量子力学の様々な構成方法 第5部 第2章 §5.2.2 ★★★ Wigner 変換は Fourier 変換なので逆を書くことができる。W から ρ^ が元どおりに復元できる
逆の写像
Wigner 変換 (5.2.2) は、中点 x を止めると差 y についての Fourier 変換である。Fourier 変換は逆変換を持つので
⟨x−2y∣A^∣x+2y⟩=∫2πℏdpAW(x,p)e−ipy/ℏ.
左辺を元の座標 x′=x−y/2、x′′=x+y/2 に戻すと y=x′′−x′、x=(x′+x′′)/2 で、次の式を得る。
定義 5.2.3(Weyl 量子化)
位相空間の関数 f(x,p) に対し、演算子 QW[f] を位置表示の行列要素
⟨x′∣QW[f]∣x′′⟩=∫2πℏdpf(2x′+x′′,p)eip(x′−x′′)/ℏ(5.2.6)
で定める。f↦QW[f] を Weyl 量子化、この対応 A^↔AW を Weyl 対応と呼ぶ。
作り方から、QW と Wigner 変換は互いに逆である。
QW[AW]=A^,(QW[f])W=f.(5.2.7)
名前の由来は H. Weyl が 1927 年の論文(H. Weyl (1927)、Z. Phys. 46、1–46)で、古典の関数から演算子を作る規則としてこの対応を(次の 5.2.4 節の Fourier 展開の形で)導入したことにある。Wigner の 1932 年の関数がその逆向きの写像を状態に当てたものであることは、H. J. Groenewold の学位論文(H. J. Groenewold (1946)、Physica 12、405–460)で明確にされた。
密度行列に当てると、(5.2.3) から ρ^=QW[2πℏW]、つまり
⟨x′∣ρ^∣x′′⟩=∫dpW(2x′+x′′,p)eip(x′−x′′)/ℏ(5.2.8)
である。純粋状態ならこれが ψ(x′)ψ∗(x′′) に等しく、x′′ を1点に固定すれば ψ(x′) が全体の位相を除いて読み取ることができる。W を知っていれば ρ^ のすべての行列要素が分かるので、W は状態の情報を何も失っていない。
実数とエルミート、トレースと積分
Weyl 対応は、演算子の基本的な性質を関数の性質へ写す。
命題 5.2.4(エルミート共役と複素共役 ★★)
(A^†)W=(AW)∗。とくに A^ がエルミートであることと AW が実数値であることは同値である。
証明
⟨x′∣A^†∣x′′⟩=⟨x′′∣A^∣x′⟩∗ なので
(A^†)W=∫⟨x+2y∣A^∣x−2y⟩∗eipy/ℏdy=(∫⟨x+2y∣A^∣x−2y⟩e−ipy/ℏdy)∗.
括弧の中で y→−y と替えると (5.2.2) の AW に戻る。後半は、Wigner 変換が1対1であることからA^†=A^⟺(A^†)W=AW⟺AW∗=AW。
トレースは対角成分の和なので、y=0 の成分だけが寄与する。(5.2.6) で x′=x′′=x と置いて x で積分すると
TrA^=∫2πℏdxdpAW(x,p)(5.2.9)
を得る。演算子のトレースは、記号を相空間で積分して面積 2πℏ で割ったものである。ρ^ に当てれば Trρ^=∫Wdxdp=1 で、前の章の規格化 (W1) が出る。2πℏ は前の章で「状態1つが占める面積」として現れた量で、学部の統計力学で古典の分配関数に入れる 1/h と同じものである。
例題 5.2.2 熱平衡の W から密度行列を復元する ★★★
オリジナル共通例題①の熱平衡の Wigner 関数は、s=βℏω として、中心が原点で相関の無い Gauss 関数
W(x,p)=2πσxσp1exp(−2σx2x2−2σp2p2),σx2=2mωℏcoth2s,σp2=2mℏωcoth2s
である(第5部第1章の総合問題)。
- (1) (5.2.8) で位置表示の密度行列 ⟨x′∣ρ^∣x′′⟩ を求めよ。
- (2) 結果が、⟨x′∣e−βH^∣x′′⟩=2πℏsinhsmωexp{−2ℏsinhsmω[(x′2+x′′2)coshs−2x′x′′]}を Z=1/(2sinh(s/2)) で割ったものに一致することを、s=0.7、ℏ=m=ω=1、(x′,x′′)=(0.3,−0.5) で数値で確かめよ。
解答
(1) X=(x′+x′′)/2、u=x′−x′′ と置く。p についての Gauss 積分 ∫dpe−p2/(2σp2)eipu/ℏ=2πσpe−σp2u2/(2ℏ2) から
⟨x′∣ρ^∣x′′⟩=2πσx1exp(−2σx2X2−2ℏ2σp2u2).
密度行列は、中点 X については幅 σx、差 u については幅 ℏ/σp の Gauss 関数の積になる。差の方向の幅は「干渉が残る距離」で、温度が上がって σp が大きくなるほど短くなる。
(2) ℏ=m=ω=1、s=0.7 では coth0.35=2.9729 で、σx2=σp2=1.4864。X=−0.1、u=0.8 を入れると、(1) の結果は
2π×1.48641exp(−2×1.48640.01−21.4864×0.64)=0.3272×e−0.4790=0.2027.
右辺は sinh0.7=0.7586、cosh0.7=1.2552、Z=1/(2sinh0.35)=1.3998 で、前の係数は 1/(2π×0.7586)/1.3998=0.3272、指数は −2×0.75861[0.34×1.2552+0.30]=−0.4790 となり、同じ 0.2027 を与える。係数も指数も別々に一致しているのは偶然でなく、coshs−1=2sinh22s などを使うと両辺ともπℏmωtanh2sexp[−ℏmωtanh2sX2−4ℏmωcoth2su2] に整理することができる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com