wigner 関数
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第5部 第1章 §5.1.3 ★★★ 位相空間の構成の基本の対象 W を定義し、要請 (W1)〜(W4) を満たすことを示す

定義

Wigner は 1932 年の論文(E. P. Wigner (1932)、Phys. Rev. 40、749–759)で、次の関数を導入した。

定義 5.1.3(Wigner 関数)

密度行列 ρ^\hat\rho の Wigner 関数を

W(x,p)=1πℏ∫⟨x+y∣ρ^∣x−y⟩ e−2ipy/ℏ dy(5.1.5)W(x,p)=\frac{1}{\pi\hbar}\int\langle x+y | \hat\rho | x-y \rangle \,\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} py/\hbar}\,\mathrm{d} y\tag{5.1.5}

で定める。純粋状態 ρ^=∣ψ⟩⟨ψ∣\hat\rho=| \psi \rangle \langle \psi | では ⟨x+y∣ρ^∣x−y⟩=ψ(x+y)ψ∗(x−y)\langle x+y | \hat\rho | x-y \rangle =\psi(x+y)\psi^*(x-y) である。

式の読み方を書いておく。密度行列の位置表示 ⟨x′∣ρ^∣x′′⟩\langle x' | \hat\rho | x'' \rangle を、中点 x=(x′+x′′)/2x=(x'+x'')/2 と半分の差 y=(x′−x′′)/2y=(x'-x'')/2 で書き直し、差の方向だけを Fourier 変換している。中点が「位置」、差の Fourier 変数が「運動量」になる。差 x′−x′′=2yx'-x''=2y の共役変数が pp なので、指数は e−ip(2y)/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} p(2y)/\hbar} になり、前の係数 1/(πℏ)=2/(2πℏ)1/(\pi\hbar)=2/(2\pi\hbar) の 2 は d(2y)=2 dy\mathrm{d}(2y)=2\,\mathrm{d} y から出ている。

要請 (W1)〜(W4) を満たすこと

命題 5.1.4(Wigner 関数は (W1)〜(W4) を満たす ★★★)

(5.1.5) の WW は、定義 5.1.1 の (W1)・(W2)・(W3)・(W4) をすべて満たす。

証明

(W2) は定義が ρ^\hat\rho の行列要素について線形であることから直ちに従う。以下 (W2) を使い、純粋状態 ψ\psi で示せば十分である(混合状態は純粋状態の重み付き和で、(W1)(W3)(W4) はどれも重み付き和で保たれる)。

実数であること。 複素共役を取るとW∗=1πℏ∫ψ∗(x+y)ψ(x−y)e2ipy/ℏdyW^*=\frac{1}{\pi\hbar}\int\psi^*(x+y)\psi(x-y)\mathrm{e}^{2\mathrm{i} py/\hbar}\mathrm{d} y。積分変数を y→−yy\to-y と替えると元の式に戻るので、W∗=WW^*=W。

位置の周辺分布。 ∫e−2ipy/ℏdp=2πδ(2y/ℏ)=πℏ δ(y)\int\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} py/\hbar}\mathrm{d} p=2\pi\delta(2y/\hbar)=\pi\hbar\,\delta(y) を使うと

∫W dp=1πℏ∫ψ(x+y)ψ∗(x−y) πℏ δ(y) dy=∣ψ(x)∣2.\int W\,\mathrm{d} p=\frac{1}{\pi\hbar}\int\psi(x+y)\psi^*(x-y)\,\pi\hbar\,\delta(y)\,\mathrm{d} y=\lvert \psi(x)\rvert ^2 .

運動量の周辺分布。 変数を u=x+yu=x+y、v=x−yv=x-y に替えると dx dy=12du dv\mathrm{d} x\,\mathrm{d} y=\tfrac12\mathrm{d} u\,\mathrm{d} v、2y=u−v2y=u-v なので

∫W dx=12πℏ∫ψ(u)e−ipu/ℏdu∫ψ∗(v)eipv/ℏdv=∣φ(p)∣2.\int W\,\mathrm{d} x=\frac{1}{2\pi\hbar}\int\psi(u)\mathrm{e}^{-\mathrm{i} pu/\hbar}\mathrm{d} u\int\psi^*(v)\mathrm{e}^{\mathrm{i} pv/\hbar}\mathrm{d} v=\lvert \varphi(p)\rvert ^2 .

φ\varphi は (5.1.4) の運動量表示の波動関数である。

規格化。 位置の周辺分布をさらに xx で積分すれば ∫∣ψ∣2dx=1\int\lvert \psi\rvert ^2\mathrm{d} x=1。

平行移動。 ψa(x)=ψ(x−a)\psi_a(x)=\psi(x-a) では ψa(x+y)ψa∗(x−y)=ψ(x−a+y)ψ∗(x−a−y)\psi_a(x+y)\psi_a^*(x-y)=\psi(x-a+y)\psi^*(x-a-y) なので Wψa(x,p)=Wψ(x−a,p)W_{\psi_a}(x,p)=W_\psi(x-a,p)。χ(x)=eip0x/ℏψ(x)\chi(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} p_0x/\hbar}\psi(x) では χ(x+y)χ∗(x−y)=e2ip0y/ℏψ(x+y)ψ∗(x−y)\chi(x+y)\chi^*(x-y)=\mathrm{e}^{2\mathrm{i} p_0y/\hbar}\psi(x+y)\psi^*(x-y) で、指数をまとめると e−2i(p−p0)y/ℏ\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}(p-p_0)y/\hbar} になるので Wχ(x,p)=Wψ(x,p−p0)W_\chi(x,p)=W_\psi(x,p-p_0)。

定理 5.1.2 から、WW は (W5) を満たさない。どんな状態で負になるかは次の節で見る。(W1)〜(W4) を満たす規則は WW のほかにもある(L. Cohen の一般化した分布の族)。WW を選ぶ理由は、物理量の期待値を「関数と関数の積の積分」∫WAW dx dp\int W A_W\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p で書くときの対応 A^↔AW\hat A\leftrightarrow A_W(Weyl 対応)が最も対称になることで、この点は 第5部第2章 で示す。さらに WW は、古典で成り立っていた「1次結合 ax+bpax+bp の分布は直線に沿った積分」という性質も保つ。回転した2次形式の場合は 第5部第2章 の例で扱う。

Gauss 波束の Wigner 関数

例題 5.1.3 チャープした波束の WW ★★★

オリジナル例題 5.1.2 の波束について次を示せ。

  1. (1) Wigner 関数は

W(x,p)=1πℏexp⁡(−x22σ2−2σ2ℏ2(p−2ℏκx)2)W(x,p)=\frac{1}{\pi\hbar}\exp\Bigl(-\frac{x^2}{2\sigma^2}-\frac{2\sigma^2}{\hbar^2}\bigl(p-2\hbar\kappa x\bigr)^2\Bigr)

である。2. (2) この WW の xx の周辺分布と pp の周辺分布は、例題 5.1.2 (1) の分散を持つ正規分布になる。3. (3) ∫xp W dx dp=2ℏκσ2\int xp\,W\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p=2\hbar\kappa\sigma^2 で、例題 5.1.2 の CC に一致する。

解答

(1) 指数の部分を計算する。−(x+y)2/(4σ2)−(x−y)2/(4σ2)=−(x2+y2)/(2σ2)-(x+y)^2/(4\sigma^2)-(x-y)^2/(4\sigma^2)=-(x^2+y^2)/(2\sigma^2)、位相は κ(x+y)2−κ(x−y)2=4κxy\kappa(x+y)^2-\kappa(x-y)^2=4\kappa xy なので

ψ(x+y)ψ∗(x−y)=(2πσ2)−1/2 e−x2/(2σ2) e−y2/(2σ2) e4iκxy.\psi(x+y)\psi^*(x-y)=(2\pi\sigma^2)^{-1/2}\,\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma^2)}\,\mathrm{e}^{-y^2/(2\sigma^2)}\,\mathrm{e}^{4\mathrm{i}\kappa xy} .

yy の積分は ∫e−y2/(2σ2)e−2i(p−2ℏκx)y/ℏdy=2πσ2 e−2σ2(p−2ℏκx)2/ℏ2\int\mathrm{e}^{-y^2/(2\sigma^2)}\mathrm{e}^{-2\mathrm{i}(p-2\hbar\kappa x)y/\hbar}\mathrm{d} y=\sqrt{2\pi\sigma^2}\,\mathrm{e}^{-2\sigma^2(p-2\hbar\kappa x)^2/\hbar^2}(∫e−y2/(2σ2)−ikydy=2πσ2e−σ2k2/2\int\mathrm{e}^{-y^2/(2\sigma^2)-\mathrm{i} ky}\mathrm{d} y=\sqrt{2\pi\sigma^2}\mathrm{e}^{-\sigma^2k^2/2} に k=2(p−2ℏκx)/ℏk=2(p-2\hbar\kappa x)/\hbar を入れる)。前の係数 (2πσ2)−1/2(2\pi\sigma^2)^{-1/2} と打ち消し合って、与えられた式になる。

(2) pp について積分すると ∫e−2σ2(p−2ℏκx)2/ℏ2dp=πℏ2/(2σ2)\int\mathrm{e}^{-2\sigma^2(p-2\hbar\kappa x)^2/\hbar^2}\mathrm{d} p=\sqrt{\pi\hbar^2/(2\sigma^2)} なので∫Wdp=(2πσ2)−1/2e−x2/(2σ2)=∣ψ(x)∣2\int W\mathrm{d} p=(2\pi\sigma^2)^{-1/2}\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma^2)}=\lvert \psi(x)\rvert ^2。pp の周辺分布を見るには、WW の指数を (x,p)(x,p) の2次形式 −12(x,p) Σ−1(x,p)T-\tfrac12(x,p)\,\Sigma^{-1}(x,p)^{\mathsf T} とみなして共分散行列 Σ\Sigma を読む。

Σ−1=(1σ2+16σ2κ2−8σ2κℏ−8σ2κℏ4σ2ℏ2),det⁡Σ−1=4ℏ2,\Sigma^{-1}=\begin{pmatrix}\dfrac{1}{\sigma^2}+16\sigma^2\kappa^2&-\dfrac{8\sigma^2\kappa}{\hbar}\\[2mm]-\dfrac{8\sigma^2\kappa}{\hbar}&\dfrac{4\sigma^2}{\hbar^2}\end{pmatrix},\qquad \det\Sigma^{-1}=\frac{4}{\hbar^2},

Σ=ℏ24(4σ2ℏ28σ2κℏ8σ2κℏ1σ2+16σ2κ2)=(σ22ℏκσ22ℏκσ2ℏ24σ2+4ℏ2κ2σ2).\Sigma=\frac{\hbar^2}{4}\begin{pmatrix}\dfrac{4\sigma^2}{\hbar^2}&\dfrac{8\sigma^2\kappa}{\hbar}\\[2mm]\dfrac{8\sigma^2\kappa}{\hbar}&\dfrac{1}{\sigma^2}+16\sigma^2\kappa^2\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\sigma^2&2\hbar\kappa\sigma^2\\2\hbar\kappa\sigma^2&\dfrac{\hbar^2}{4\sigma^2}+4\hbar^2\kappa^2\sigma^2\end{pmatrix}.

正規分布の周辺分布は対角成分を分散とする正規分布なので、pp の分散は ℏ2/(4σ2)+4ℏ2κ2σ2\hbar^2/(4\sigma^2)+4\hbar^2\kappa^2\sigma^2 で、例題 5.1.2 の ⟨p^2⟩\langle \hat p^2 \rangle に一致する。

(3) 共分散行列の非対角成分が ∫xp W dx dp=2ℏκσ2\int xp\,W\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p=2\hbar\kappa\sigma^2 で、CC と同じである。積の候補では 00 だった相関を、WW は正しく持っている。

この WW は至る所で正で、相空間の中で傾いた楕円の形をしている(図 5.1.1)。κ=0\kappa=0 なら傾きは無く、xx と pp の幅の積は σ⋅ℏ/(2σ)=ℏ/2\sigma\cdot\hbar/(2\sigma)=\hbar/2 で、不確定性関係の下限に一致する。純粋状態のうち WW が至る所で非負になるものは、このような(一般にチャープした・ずれた)Gauss 波束だけであることが知られている(R. L. Hudson (1974)、Rep. Math. Phys. 6、249–252)。

図

図 5.1.1 例題 5.1.3 の WW の等高線(点線。κσ2=1/2\kappa\sigma^2=1/2、指数が −1/4-1/4 と −1-1 の線)と、同じ2つの周辺分布の積 (5.1.4) の等高線(細い実線)。縦軸は pp を ℏ/(2σ)\hbar/(2\sigma) で割った量。どちらも xx と pp の周辺分布は同じだが、積は相関 ⟨xp⟩\langle xp \rangle を持てない。

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