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Doob の変換:Feynman–Kac の重みを過程の確率法則に移す

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第6章 経路積分との合流と限界:Feynman–Kac の公式と、Nelson の過程の多時刻の相関
目次
  1. 変換の定義
  2. 逆向き:過程からハミルトニアンを取り戻す
  3. 励起状態:節で区切られた領域ごとの Doob の変換
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第6章 §7.6.2 ★★★ 消える Brown 運動を、正の固有関数で重みを付け直すと消えない拡散過程になり、それが Nelson の固有状態の過程である。経路積分と Nelson の過程の橋の本体

変換の定義

Feynman–Kac の公式の右辺の期待値は、粒子が消えていくので確率測度の期待値ではない(f=1f=1 でも 11 にならない)。正の基底状態 ψ0\psi_0 を使うと、これを消えない確率過程に直せる。J. L. Doob が条件付きの Brown 運動の研究で導入した変換で、hh 変換とも呼ぶ(J. L. Doob (1957), Bulletin de la Société Mathématique de France 85, 431–458)。

命題 7.6.2(Doob の変換 ★★★)

H^ψ0=E0ψ0\hat H\psi_0=E_0\psi_0、ψ0>0\psi_0>0 とし、xx を出た Brown 運動の経路の汎関数

Mτ=ψ0(Wτ)ψ0(x)exp⁡(E0τℏ−1ℏ∫0τV(Ws) ds)(7.6.5)M_\tau=\frac{\psi_0(W_\tau)}{\psi_0(x)}\exp\Bigl(\frac{E_0\tau}{\hbar}-\frac1\hbar\int_0^\tau V(W_s)\,\mathrm{d} s\Bigr)\tag{7.6.5}

を考える。このとき Ex[Mτ]=1\mathrm E_x[M_\tau]=1 で、MτM_\tau を重みとして付け直した経路の測度のもとで WW は Markov 過程になり、その推移密度は

pτ(x→y)=ψ0(y)ψ0(x) eE0τ/ℏ⟨y∣e−H^τ/ℏ∣x⟩,(7.6.6)p_\tau(x\to y)=\frac{\psi_0(y)}{\psi_0(x)}\,\mathrm{e}^{E_0\tau/\hbar}\langle y | \mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} | x \rangle ,\tag{7.6.6}

生成作用素は第7部第5章の Lf=νf′′+2ν(ψ0′/ψ0)f′\mathcal Lf=\nu f''+2\nu(\psi_0'/\psi_0)f' である。すなわち付け直した過程は、Nelson の基底状態の過程そのものである。

証明

(7.6.3) に f=ψ0f=\psi_0 を入れると、左辺は e−H^τ/ℏψ0=e−E0τ/ℏψ0\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar}\psi_0=\mathrm{e}^{-E_0\tau/\hbar}\psi_0 なので、Ex[ψ0(Wτ)e−∫Vds/ℏ]=e−E0τ/ℏψ0(x)\mathrm E_x[\psi_0(W_\tau)\mathrm{e}^{-\int V\mathrm{d} s/\hbar}]=\mathrm{e}^{-E_0\tau/\hbar}\psi_0(x)。両辺を e−E0τ/ℏψ0(x)\mathrm{e}^{-E_0\tau/\hbar}\psi_0(x) で割れば Ex[Mτ]=1\mathrm E_x[M_\tau]=1 である。推移密度は、終点を yy に固定した重み付きの期待値で、定理 7.6.1 の核の形を使えば (7.6.6) になる。Chapman–Kolmogorov の式 ∫pτ1(x→z)pτ2(z→y)dz=pτ1+τ2(x→y)\int p_{\tau_1}(x\to z)p_{\tau_2}(z\to y)\mathrm{d} z=p_{\tau_1+\tau_2}(x\to y) は、真ん中の ψ0(z)\psi_0(z) が約分され、e−H^τ/ℏ\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} の合成則に帰着するので成り立つ。これで Markov 過程の推移の族になる。生成作用素は τ→0\tau\to0 での ∂τ\partial_\tau で、∂τpτ=ψ0(y)ψ0(x)−1eE0τ/ℏ(E0−H^)/ℏ\partial_\tau p_\tau=\psi_0(y)\psi_0(x)^{-1}\mathrm{e}^{E_0\tau/\hbar}(E_0-\hat H)/\hbar を ff に当てるとLf=−ℏ−1ψ0−1(H^−E0)(ψ0f)\mathcal Lf=-\hbar^{-1}\psi_0^{-1}(\hat H-E_0)(\psi_0f) である。第7部第5章の基底状態の変換の命題(第7部第5章)により、これは νf′′+2ν(ψ0′/ψ0)f′\nu f''+2\nu(\psi_0'/\psi_0)f' に等しい。

ドリフトの項 2νψ0′/ψ0=ν∂xln⁡ψ022\nu\psi_0'/\psi_0=\nu\partial_x\ln\psi_0^2 は第7部第5章の浸透速度 uu で、基底状態では流れの速度が v=0v=0 なので前向きのドリフト b=v+ub=v+u に一致する。Feynman–Kac の公式では「ポテンシャルの高い所で消える」という形で入っていたポテンシャルが、Doob の変換のあとでは「ψ0\psi_0 の大きい方へ引くドリフト」という形に移る。消える割合 (V−E0)/ℏ(V-E_0)/\hbar とドリフトの間の関係は、ψ0\psi_0 の満たす Schrödinger 方程式 νψ0′′=(V−E0)ψ0/ℏ\nu\psi_0''=(V-E_0)\psi_0/\hbar を通して保たれている。

例題 7.6.2 Mehler 核から Ornstein–Uhlenbeck 過程の推移密度を作る ★★

オリジナル共通例題①の基底状態 ψ0∝e−x2/(4σg2)\psi_0\propto\mathrm{e}^{-x^2/(4\sigma_{\mathrm g}^2)}、E0=ℏω/2E_0=\hbar\omega/2 について、(7.6.6) に例題 7.6.1 の Euclid の Mehler 核を入れ、pτ(x→y)p_\tau(x\to y) が平均 xe−ωτx\mathrm{e}^{-\omega\tau}・分散 σg2(1−e−2ωτ)\sigma_{\mathrm g}^2(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau}) のガウス分布の密度であることを示せ。この過程のドリフトを読み取れ。

解答

c=cosh⁡ωτc=\cosh\omega\tau、s=sinh⁡ωτs=\sinh\omega\tau、κ=mω/ℏ=1/(2σg2)\kappa=m\omega/\hbar=1/(2\sigma_{\mathrm g}^2) と書く。(7.6.6) の指数は

−κ2(y2−x2)+ωτ2−κ2s[(x2+y2)c−2xy]-\frac\kappa2\bigl(y^2-x^2\bigr)+\frac{\omega\tau}{2}-\frac{\kappa}{2s}\bigl[(x^2+y^2)c-2xy\bigr]

で、第1項が ψ0(y)/ψ0(x)\psi_0(y)/\psi_0(x)、第2項が eE0τ/ℏ\mathrm{e}^{E_0\tau/\hbar}、第3項が Mehler 核の指数である。yy の2次の係数は −κ2(1+c/s)=−κ2s+cs=−κ2eωτs-\frac\kappa2(1+c/s)=-\frac{\kappa}{2}\frac{s+c}{s}=-\frac{\kappa}{2}\frac{\mathrm{e}^{\omega\tau}}{s}、xyxy の係数は κ/s\kappa/s、x2x^2 の係数は κ2(1−c/s)=−κ2e−ωτs\frac\kappa2(1-c/s)=-\frac{\kappa}{2}\frac{\mathrm{e}^{-\omega\tau}}{s} である。2s=eωτ(1−e−2ωτ)2s=\mathrm{e}^{\omega\tau}(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau}) を使うと3つの項は

−κ eωτ2s(y−xe−ωτ)2=−(y−xe−ωτ)22σg2(1−e−2ωτ)-\frac{\kappa\,\mathrm{e}^{\omega\tau}}{2s}\bigl(y-x\mathrm{e}^{-\omega\tau}\bigr)^2=-\frac{(y-x\mathrm{e}^{-\omega\tau})^2}{2\sigma_{\mathrm g}^2(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau})}

にまとまる(κeωτ/s=2κ/(1−e−2ωτ)\kappa\mathrm{e}^{\omega\tau}/s=2\kappa/(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau}))。前因子は κ/(πs) eωτ/2=2κeωτ/(2πs)=[2πσg2(1−e−2ωτ)]−1/2\sqrt{\kappa/(\pi s)}\,\mathrm{e}^{\omega\tau/2}=\sqrt{2\kappa\mathrm{e}^{\omega\tau}/(2\pi s)}=[2\pi\sigma_{\mathrm g}^2(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau})]^{-1/2} で、ちょうどガウス分布の規格化になる。したがって pτp_\tau は平均 xe−ωτx\mathrm{e}^{-\omega\tau}・分散 σg2(1−e−2ωτ)\sigma_{\mathrm g}^2(1-\mathrm{e}^{-2\omega\tau}) のガウス分布である。

平均の短時間の変化は x(e−ωτ−1)≈−ωxτx(\mathrm{e}^{-\omega\tau}-1)\approx-\omega x\tau なのでドリフトは −ωx-\omega x、分散の増え方は σg2⋅2ωτ=(ℏ/m)τ=2ντ\sigma_{\mathrm g}^2\cdot2\omega\tau=(\hbar/m)\tau=2\nu\tau で、第7部第5章の Ornstein–Uhlenbeck 過程 dX=−ωXdt+dW\mathrm{d} X=-\omega X\mathrm{d} t+\mathrm{d} W に一致する。ψ0\psi_0 による付け直しで、Mehler 核の中の量子力学の情報がドリフト −ωx-\omega x に移っている。

逆向き:過程からハミルトニアンを取り戻す

(7.6.6) は逆にも読める。基底状態の Nelson の過程の推移密度 pτp_\tau と定常分布 ρ0=ψ02\rho_0=\psi_0^2 が分かれば、

⟨y∣e−H^τ/ℏ∣x⟩=e−E0τ/ℏρ0(x)ρ0(y)  pτ(x→y)(7.6.7)\langle y | \mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} | x \rangle =\mathrm{e}^{-E_0\tau/\hbar}\sqrt{\frac{\rho_0(x)}{\rho_0(y)}}\;p_\tau(x\to y)\tag{7.6.7}

で虚時間の核が決まり、τ\tau で微分して H^\hat H が(定数 E0E_0 のずれを除いて)決まる。E0E_0 は ψ0\psi_0 の満たす方程式から決まるので、ずれも残らない。したがって、正の基底状態を持つ系では、基底状態の Nelson の過程と、虚時間の経路積分と、基準のハミルトニアンは、互いに作り直せる。第6節の橋はこの事実にもとづく。

励起状態:節で区切られた領域ごとの Doob の変換

励起状態 ψn\psi_n は符号を変えるので、そのまま (7.6.5) に使えない。ψn\psi_n が 00 にならない連結な領域(節の領域)DD ごとに考える。DD の上で ψn\psi_n は符号を変えず、DD の境界で 00 になる。DD の境界で 00 になる条件(Dirichlet 条件)を課したハミルトニアン H^D\hat H_D の固有関数のうち、符号を変えないものは最も低い固有値のものだけなので、ψn∣D\psi_n|_D は H^D\hat H_D の基底状態で、固有値はもとの EnE_n である。H^D\hat H_D の Feynman–Kac の公式は、(7.6.3) の Brown 運動を「DD の境界に触れた瞬間に消す」ことで得られる。それを ψn∣D\psi_n|_D で Doob 変換すると、DD の中で消えない過程になり、ドリフトは 2ν∇ψn/ψn2\nu\nabla\psi_n/\psi_n で、第7部第5章の固有状態の Nelson の過程に一致する。境界の近くで ψn\psi_n は境界までの距離に比例して 00 になるので、ドリフトは境界から押し返す 2ν/(距離)2\nu/(\text{距離}) の形になり、過程は DD の外へ出られない。第7部第5章では節を越えないことを Bessel 過程との比較で示したが、Doob の変換の言葉では「Dirichlet 条件で消える Brown 運動を、消えなかった経路だけに条件付けたもの」と読める。

木下の勉強ステータス

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