総合問題 調和ポテンシャルの中で幅が振動するガウス波束 ★★★
オリジナル1次元の調和振動子 V=mω2x2/2 の中で、密度がガウス分布の形を保って動く解を流体の言葉で探す。中心を X(t)、標準偏差を σ(t) としてρ(x,t)=(2πσ2)−1/2exp(−(x−X)2/(2σ2)) と置く。
- (1) 速度場を v(x,t)=X˙+σσ˙(x−X) とすると、連続の式が X(t)、σ(t) によらず成り立つことを示せ。(使う道具:この章の第2節と第5節の自由波束の計算)
- (2) 量子 Euler 方程式から、X と σ の従う方程式
X¨=−ω2X,σ¨+ω2σ=4m2σ3ℏ2
を導け。(使う道具:第2節の例題 7.1.2・第3節の Euler 方程式)3. (3) σ が時間によらない解を求め、それが共通例題①の基底状態の幅であること、そのとき V+Q=ℏω/2 であることを確かめよ。(使う道具:第5節)4. (4) 流体のエネルギー E=∫ρ(mv2/2+V+Q)dx を X,X˙,σ,σ˙ で書き、(2) の方程式のもとで保存すること、最小値が ℏω/2 であることを示せ。(使う道具:第3節の (7.1.12) と Fisher 情報)5. (5) σ(0)=2σg、σ˙(0)=0(σg は (3) の幅)、X(0)=X˙(0)=0 で始めたとき、σ の最小値とそれに達する時刻、エネルギーを求めよ。(使う道具:(2)(4))6. (6) ω→0 で (2) が共通例題③の (7.1.18) に戻ることと、X の方程式が第2部第3章の Heisenberg 方程式の期待値と同じであることを確かめよ。(使う道具:第5節・第6節・第2部第3章)
解答
(1) u=(x−X)/σ と書くと ρ=(2πσ2)−1/2e−u2/2。時間微分は∂tρ=ρ[−σ˙/σ+u(X˙/σ)+u2σ˙/σ]。一方∂x(ρv)=v∂xρ+ρ∂xv=ρ[−(u/σ)(X˙+σ˙u)+σ˙/σ]。足すと u の0次・1次・2次の項がそれぞれ打ち消し合い、∂tρ+∂x(ρv)=0 が恒等的に成り立つ。
(2) 例題 7.1.2 の結果を中心 X に平行移動して、Q=4mσ2ℏ2−8mσ4ℏ2(x−X)2、−∂xQ/m=4m2σ4ℏ2(x−X)。Euler 方程式の左辺は
∂tv+v∂xv=X¨+(σσ¨−σ2σ˙2)(x−X)−σσ˙X˙+(X˙+σσ˙(x−X))σσ˙=X¨+σσ¨(x−X).
右辺は −ω2x+ℏ2(x−X)/(4m2σ4)=−ω2X−ω2(x−X)+ℏ2(x−X)/(4m2σ4)。両辺は x−X の1次式なので、定数項から X¨=−ω2X、x−X の係数から σ¨/σ=−ω2+ℏ2/(4m2σ4)、つまり σ¨+ω2σ=ℏ2/(4m2σ3) を得る。中心は古典の調和振動子と同じ運動をし、幅は中心の運動と切り離された別の方程式に従う。
(3) σ¨=0 と置くと ω2σ4=ℏ2/(4m2)、σg=ℏ/(2mω)。σg2=ℓ2/2 で、これは ∣ψ0∣2∝e−x2/ℓ2 の標準偏差である。X=0 なら v=0 で、第5節の計算どおり V+Q=ℏω/2 になる。
(4) ∫ρmv2/2dx=2m(X˙2+σ˙2)(⟨x−X⟩=0、⟨(x−X)2⟩=σ2)、∫ρVdx=2mω2(X2+σ2)、∫ρQdx=ℏ2/(8mσ2)((7.1.13)、J=1/σ2)。合わせて
E=2mX˙2+2mω2X2+2mσ˙2+2mω2σ2+8mσ2ℏ2.
これは位相 S=mX˙(x−X)+m(σ˙/σ)(x−X)2/2 を持つ波動関数で ⟨H^⟩ を直接計算した値と一致する(検算)。時間微分はmX˙(X¨+ω2X)+mσ˙(σ¨+ω2σ−ℏ2/(4m2σ3)) で、(2) より 0 である。最小値は、運動の項を 0 にし、2mω2σ2+8mσ2ℏ2 を相加相乗平均で押さえて ≥2ℏ2ω2/16=ℏω/2、等号は σ=σg のときである。零点エネルギーは、ポテンシャルのエネルギーと形のエネルギー(Fisher 情報の項)の兼ね合いの最小値として出る。
(5) (2) の σ の方程式は、q=σ2 と置くと線形になる。q˙=2σσ˙、q¨=2σ˙2+2σσ¨ で、(4) の幅の部分のエネルギーε=2mσ˙2+2mω2σ2+8mσ2ℏ2 が保存することを使うと q¨=4ε/m−4ω2q。これは q が角振動数 2ω で振動することを表し、初期条件 q(0)=4σg2、q˙(0)=0 から
σ(t)2=2σg2[(4+41)+(4−41)cos2ωt]
(ε を代入すると定数項が合う)。最小値は cos2ωt=−1、つまり t=π/(2ω) で σ2=σg2/4、σmin=σg/2。幅は周期 π/ω で 2σg と σg/2 の間を往復する(スクイーズド状態の幅の振動)。エネルギーは t=0 の値2mω2⋅4σg2+8m⋅4σg2ℏ2=ℏω+16ℏω=1617ℏω である(数値の解とも一致を検算で確かめた)。
(6) ω=0 で σ の方程式は σ¨=ℏ2/(4m2σ3) となり、(7.1.18) そのものである。σ(0)=σ0、σ˙(0)=0 の解は(7.1.16) で、共通例題③の答えに戻る。X の方程式 mX¨=−mω2X は、X=⟨x^⟩ と読めば、Heisenberg 方程式x^˙=p^/m、p^˙=−mω2x^ の期待値と同じである。流体の側では、第3節の運動量の保存則を積分して量子応力の項が消えることがこの一致の理由で、調和ポテンシャルでは ⟨V′(x^)⟩=mω2⟨x^⟩ が中心だけで決まるので、中心の運動が幅の運動と切り離される。