量子力学の様々な構成方法 第5部 第1章 §5.1.4 ★★ W は 1/(πℏ) より高くなれず、面積 2πℏ より狭く集まれない。奇の状態では原点で負になる
原点での値はパリティの期待値
W の1点での値には、基準の言葉で簡単な意味がある。パリティ演算子 Π^ を (Π^ψ)(x)=ψ(−x) で定めると、(5.1.5) で x=p=0 と置いて
W(0,0)=πℏ1∫ψ(y)ψ∗(−y)dy=πℏ1⟨ψ∣Π^∣ψ⟩(5.1.6)
となる(2つ目の等号は積分変数を y→−y と替えて ∫ψ∗(y)ψ(−y)dy の形にした)。一般の点 (x0,p0) の値は、状態をずらしてその点を原点に持ってくれば同じ形になる。χ(y)=e−ip0y/ℏψ(y+x0) と置くと χ(y)χ∗(−y)=e−2ip0y/ℏψ(x0+y)ψ∗(x0−y) なので
Wψ(x0,p0)=Wχ(0,0)=πℏ1⟨χ∣Π^∣χ⟩.(5.1.7)
W は各点で「その点のまわりで鏡映したときの偶奇の期待値」を 1/(πℏ) 倍したものである。
高さの上限と、面積 2πℏ
命題 5.1.5(W の高さと広がり ★★)
規格化された状態について、次が成り立つ。
- (1) ∣W(x,p)∣≤1/(πℏ)(混合状態でも成り立つ)。
- (2) 純粋状態なら ∫W2dxdp=1/(2πℏ)。
証明
(1) Π^ の固有値は ±1 なので、規格化された χ について ∣⟨χ∣Π^∣χ⟩∣≤1。(5.1.7) から純粋状態で成り立つ。混合状態は (W2) により純粋状態の重み付き和なので、三角不等式で同じ上限が出る。
(2) 固定した x で fx(y)=ψ(x+y)ψ∗(x−y) と置くと、W は fx の Fourier 変換に 1/(πℏ) を掛けたものである。Plancherel の等式 ∫∣∫f(y)e−2ipy/ℏdy∣2dp=πℏ∫∣f(y)∣2dy を使うと
∫W2dxdp=(πℏ)21πℏ∫∫∣ψ(x+y)∣2∣ψ(x−y)∣2dxdy=πℏ1⋅21(∫∣ψ∣2)2=2πℏ1.
2つ目の等号では u=x+y、v=x−y(dxdy=21dudv)と替えた。
(1) と (2) を合わせると、W が面積 A の領域にほぼ一様に広がっているなら、高さはおよそ 1/A、∫W2 はおよそ 1/A で、(2) から A≈2πℏ、(1) から A≥πℏ となる。どんな純粋状態も、相空間で面積 2πℏ 程度より狭い所に集まることはできない。古典の分布は1点に集中したデルタ関数にもなれたが、W にはそれが許されない。これが不確定性関係の位相空間での姿である。古典統計力学で状態の数を数えるときの dxdp/(2πℏ) という測度(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第3章)も、この面積を1区画と数えたものになっている。
負になる例
(5.1.6) から、奇の状態(ψ(−x)=−ψ(x))では W(0,0)=−1/(πℏ) で、上限 (1) の下側にちょうど達する。調和振動子の第1励起状態がその例である。負の値がなぜ観測と矛盾しないかは 第5部第4章 で論じる。ここでは、負の値が干渉と同じ起源を持つことだけを例題で確かめておく。
例題 5.1.4 調和振動子の重ね合わせの原点での値 ★★
オリジナル調和振動子の基底状態 ∣0⟩ と第1励起状態 ∣1⟩ の重ね合わせ ∣ψ⟩=cosθ∣0⟩+sinθ∣1⟩(θ は実数)について、W(0,0) を求めよ。また、θ=π/2 の値を、共通例題①の Wn の式(第5部第5章)Wn=πℏ(−1)ne−2H/(ℏω)Ln(4H/(ℏω)) の原点での値と比べよ(Ln は Laguerre 多項式で Ln(0)=1)。
解答
∣0⟩ は偶関数、∣1⟩ は奇関数なので Π^∣0⟩=∣0⟩、Π^∣1⟩=−∣1⟩。(5.1.6) から
W(0,0)=πℏ1(cos2θ⟨0∣0⟩−sin2θ⟨1∣1⟩+cosθsinθ(⟨0∣1⟩−⟨1∣0⟩))=πℏcos2θ.
交差項は直交性 ⟨0∣1⟩=0 で消える。θ=0 で +1/(πℏ)、θ=π/4 で 0、θ=π/2 で −1/(πℏ) である。Wn の式で原点は H=0 なので W1(0,0)=(−1)/(πℏ)⋅L1(0)=−1/(πℏ) となり、θ=π/2 の値と一致する。状態を偶から奇へ連続に変えると、原点の値は上限 1/(πℏ) から下限 −1/(πℏ) まで連続に動く。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com