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共通例題②:スピンのコヒーレント状態と Berry 項

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第6章 コヒーレント状態の経路積分
目次
  1. 球面の点で名前を付けた状態
  2. 時間分割と Berry 項
  3. 停留点の方程式と Rabi 振動
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第6章 §6.6.4 ★★★ 球面上の点で名前を付けたスピンのコヒーレント状態で時間分割すると、作用に立体角を数える Berry 項が現れ、停留点の歳差から Rabi 振動が厳密に出る

球面の点で名前を付けた状態

2準位系は粒子数の Fock 空間でなく、スピン s=12s=\frac12 の空間である。ボースのコヒーレント状態の代わりに、球面上の単位ベクトル n=(sin⁡θcos⁡φ,sin⁡θsin⁡φ,cos⁡θ)\bm{n}=(\sin\theta\cos\varphi,\sin\theta\sin\varphi,\cos\theta) ごとに

∣n⟩=e−iφ(S^z/ℏ−s) e−iθS^y/ℏ∣s,s⟩(6.6.16)| \bm{n} \rangle =\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi(\hat S_z/\hbar-s)}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\theta\hat S_y/\hbar}| s,s \rangle\tag{6.6.16}

と置く。∣s,s⟩| s,s \rangle は S^z\hat S_z の固有値 ℏs\hbar s の状態で、(6.6.16) はそれを n\bm{n} の向きへ回したものである。因子 eiφs\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi s} は北極 θ=0\theta=0 で状態が φ\varphi によらないように付けた位相で、6.6.4節の後半で意味を述べる。この状態は J. M. Radcliffe がスピンのコヒーレント状態として性質をまとめた(Radcliffe (1971), J. Phys. A 4, 313)。ss と n\bm{n} について次が成り立つ。

⟨n∣S^∣n⟩=ℏs n,∣⟨n′∣n⟩∣2=(1+n⋅n′2)2s,2s+14π∫S2∣n⟩⟨n∣ dA=1^(6.6.17)\langle \bm{n} | \hat{\bm{S}} | \bm{n} \rangle =\hbar s\,\bm{n},\qquad\lvert \langle \bm{n}' | \bm{n} \rangle \rvert ^2=\Bigl(\frac{1+\bm{n}\cdot\bm{n}'}2\Bigr)^{2s},\qquad \frac{2s+1}{4\pi}\int_{S^2}| \bm{n} \rangle \langle \bm{n} |\,\mathrm{d} A=\hat1\tag{6.6.17}

(dA=sin⁡θ dθ dφ\mathrm{d} A=\sin\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi は単位球面の面積要素)。最後の単位の分解は、左辺が全部の回転と可換で、スピン ss の表現が既約なので Schur の補題で単位の定数倍になり、トレースをとって定数が (2s+1)(2s+1) と 4π4\pi の比に決まることから出る。s=12s=\frac12 では n\bm{n} は Bloch 球の点そのもので、記法の正本の Bloch ベクトル r=Tr⁡(ρ^σ)\bm{r}=\operatorname{Tr}(\hat\rho\bm{\sigma}) を純粋状態で書いたものになる。

時間分割と Berry 項

6.6.2節と同じく、刻みの間に単位の分解 (6.6.17) を挿む。重なりは ⟨nk+1∣nk⟩≈1−ϵ⟨n∣n˙⟩≈e−ϵ⟨n∣n˙⟩\langle \bm{n}_{k+1} | \bm{n}_k \rangle \approx1-\epsilon\langle \bm{n} | \dot{\bm{n}} \rangle \approx\mathrm{e}^{-\epsilon\langle \bm{n} | \dot{\bm{n}} \rangle } で、(6.6.16) を微分すると

⟨n∣∂φn⟩=−is(cos⁡θ−1),⟨n∣∂θn⟩=0(6.6.18)\langle \bm{n} | \partial_\varphi\bm{n} \rangle =-\mathrm{i} s(\cos\theta-1),\qquad\langle \bm{n} | \partial_\theta\bm{n} \rangle =0\tag{6.6.18}

である(∂θ\partial_\theta は S^y\hat S_y の期待値 0 を出し、∂φ\partial_\varphi は S^z/ℏ−s\hat S_z/\hbar-s の期待値 scos⁡θ−ss\cos\theta-s を出す)。ハミルトニアンを H(n)=⟨n∣H^∣n⟩H(\bm{n})=\langle \bm{n} | \hat H | \bm{n} \rangle で置き換えると

⟨nf∣e−iH^t/ℏ∣ni⟩=∫Dn  exp⁡iℏ∫0t[ℏs(cos⁡θ−1)φ˙−H(n)]dt′(6.6.19)\langle \bm{n}_f | \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat Ht/\hbar} | \bm{n}_i \rangle =\int\mathcal D\bm{n}\;\exp\frac{\mathrm{i}}\hbar\int_0^t\bigl[\hbar s(\cos\theta-1)\dot\varphi-H(\bm{n})\bigr]\mathrm{d} t'\tag{6.6.19}

を得る。ボースの場合の iℏαˉα˙\mathrm{i}\hbar\bar\alpha\dot\alpha に当たる項が ℏs(cos⁡θ−1)φ˙\hbar s(\cos\theta-1)\dot\varphi で、これをBerry 項と呼ぶ。経路が閉じていれば、その積分は

1ℏ∮ℏs(cos⁡θ−1) dφ=−s∮(1−cos⁡θ) dφ=−s A(6.6.20)\frac1\hbar\oint\hbar s(\cos\theta-1)\,\mathrm{d}\varphi=-s\oint(1-\cos\theta)\,\mathrm{d}\varphi=-s\,\mathcal A\tag{6.6.20}

で、A\mathcal A は経路が北極の側に囲む立体角である。経路の進む速さによらず形だけで決まる位相で、記法の正本の Berry 位相(磁場に沿うスピン 12\frac12 で γ=−(立体角)/2\gamma=-(\text{立体角})/2)と同じものである。

(6.6.16) の位相を e−iφ(S^z/ℏ+s)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\varphi(\hat S_z/\hbar+s)} に替えると、南極で状態が滑らかになり、Berry 項は ℏs(cos⁡θ+1)φ˙\hbar s(\cos\theta+1)\dot\varphi に変わる。2つの書き方の差は 2ℏsφ˙2\hbar s\dot\varphi で、閉じた経路では2つの位相が 2s⋅2π2s\cdot2\pi だけ違う。どちらの書き方でも同じ振幅を与えるには e2πi⋅2s=1\mathrm{e}^{2\pi\mathrm{i}\cdot2s}=1、すなわち 2s2s が整数でなければならない。第10部第5章(第10部第5章)が球面の量子化の整数条件として出したスピンの量子化を、経路積分の言葉で言い直すとこうなる。Dirac の磁気単極子の電荷の量子化と同じ形で、Berry 項は単極子のベクトルポテンシャルの役をしている。

注意

(6.6.19) の連続の形は、ボースの場合よりさらに注意が要る。H(n)H(\bm{n}) を ⟨nk+1∣H^∣nk⟩/⟨nk+1∣nk⟩\langle \bm{n}_{k+1} | \hat H | \bm{n}_k \rangle /\langle \bm{n}_{k+1} | \bm{n}_k \rangle の代わりに対角の値で置いたことと、刻みの跳びが小さくならないことが重なり、連続の形のまま停留位相の次の補正(ℏ\hbar の次の次数)を求めようとすると、離散の形のどの近似を使ったかで定数が変わりうる。この章では停留点の方程式までを使い、次の補正には立ち入らない。

停留点の方程式と Rabi 振動

(6.6.19) の作用は ∫(pφ˙−H)dt′\int(p\dot\varphi-H)\mathrm{d} t' の形で、φ\varphi に共役な運動量は p=ℏs(cos⁡θ−1)p=\hbar s(\cos\theta-1)、すなわち Sz=ℏscos⁡θS_z=\hbar s\cos\theta から定数を引いたものである。Poisson 括弧 {φ,Sz}=1\{\varphi,S_z\}=1 から、S=ℏsn\bm{S}=\hbar s\bm{n} の成分の括弧は {Si,Sj}=∑kϵijkSk\{S_i,S_j\}=\sum_k\epsilon_{ijk}S_k になり、停留点の方程式(Hamilton 方程式)は S˙={S,H}\dot{\bm{S}}=\{\bm{S},H\} である。

共通例題②のハミルトニアン H^=−ℏΔ2σz−ℏΩ2σx\hat H=-\frac{\hbar\Delta}2\sigma_z-\frac{\hbar\Omega}2\sigma_x は、S^=ℏ2σ\hat{\bm{S}}=\frac\hbar2\bm{\sigma}、Ω′=Ω2+Δ2\Omega'=\sqrt{\Omega^2+\Delta^2}、n0=(Ω,0,Δ)/Ω′\bm{n}_0=(\Omega,0,\Delta)/\Omega' を使うと H^=−Ω′n0⋅S^\hat H=-\Omega'\bm{n}_0\cdot\hat{\bm{S}} で、置き換えは H(n)=−Ω′n0⋅SH(\bm{n})=-\Omega'\bm{n}_0\cdot\bm{S} である。停留点の方程式は

S˙=−Ω′∑jn0j{S,Sj}=−Ω′ n0×S(6.6.21)\dot{\bm{S}}=-\Omega'\sum_jn_{0j}\{\bm{S},S_j\}=-\Omega'\,\bm{n}_0\times\bm{S}\tag{6.6.21}

で、S\bm{S} は n0\bm{n}_0 のまわりを角速度 Ω′\Omega' で回る。Heisenberg 方程式 dS^dt=[S^, H^]/(iℏ)\frac{\mathrm{d} \hat{\bm{S}}}{\mathrm{d} t}=\left[\hat{\bm{S}},\,\hat H\right]/(\mathrm{i}\hbar) も同じ線形の式なので、期待値の運動は停留点の運動と厳密に一致する。線形のハミルトニアンでは、コヒーレント状態は時間がたってもコヒーレント状態のまま(向きだけが変わる)で、ボースの例題 6.6.2 と同じく停留点が厳密な答えを与える。

∣g⟩| g \rangle は σz∣g⟩=−∣g⟩\sigma_z| g \rangle =-| g \rangle なので南極 n(0)=(0,0,−1)\bm{n}(0)=(0,0,-1) から出発する。n0\bm{n}_0 方向の成分 n⋅n0=−n0z\bm{n}\cdot\bm{n}_0=-n_{0z} は保たれ、垂直な成分は長さ 1−n0z2\sqrt{1-n_{0z}^2} のまま角度 Ω′t\Omega't だけ回るのでnz(t)=−n0z2−(1−n0z2)cos⁡Ω′tn_z(t)=-n_{0z}^2-(1-n_{0z}^2)\cos\Omega't である。励起状態にいる確率は Pe=(1+nz)/2P_e=(1+n_z)/2 で

Pe(t)=1−n0z22(1−cos⁡Ω′t)=(ΩΩ′)2sin⁡2Ω′t2(6.6.22)P_e(t)=\frac{1-n_{0z}^2}2\bigl(1-\cos\Omega't\bigr)=\Bigl(\frac{\Omega}{\Omega'}\Bigr)^2\sin^2\frac{\Omega't}2\tag{6.6.22}

となり、共通例題②の正答と同じ形になる(verify_ch6-06.py で常微分方程式の数値解・量子の厳密な時間発展と照合した)。第3部第2章は同じ答えを σ\sigma の反転の列の和として出したが、スピンのコヒーレント状態では1本の古典の軌道で済む。

例題 6.6.5 Berry 位相と Rabi の振幅 ★★

オリジナル

  1. (1) s=12s=\frac12 のスピンの向きを、緯線 θ=π/3\theta=\pi/3 に沿って φ=0\varphi=0 から 2π2\pi まで1周させたときの Berry 位相 (6.6.20) を求めよ。s=1s=1 ではどうか。
  2. (2) Ω=1\Omega=1、Δ=0.6\Delta=0.6(同じ単位)のとき Ω′\Omega' と PeP_e の最大値を求めよ。
  3. (3) 2つの向き n\bm{n}, n′\bm{n}' のなす角を χ\chi とすると s=12s=\frac12 で ∣⟨n′∣n⟩∣2=cos⁡2(χ/2)\lvert \langle \bm{n}' | \bm{n} \rangle \rvert ^2=\cos^2(\chi/2) になることを (6.6.17) から示し、反対向きの2つの状態が直交することを確かめよ。
解答

(1) 囲む立体角は A=2π(1−cos⁡π3)=π\mathcal A=2\pi(1-\cos\frac\pi3)=\pi なので、Berry 位相は −sA=−π/2-s\mathcal A=-\pi/2(s=12s=\frac12)、−π-\pi(s=1s=1)である。verify_ch6-06.py では緯線を 4000 個の点に分け、重なりの積 ∏k⟨nk+1∣nk⟩\prod_k\langle \bm{n}_{k+1} | \bm{n}_k \rangle の偏角がこの値に一致することを確かめた。重なりの積は位相の付け方によらないので、Berry 位相が形だけの量であることの直接の確認になる。

(2) Ω′=1+0.36=1.1662\Omega'=\sqrt{1+0.36}=1.1662、PeP_e の最大値は (Ω/Ω′)2=1/1.36=0.7353(\Omega/\Omega')^2=1/1.36=0.7353 である。離調があると n0\bm{n}_0 が赤道から zz 方向へ傾き、南極から出た n\bm{n} は北極まで届かない。

(3) n⋅n′=cos⁡χ\bm{n}\cdot\bm{n}'=\cos\chi なので (1+cos⁡χ)/2=cos⁡2(χ/2)(1+\cos\chi)/2=\cos^2(\chi/2)。χ=π\chi=\pi で 0 になり、反対向きの状態は直交する。ボースのコヒーレント状態と違って、s=12s=\frac12 の球面上の状態は直交する対を持つ。それでも単位の分解には球面全体の積分が要り、状態は過完備である(2次元の空間を球面の連続無限個の状態で張る)。

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