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Feynman–Kac の公式:虚時間の時間発展を Brown 運動の期待値で書く

2026年10月17日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第6章 経路積分との合流と限界:Feynman–Kac の公式と、Nelson の過程の多時刻の相関
目次
  1. 自由な部分は Brown 運動の推移
  2. 公式と証明
  3. 基底エネルギーを確率で読む
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第6章 §7.6.1 ★★★ 経路積分(第3部)と確率過程(第7部)の合流点。虚時間の伝播は「ポテンシャルの高い所で消える Brown 運動」の期待値である

第7部第5章では、粒子の位置を拡散係数 ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m) の Markov の拡散過程に置き、平均の加速度に Newton の法則を課す Nelson の構成から、第7部第1章の Madelung 方程式を導いた(第7部第5章)。同じ章の最後で、基底状態の過程の推移が虚時間の時間発展を ψ0\psi_0 で変換したものに等しいこと(基底状態の変換)を示し、それを一般の場合へ広げる仕事と、多時刻の相関が基準と食い違う問題とを、この章へ回した。第3部第6章も、虚時間の経路積分が Wiener 測度の上の期待値として厳密に定義できること(Feynman–Kac の公式)を述べ、その確率過程の言葉での読み方をこの章へ送っている(第3部第6章)。

部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は第7部の「経路積分との合流」と「限界」を受け持つ。第1節で Feynman–Kac の公式を Brown 運動の期待値として述べ、Trotter の積公式と Markov 性から証明する。第2節で、Feynman–Kac の重みを確率過程の確率法則に移す Doob の変換を置き、Nelson の基底状態の過程と励起状態の過程がこの変換で得られること、逆に過程からハミルトニアンを取り戻せることを示す。第3節が第7部第5章から回ってきた本題で、Nelson の過程の2時刻の相関(共通例題①の基底状態で σg2e−ω∣t∣\sigma_{\mathrm g}^2\mathrm{e}^{-\omega\lvert t\rvert })が基準の相関(実部が σg2cos⁡ωt\sigma_{\mathrm g}^2\cos\omega t)と一致しないことを、Doob の定理(定常な Gauss の Markov 過程の相関は指数関数に限る)で構造から説明し、励起状態と熱平衡でも比べる。第4節では、位置の測定を途中に入れると、Nelson の過程の予言が基準と一致することを、分解能のある測定の模型で計算する。第5節で残りの限界(多粒子の過程が配置空間に住むこと・スピン・節の特異性)を整理し、第6節の橋で、各構成の2時刻の相関を1つの表に並べて、「Nelson の実時間は基準の虚時間である」という対応を両向きに示す。

記号は第7部第5章に揃える。Brown 運動 WW は ⟨dW2⟩=2ν dt\langle \mathrm{d} W^2 \rangle =2\nu\,\mathrm{d} t、ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m) を満たし(第3部第6章の拡散係数 D=ℏ/(2m)D=\hbar/(2m) と同じもの)、確率過程の期待値は立体の E\mathrm E で書く。σg2=ℏ/(2mω)\sigma_{\mathrm g}^2=\hbar/(2m\omega) は調和振動子の基底状態の位置の分散である。

自由な部分は Brown 運動の推移

1次元のハミルトニアン H^=T^+V(x^)\hat H=\hat T+V(\hat x)、T^=p^2/(2m)\hat T=\hat p^2/(2m) を考える。まず自由な部分の虚時間の時間発展 e−T^τ/ℏ\mathrm{e}^{-\hat T\tau/\hbar} を確率過程の言葉で読む。位置表示で T^/ℏ=−(ℏ/2m)∂x2=−ν∂x2\hat T/\hbar=-(\hbar/2m)\partial_x^2=-\nu\partial_x^2 なので、fτ=e−T^τ/ℏff_\tau=\mathrm{e}^{-\hat T\tau/\hbar}f は熱方程式 ∂τfτ=ν∂x2fτ\partial_\tau f_\tau=\nu\partial_x^2f_\tau の解で、その核は

⟨x∣e−T^τ/ℏ∣x′⟩=14πντexp⁡(−(x−x′)24ντ)(7.6.1)\langle x | \mathrm{e}^{-\hat T\tau/\hbar} | x' \rangle =\frac{1}{\sqrt{4\pi\nu\tau}}\exp\Bigl(-\frac{(x-x')^2}{4\nu\tau}\Bigr)\tag{7.6.1}

である(第3部第6章の熱核と同じもの)。右辺は、xx を出た Brown 運動 WW(⟨dW2⟩=2ν dt\langle \mathrm{d} W^2 \rangle =2\nu\,\mathrm{d} t)の時刻 τ\tau での位置の分布、すなわち平均 xx・分散 2ντ2\nu\tau のガウス分布の密度に等しい。核が xx と x′x' について対称なので、どちらを出発点と読んでもよく、

(e−T^τ/ℏf)(x)=Ex[f(Wτ)](7.6.2)\bigl(\mathrm{e}^{-\hat T\tau/\hbar}f\bigr)(x)=\mathrm E_x\bigl[f(W_\tau)\bigr]\tag{7.6.2}

と書ける。ここで Ex\mathrm E_x は W0=xW_0=x から出た Brown 運動についての期待値である。量子力学の運動エネルギーは、虚時間では拡散の生成作用素になる。第7部の拡散係数 ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m) は Nelson の要請として置いたものだったが、ここでは T^\hat T から自動的に出てくる。

公式と証明

定理 7.6.1(Feynman–Kac の公式 ★★★)

VV が連続で下に有界とする。有界な連続関数 ff について

(e−H^τ/ℏf)(x)=Ex[exp⁡(−1ℏ∫0τV(Ws) ds)f(Wτ)](7.6.3)\bigl(\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar}f\bigr)(x)=\mathrm E_x\Bigl[\exp\Bigl(-\frac1\hbar\int_0^\tau V(W_s)\,\mathrm{d} s\Bigr)f(W_\tau)\Bigr]\tag{7.6.3}

が成り立つ。積分核で書くと、x′x' を出て時刻 τ\tau に xx へ着く Brown 運動(Brown 橋)の期待値 Ex′→x\mathrm E_{x'\to x} を使って⟨x∣e−H^τ/ℏ∣x′⟩=⟨x∣e−T^τ/ℏ∣x′⟩ Ex′→x[exp⁡(−1ℏ∫0τV(Ws)ds)]\langle x | \mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} | x' \rangle =\langle x | \mathrm{e}^{-\hat T\tau/\hbar} | x' \rangle \,\mathrm E_{x'\to x}\bigl[\exp(-\frac1\hbar\int_0^\tau V(W_s)\mathrm{d} s)\bigr] となり、τ=βℏ\tau=\beta\hbar と置けば第3部第6章の式(第3部第6章)に一致する。

証明

ϵ=τ/P\epsilon=\tau/P と置く。下に有界な VV と T^≥0\hat T\ge0 について Trotter の積公式(第3部第6章で縮小半群の形で使ったもの)e−H^τ/ℏf=lim⁡P→∞(e−T^ϵ/ℏe−Vϵ/ℏ)Pf\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar}f=\lim_{P\to\infty}\bigl(\mathrm{e}^{-\hat T\epsilon/\hbar}\mathrm{e}^{-V\epsilon/\hbar}\bigr)^Pf が成り立つ。右辺の PP 個の積を、内側から順に (7.6.2) で書き直す。最も内側は e−T^ϵ/ℏ(e−Vϵ/ℏf)(y)=Ey[e−ϵV(Wϵ)/ℏf(Wϵ)]\mathrm{e}^{-\hat T\epsilon/\hbar}(\mathrm{e}^{-V\epsilon/\hbar}f)(y)=\mathrm E_y[\mathrm{e}^{-\epsilon V(W_\epsilon)/\hbar}f(W_\epsilon)] である。次の段では、時刻 ϵ\epsilon の位置 WϵW_\epsilon から出た Brown 運動がさらに ϵ\epsilon だけ進むと考える。Brown 運動の増分は過去と独立(Markov 性)なので、条件付き期待値を重ねたものは1本の Brown 運動の期待値にまとまり、

(e−T^ϵ/ℏe−Vϵ/ℏ)Pf(x)=Ex[exp⁡(−ϵℏ∑k=1PV(Wkϵ))f(Wτ)]\bigl(\mathrm{e}^{-\hat T\epsilon/\hbar}\mathrm{e}^{-V\epsilon/\hbar}\bigr)^Pf(x)=\mathrm E_x\Bigl[\exp\Bigl(-\frac\epsilon\hbar\sum_{k=1}^{P}V(W_{k\epsilon})\Bigr)f(W_\tau)\Bigr]

となる。Brown 運動の経路は連続なので、P→∞P\to\infty で指数の中の和は Riemann 和として ∫0τV(Ws)ds\int_0^\tau V(W_s)\mathrm{d} s に収束する。被積分関数は V≥−cV\ge-c からecτ/ℏsup⁡∣f∣\mathrm{e}^{c\tau/\hbar}\sup\lvert f\rvert で押さえられるので、有界収束定理で極限と期待値を入れ替えてよい。核の形は、終点 WτW_\tau の分布 (7.6.1) で条件を付けて書き直したものである。

右辺の期待値の中には、もう振動する位相 eiS/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} は無い。運動項 m2x˙2\frac m2\dot x^2 は Brown 運動の測度の中に入り、残るのはポテンシャルの重みだけである。重み e−∫Vds/ℏ\mathrm{e}^{-\int V\mathrm{d} s/\hbar} は「ポテンシャル VV の高い所では、単位時間あたり V/ℏV/\hbar の割合で粒子が消える」と読める(V<0V<0 の所では増える)。虚時間の時間発展は、消える割合 V/ℏV/\hbar を持つ Brown 運動の、生き残った分の期待値である。第3部第7章が述べたとおり、Coulomb ポテンシャルのように下に有界でない VV についても、Kato 類という条件のもとで同じ式が成り立つ(第3部第7章)。

基底エネルギーを確率で読む

f=1f=1 と置き、基底状態 ψ0\psi_0(エネルギー E0E_0、ψ0>0\psi_0>0)がスペクトルの底で孤立しているとする。e−H^τ/ℏ1\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar}1 をスペクトル分解すると、τ→∞\tau\to\infty で残るのは e−E0τ/ℏψ0(x)⟨ψ0∣1⟩\mathrm{e}^{-E_0\tau/\hbar}\psi_0(x)\langle \psi_0 | 1 \rangle の項である(⟨ψ0∣1⟩=∫ψ0dx\langle \psi_0 | 1 \rangle =\int\psi_0\mathrm{d} x が有限で正のとき)。したがって

E0=−lim⁡τ→∞ℏτln⁡Ex[exp⁡(−1ℏ∫0τV(Ws) ds)](7.6.4)E_0=-\lim_{\tau\to\infty}\frac\hbar\tau\ln\mathrm E_x\Bigl[\exp\Bigl(-\frac1\hbar\int_0^\tau V(W_s)\,\mathrm{d} s\Bigr)\Bigr]\tag{7.6.4}

が成り立つ。左辺は基準のスペクトルの量、右辺は Brown 運動の生き残りの確率の減り方で、どちらも同じ数を与える。拡散モンテカルロ法などの数値計算はこの式を出発点にしている。

例題 7.6.1 調和振動子の零点エネルギーを Brown 運動から出す ★★★

オリジナルV=mω2x2/2V=m\omega^2x^2/2 とし、原点から出た Brown 運動 WW(⟨dW2⟩=2ν dt\langle \mathrm{d} W^2 \rangle =2\nu\,\mathrm{d} t)について F(τ)=E0[exp⁡(−1ℏ∫0τV(Ws)ds)]F(\tau)=\mathrm E_0[\exp(-\frac1\hbar\int_0^\tau V(W_s)\mathrm{d} s)] を考える。

  1. W=2ν BW=\sqrt{2\nu}\,B(BB は標準の Brown 運動)と書き直し、指数の係数が ω2/2\omega^2/2 になることを示せ。
  2. 定理 7.6.1 の核の形を使い、Euclid の Mehler 核⟨x∣e−H^τ/ℏ∣x′⟩=mω2πℏsinh⁡ωτexp⁡{−mω2ℏsinh⁡ωτ[(x2+x′2)cosh⁡ωτ−2xx′]}\langle x | \mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} | x' \rangle =\sqrt{\frac{m\omega}{2\pi\hbar\sinh\omega\tau}}\exp\bigl\{-\frac{m\omega}{2\hbar\sinh\omega\tau}[(x^2+x'^2)\cosh\omega\tau-2xx']\bigr\}(第3部第3章の Mehler 核に t=−iτt=-\mathrm{i}\tau を代入したもの)から F(τ)=(cosh⁡ωτ)−1/2F(\tau)=(\cosh\omega\tau)^{-1/2} を導け。
  3. (7.6.4) から E0E_0 を求めよ。
  4. ωτ=3\omega\tau=3 のときの FF の値を求め、刻み 400・2万本の経路の Monte Carlo で求めた値と比べよ。
解答

(1) V(W)/ℏ=mω2⋅2νB2/(2ℏ)=mω22ℏ⋅ℏmB2=ω22B2V(W)/\hbar=m\omega^2\cdot2\nu B^2/(2\hbar)=\frac{m\omega^2}{2\hbar}\cdot\frac{\hbar}{m}B^2=\frac{\omega^2}{2}B^2 なので、F=E0[exp⁡(−ω22∫0τBs2ds)]F=\mathrm E_0[\exp(-\frac{\omega^2}{2}\int_0^\tau B_s^2\mathrm{d} s)] である。係数に ℏ\hbar も mm も残らない。ℏ\hbar と mm は Brown 運動の拡散係数 ν\nu と、ポテンシャルの重み V/ℏV/\hbar の2か所に入っていて、互いに打ち消し合う。

(2) f=1f=1 とした (7.6.3) は核を終点 xx で積分したもの F(τ)=∫dx ⟨x∣e−H^τ/ℏ∣0⟩F(\tau)=\int\mathrm{d} x\,\langle x | \mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} | 0 \rangle に等しい。x′=0x'=0 で指数は −mωcosh⁡ωτ2ℏsinh⁡ωτx2-\frac{m\omega\cosh\omega\tau}{2\hbar\sinh\omega\tau}x^2 なので、Gauss 積分から

F(τ)=mω2πℏsinh⁡ωτ2πℏsinh⁡ωτmωcosh⁡ωτ=1cosh⁡ωτ.F(\tau)=\sqrt{\frac{m\omega}{2\pi\hbar\sinh\omega\tau}}\sqrt{\frac{2\pi\hbar\sinh\omega\tau}{m\omega\cosh\omega\tau}}=\frac{1}{\sqrt{\cosh\omega\tau}} .

(3) τ→∞\tau\to\infty で cosh⁡ωτ≈eωτ/2\cosh\omega\tau\approx\mathrm{e}^{\omega\tau}/2 なので ln⁡F≈−ωτ/2+12ln⁡2\ln F\approx-\omega\tau/2+\frac12\ln2。E0=−lim⁡(ℏ/τ)ln⁡F=ℏω/2E_0=-\lim(\hbar/\tau)\ln F=\hbar\omega/2 で、共通例題①の零点エネルギーに一致する。Brown 運動が原点の近くに長くとどまる経路ほど重みが大きく、生き残りの確率は e−ωτ/2\mathrm{e}^{-\omega\tau/2} の速さで減る。その減り方が零点エネルギーである。

(4) (cosh⁡3)−1/2=0.3152(\cosh3)^{-1/2}=0.3152。標準の Brown 運動を刻み 3/4003/400 で 2万本作り、exp⁡(−12∑B2Δs)\exp(-\frac12\sum B^2\Delta s) を平均すると 0.3140.314 になった(検算のスクリプトに乱数の種を固定して入れた)。差は 0.4% で、刻みの粗さと標本の揺らぎの大きさに収まっている。振動する位相の和である実時間の経路積分は、このように素朴に乱数で平均することができない。

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