量子力学の様々な構成方法 第7部 第1章 §7.1.2 ★★★ 同値性の橋の前半。連続の式と、量子ポテンシャルつきの Hamilton–Jacobi 方程式を導く
代入して整理する
Schrödinger 方程式
iℏ∂t∂ψ=−2mℏ2∇2ψ+V(r)ψ(7.1.5)
に極形式 (7.1.1) を入れる。書きやすいように R=ρ と置き、ψ=ReiS/ℏ とする。時間微分は
iℏ∂t∂ψ=(iℏ∂t∂R−R∂t∂S)eiS/ℏ.
空間の微分は、まず ∇ψ=(∇R+ℏiR∇S)eiS/ℏ、もう1回発散を取って
∇2ψ=(∇2R+ℏ2i∇R⋅∇S+ℏiR∇2S−ℏ21R∣∇S∣2)eiS/ℏ.
両辺から共通の eiS/ℏ を除き、実部と虚部に分ける。R と S は実数なので、実部と虚部がそれぞれ等しくなければならない。実部からは
−R∂t∂S=−2mℏ2∇2R+2m1R∣∇S∣2+VR,
虚部(ℏ で割ったもの)からは
∂t∂R=−2m1(2∇R⋅∇S+R∇2S)
が出る。実部の式を −R で割り、虚部の式に 2R を掛けて ρ=R2 に直すと、次の2本になる。
命題 7.1.2(Madelung 方程式 ★★★)
ρ>0 の領域で、Schrödinger 方程式 (7.1.5) は次の2本の実数の式と同値である。
∂t∂ρ+∇⋅(ρm∇S)=0,∂t∂S+2m∣∇S∣2+V+Q=0,Q:=−2mℏ2ρ∇2ρ.(7.1.6)(7.1.7)
1本目は確率の連続の式、2本目は量子 Hamilton–Jacobi 方程式で、Q を量子ポテンシャルと呼ぶ。
証明
上の計算で、Schrödinger 方程式 ×e−iS/ℏ は
−R(∂t∂S+2m∣∇S∣2+V+Q)+i2Rℏ(∂t∂ρ+∇⋅mρ∇S)=0
と書ける(検算で一般の R,S,V について確かめた)。R>0 なので、左辺が 0 であることと2つの括弧が両方 0 であることは同じである。
(7.1.6) の中の ρ∇S/m は (7.1.3) の j なので、連続の式は ∂tρ+∇⋅j=0 と書ける。これは確率の保存を表し、全空間で積分すれば ∫ρd3r が時間によらないことが出る。量子ポテンシャルを含むのは2本目だけである。
量子ポテンシャルの形
(7.1.7) の Q を除くと、古典力学の Hamilton–Jacobi 方程式 ∂tS+∣∇S∣2/(2m)+V=0 そのものになる(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第13章。そちらでは同じ極形式を ψ=AeiS/ℏ と書いて同じ2本を出している)。Q は ℏ2 に比例し、密度 ρ の形だけで決まり、位相 S にも外のポテンシャル V にもよらない。ρ を直接使って書くと
Q=−4mℏ2[ρ∇2ρ−2ρ2∣∇ρ∣2](7.1.8)
である(∇2ρ=∇⋅(∇ρ/(2ρ)) を展開すれば出る)。この形から、Q について次の3つが読み取れる。
1つ目に、ρ を定数倍しても Q は変わらない。量子ポテンシャルは密度の大きさでなく、密度の曲がり方だけを見ている。古典の流体の圧力が密度の大きさに比例するのと違う点である。2つ目に、密度が遠くまで薄く広がっていても、形が急に変わる所では Q が大きくなる。この性質は第7部第4章の Bohm の軌道で非局所性の話につながる。3つ目に、ρ→0 になる節の近くでは ρ で割るので Q が発散しうる。第5節で調和振動子の第1励起状態を例にこれを見る。
例題 7.1.2 ガウス分布の量子ポテンシャル ★★★
オリジナル1次元で、密度が平均 0・標準偏差 σ のガウス分布 ρ(x)=(2πσ2)−1/2e−x2/(2σ2) のとき、量子ポテンシャル Q(x) を求めよ。Q が正になる範囲と、Q が粒子に及ぼす力 −∂xQ の向きを答えよ。
解答
ρ∝e−x2/(4σ2) である。微分すると(ρ)′=−2σ2xρ、(ρ)′′=(4σ4x2−2σ21)ρ なので、
Q(x)=−2mℏ2(4σ4x2−2σ21)=4mσ2ℏ2−8mσ4ℏ2x2.
Q は上に凸の放物線で、∣x∣<2σ で正、その外で負になる。力は −∂xQ=ℏ2x/(4mσ4) で、x>0 では正の向き、x<0 では負の向きを向く。つまり量子ポテンシャルの力は分布の中心から外へ向かい、密度を広げる向きに働く。外のポテンシャルが無いとき(第5節の自由粒子)、波束が広がる理由はこの力で説明できる。規格化の定数 (2πσ2)−1/2 は Q に現れず、Q が密度の大きさによらないことの例にもなっている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com