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中点と差の Fourier 変換:Wigner 変換と Weyl 記号

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第2章 Wigner 変換と Weyl 対応
目次
  1. 演算子の Wigner 変換
  2. 簡単な演算子の記号
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第5部 第2章 §5.2.1 ★★★ 状態にも物理量にも同じ変換を当てる。状態の変換が WW、物理量の変換が Weyl 記号 AWA_W

前の章(第5部第1章)は、密度行列 ρ^\hat\rho に位相空間の関数 W(x,p)W(x,p) を対応させる規則として Wigner 関数

W(x,p)=1πℏ∫⟨x+y∣ρ^∣x−y⟩ e−2ipy/ℏ dyW(x,p)=\frac{1}{\pi\hbar}\int\langle x+y | \hat\rho | x-y \rangle \,\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} py/\hbar}\,\mathrm{d} y

を選び、それが実数値・規格化・周辺分布・平行移動の要請を満たすことを示した。ただし、そこで確かめたのは位置だけ・運動量だけの関数の期待値までである。位相空間の構成を「量子力学の1つの構成」と呼ぶには、次の2つが要る。第一に、WW から ρ^\hat\rho が元どおりに復元でき、状態の情報が何も失われていないこと。第二に、x^\hat x と p^\hat p が混ざった任意の物理量 A^\hat A についても、期待値 Tr⁡(ρ^A^)\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat A) が位相空間の積分で書けること。

この章は、部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち「基準との同値」を受け持つ。計画の同値性の地図の「密度行列 ↔ 位相空間」の橋の置き場がこの章で、ここで両向きを証明する。道具は1つで、演算子の位置表示 ⟨x′∣A^∣x′′⟩\langle x' | \hat A | x'' \rangle を中点と差の座標に書き直し、差について Fourier 変換する操作(Wigner 変換)である。これを状態にも物理量にも同じ形で当てると、物理量の側には Weyl 記号 AW(x,p)A_W(x,p) ができ、期待値は

Tr⁡(ρ^A^)=∫W(x,p) AW(x,p) dx dp\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat A)=\int W(x,p)\,A_W(x,p)\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p

になる。Weyl 記号は古典の関数と同じとは限らず、たとえば x^p^\hat x\hat p の記号は xp+iℏ/2xp+\mathrm{i}\hbar/2 である。どの演算子がどの関数に写るかを決める規則がWeyl 対応で、それは「x^\hat x と p^\hat p を対称に並べる」規則(Weyl 順序)と一致する。最後に、ハミルトニアンが2次以下なら WW が古典の流れに沿って運ばれるだけであることを示し、共通例題③(自由粒子の波束の広がり)を位相空間で解く。積 A^B^\hat A\hat B が何に写るか(⋆\star 積)と時間発展の一般の式(Moyal 方程式)は第5部第3章で扱う。この章でも1次元・1粒子に話を限る。

演算子の Wigner 変換

基準の公理(第1部第2章)では、1次元の粒子の演算子 A^\hat A は位置表示の行列要素 ⟨x′∣A^∣x′′⟩\langle x' | \hat A | x'' \rangle で決まる。これは2つの位置 x′x'、x′′x'' の関数で、位相空間の関数 (x,p)(x,p) と同じく2変数である。ただし変数の意味が違うので、そのまま位相空間の関数と読むことはできない。そこで x′x'、x′′x'' を中点 xx と差 yy に取り替える。

x=x′+x′′2,y=x′′−x′.(5.2.1)x=\frac{x'+x''}{2},\qquad y=x''-x' .\tag{5.2.1}

対角線 x′=x′′x'=x'' の上が y=0y=0 で、そこに並ぶ対角成分 ⟨x∣A^∣x⟩\langle x | \hat A | x \rangle は位置について「局所的な」情報を持つ。対角線から離れた成分は、位置 x′x' と x′′x'' の間の干渉、つまり位相の傾きの情報を持つ。位相の傾きは運動量なので、差 yy について Fourier 変換すれば、その共役変数を運動量と読める(図 5.2.1)。

定義 5.2.1(Wigner 変換と Weyl 記号)

演算子 A^\hat A の Weyl 記号(A^\hat A の Wigner 変換)を

AW(x,p)=∫⟨x−y2∣A^∣x+y2⟩ eipy/ℏ dy(5.2.2)A_W(x,p)=\int\langle x-\tfrac{y}{2} | \hat A | x+\tfrac{y}{2} \rangle \,\mathrm{e}^{\mathrm{i} py/\hbar}\,\mathrm{d} y\tag{5.2.2}

で定める。A^\hat A から AWA_W への写像を Wigner 変換と呼ぶ。

これがこの巻で使う形で、Wigner 関数の定義とは前の係数と変数の取り方だけが違う。両者の関係は次のとおりである。

命題 5.2.2(Wigner 関数は密度行列の Weyl 記号の 1/(2πℏ)1/(2\pi\hbar) 倍 ★★★)

密度行列 ρ^\hat\rho の Weyl 記号を ρW\rho_W とすると

W(x,p)=12πℏ ρW(x,p).(5.2.3)W(x,p)=\frac{1}{2\pi\hbar}\,\rho_W(x,p) .\tag{5.2.3}

証明

(5.2.2) で A^=ρ^\hat A=\hat\rho とし、積分変数を y=−2y′y=-2y' に替える。dy=2 dy′\mathrm{d} y=2\,\mathrm{d} y'(積分の向きが逆になる分は上下限の入れ替えで吸収する)なので

ρW(x,p)=2∫⟨x+y′∣ρ^∣x−y′⟩ e−2ipy′/ℏ dy′=2πℏ W(x,p).\rho_W(x,p)=2\int\langle x+y' | \hat\rho | x-y' \rangle \,\mathrm{e}^{-2\mathrm{i} py'/\hbar}\,\mathrm{d} y'=2\pi\hbar\,W(x,p) .

状態と物理量に同じ変換を当てていることが、この先の議論の要になる。状態の側だけ 2πℏ2\pi\hbar で割るのは、∫W dx dp=1\int W\,\mathrm{d} x\,\mathrm{d} p=1 と規格化するためである。

図

図 5.2.1 位置表示の行列要素 ⟨x′∣A^∣x′′⟩\langle x' | \hat A | x'' \rangle の平面。対角線に沿った座標が中点 xx、それに直交する点線の方向が差 yy である。Wigner 変換は、中点を止めて点線に沿って Fourier 変換し、差の共役変数を運動量 pp と読む。

簡単な演算子の記号

位置だけの関数 f(x^)f(\hat x) では ⟨x′∣f(x^)∣x′′⟩=f(x′)δ(x′−x′′)\langle x' | f(\hat x) | x'' \rangle =f(x')\delta(x'-x'') なので、(5.2.2) の yy の積分は δ(−y)\delta(-y) で y=0y=0 に落ち、f(x^)f(\hat x) の記号は f(x)f(x) そのものになる。運動量だけの関数 g(p^)g(\hat p) では、平面波の完全性から⟨x′∣g(p^)∣x′′⟩=∫dp′2πℏ g(p′) eip′(x′−x′′)/ℏ\langle x' | g(\hat p) | x'' \rangle =\int\frac{\mathrm{d} p'}{2\pi\hbar}\,g(p')\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} p'(x'-x'')/\hbar} で、x′−x′′=−yx'-x''=-y を入れて

∫dy∫dp′2πℏ g(p′) e−ip′y/ℏ eipy/ℏ=∫dp′ g(p′) δ(p−p′)=g(p)(5.2.4)\int\mathrm{d} y\int\frac{\mathrm{d} p'}{2\pi\hbar}\,g(p')\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i} p'y/\hbar}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} py/\hbar}=\int\mathrm{d} p'\,g(p')\,\delta(p-p')=g(p)\tag{5.2.4}

となる。恒等演算子の記号は 11 である。したがって

f(x^) ⟼ f(x),g(p^) ⟼ g(p),1^ ⟼ 1.(5.2.5)f(\hat x)\ \longmapsto\ f(x),\qquad g(\hat p)\ \longmapsto\ g(p),\qquad \hat 1\ \longmapsto\ 1 .\tag{5.2.5}

位置だけ・運動量だけの物理量については、記号は古典の関数と同じで、順序の問題は起きない。前の章の周辺分布 (W3) は、この事実と次節以降のトレースの公式を組み合わせたものとして読み直すことができる。x^\hat x と p^\hat p が混ざると、記号に ℏ\hbar の項が付くことがある。

例題 5.2.1 x^p^\hat x\hat p と射影の記号 ★★★

オリジナル

  1. (1) x^p^\hat x\hat p の Weyl 記号が xp+iℏ/2xp+\mathrm{i}\hbar/2 であることを、(5.2.2) から直接示せ。
  2. (2) p^x^\hat p\hat x の記号を求め、エルミートな組み合わせ 12(x^p^+p^x^)\tfrac12(\hat x\hat p+\hat p\hat x) の記号が実数 xpxp になることを確かめよ。
  3. (3) 位置の射影 ∣x0⟩⟨x0∣| x_0 \rangle \langle x_0 | の記号が δ(x−x0)\delta(x-x_0) であることを示せ。
解答

(1) ⟨x′∣x^p^∣x′′⟩=x′⟨x′∣p^∣x′′⟩=x′∫dp′2πℏ p′ eip′(x′−x′′)/ℏ\langle x' | \hat x\hat p | x'' \rangle =x'\langle x' | \hat p | x'' \rangle =x'\int\frac{\mathrm{d} p'}{2\pi\hbar}\,p'\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} p'(x'-x'')/\hbar}。x′=x−y/2x'=x-y/2、x′−x′′=−yx'-x''=-y を入れると

(x^p^)W=∫dp′ p′∫dy2πℏ(x−y2)ei(p−p′)y/ℏ.(\hat x\hat p)_W=\int\mathrm{d} p'\,p'\int\frac{\mathrm{d} y}{2\pi\hbar}\Bigl(x-\frac y2\Bigr)\mathrm{e}^{\mathrm{i}(p-p')y/\hbar} .

yy の積分の第1項は x δ(p−p′)x\,\delta(p-p')。第2項は ∫dy2πℏ y ei(p−p′)y/ℏ=−iℏ ∂pδ(p−p′)\int\frac{\mathrm{d} y}{2\pi\hbar}\,y\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(p-p')y/\hbar}=-\mathrm{i}\hbar\,\partial_p\delta(p-p') を使って−12∫dp′ p′ (−iℏ)∂pδ(p−p′)=iℏ2∂pp=iℏ2-\tfrac12\int\mathrm{d} p'\,p'\,(-\mathrm{i}\hbar)\partial_p\delta(p-p')=\tfrac{\mathrm{i}\hbar}{2}\partial_p p=\tfrac{\mathrm{i}\hbar}{2}。合わせて

(x^p^)W=xp+iℏ2.(\hat x\hat p)_W=xp+\frac{\mathrm{i}\hbar}{2}.

(2) p^x^=x^p^−iℏ\hat p\hat x=\hat x\hat p-\mathrm{i}\hbar で、恒等演算子の記号は 11、Wigner 変換は線形なので (p^x^)W=xp+iℏ/2−iℏ=xp−iℏ/2(\hat p\hat x)_W=xp+\mathrm{i}\hbar/2-\mathrm{i}\hbar=xp-\mathrm{i}\hbar/2。平均を取ると虚部が打ち消し合い、12(x^p^+p^x^)\tfrac12(\hat x\hat p+\hat p\hat x) の記号は xpxp になる。x^p^\hat x\hat p はエルミートでなく、その記号は複素数である。エルミートな演算子の記号が実数になることは一般に成り立つ(5.2.2 節)。

(3) ⟨x−y2∣x0∣⟨⟩x0∣x+y2⟩=δ(x−x0−y2) δ(x0−x−y2)\langle x-\tfrac y2 | x_0 | \langle \rangle x_0 | x+\tfrac y2 \rangle =\delta(x-x_0-\tfrac y2)\,\delta(x_0-x-\tfrac y2)。第1の因子は yy の関数として 2 δ(y−2(x−x0))2\,\delta\bigl(y-2(x-x_0)\bigr) なので、yy の積分で y=2(x−x0)y=2(x-x_0) に落ち、第2の因子は δ(2(x0−x))=12δ(x−x0)\delta\bigl(2(x_0-x)\bigr)=\tfrac12\delta(x-x_0) になる。位相 e2ip(x−x0)/ℏ\mathrm{e}^{2\mathrm{i} p(x-x_0)/\hbar} は x=x0x=x_0 で 11 なので

(∣x0⟩⟨x0∣)W=2⋅12 δ(x−x0)=δ(x−x0).\bigl(| x_0 \rangle \langle x_0 |\bigr)_W=2\cdot\tfrac12\,\delta(x-x_0)=\delta(x-x_0) .

運動量によらない、直線 x=x0x=x_0 上に集中した関数である。位置を正確に測る測定の記号は、位相空間では運動量の情報を何も持たない。

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