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射線の着色による証明

2026年10月17日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9部 第3章 Kochen–Specker の定理と文脈依存性
目次
  1. 定理
  2. 4次元:18本と9つの基底
  3. 次元を上げる補題
  4. Gleason の定理との関係
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第9部 第3章 §9.3.4 ★★★ Kochen–Specker の定理を射線の着色の言葉で述べ、4次元の18本・3次元の33本と次元の持ち上げで、3次元以上のすべての次元で証明する

定理

定理 9.3.6(Kochen–Specker ★★★)

dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 なら、H\mathcal{H} の射線の有限集合 S\mathcal S で、KS 着色(定義 9.3.3)を持たないものが存在する。とくに全射線の KS 着色は無く、値の割り当て(定義 9.3.1)も無い。

Kochen と Specker の原論文は、実3次元の117本の射線で証明した。その後、より少ない本数の証明が見つかっている。この節では、4次元で人の手で追える18本の証明と、3次元の33本の集合を示し、次元を上げる補題で全次元に広げる。

4次元:18本と9つの基底

R4⊂C4\mathbb{R}^4\subset\mathbb{C}^4 の次の9つの正規直交基底(成分は規格化を省いて書く)を考える(A. Cabello, J. M. Estebaranz and G. García-Alcaine (1996), Physics Letters A 212, 183–187)。

B1:(0,0,0,1), (0,0,1,0), (1,1,0,0), (1,−1,0,0)B2:(0,0,0,1), (0,1,0,0), (1,0,1,0), (1,0,−1,0)B3:(1,−1,1,−1), (1,−1,−1,1), (1,1,0,0), (0,0,1,1)B4:(1,−1,1,−1), (1,1,1,1), (1,0,−1,0), (0,1,0,−1)B5:(0,0,1,0), (0,1,0,0), (1,0,0,1), (1,0,0,−1)B6:(1,−1,−1,1), (1,1,1,1), (1,0,0,−1), (0,1,−1,0)B7:(1,1,−1,1), (1,1,1,−1), (1,−1,0,0), (0,0,1,1)B8:(1,1,−1,1), (−1,1,1,1), (1,0,1,0), (0,1,0,−1)B9:(1,1,1,−1), (−1,1,1,1), (1,0,0,1), (0,1,−1,0)(9.3.9)\begin{array}{lll} B_1: & (0,0,0,1),\ (0,0,1,0),\ (1,1,0,0),\ (1,-1,0,0)\\ B_2: & (0,0,0,1),\ (0,1,0,0),\ (1,0,1,0),\ (1,0,-1,0)\\ B_3: & (1,-1,1,-1),\ (1,-1,-1,1),\ (1,1,0,0),\ (0,0,1,1)\\ B_4: & (1,-1,1,-1),\ (1,1,1,1),\ (1,0,-1,0),\ (0,1,0,-1)\\ B_5: & (0,0,1,0),\ (0,1,0,0),\ (1,0,0,1),\ (1,0,0,-1)\\ B_6: & (1,-1,-1,1),\ (1,1,1,1),\ (1,0,0,-1),\ (0,1,-1,0)\\ B_7: & (1,1,-1,1),\ (1,1,1,-1),\ (1,-1,0,0),\ (0,0,1,1)\\ B_8: & (1,1,-1,1),\ (-1,1,1,1),\ (1,0,1,0),\ (0,1,0,-1)\\ B_9: & (1,1,1,-1),\ (-1,1,1,1),\ (1,0,0,1),\ (0,1,-1,0) \end{array}\tag{9.3.9}

各行の4本が互いに直交することは内積を計算すれば確かめることができる。現れる射線は全部で18本で、どの射線もちょうど2つの基底に現れる。例えば (0,0,0,1)(0,0,0,1) は B1B_1 と B2B_2、(1,1,1,1)(1,1,1,1) は B4B_4 と B6B_6 に現れる。

命題 9.3.7(18本のパリティ証明 ★★★)

(9.3.9) の18本に KS 着色は無い。

証明

KS 着色 cc があったとする。9つの基底それぞれで 11 はちょうど1本なので、9つの基底にわたって cc の値を足すと 99 になる。一方、この和では各射線がちょうど2回ずつ数えられるので、和は 2∑s∈Sc(s)2\sum_{s\in\mathcal S}c(s) で偶数である。奇数 99 が偶数に等しいことになり矛盾する。

この証明の形は Peres–Mermin の正方形と同じである。正方形では9個の値の積を「行ごと」と「列ごと」の2通りに数えて符号が食い違った。ここでは18本の値の和を「基底ごと」に数えると奇数、「射線ごと」に数えると偶数になる。どちらも、1つの量が2つの文脈に属するのに同じ値を使う、という非文脈性の仮定を数え上げの中で使っている。

次元を上げる補題

補題 9.3.8(次元の持ち上げ)

dim⁡H=n\dim\mathcal{H}=n の全射線に KS 着色が無ければ、dim⁡H=n+1\dim\mathcal{H}=n+1 の全射線にも KS 着色は無い。

証明

H′\mathcal{H}'(dim⁡H′=n+1\dim\mathcal{H}'=n+1)の全射線の KS 着色 cc があったとする。どの基底でも 11 は1本だけなので、c(u)=0c(u)=0 となる射線 uu がある。uu の直交補空間 u⊥u^\perp は nn 次元である。u⊥u^\perp の任意の正規直交基底 {e1,…,en}\{e_1,\dots,e_n\} に uu を足すと H′\mathcal{H}' の正規直交基底になるので c(u)+∑ic(ei)=1c(u)+\sum_ic(e_i)=1、すなわち ∑ic(ei)=1\sum_ic(e_i)=1。よって cc を u⊥u^\perp の射線に制限したものは nn 次元の KS 着色になり、仮定に反する。

命題 9.3.7 から4次元の全射線に着色が無いので、補題を繰り返して 5,6,…5,6,\dots 次元にも着色は無い。残るのは3次元である。3次元の証明には、Peres の33本がよく使われる(A. Peres (1991), Journal of Physics A 24, L175)。成分が (0,0,1)(0,0,1)、(0,1,±1)(0,1,\pm1)、(0,1,±2)(0,1,\pm\sqrt2)、(1,±1,±2)(1,\pm1,\pm\sqrt2) の並べ替えで与えられる33本の射線で、互いに直交する3本組が16組ある。この33本に KS 着色が無いことは、直交する3本組ごとに「ちょうど1本が 11」、直交する対ごとに「両方 11 にはしない」という条件で後戻りの全探索を行い、verify_ch9-03.py で確かめた(手で追う証明は原論文を参照)。3次元と4次元の両方で着色が無く、補題で上の次元に持ち上がるので、定理 9.3.6 が dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 のすべてで成り立つ。

Gleason の定理との関係

第9部第2章の系(分散のない状態の不在)は、KS 着色が全射線の上に無いことを、frame function の連続性から一気に示していた。Kochen–Specker の定理が付け加えるのは、矛盾が有限個の射線(有限個の測定)の中で既に起きているという点である。無数の基底を必要とする議論は実験と結びつかないが、18本や9個の物理量なら実際に測る装置を組むことができる。数学の言葉で言えば、Kochen と Specker は、交換する射影の組ごとに Boole 束をなす命題の構造(部分 Boole 代数)が、{0,1}\{0,1\} への準同型を1つも持たないことを示した。第9部第1章で、交換する射影の組が Boole 束をなし、全体は分配律を満たさないことを見た。KS 着色が無いということは、個々の Boole 束の上では古典の確率論が成り立つのに、それらを貼り合わせた全体を1つの古典の状態空間に埋め込めないということである。

例題 9.3.4 18本の基底を確かめ、パリティの議論を3次元へ移せない理由を考える ★★

オリジナル

  1. (1) B6B_6 の4本 (1,−1,−1,1),(1,1,1,1),(1,0,0,−1),(0,1,−1,0)(1,-1,-1,1),(1,1,1,1),(1,0,0,-1),(0,1,-1,0) が互いに直交することを確かめよ。
  2. (2) 射線 (0,0,1,1)(0,0,1,1) と (1,0,1,0)(1,0,1,0) がどの基底に現れるかを (9.3.9) から読み取れ。
  3. (3) 3次元で同じ形のパリティ証明(各射線が偶数個の基底に現れ、基底の数が奇数)を作ろうとすると、各基底は3本なので何が条件になるか。基底の数と射線の数の関係を書け。
解答

(1) 6つの内積は、(1,−1,−1,1)⋅(1,1,1,1)=1−1−1+1=0(1,-1,-1,1)\cdot(1,1,1,1)=1-1-1+1=0、(1,−1,−1,1)⋅(1,0,0,−1)=1−1=0(1,-1,-1,1)\cdot(1,0,0,-1)=1-1=0、(1,−1,−1,1)⋅(0,1,−1,0)=−1+1=0(1,-1,-1,1)\cdot(0,1,-1,0)=-1+1=0、(1,1,1,1)⋅(1,0,0,−1)=0(1,1,1,1)\cdot(1,0,0,-1)=0、(1,1,1,1)⋅(0,1,−1,0)=0(1,1,1,1)\cdot(0,1,-1,0)=0、(1,0,0,−1)⋅(0,1,−1,0)=0(1,0,0,-1)\cdot(0,1,-1,0)=0。すべて 00 である。

(2) (0,0,1,1)(0,0,1,1) は B3B_3 と B7B_7、(1,0,1,0)(1,0,1,0) は B2B_2 と B8B_8 に現れる。どちらも2回である。

(3) 基底の数を NN(奇数)、各射線が現れる回数を偶数 2ks2k_s とすると、基底ごとの本数の和は 3N3N、射線ごとの和は ∑s2ks\sum_s2k_s で、3N=∑s2ks3N=\sum_s2k_s は偶数でなければならない。NN が奇数なら 3N3N は奇数なので、この等式自体が成り立たない。つまり3次元では「各射線が偶数回」という配置がそもそも奇数個の基底では組めず、パリティの形の証明は存在しない。3次元の証明が33本のような、着色の候補を枝分かれで1つずつ退ける形(全探索で確かめた形)になる理由の1つがこれである。

木下の勉強ステータス

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