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測定と量子平衡:Born の規則はどこから出るか

2026年10月17日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第4章 Bohm の軌道:案内方程式と、構成としての同値と解釈の境目
目次
  1. 測定は位置の測定に帰着する
  2. 実質的な収縮
  3. スピンの測定と文脈依存性
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第4章 §7.4.4 ★★★ 位置以外の観測量の測定を軌道で書き、Born の規則と射影の公理が要請 (B1)〜(B4) から出ることを示す

測定は位置の測定に帰着する

Bohm の力学で実際の値を持つのは配置だけで、運動量・スピン・エネルギーといったほかの観測量には、測定の前に決まった値が無い。それでも測定の結果は出る。測定装置の指針も粒子でできており、指針の位置が観測量の値を記録するからである。

測る系の座標を xx、指針の座標を yy とし、観測量 A^=∑aaP^a\hat A=\sum_aa\hat P_a を測る結合 H^int=λA^⊗p^y\hat H_{\mathrm{int}}=\lambda\hat A\otimes\hat p_y を時間 TT だけ入れる(von Neumann の測定の模型)。初めの状態が ψ(x)χ(y)\psi(x)\chi(y)(χ\chi は幅の狭い指針の波束)なら、結合のあとの全体の波動関数は

Ψ(x,y)=∑aca ϕa(x) χ(y−λaT),caϕa=P^aψ(7.4.11)\Psi(x,y)=\sum_ac_a\,\phi_a(x)\,\chi(y-\lambda aT),\qquad c_a\phi_a=\hat P_a\psi\tag{7.4.11}

になる。aa の値ごとに指針の波束が λaT\lambda aT だけずれ、ずれの差が指針の幅より大きければ、yy の方向で互いに重ならない枝に分かれる。

全体の配置 (X,Y)(X,Y) は等変性によって ∣Ψ∣2\lvert \Psi\rvert ^2 に従って散らばっているので、指針の位置 YY が枝 aa の台に入る確率は

Pr⁡(a)=∫dx∫枝 ady ∣Ψ(x,y)∣2=∣ca∣2∥ϕa∥2=⟨ψ∣P^aψ⟩(7.4.12)\Pr(a)=\int\mathrm{d} x\int_{\text{枝 }a}\mathrm{d} y\,\lvert \Psi(x,y)\rvert ^2=\lvert c_a\rvert ^2\lVert \phi_a\rVert ^2=\langle \psi | \hat P_a\psi \rangle\tag{7.4.12}

である(枝が重ならないので交差項が消える)。これが第1部第2章の Q3(Born の規則)で、Bohm の力学ではそれが要請でなく、(B4) と等変性から導かれる。

実質的な収縮

測定のあと、指針の位置 YY はどれか1つの枝の台の中にある。それを a∗a_* とすると、ほかの枝 a≠a∗a\neq a_* の波は YY の所で 00 なので、系の粒子の速度 vx=(ℏ/m)Im⁡(∇xΨ/Ψ)∣(X,Y)\bm{v}_x=(\hbar/m)\operatorname{Im}(\nabla_x\Psi/\Psi)|_{(X,Y)} には、YY を含む枝だけが寄与する。したがって測定のあとの系の運動は、波動関数を

ψcond(x)≔Ψ(x,Y)∝ϕa∗(x)(7.4.13)\psi_{\mathrm{cond}}(x)\coloneqq\Psi(x,Y)\propto\phi_{a_*}(x)\tag{7.4.13}

に置き換えたときの運動と同じになる。ψcond\psi_{\mathrm{cond}} を条件付き波動関数と呼ぶ。Q4(射影の公理)の ψ↦P^a∗ψ\psi\mapsto\hat P_{a_*}\psi は、波動関数を変える新しい法則でなく、「実際の指針の位置で切った断面」の言い換えとして出てくる。ほかの枝は消えずに残っているが(空の波)、配置空間で YY から遠く離れたままである限り、軌道に影響しない。枝どうしが再び重なると干渉が戻るが、マクロな指針では環境の多数の自由度が枝を区別し続けるので、重なりは実際上起きない(第4部の言葉ではデコヒーレンス)。この観点は D. Dürr, S. Goldstein, N. Zanghì, J. Stat. Phys. 67, 843 (1992) が体系化し、そこでは系の配置について ∣ψcond∣2\lvert \psi_{\mathrm{cond}}\rvert ^2 より細かい知識は原理的に得られないこと(彼らの言う絶対的な不確かさ)も示された。

スピンの測定と文脈依存性

スピン 12\tfrac12 の粒子では、波動関数は2成分 ψs(r)\psi_s(\bm{r})(s=↑,↓s=\uparrow,\downarrow)を持ち、案内方程式の速度は成分の和を取った

v=ℏm Im⁡∑sψs∗∇ψs∑s∣ψs∣2(7.4.14)\bm{v}=\frac{\hbar}{m}\,\frac{\operatorname{Im}\sum_s\psi_s^*\nabla\psi_s}{\sum_s\lvert \psi_s\rvert ^2}\tag{7.4.14}

である。スピンには実際の値が無く、位置だけが値を持つ。Stern–Gerlach の装置は、上向きの成分を上へ、下向きの成分を下へ蹴る磁場の勾配で、スピンの測定を「粒子が上と下のどちらへ出たか」という位置の測定に変える。

1次元(zz 方向)に話を限る。状態 cos⁡(θ/2)∣↑⟩+sin⁡(θ/2)∣↓⟩\cos(\theta/2)| \uparrow \rangle +\sin(\theta/2)| \downarrow \rangle、位置の部分が z=0z=0 に中心を持つ対称なガウス分布だとする。勾配で2つの成分が上と下へ分かれて進むと、軌道は交わらないので、粒子の上下の順番は保たれる。等変性から上へ出る粒子の割合は cos⁡2(θ/2)\cos^2(\theta/2) なので、上へ出るのは初めの位置が境目 z∗z_* より上にあった粒子で、z∗z_* は ∫z∗∞∣ψ(z,0)∣2dz=cos⁡2(θ/2)\int_{z_*}^\infty\lvert \psi(z,0)\rvert ^2\mathrm{d} z=\cos^2(\theta/2) で決まる。勾配の向きを逆にした装置では、上へ出る(記録は ↓{\downarrow})粒子の割合が sin⁡2(θ/2)\sin^2(\theta/2) に変わり、境目も変わる。同じ初めの位置の粒子が、装置の向きによって「↑{\uparrow}」とも「↓{\downarrow}」とも記録される。

例題 7.4.4 Stern–Gerlach の向きを逆にすると記録が変わる粒子 ★★★

オリジナルθ=π/3\theta=\pi/3 の状態 cos⁡(π/6)∣↑⟩+sin⁡(π/6)∣↓⟩\cos(\pi/6)| \uparrow \rangle +\sin(\pi/6)| \downarrow \rangle の粒子が、z=0z=0 を中心とする幅 σ\sigma のガウス分布で Stern–Gerlach の装置に入る。

  1. 普通の向き(↑{\uparrow} を上へ蹴る)の装置で、上へ出る粒子の初めの位置の範囲を求めよ。
  2. 逆の向き(↑{\uparrow} を下へ蹴る)の装置で、上へ出る粒子の初めの位置の範囲を求めよ。
  3. 初めの位置 z0=−σ, 0, σz_0=-\sigma,\ 0,\ \sigma の粒子が、2つの装置でそれぞれ何と記録されるかを答え、「スピンの zz 成分は測る前から決まっている」と言えるかを論じよ。
解答

(1) 上へ出る割合は cos⁡2(π/6)=3/4\cos^2(\pi/6)=3/4。境目 z∗z_* は下側の割合が 1/41/4 になる点なので、標準正規分布の 25%25\% 点から z∗=−0.674σz_*=-0.674\sigma。上へ出るのは z0>−0.674σz_0>-0.674\sigma の粒子である。

(2) 上へ出る割合は sin⁡2(π/6)=1/4\sin^2(\pi/6)=1/4 で、境目は上側の割合が 1/41/4 の点 +0.674σ+0.674\sigma。上へ出るのは z0>0.674σz_0>0.674\sigma の粒子である。

(3) z0=−σz_0=-\sigma:普通の装置では下へ出て ↓{\downarrow}、逆の装置でも下へ出るが、そこは ↑{\uparrow} の出口なので ↑{\uparrow}。z0=0z_0=0:普通の装置で上へ出て ↑{\uparrow}、逆の装置で下へ出て ↑{\uparrow}。z0=σz_0=\sigma:普通で ↑{\uparrow}、逆の装置で上へ出て ↓{\downarrow}。(数値で軌道を積分して、行き先がこのとおりになることを確かめた。境目は軌道から求めても −0.65σ-0.65\sigma 付近になる。)同じ粒子の記録が装置の向きで変わるので、記録される値は粒子が前から持っていた性質ではなく、粒子の位置と装置の組み合わせで決まる。これが文脈依存性で、Kochen–Specker の定理(第9部第3章)が、量子力学を再現する隠れた変数の理論に要求する性質である。Bohm の力学は、位置だけに値を持たせ、ほかの観測量の値を文脈に任せることで、この定理と矛盾しない。

木下の勉強ステータス

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