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量子ポテンシャルを無視する:何が小さければよいか

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第2章 ℏ→0 で Hamilton–Jacobi へ:流体から見た古典極限
目次
  1. Madelung の2本の式と、 の居場所
  2. 無次元の比で言い直す
  3. を無視した波動関数の誤差
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第2章 §7.2.1 ★★★ ℏ→0\hbar\to0 の意味を ℏ/(pL)→0\hbar/(pL)\to0 という無次元の比として定め、QQ を無視したときの波動関数の誤差を Schrödinger 方程式の残差から評価する

前の章(第7部第1章)で、波動関数を極形式 ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} に書くと、Schrödinger 方程式は確率の連続の式と、量子ポテンシャル Q=−(ℏ2/2m)∇2ρ/ρQ=-(\hbar^2/2m)\nabla^2\sqrt\rho/\sqrt\rho の付いた Hamilton–Jacobi 方程式(量子 HJ 方程式)の2本に分かれることを示した。2本のうち ℏ\hbar を含むのは QQ だけなので、QQ を無視すれば古典力学の Hamilton–Jacobi 方程式が現れる。この章は、この「QQ を無視する」操作を古典極限の1つの見方として調べる。

部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は「得意な問題」と「限界」の手前に当たり、流体の構成から古典力学へ戻る橋を受け持つ。古典極限の見方は、この巻にほかに2つある。第3部第4章(第3部第4章)は経路積分を停留位相で評価し、第5部第3章(第5部第3章)は Moyal 方程式の ℏ\hbar 展開で Liouville 方程式を出す。流体の見方はこの2つと同じ所で成り立ち、同じ所で崩れる。それを式で並べることが、この章の目的である。

第1節で「ℏ→0\hbar\to0」が何を小さくすることなのかを無次元の比で言い直し、QQ を無視したときの誤差を評価する。第2節で QQ を無視した方程式が、運動量のそろった古典粒子の集団を表すことを、特性曲線と Hamilton 方程式の一致として示す。第3節は時間によらない流れで、これが WKB 近似の主要項と同じものであることを確かめる。第4節では極限が成り立たない2つの場合(粒子の軌道が交わる焦点と、束縛状態の定在波)を調べる。第5節が橋の節で、経路積分・位相空間・基準の言葉での古典極限とこの章の形を並べる。

Madelung の2本の式と、ℏ\hbar の居場所

1粒子(質量 mm、ポテンシャル V(r)V(\bm{r}))の Madelung の方程式は、前の章の結果をそのまま引くと

∂ρ∂t+∇⋅(ρ ∇Sm)=0,∂S∂t+∣∇S∣22m+V+Q=0,Q=−ℏ22m∇2ρρ(7.2.1)\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot\Bigl(\rho\,\frac{\nabla S}{m}\Bigr)=0,\qquad \frac{\partial S}{\partial t}+\frac{\lvert \nabla S\rvert ^2}{2m}+V+Q=0,\qquad Q=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\nabla^2\sqrt\rho}{\sqrt\rho}\tag{7.2.1}

である(第7部第1章の命題「Madelung 方程式」)。ℏ\hbar が現れるのは QQ の中だけで、しかも ℏ2\hbar^2 として現れる。したがって QQ を無視した

∂S∂t+∣∇S∣22m+V=0,∂ρ∂t+∇⋅(ρ ∇Sm)=0(7.2.2)\frac{\partial S}{\partial t}+\frac{\lvert \nabla S\rvert ^2}{2m}+V=0,\qquad \frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot\Bigl(\rho\,\frac{\nabla S}{m}\Bigr)=0\tag{7.2.2}

を「流体の古典極限」と呼ぶことにする。1本目は古典力学の Hamilton–Jacobi 方程式で、S(r,t)S(\bm{r},t) は Hamilton の主関数である(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第13章)。2本目は連続の式のまま変わらない。

無次元の比で言い直す

ℏ\hbar は自然定数なので、文字どおりに 00 へ送ることはできない。意味を持つ量は、ℏ\hbar をその系に固有の作用の大きさと比べた無次元の比である。密度 ρ\rho が目立って変わる長さを LL、流れの運動量 ∣∇S∣\lvert \nabla S\rvert の大きさを pp とすると、(7.2.1) の2本目の各項の大きさは

∣∇S∣22m∼p2m,∣Q∣∼ℏ2mL2\frac{\lvert \nabla S\rvert ^2}{2m}\sim\frac{p^2}{m},\qquad \lvert Q\rvert \sim\frac{\hbar^2}{mL^2}

と見積もれる。QQ の分子の ∇2ρ\nabla^2\sqrt\rho は ρ/L2\sqrt\rho/L^2 程度で、ρ\sqrt\rho で割ると 1/L21/L^2 だけが残るからである。比を取ると

∣Q∣p2/m∼(ℏpL)2=(λ2πL)2,λ=2πℏp(7.2.3)\frac{\lvert Q\rvert }{p^2/m}\sim\Bigl(\frac{\hbar}{pL}\Bigr)^2=\Bigl(\frac{\lambda}{2\pi L}\Bigr)^2,\qquad \lambda=\frac{2\pi\hbar}{p}\tag{7.2.3}

となる。λ\lambda は de Broglie 波長である。つまり「ℏ→0\hbar\to0」とは、ρ\rho と SS を ℏ\hbar によらない滑らかな関数に固定したまま、de Broglie 波長が密度の変わる長さ LL に比べて短くなる極限のことである。

この言い直しには、見落とされやすい前提が1つ入っている。ρ\rho の形を固定して ℏ\hbar だけを小さくするので、ρ\rho 自身が波長 λ\lambda の長さで振動しているような状態(たとえば定在波)は、この極限の対象に入らない。そうした状態では L∼λL\sim\lambda なので、(7.2.3) の比は ℏ\hbar を小さくしても小さくならない。この場合は第4節で扱う。

QQ を無視した波動関数の誤差

QQ を無視した方程式 (7.2.2) の解 (S,ρ)(S,\rho) から波動関数の候補 ψcl=ρ eiS/ℏ\psi_{\mathrm{cl}}=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} を作ると、それは Schrödinger 方程式をどれだけ満たすか。前の章の命題の証明に出てきた恒等式を、QQ を左右に分けて書き直すと答えが出る。

命題 7.2.1(古典の組の残差 ★★★)

ρ>0\rho>0 の領域で、任意の実関数 ρ\rho, SS について ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} は

iℏ∂ψ∂t−H^ψ=−(∂S∂t+∣∇S∣22m+V+Q)ψ+iℏ2ρ(∂ρ∂t+∇⋅ρ∇Sm)ψ(7.2.4)\mathrm{i}\hbar\frac{\partial \psi}{\partial t}-\hat H\psi =-\Bigl(\frac{\partial S}{\partial t}+\frac{\lvert \nabla S\rvert ^2}{2m}+V+Q\Bigr)\psi+\frac{\mathrm{i}\hbar}{2\rho}\Bigl(\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot\frac{\rho\nabla S}{m}\Bigr)\psi\tag{7.2.4}

を満たす(H^=−(ℏ2/2m)∇2+V\hat H=-(\hbar^2/2m)\nabla^2+V)。とくに (S,ρ)(S,\rho) が (7.2.2) の解なら、

iℏ∂ψcl∂t−H^ψcl=−Q ψcl.(7.2.5)\mathrm{i}\hbar\frac{\partial \psi_{\mathrm{cl}}}{\partial t}-\hat H\psi_{\mathrm{cl}}=-Q\,\psi_{\mathrm{cl}} .\tag{7.2.5}

証明

(7.2.4) は前の章で Schrödinger 方程式を実部と虚部に分けたときの計算そのもので、e−iS/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} S/\hbar} を掛けた左辺を ρ\sqrt\rho と SS の微分で展開すると、実部が −ρ (∂tS+∣∇S∣2/2m+V+Q)-\sqrt\rho\,(\partial_tS+\lvert \nabla S\rvert ^2/2m+V+Q)、虚部が (ℏ/2ρ)(∂tρ+∇⋅(ρ∇S/m))(\hbar/2\sqrt\rho)(\partial_t\rho+\nabla\cdot(\rho\nabla S/m)) になる(検算で一般の ρ,S,V\rho,S,V について確かめた)。(7.2.2) が成り立てば、1つ目の括弧は QQ だけ、2つ目の括弧は 00 になるので (7.2.5) が出る。

残差 −Qψcl-Q\psi_{\mathrm{cl}} から、本物の解との差を見積もることができる。時刻 00 で ψ(0)=ψcl(0)\psi(0)=\psi_{\mathrm{cl}}(0) とし、差を e(t)=ψ(t)−ψcl(t)e(t)=\psi(t)-\psi_{\mathrm{cl}}(t) と置く。本物の解は iℏ∂tψ=H^ψ\mathrm{i}\hbar\partial_t\psi=\hat H\psi を満たすので、(7.2.5) と引き算してiℏ e˙=H^e+Qψcl\mathrm{i}\hbar\,\dot e=\hat He+Q\psi_{\mathrm{cl}} である。H^\hat H は自己共役なので ⟨e,H^e⟩\langle e,\hat He\rangle は実数で、

ddt∥e∥2=2Re⁡⟨e,e˙⟩=2ℏIm⁡⟨e,H^e+Qψcl⟩=2ℏIm⁡⟨e,Qψcl⟩≤2ℏ∥e∥ ∥Qψcl∥\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\lVert e\rVert ^2=2\operatorname{Re}\langle e,\dot e\rangle=\frac{2}{\hbar}\operatorname{Im}\langle e,\hat He+Q\psi_{\mathrm{cl}}\rangle=\frac{2}{\hbar}\operatorname{Im}\langle e,Q\psi_{\mathrm{cl}}\rangle\le\frac{2}{\hbar}\lVert e\rVert \,\lVert Q\psi_{\mathrm{cl}}\rVert

となる。両辺を 2∥e∥2\lVert e\rVert で割って積分すると

∥ψ(t)−ψcl(t)∥≤1ℏ∫0t∥Qψcl(s)∥ ds(7.2.6)\lVert \psi(t)-\psi_{\mathrm{cl}}(t)\rVert \le\frac{1}{\hbar}\int_0^t\lVert Q\psi_{\mathrm{cl}}(s)\rVert \,\mathrm{d} s\tag{7.2.6}

が出る。ρ\rho と SS が ℏ\hbar によらず滑らかなら Q=O(ℏ2)Q=\mathcal{O}(\hbar^2) なので、右辺は O(ℏ t)\mathcal{O}(\hbar\,t) である。固定した時刻までなら、ℏ/(pL)→0\hbar/(pL)\to0 で差は 00 に近づく。ただしこの評価は、tt までの間ずっと ρ\rho が滑らかであることを前提にしている。第4節で見るように、古典の流れには有限の時刻で ρ\rho が発散する所(焦点)が現れることがあり、その近くで ∥Qψcl∥\lVert Q\psi_{\mathrm{cl}}\rVert は ℏ\hbar で抑えられなくなる。

例題 7.2.1 電子と微粒子の量子ポテンシャルの大きさ ★★

オリジナル幅 σ\sigma のガウス分布 ρ∝e−x2/(2σ2)\rho\propto\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma^2)} の中心での量子ポテンシャルは Q(0)=ℏ2/(4mσ2)Q(0)=\hbar^2/(4m\sigma^2) である(第7部第1章の例題)。

  1. 電子(m=9.109×10−31 kgm=9.109\times10^{-31}\,\mathrm{kg})で σ=1 nm\sigma=1\,\mathrm{nm} のとき、Q(0)Q(0) を meV で求め、室温 300 K300\,\mathrm K の kBTk_{\mathrm B} T と比べよ。
  2. 直径 1 μm1\,\mu\mathrm m、密度 2000 kg/m32000\,\mathrm{kg/m^3} の微粒子(質量およそ 1×10−15 kg1\times10^{-15}\,\mathrm{kg})で σ=1 μm\sigma=1\,\mu\mathrm m のとき、Q(0)/(kBT)Q(0)/( k_{\mathrm B} T) を求めよ。
  3. 2つの結果から、QQ を無視してよいかどうかについて何が言えるか。
解答

(1) ℏ2=(1.0546×10−34)2=1.112×10−68 J2s2\hbar^2=(1.0546\times10^{-34})^2=1.112\times10^{-68}\,\mathrm{J^2s^2} なので

Q(0)=1.112×10−684×9.109×10−31×10−18 J=3.05×10−21 J=19.0 meVQ(0)=\frac{1.112\times10^{-68}}{4\times9.109\times10^{-31}\times10^{-18}}\,\mathrm J=3.05\times10^{-21}\,\mathrm J=19.0\,\mathrm{meV}

である。室温の kBT=1.381×10−23×300 J=25.9 meVk_{\mathrm B} T=1.381\times10^{-23}\times300\,\mathrm J=25.9\,\mathrm{meV} と同じ桁である。

(2) 質量は 43π(0.5×10−6)3×2000=1.05×10−15 kg\tfrac43\pi(0.5\times10^{-6})^3\times2000=1.05\times10^{-15}\,\mathrm{kg} で、1×10−15 kg1\times10^{-15}\,\mathrm{kg} としてQ(0)=1.112×10−68/(4×10−15×10−12) J=2.8×10−42 JQ(0)=1.112\times10^{-68}/(4\times10^{-15}\times10^{-12})\,\mathrm J=2.8\times10^{-42}\,\mathrm J、kBT=4.14×10−21 Jk_{\mathrm B} T=4.14\times10^{-21}\,\mathrm J との比は 6.7×10−226.7\times10^{-22} である。

(3) 1 nm に閉じ込めた電子では、量子ポテンシャルが熱運動のエネルギーと同じ大きさなので無視できない。1 μm1\,\mu\mathrm m の微粒子では 10−2110^{-21} 倍の小ささで、ρ\rho が 1 μm1\,\mu\mathrm m の長さで滑らかに変わる限り、運動は (7.2.2) の古典の流れで書いてよい。比 Q(0)/(kBT)Q(0)/( k_{\mathrm B} T) は ℏ2/(mσ2kBT)\hbar^2/(m\sigma^2 k_{\mathrm B} T) に比例し、熱的な de Broglie 波長 ℏ/mkBT\hbar/\sqrt{m k_{\mathrm B} T} と σ\sigma の比の2乗である。これは (7.2.3) の (ℏ/pL)2(\hbar/pL)^2 で pp を熱運動の運動量にしたものに当たる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ℏ/(pL)→0\hbar/(pL)\to0(de Broglie 波長が密度の変わる長さより短い) | 証明 条件付き(ρ\rho, SS が ℏ\hbar によらず滑らかで、軌道が交わる焦点より前の時刻。誤差は (7.2.6) の形で O(ℏt)\mathcal{O}(\hbar t)) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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