量子力学の様々な構成方法 第7部 第2章 §7.2.2 ★★★ Q を無視した2本の式は、各点で運動量が1つに決まった古典粒子の集団を表す。特性曲線が Hamilton 方程式の解になることと、密度が軌道の Jacobi 行列式で運ばれることを示す
特性曲線は Hamilton 方程式の解
Q を無視した流れでは、速度場 v=∇S/m の勾配を取った Euler 方程式から圧力の項が消え、
∂t∂v+(v⋅∇)v=−m1∇V(7.2.7)
が残る。左辺は流れに乗って見た加速度(物質微分)なので、これは流体の各部分が外力 −∇V だけを受けて Newton の運動方程式に従うことを表す。圧力がないので、流体の各部分はお互いに力を及ぼさない。この流れを、互いに相互作用しない古典粒子の集団と読むことができる。次の命題がこの読み方を確かにする。
命題 7.2.2(特性曲線と Hamilton 方程式 ★★★)
S(r,t) が Hamilton–Jacobi 方程式 (7.2.2) の滑らかな解であるとする。曲線 r(t) が
r˙=m1∇S(r(t),t)(7.2.8)
を満たすとき、p(t):=∇S(r(t),t) と置くと、組 (r(t),p(t)) は Hamilton 方程式 r˙=p/m、p˙=−∇V を満たす。
証明
1本目は定義そのものである。2本目は、連鎖律で
p˙i=dtd∂iS(r(t),t)=∂t∂iS+j∑∂j∂iSr˙j=∂t∂iS+m1j∑∂jS∂i∂jS
である。一方、Hamilton–Jacobi 方程式を ri で微分すると ∂i∂tS+m1∑j∂jS∂i∂jS+∂iV=0 なので、右辺は −∂iV に等しい(検算で確かめた)。
この命題から、(7.2.2) の解 S が1つ与えられると、空間の各点を通る古典軌道が1本ずつ決まり、その点での運動量が ∇S で決まることが分かる。解析力学の言葉では、S は相空間の中の曲面 {(r,∇S(r,t))} を指定し、その曲面の上の点が Hamilton の流れで運ばれる(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第13章)。この曲面を、運動量が位置の関数として1つに決まるという意味で、ここでは単一運動量の曲面と呼ぶ。逆向きに、軌道の族から S を作ることもできる。時刻 0 の位相 S0(r0) から出発し、r0 を出て運動量 ∇S0(r0) で走る軌道に沿って作用を足したS(r,t)=S0(r0)+∫0tLdt′(r は時刻 t に軌道が着く点)が Hamilton–Jacobi 方程式の解になる。ただしこの構成は、時刻 t に点 r に着く軌道がちょうど1本のときに限って S を1価の関数として定める。
密度は軌道に運ばれる
連続の式 (7.2.2) の2本目は、流れに乗って見ると dtdρ=−ρ∇⋅v と書ける(dtd=∂t+v⋅∇)。一方、時刻 0 に r0 を出た軌道が時刻 t に着く点を r(r0,t) とし、Jacobi 行列式 J(r0,t)=det(∂ri/∂r0j) を考えると、小さな体積の伸び率は流れの発散に等しく、dtdlnJ=∇⋅v である(流体力学の Euler の公式)。2つを合わせると dtd(ρJ)=0 なので
ρ(r(r0,t),t)=∣J(r0,t)∣ρ0(r0)(7.2.9)
が出る。初めに体積 d3r0 にあった確率 ρ0d3r0 が、軌道に運ばれた先の体積 ∣J∣d3r0 にそのまま入っている、という確率の保存である。(7.2.9) は、J が 0 になる点で ρ が発散することも示している。近くの軌道どうしが交わる点で J=0 になるので、そこが第4節の焦点である。
例題 7.2.2 一様に膨らむ古典の流れと、量子の補正 ★★★
オリジナル1次元の自由粒子(V=0)で、時刻 0 の位相を S0(x)=mx2/(2τ)(τ>0)とする。
- S(x,t)=mx2/(2(t+τ)) が Hamilton–Jacobi 方程式の解で、S(x,0)=S0 であることを確かめよ。
- 特性曲線 (7.2.8) を解き、(7.2.9) から ρ(x,t) を任意の ρ0 について求め、連続の式を満たすことを確かめよ。
- ρ0 が幅 σ0 のガウス分布のとき、古典の流れの幅 σcl(t) を求めよ。量子の幅は前の章の方程式 σ¨=ℏ2/(4m2σ3) に初期条件 σ(0)=σ0、σ˙(0)=σ0/τ を与えた解である。σ(t)2=σ02(1+t/τ)2+(ℏt/(2mσ0))2 がその解であることを確かめ、2つを比べよ。
解答
(1) ∂tS=−mx2/(2(t+τ)2)、∂xS=mx/(t+τ) なので ∂tS+(∂xS)2/(2m)=−mx2/(2(t+τ)2)+mx2/(2(t+τ)2)=0 である。t=0 で S0 に戻る。
(2) x˙=∂xS/m=x/(t+τ) を解くと x(t)=x0(1+t/τ) である。速度 x˙=x0/τ は一定で、命題 7.2.2 のとおり自由粒子の等速運動になっている。Jacobi 行列式は J=∂x/∂x0=1+t/τ なので、(7.2.9) から
ρ(x,t)=t+ττρ0(t+τxτ).
u=xτ/(t+τ) と置くと ∂tρ=−(t+τ)2τ[ρ0(u)+uρ0′(u)]、∂x(ρv)=∂x((t+τ)2τxρ0(u))=(t+τ)2τ[ρ0(u)+uρ0′(u)] で、和は 0 になる。
(3) ガウス分布は x↦x(1+t/τ) で幅が 1+t/τ 倍になるので σcl(t)=σ0(1+t/τ) である。量子の式は σ2=σcl2+(ℏt/2mσ0)2 で、t=0 で σ0、σ˙(0)=σ0/τ を満たし、2回微分して σ¨=ℏ2/(4m2σ3) に戻ることを検算で確かめた。差は第2項 (ℏt/2mσ0)2 で、これが量子圧力 Q の押し広げる分である。比 (ℏt/2mσ0)2/σcl2 は t≫τ で (ℏτ/2mσ02)2 に近づくので、ℏτ/(mσ02)≪1 なら、どの時刻でも Q の寄与は小さい。この比は、端 x=σ0 での流れの運動量 mσ0/τ と長さ σ0 で作った (7.2.3) の ℏ/(pL) そのものである。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com