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Peres–Mermin の正方形

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9部 第3章 Kochen–Specker の定理と文脈依存性
目次
  1. 9個の物理量
  2. 矛盾
  3. 測れる形の不等式
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第9部 第3章 §9.3.3 ★★★ 2量子ビットの9個の物理量だけで、どの状態でも非文脈的な割り当てが不可能なことを示す、最も短い証明

9個の物理量

4次元の空間 C2⊗C2\mathbb{C}^2\otimes\mathbb{C}^2 で、Pauli 行列から作った次の9個の物理量を 3×33\times3 に並べる(A. Peres (1990), Physics Letters A 151, 107–108;N. D. Mermin (1990), Physical Review Letters 65, 3373–3376)。

σx⊗1^1^⊗σxσx⊗σx1^⊗σyσy⊗1^σy⊗σyσx⊗σyσy⊗σxσz⊗σz(9.3.5)\begin{array}{ccc} \sigma_x\otimes\hat 1 & \hat 1\otimes\sigma_x & \sigma_x\otimes\sigma_x\\ \hat 1\otimes\sigma_y & \sigma_y\otimes\hat 1 & \sigma_y\otimes\sigma_y\\ \sigma_x\otimes\sigma_y & \sigma_y\otimes\sigma_x & \sigma_z\otimes\sigma_z \end{array}\tag{9.3.5}

各物理量は2乗が 1^\hat 1 なので、固有値は ±1\pm1 である。この並びには次の3つの性質がある。

第一に、同じ行の3つ、同じ列の3つは互いに交換する。異なる量子ビットに作用する因子は自動的に交換し、同じ量子ビットに作用する Pauli 行列どうしは反交換するが、それが2か所で起きると符号が打ち消し合うからである。例えば第3行の σx⊗σy\sigma_x\otimes\sigma_y と σy⊗σx\sigma_y\otimes\sigma_x は、1番目の量子ビットで σxσy=−σyσx\sigma_x\sigma_y=-\sigma_y\sigma_x、2番目で σyσx=−σxσy\sigma_y\sigma_x=-\sigma_x\sigma_y と2回符号が変わるので交換する。したがって各行・各列は1つの文脈(同時に測れる組)になる。

第二に、各行の3つの積は +1^+\hat 1 である。第1行は (σx⊗1^)(1^⊗σx)(σx⊗σx)=σx2⊗σx2=1^(\sigma_x\otimes\hat 1)(\hat 1\otimes\sigma_x)(\sigma_x\otimes\sigma_x)=\sigma_x^2\otimes\sigma_x^2=\hat 1。第2行も同じ形。第3行は、σxσy=iσz\sigma_x\sigma_y=\mathrm{i}\sigma_z、σyσx=−iσz\sigma_y\sigma_x=-\mathrm{i}\sigma_z を使って

(σx⊗σy)(σy⊗σx)=(σxσy)⊗(σyσx)=(iσz)⊗(−iσz)=σz⊗σz(\sigma_x\otimes\sigma_y)(\sigma_y\otimes\sigma_x)=(\sigma_x\sigma_y)\otimes(\sigma_y\sigma_x)=(\mathrm{i}\sigma_z)\otimes(-\mathrm{i}\sigma_z)=\sigma_z\otimes\sigma_z

で、これに σz⊗σz\sigma_z\otimes\sigma_z を掛けて 1^\hat 1 になる。

第三に、列の積は第1列・第2列が +1^+\hat 1、第3列だけが −1^-\hat 1 である。第1列は (σx⊗1^)(1^⊗σy)(σx⊗σy)=σx2⊗σy2=1^(\sigma_x\otimes\hat 1)(\hat 1\otimes\sigma_y)(\sigma_x\otimes\sigma_y)=\sigma_x^2\otimes\sigma_y^2=\hat 1、第2列も同様。第3列は

(σx⊗σx)(σy⊗σy)(σz⊗σz)=(σxσyσz)⊗(σxσyσz)=(i1^)⊗(i1^)=−1^(9.3.6)(\sigma_x\otimes\sigma_x)(\sigma_y\otimes\sigma_y)(\sigma_z\otimes\sigma_z)=(\sigma_x\sigma_y\sigma_z)\otimes(\sigma_x\sigma_y\sigma_z)=(\mathrm{i}\hat 1)\otimes(\mathrm{i}\hat 1)=-\hat 1\tag{9.3.6}

である(σxσyσz=iσzσz=i1^\sigma_x\sigma_y\sigma_z=\mathrm{i}\sigma_z\sigma_z=\mathrm{i}\hat 1)。

図

図 9.3.2 Peres–Mermin の正方形。各行・各列の3つは互いに交換し、同時に測ることができる。量子力学では行の積がすべて +1+1、列の積が +1,+1,−1+1,+1,-1 になる。9個の値を前もって ±1\pm1 に決めておくと、9個の積を行ごとに数えれば +1+1、列ごとに数えれば −1-1 になって矛盾する。

矛盾

定理 9.3.5(Peres–Mermin ★★★)

(9.3.5) の9個の物理量には、補題 9.3.2 の積の規則を満たす値の割り当ては存在しない。

証明

値の割り当て vv があったとし、9個の値を vij∈{±1}v_{ij}\in\{\pm1\}(ii 行 jj 列)と書く。各行は交換する3つなので積の規則から vi1vi2vi3=v(行の積)=v(1^)=+1v_{i1}v_{i2}v_{i3}=v(\text{行の積})=v(\hat 1)=+1。3行を掛けると ∏i,jvij=+1\prod_{i,j}v_{ij}=+1。各列も交換する3つなので、v1jv2jv3j=+1,+1,−1v_{1j}v_{2j}v_{3j}=+1,+1,-1(第3列は (9.3.6) から v(−1^)=−1v(-\hat 1)=-1)。3列を掛けると ∏i,jvij=−1\prod_{i,j}v_{ij}=-1。同じ9個の積が +1+1 と −1-1 になるので矛盾する。

この証明は状態をまったく使っていない。どの状態でも、測る前から9個の値が非文脈的に決まっていることはありえない。このような証明を状態によらない証明と呼ぶ。非文脈性が入っている場所は、各物理量が2つの文脈(1つの行と1つの列)に属するのに、同じ値 vijv_{ij} を両方で使った所である。たとえば σx⊗σx\sigma_x\otimes\sigma_x は第1行の文脈 {σx⊗1^,1^⊗σx}\{\sigma_x\otimes\hat 1,\hat 1\otimes\sigma_x\} と、第3列の文脈 {σy⊗σy,σz⊗σz}\{\sigma_y\otimes\sigma_y,\sigma_z\otimes\sigma_z\} の両方で測ることができる。

測れる形の不等式

実験で積の規則を確かめるには、各行・各列の3つを同時に測り、測定値の積の平均をとればよい。行の積の平均を ⟨Ri⟩\langle R_i \rangle、列の積の平均を ⟨Cj⟩\langle C_j \rangle と書き、

χ=⟨R1⟩+⟨R2⟩+⟨R3⟩+⟨C1⟩+⟨C2⟩−⟨C3⟩(9.3.7)\chi=\langle R_1 \rangle +\langle R_2 \rangle +\langle R_3 \rangle +\langle C_1 \rangle +\langle C_2 \rangle -\langle C_3 \rangle\tag{9.3.7}

を考える(A. Cabello (2008), Physical Review Letters 101, 210401)。非文脈的な模型では、λ\lambda ごとに9個の値 vijv_{ij} が決まり、6つの項 R1,R2,R3,C1,C2,−C3R_1,R_2,R_3,C_1,C_2,-C_3 はそれぞれ ±1\pm1 である。6つの項の積は ∏ijvij2⋅(−1)=−1\prod_{ij}v_{ij}^2\cdot(-1)=-1 なので、6つが全部 +1+1 にはなれず、少なくとも1つは −1-1 になる。よって λ\lambda ごとに値は 44 以下で、混合をとっても

χ≤4(非文脈的な隠れた変数)(9.3.8)\chi\le4\qquad(\text{非文脈的な隠れた変数})\tag{9.3.8}

が成り立つ。量子力学では各行・各列の積が演算子として ±1^\pm\hat 1 なので、どの状態でも χ=6\chi=6 である。292^9 通りの割り当てをすべて調べると最大はちょうど 44 になることを、verify_ch9-03.py で確かめた。

例題 9.3.3 正方形の積と、割り当ての上限を手で確かめる ★★★

オリジナル

  1. (1) 第2列の積 (1^⊗σx)(σy⊗1^)(σy⊗σx)(\hat 1\otimes\sigma_x)(\sigma_y\otimes\hat 1)(\sigma_y\otimes\sigma_x) を計算せよ。
  2. (2) 9個の値をすべて +1+1 にした割り当てで、χ\chi の6つの項の値と χ\chi を求めよ。
  3. (3) χ=4\chi=4 になる割り当てを、(2) から1か所だけ変えて作れ。χ=6\chi=6 にできない理由を、その割り当てでどの項が −1-1 になるかで説明せよ。
解答

(1) 第1因子どうし 1^⋅σy⋅σy=1^\hat 1\cdot\sigma_y\cdot\sigma_y=\hat 1、第2因子どうし σx⋅1^⋅σx=1^\sigma_x\cdot\hat 1\cdot\sigma_x=\hat 1 なので積は 1^⊗1^=+1^\hat 1\otimes\hat 1=+\hat 1。

(2) 行の積はすべて +1+1、列の積もすべて +1+1。χ\chi の項は R1=R2=R3=+1R_1=R_2=R_3=+1、C1=C2=+1C_1=C_2=+1、−C3=−1-C_3=-1 で、χ=5−1=4\chi=5-1=4。

(3) (2) の割り当てで既に χ=4\chi=4 になっている。1か所変えて別の例を作るなら、v33v_{33}(σz⊗σz\sigma_z\otimes\sigma_z)を −1-1 にする。すると R3=−1R_3=-1、C3=−1C_3=-1 で −C3=+1-C_3=+1 となり、χ=(1+1−1)+(1+1+1)=4\chi=(1+1-1)+(1+1+1)=4。χ=6\chi=6 にできないのは、どの割り当てでも6つの項の積が −1-1 になるからである(各 vijv_{ij} が行と列で2回ずつ現れて vij2=1v_{ij}^2=1 になり、−C3-C_3 の符号だけが残る)。−1-1 の項は奇数個あり、少なくとも1つあるので χ≤4\chi\le4。−1-1 になる項は、(2) では −C3-C_3、変えた例では R3R_3 である。

木下の勉強ステータス

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